じんべえ

＜最終回　ニューヨーク・ラブストーリー　そして２人は・・・＞

　家を出て宮下さんと住むことになった美久。ニューヨークへ旅立つことになった陣平。美久にみんなの目の前でプロポーズした寺西君。陣平についていきたいと言った辻さん。
　辻さんの申し出を，受け入れた陣平。このことは，辻さんが退職願の用紙をもらっていったという情報から，いつものメンバーが推測。美久がこのことを知っているかどうか・・・。寺西君は，美久に会いに行きます。２人のお父さんに愛され幸せだという美久。そういう美久に「待ってますから，この間の返事」と寺西君。困ってるのを見ると「今すぐじゃなくてもいいんで」去っていく寺西君。辻さんのことを聞こうとしますが，結局聞けず。美久は，友達からこの話を聞いてしまいます。
　陣平の出発前夜。高梨家で陣平のお別れ会を，陣平・美久・寺西君・辻さん，三田村先生・石塚さんも含めて行いました。寺西君が実家秘伝のわりしたを使って，すき焼きを用意。美久も一緒に手伝って。ちょうど始まろうとしたとき，石塚さんが，辻さんが大学を辞め，陣平について行くんじゃないか，という話を持ち出します。２人も否定せず。それを聞いた美久は，「じんべえのことよろしくお願いします。・・・門限があるから」と，また家を飛び出していきます。寺西君は，美久を追いかけ公園へ。
　「そんな悲しい顔しないでよ。笑顔で送り出してあげようよ」という寺西君に意地を張る美久。すると寺西君は「わかっているよ，美久さんの気持ち。だって，美久さんがどんな思いで本当のお父さんの所へ行くことにしたのか，どれだけじんべえ先生のことを思っているのか・・・好きなんでしょ，先生のこと」動揺する美久。「もう全然わかっているよ・・・でも，オレ待ってますから。今のボクじゃ頼りないかも知れないけど，いつかはじんべえ先生のような学者になれるようがんばるから，だからボクといつか・・」美久は，そんな寺西君がどうしてそんなに優しさのかわからないと「いつも寺西さんに悪いことばっかりして，勝手で・・」。「初めて本気で好きになった人だから」と寺西君。誰かのことに夢中になるなんて考えたこともなかった「ホントに美久さんのためだったら・・」という寺西君に，美久は「ごめんなさい。あなたの気持ちに答えられません」呆然とする寺西君に，謝るだけの美久。
　高梨家に残った４人。辻さんは，一緒に行くというのはみんなの誤解だと，うそをつきます。２人の様子を察知した三田村先生は，石塚さんと帰ります。その途中，公園のジャングルジムに腰掛け，涙ぐむ寺西君を見つけました。「なんなんですかね，この気持ち。どうなっているんですかね，この気持ち」と。「人を好きになることがこんなに悲しいこととは・・でもボクが悪いんです。こうなるってわかっていたんです。だけどもしかしたらわかってくれるんじゃないか」。ここまで聞いて，美久にふられたことを知った２人。今まで泣いたことはあったけれど，こんなに悲しくはなかった。「ボクは，恋する２人になれなかったんです」と泣きじゃくる寺西君。三田村先生が「キムチ大盛りラーメンを食べて・・」と慰めますが「やだよぉ〜」と泣きじゃくったまま・・・。
　いよいよ，陣平の出発の日。高梨家に住むことになった寺西君。陣平とお別れです。何もしてやれなかった，という陣平に「ここに来て初めてのことをたくさん経験させてもらいました」。研究のことだけでなく，たくさんのこと。「初めてこんなに女性のことを好きになって，夕べは初めて失恋で泣きました」「自分がこんなに女々しいやつだと言うことを初めて知りました」と素直に失恋で泣いたことを報告。そんな寺西君に，陣平は「普通人が口に出さないようなことを，そうやって言えるのが君のいいところだ」。
　それぞれの場所で，陣平の出発を見送る，美久・辻・寺西君。
　そして，１９９９年初冬・・・。
　陣平が，賞を取ったというニュースを，石塚さんが寺西君に知らせようと研究室へやってきますが，寺西君はデート中。相手は，美久。寺西君は「ボクも自分の夢に一歩近づけそうなんですよ」と美久にニュージーランド留学の報告をします。１年前からはじめた「東京湾にクジラは来るのか」という論文が，パーカー博士の一般公募論文に通過し，奨学金がもらえることになりました。あのことがあったから，この１年間がんばってこれた「このことを，美久さんに伝えたかったんです」失恋から立ち直り，すっかり一回り大きくなった寺西君です。
　ニューヨークの陣平の元へ，三田村先生から電話。クリスマスプレゼントが届くかも，という知らせ。そのクリスマス。陣平の元へ，美久がやってきます。宮下の仕事についてきたけれど，陣平にあいたくて１人だけ１日帰国をのばしました。１日ニューヨークですごく２人。それぞれの近況だけでなく，みんなの近況も。三田村先生が，雑誌やテレビにも出て，すっかり「恋愛の神様」になっていること。石塚さんが美久の友達と結婚すること，辻さんが三重の水族館で働いていること，寺西君の留学の話。陣平はすでに，寺西君の論文を読んでいました「送れっｔえいわなくても送るやつだろ」。美久は，三田村先生からクリスマスカードを預かってきました。夜になり，美久と別れた陣平はそのカードを開いてみます。そこには「親子にはなれなくても，『ふたり』にはなれる」。一晩考えた陣平は，ホテルまで美久を迎えに走り出します。「ふたり」になるために・・・。
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＜第１０話ふたりの決断＞

　美久との待ち合わせの場所へ行かなかった陣平は，研究室に泊まっていました。そこへ，電話が・・・。
　寺西君がアパートからゴミ出しに外へ出ると，美久が。「じんべえにすっぽかされた。家に帰りづらい」と。その言葉を聞いて，昨夜のことを思い出す寺西君。ちょっと考え込んで。「とりあえず，帰りましょう。ボク送りますよ」２人が家に帰ると，陣平が慌てて荷物をまとめていました。研究室にかかってきた電話は，小野寺先生がガンでなくなったという知らせでした。
　陣平は，アメリカへ行ってなかなか帰ってきませんでした。小野寺先生の遺骨をフロリダ沖に散骨するために。１人留守番の美久を励ますために，寺西君は鍋パーティを企画。石塚さんを手伝わせて，美久の友達を呼んで。石塚さんが，陣平の話ばかりすると，「七味入れると美味しいですよ」と大量の七味を入れてみたり。美久の気持ちが分かる寺西君だけに，ささやかな抵抗です。
　陣平がやっと帰ってきました。美久を誘い，たまには２人で飲もうと，お店に行きますが，そこには寺西君，三田村先生，辻さんが。結局合流して，小野寺先生の思いで話に。「人生，最後まで好きな仕事をし，すばらしい恋をし続けること」という三田村先生に「恋っていうのは・・・ずうずうしいです」とつっこむ寺西君。楽しく話す４人に対して，ちょっと距離を置く美久。「今話しちゃう」と，実の父親，宮下さんと住むことをみんなに宣言します。
　その後，美久と寺西君は，公園のブランコに。「陣平先生と別れちゃっても後悔しないの」と寺西君。美久は，本当のことをいわれてから３ヶ月間，いろいろあったけど答えはひとつだったと思う，と。
　陣平は，宮下さんと会い，美久を正式に宮下さんの籍にいれることにしました。そして，小野寺先生のいた研究所へ行くことを決心。ニューヨーク行きを研究室のメンバーに発表する陣平。後のことは石塚さんにまかせ，寺西くんは来年度から正式な職員になれるよう話を付けてくれました。
　このことを聞いた寺西君は，早速，美久の元へ。「心配してきてくれたんでしょ。大丈夫。割り切り良い方だから」と美久。心配そうな顔をしながらも寺西君は「少し元気になって安心した」。美久は「生きていくことって少しずつあきらめていくこと。どうにもならないことがある」こういうことを言い出します。お母さんが亡くなったとき，そう思って。でも寺西君は「あきらめなくちゃいけないこともあるけど，そんなこと言って欲しくないな。だってボクたち，まだまだこれからじゃないですか」。
　陣平の送別会がいつものお店で盛大に行われました。そして王様ゲームが始まりました。王様は三田村先生。いきなり「３番が９番のリップにチュー」と命令。美久が９番とわかり，固まった寺西君が３番でした。「リップにチュー」になる前に，寺西君「お話ししておきたいことがあります」と急にまじめになりました。陣平に向かって「あの家で留守番をさせていただけないでしょうか。つまりどういうことかというと・・・」今度は美久に向かって「いつかボクはあの家で美久さんと一緒に住みたいんです。結婚を前提におつきあいしたいんです。ボクは待ちます。いつまでもあの家で待っていますから」とプロポーズ。そして，いよいよ「リップにチュー」・・・のはずでしたが，「９番オレだよ」と石塚さん。美久は６番でした。王様の命令は絶対ですから，寺西君は抵抗しましたが・・・。送別会も終わり，二次会へ向かう途中。「勢いで言っちゃいましたが，いい加減な気持ちで言っていません。考えてもらえますか」と寺西君。
　次の日，陣平に寺西君のことをどうするのか聞かれた美久は「陣平がいってから考える」と。そして，いつものような朝食をとった後，美久は高梨家を出ていきました・・・。
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＜第９話　行かないで＞

　本当のお父さんに会った美久。一緒に住もうと頼まれてしまいます。「陣平以外の人と住む気はない」と断りますが，悩んでしまいます。
　辻さんが陣平に，３人で食事をしようと誘っているのを聞き，美久は家に招きます。もちろん，料理人は寺西君。買い出しからお手伝いです。２対２の方がいいから。寺西君は，本当のお父さんと会ったことを聞き出します。美久は，ちょっとためらいながらも「一緒に住もう」と言われたことを寺西君に伝えます。「信じられないでしょ」という美久に，「なんだよ急に，そんな勝手なことを」と寺西君も怒っています。「もちろん断ったんでしょ」と寺西君が言いますが，美久は何かいいたそうでやめてしまいました。４人で鍋パーティ。辻さんが今の研究を始めるきっかけについて話しています。寺西君「陣平先生と辻さんって，歴史古いんですね。だってボクが中学生の頃の話ですよね」と余計な一言。その時，小野寺先生から電話。また，陣平のことを誘っているようです。小野寺先生が送ってくれた，クジラのビデオを陣平と寺西君が見ている間，辻さんは「そろそろ先生を自由にしてあげたら」と美久に。
　美久が，本当のお父さんに会いに行っている間，そのお父さんは陣平の所へ来ていました。「一緒に住もう」と言ったこと陣平に伝えてしまいます。その夜，陣平は三田村先生と飲んで帰ります。美久に「返事はもうしたのか」と。美久は「迷っている」と答えてしまいます。陣平は「そんなこというと思わなかった。わかってもらえると思っていた。美久のことどれだけ大事に思っているか」。美久は「だからつらい。陣平の自由を奪っているから」。陣平は「ボクに止める権利はない。最後は美久が決めることだ」家に居づらくなった美久は，家を飛び出し，寺西君の元へ。
　寺西君はちょうどビールを買ってきた帰り。美久がたずねてきてくれてうれしそう。「誰かと話がしたくて」と言っていたので「何かありました？ボクでよかったら相談にのりますよ」。美久は陣平に「行ってもいい」と言われたとさっきの話をうち明けます。美久が「頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃた。考えれば考えるほど」というと「だったらもうどっちにも行かなくていいよ。言ったじゃないですか。どんなときでもボクは美久さんの味方だって。ボクがついてるよ！」。でも美久は「ごめんなさい・・・」と泣き出してしまいます。「何で泣くんですか。泣くことなんかないよ！」という寺西君に「寺西さんに悪いから。寺西さんに甘えてるよ。ごめんね」うつむく寺西君。「ホントは私，ほんとはは・・・」美久の気持ちを感じ取り，うつむいたままの寺西君。
　美久は，お父さんとしてじゃなく陣平のことが好きだから，陣平の家に帰って来ちゃ行けないと思った，と告白。それに対する陣平の答えは，いつもの海の見えるレストランで出すと，待ち合わせをします。
　陣平の研究室では，陣平は閉じこもったままだし，寺西君はお休み。それを不思議がる辻さんと石塚さん。寺西君は一日中，１人部屋で悩んでいました。「寺西さんに悪いから。ほんとは私・・」という美久の言葉を思い出しながら。「本当は，か・・・」
　陣平が，待ち合わせのレストランへ出かけようとしたとき，寺西君が姿を現しました。今から出かけるという陣平に「今話したいんです！」。昨日の夜，美久がやってきたこと，陣平のことで悩んでいたことを話します。そして「陣平先生は，美久さんのことをいったいどう思っているんですか」。「大切に思っている。かけがいのない存在だ」と答える陣平に「ボクはそんなこと聞いてるんじゃありません！ボクが知りたいのは，それは父親としてですか，それとも男としてですか」。無言のままの陣平。「ボクは美久さんが好きです。男として，美久さんが誰のことを好きであろうと，その気持ちはかわりません。もしも，美久さんがボクの方を向いてくれたら，ボクは絶対美久さんのことを幸せにします」陣平は「美久と合う約束をしている。そこで答えを出すつもりだ」と出かけようとします。「先生行かないでください！先生は本当に美久さんを幸せにできるんですか！十年先，二十年先，三十年先，その先もずっとずっと。あなたは本当に美久さんを幸せにできるんですか！」無言のままの陣平に「先生答えて下さい！！」。陣平は，それには答えずでていきます。寺西君は，１人，研究室に残り ました・・・。
　陣平は，レストランへ向かう途中，寺西君の言葉を思い出します。結局，陣平は待ち合わせのレストランへは行きませんでした。美久は，レストランで待ちながら，陣平の答えなんだと，涙を流します。陣平は，１人バーに行き，そこで見知らぬ人に美久への思いを語っていました・・・。
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＜第８話　告白＞

　男のけじめとして，高梨家を出る決心をした寺西君。早速，引っ越しです。石塚さんの紹介でアパートを見つけました（その名も「すみよさ荘」）。引っ越しの手伝いをしようとする美久を「女の子に荷物を持たせるなんて，ボクの主義に反していますから」と制します。いつの間にか男らしくなっている寺西君。アパートにも，正式に陣平と一緒に招待してから，と手伝いも断ります。小さなトラック１台分の荷物。石塚さんにも少ないことを指摘されると「余計なものを持っていても仕方ないですから」と。でも，腹筋を鍛えるマシーンはちゃんと持ってきていますが。
　小野寺先生の特別講義が大学で行われました。遅れてた美久は，寺西君の隣に座ります。でも，正面で２人一緒に座っている，陣平と辻さんの姿が気になります。講義終了後，研究室で小野寺先生を囲んで談笑。寺西君は，自分の研究テーマを誉められます。陣平は，辻さんとのことを指摘されます。「素敵な人じゃないか」「陣平をよろしく」と。その話の最中，表情が曇る美久。その美久の表情を見て，ちょっと気になる寺西君。陣平は，小野寺先生を送る途中，そろそろ自由になってもいいんじゃないか，とアメリカの研究所行きの話をします。美久には寺西君がいるから，それに父親としての役割を十分果たしたから，と。そのころ，研究室に，美久の本当の父親がたずねてきました。
　美久は，三田村先生に，陣平の研究所行きのことを相談します。陣平の所へは，辻さんがお客さん（美久の父親）がやってきたことを伝えに来ていました。美久が急いで帰ろうと電話をかけると，辻さんが来ているから気にしなくて言い，と陣平に言われてしまいます。家に帰りづらくなった美久は，寺西君の所へ。いきなりたずねてきた美久に驚く寺西君。しかも，「家に帰りたくない」という美久。辻さんが来ているから，と。寺西君は考えながらも「帰った方がいいな。美久さんの家なんだし，気にすることないよ」と。美久は，黙ってしまいます。そして，ムリに笑顔を作り「わかった。帰る」と飛び出していきます。悩んでいる美久に何もしてあげられない自分に後悔する寺西君。「ばっかだな，オレ」
　そして次の日，寺西君は美久と陣平を鍋パーティーに誘います。「昨日は悪いことをしました」と謝りながら。美久と一緒にいた友達も勝手に誘いに乗り，ついでに話を聞きつけた石塚さんも。ところが，陣平は，予定があるからと断ってしまいます。陣平は，美久の父親と会っていたのですが・・・。
　寺西君の家で，おいしい鍋パーティが開かれました。陣平がこられなかった話になり。辻さんも予定があると言っていたから「デートかな」と石塚さん。「２人がつきあっているとはね」「結婚も考えているのかな」と話が変な方向で盛り上がります。美久の様子がおかしくなるのに気づいた寺西君は，困りながら「そこまではねぇ」と話を濁します。その場にいたられなくなった美久は，「飲み物買ってくる」と出ていきます。自販機の前で，お金を落とすと，そこにはそっとついてきた寺西君。「どれ？」と美久の指さす飲み物を買います。そして「そんなに気になる？真理子さんと陣平先生のこと」と話を切り出します。否定する美久に「顔を見てればわかるよ」。「もう少し，素直に受け入れてあげてもいいんじゃないかな」「美久さんの気持ちもわからなくはないんだけど」「それにボクだって・・・ボクだっているんだしさ」。昨日，すごく後悔した寺西君。せっかく自分に相談しに来てくれたのに。初めて美久が自分から心を開いてくれたのに。「美久さん，本当はボクのことどう思ってくれているのか，いつも不安だったんだよね」「なんか，ボクといても楽しそうじゃないし」「美久さん， 本当は・・ボクなんかより，陣平先生の方が・・・」と言ってしまいます。美久は「やめてそんなこというの。そんなことあるわけないじゃない」とムキになります。「そんなにムキに否定しないで下さいよ・・・なんか，オレ，つらいっすよ」「でも，本気で美久さんのこと好きですから」
　陣平は，その夜，美久に本当の父親の話をします。陣平は，実の親子なんだから会ってみたらとすすめます。美久は「どうして，わかってくれないの？・・・陣平が，他の誰よりも好き」と告白してしまいます。陣平は「気持ちは分かった。でも，思い過ごしだよ」と，親子としての愛情であることを強調。今の美久の姿を堂々と見せてきてくれ，と言われた美久は，実のお父さんと会う決心をしました。
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＜第７話　大人の女＞

　１人さみしく映画を見ていた寺西君。映画の途中で外に出て，町をうろうろしていると，偶然美久と出会います。２人で家に帰ると，陣平はまだ待っていました。寺西君，いきなり「すいません。ボクは矛盾した人間です」と。美久とのことはあきらめて，研究に打ち込む，と言っておきながら，映画館まで来てくれた美久のことをあきらめることができなくなった。そして，美久にではなく，陣平に「美久さんが好きです。おつきあいがしたいんです」とお願いします。陣平は「美久との問題だろ。美久はどうなんだ」と。美久は，陣平の「普通の女の子の幸せを手に入れて欲しい」という言葉を思い出し，だまってうなづきました。
　１人，大はしゃぎの寺西君。次の朝早く，高梨家に携帯のベルが鳴り響きます。それは，寺西君から美久への電話。夕べのことが夢じゃなかったのか，と確認をしています。それを見つけ，あきれかえる陣平。一緒に大学まで行ったり，ずっとくっついているので，陣平はちょっと不満（やきもち？）。それを三田村先生に愚痴っているとき，「質問があります」とやってきた寺西君。その質問は，今度のデートの場所。いろいろ調べていたようです。陣平は，ちょっとむっとしながらも「横浜」と教えてくれました。うれしそうに出ていく寺西君を見送りながら「単細胞はいいよな」と陣平。
　その日曜日。綿密な計画を立てて，横浜へデート。シーバスにのっているとき，「今までこういうのが夢だった」と楽しそうに話す寺西君に対して，陣平と出かけた横浜を思いだしていた美久。２人の間には，カバン二つ分の空間があいています・・・。横浜には１度も行ったことがないのに，すべて調べ尽くして，名所や美味しいお店などすごく詳しい寺西君。夕飯をどこにするのか相談すると，美久は「陣平，１人だから」家に帰ろうと。ちょっと気にかけながらも，ムリに笑顔で承諾する寺西君。
　家では，１人待つ陣平，ではなく，辻さんとアメリカから帰ってきていた恩師小野寺先生と楽しそうでした。小野寺先生は「君たちはこの家で同棲しているんだ」と美久と寺西君に。小野寺先生が，陣平のことをアメリカの研究所へ何度も誘っていると聞いた美久は，ちょっと気にしている様子。ちょっと飲み過ぎて，ソファで寝てしまう寺西君。美久と陣平は話をしています。美久は「もう私に遠慮しなくていいよ」と，アメリカの研究所の誘いについて，陣平に言います。「私には寺西さんもついていてくれるし」。この話を，目を覚ました寺西君は聞いてしまいます。
　次の日，陣平と大学へ向かう途中「お宅を出ようと思います」と寺西君。「美久さんのことを本気で大切にしたいと思っています。だからいい加減なことしたくないんですよね」。そして，もし陣平が自由に研究に打ち込みたくなったら，「責任を持って，美久さんを守っていかなければならないし」と固い決心をうち明けます。陣平も「そう単純なやつでもないな」と，ちょっと見直した？
　小野寺先生の忘れ物の中に「癌センター」の封筒を見つけた美久。研究室まで届けに来た時，小野寺先生が癌センターで倒れた，という知らせが。飛び出していく美久に一緒に行くと付いていく寺西君。先に，水族館から辻さんと病院に向かっていた陣平。小野寺先生は，単なる貧血で，癌センターに入院していた昔の恋人のお見舞いに来ていたのでした。病院の廊下で辻さんが陣平に「ずっとあこがれていた」と告白している姿を見て，そっと立ち去る美久。また，美久を慰める寺西君。「お似合いだよね，あの２人」とちょっと沈んで話す美久。陣平は，辻さんを送りながらも，「もう少し飲みませんか」という辻さんの言葉に部屋へ寄ってしまいます。寺西君と美久は，初めて寺西君が家にやってきた頃と同じように，２人でワインを飲んでいました。「この家を出ようと思うんだ」とうち明ける寺西君。理由を聞かれると「男のけじめです」と，不器用に抱きしめました。すぐに「おやすみなさい」と，逃げるように部屋に入る寺西君でした。結局，陣平は朝帰り・・・。
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＜第６話　恋するふたり＞

　やっとの思いで，美久に告白をした寺西君。ムリに走ったおかげで，盲腸のあとが痛み出してしまいました。家まで，美久に支えられて帰ってきました。部屋で苦しむ寺西君にお薬を美久が持ってきてくれます。「さっきのことは」と話を持ち出すけれど，それを避けるような美久。そんな美久の態度を，寺西君は気にかけます。その時，陣平は，家に来ていた辻さんを送っていくことに。それを，悲しげに見送る美久。
　寺西君は，美久のこと以外に，一生懸命自分の研究テーマを探しています。「これからは，人に何かを言われる前に自分で自分の人生を切り開いていくと決めたんです」と。でもやっぱり，美久のことは気になっていて，大学構内で「恋するふたり」という映画のポスターを見つけます。チケットを買い，美久を誘おうと，休みの予定を美久に聞きますが「今時間がないの」で片付けられます。結局，切り出せなかった寺西君。告白してから，視線を合わせてくれないし，デートに誘っても断られるし，と悩み，研究テーマを探しながらも，気になってしまいます。そこで「恋愛の神様」三田村先生に相談。「先生って口固いですよね」「もちろん」と言っていたのに，三田村先生は陣平に話をしてしまいます。
　話を聞いた陣平は，家に帰り，寺西君に何か言おうとしますが，素直に言い出せず。結局，くじらを例にとって話をします。くじらは群＝ファミリーを作って生活しているけれど，起きて破りは絶対許されないんだ。寺西君はなんのことやらさっぱりわかりません。その時も，美久は部屋に閉じこもったまま。実は，陣平への誕生日プレゼント，セーターを編み上げようと必死になっていたのでした。陣平は，美久にも寺西君のことを切りだそうとしますが，結局やめてしまいました。
　美久の態度が変わったことを気にする寺西君。寺西君と美久の関係を気にする陣平。そして，陣平へのプレゼントを必死になって作る美久。
　陣平は，講義の後，とうとう寺西君を問いただします。「美久の様子がおかしい」と。寺西君は，起こられると思いちょっとびくびく。それ以上何も言わない陣平に，自分が悪いんだと話す寺西君。美久が好きなことを白状します。でも，「それはもういいんです」と。自分の研究テーマが見つかりそうだと，陣平に相談します。寺西君は，美久とのことをふっきろうと，研究に打ち込もうとしていました。
　陣平は，いろいろ考えたあげく，ひとつの計画を立てます。美久に封筒を渡し，地図の場所で水質調査をしている人に渡して欲しいと伝えます。美久は，誕生日のケーキとプレゼントのことは内緒で「ダッシュで帰ってくるね」と陣平と別れます。実は水質調査をしていたのは，寺西君でした。そして，封筒の中身は「恋するふたり」のチケット２枚。でも寺西君は「もうあのことは忘れてもらえますか。あなたの気持ちはここ何日かで分かりましたから」。美久が事情を話そうとしても「ボクは恋愛とかに向いていないタイプだから」。それより，友達としてつきあってもらった方がいい。恋人同士なら，いつかは別れるけれど，先生のお嬢さんとしてなら，何十年もつきあえる。すごい研究の成果を出したときだって，見てもらえる。そして，美久に自分の研究テーマを教えます。「東京湾にクジラはくるのか」。東京湾の水質とクジラの関係。そのために，水質調査を始めたと，明るく話します。研究のことを話すことで，強がって見せる寺西君。映画のチケットは，美久から陣平に返してもらうように渡してしまいます。そして，調査を続けるからと，美久に背を向けていきました・・・。
　美久は大学に戻りましたが，陣平が辻さんと楽しそうに食事に行ったと聞き，さみしく家に帰ります。陣平は，辻さんから誕生日のプレゼントをもらって，美久との約束を思い出します。あわてて帰りますが・・・。一方，寺西君は，１人さみしく町を歩き，映画館の前に。結局，１人で映画を見ていました。陣平が約束を破ったことが許せず家を飛び出した美久は，その映画館の前でしばらく立っていたのですが，映画が終わる前に去っていってしまいました。そう，寺西君は，そんな美久に会うことができませんでした・・・。
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＜第５話　新しい恋＞

　ヒロとの一件から，美久が家に帰ってくることに。そわそわ，じっとしていられない陣平と，料理を準備する寺西君。陣平は，外へ何回も見に行きます。でも，それがわかってしまうのがイヤで，美久の姿が見えると，さっと家の中へ。でも，寺西君にばらされてしまいましたが。寺西君は，豪華なお食事を用意。生牡蠣まで。みんな「おいしい」と。寺西君「でも，みんなで食べるからおいしいんですよ。今まで先生と２人だと味気なくて」と。すると陣平は，半分面白がって文句。でも「やっぱり味気ないよな」と，美久が帰ってきたから上機嫌です。
　しかし，その夜。３人は，気分が悪くなり・・・。牡蠣にあたってしまったのかも。次の日も，具合の悪い陣平。しかし，雑誌の原稿の締切が迫っているので，薬を飲みながらワープロをたたいています。そんな陣平を見て，責任を感じた寺西君。何かお手伝いができないかと。特にできることもなく，陣平のすきな紅茶（オレンジペコ）を入れようと，陣平のそばにあったカップをとり，部屋を出ようとしたその時。コードに足を引っかけてしまい，陣平のワープロが，床へ・・・。ワープロは，こわれてしまい，もちろん今まで書いていた原稿もパー。「すいません」と平謝りの寺西君。せっかくの原稿をダメにされた陣平は，許すことができません。「その『すいません』をやめなさい」。「キミが来てから，ろくな事がない」と，このことだけでなく，今までの文句を並び立てます。白い真っ向クジラのことから，陣平がいないのに美久とふたりっきりで家に泊まったこと・・・ｅｔｃ。しまいには，携帯電話や自分の嫌いなしいたけを料理に使いすぎると。途中，痛そうにおなかを押さえる寺西君。それも，気に入らず，「おなかを押さえるな！」と。そして，なんのために京大をやめてまで，ここ へ来たのか。ここへ来てから，自ら進んで何かを学ぼうとしたのか。「ボクから言われたこと以外にだ！」そして「即刻京都へ帰りなさい！」と・・・。
　美久が家に帰ると，玄関の所に苦しんで倒れている寺西君が。部屋に戻ろうとしたけれど，おなかが痛くて動けない。結局，盲腸で入院。もう少し遅かったら大変なことになっていたそうです。寺西君の入院の準備をする美久。そんな状態でも，寺西君は陣平に言われた「京都へ帰りなさい」という言葉を気にしていたようです。陣平は「たかが盲腸だ」と素っ気なく。
　手術が済んで，目が覚めた寺西君は，美久がずっとそばにいてくれて「すいませ・・・ありがとうございます」と。そして，まだ，陣平の原稿が間に合ったかどうか，気にしている寺西君。美久は「こういうときは，余計なことを考えないの」と寺西君を励まします。「美久さん，本当にありがとう」と寺西君が言うと，「寺西さんには迷惑かけちゃったし。ヒロさんのこと」。美久に優しくされ，ちょっとうれしそうな寺西君。一方家では，美久の帰りが遅いことを気にしている陣平。
　この後も，毎日お見舞いに行く美久。陣平は，かなり機嫌が悪い。原稿は大変なことになったし，美久はかまってくれないし。原稿はなんとか間に合ったようですが。三田村先生が，美久と寺西君のことを「こういうときに恋が芽生える」と，陣平が気にすることを。
　だいぶよくなった寺西君。病院の屋上で，美久と話をしています。「知らなかったんだよな，椎茸嫌いなんて」と，まだ陣平に言われたことを気にしています。「まだ怒っていますよね・・・それだけじゃなくて，ボクのあり方」。かなり落ち込んでいます。１日病室にいるといろいろ考えちゃって「東京に出てきて１ヶ月半。オレはいったい何やってるんだろう」と。そして「田舎に帰った方がいいのかも知れない」。美久は「今の自分がダメだと思ったら，変えればいいじゃない」と励まします。「私は，ユメのある人って素敵だと思うよ」と，寺西君に対してって訳じゃないんでしょうが・・・。自分の夢は「大好きな人と結婚して幸せになること」という美久に「かなうと思うな」と寺西君。そして，帰ろうとする美久に，なにかうち明けようとしますが・・・邪魔が入りできませんでした。
　そして，寺西君が退院の日。美久が迎えに行くと，すでにいません。夕べ，無理矢理退院したと。もちろん，家にも研究室にも戻っていなくて。携帯もつながらない。落ち込んでいたから田舎へ帰ってしまったかも，と心配する美久。美久から知らせを受けた陣平も，最初は大丈夫だと言いながら，午後のゼミをすっぽかして探しに行きます。
　ふっと気づいた陣平が向かったのは，水族館のある海。そこには，寺西君がいました。寺西君は，陣平に手紙を書くことを決心したときのことを思い出していました。研究室の歯車になることを嫌がっていたのに，こっちにきても同じ事をしてしまった。誰かに何か言われないと，なんにもできないなんて「最低ですよね」。陣平も「研究者としては最悪だな」科学というのは自分で切り開いていくもの。「人生と同じ。待ってるだけじゃ何も始まらない」
　２人で家に帰ると，まだ美久は探しに行っていました。それを知った寺西君。まだ走っちゃダメなのに，家を飛び出し，美久を探しに行きます。携帯で連絡を取り「すぐ向かいに行きますから，待っていて下さい」と。おなかを押さえながら走る寺西君。心配する美久に「これぐらい平気です。美久さんがボクのこと探していてくれたんですから」。そして・・・ボクは今まで，何に対しても待っているだけで，今までの進路も人が言ったとおりにしてきた，「ずっとボクはあなたに言いたいことがあったんだ・・・初めてあったときから，ボクはあなたのことが・・・」痛みに苦しみ，美久に寄りかかるように「好きです」とやっと告白。
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＜第４話　失恋＞

　美久とヒロの現場を見てしまった寺西君。その場を去っていきます。そこへ現れたのは，ヒロの店で働いている子・・・。寺西君が家に帰ると，陣平は，かなり不機嫌。「美久の所へ行っていたのか。非常識じゃないか」という陣平に，ちょっと困りながらも否定せずに「美久さんとボクは何もないですから」と寺西君。実は，さっき女の子から，ヒロにはつきあっている人がいて，絶対美久が傷つくと言われていたのです。
　悩みながら，遅くまで起きていた寺西君。すっかり寝坊です。陣平も１人では起きられず，寺西君が「こんな時間なんです」と静かに起こしにいきました。その後が戦争。ひたすら怒られる寺西君。今日は大事なシンポジウムがあるから，いつもの紺のカシミヤのジャケットじゃなきゃだめだと駄々をこねる陣平。そのうち，あわてていたせいで，寺西君の歯ブラシを使ってしまう陣平でした。険悪なムードのまま，大学へ。すると正門の所には，ヒロの車で送ってもらった美久が。「古着屋です」と陣平にささやく寺西君。それぞれ挨拶をしますが・・・。美久の耳のとへなにやらささやくヒロ。それをちょっとふてくされてみている寺西君。
　研究室にて。今日のシンポジウムの準備をしている陣平に，「どうなっているんでしょうね」と美久とヒロのことを相談する寺西君。「何で朝から一緒なんだろ」「まさか・・・」とぶつぶつ。ただでさえ機嫌の悪い陣平「何気にしてんだ！」とさらに不機嫌。「すいません」と謝りますが・・・。不機嫌なままシンポジウムに出かけようとする陣平に「あの，ボクは・・・」と寺西君は言いますが，白衣をぶつけられ，お留守番決定・・・。
　陣平たちがシンポジウムに行っている間，寺西君は美久に陣平が探していた紺のジャケットを見つけてもらおうとします。美久の話では，陣平は着ていくつもりの服がないとかなり不機嫌になる。しかも，その紺のジャケットは，それを着て発表した論文が賞をもらったことから，いつもシンポジウムの時は着ていくことにしているそうです。美久に探してもらっている間も，ヒロのことが気になる寺西君。紺のジャケットはクリーニングに出してあったのですが，そのクリーニング屋の帰り。「ごはんでも一緒に」と美久を誘いますが，予定があると断られてしまいます。そこで「あの人，あんまりいいとは思えないんですよね」とヒロのことを悩みながらも言い出す寺西君。「住む世界が違うというか」「じんべえ先生も気にしていると思うし」。「本当はすごく優しいし，人の気持ちが分かる人」と反論する美久に，「ボクにはそう思えない」「はっきり言うと，男から見てああいうタイプって言うのは信用できない」と。それでも美久は「精神的にも支ええてくれた」と。さらに「人のこととやかく言う人，男として最低だと思う」と言って去っていきます。ヒロの本当のことを知っている寺西君，空 回りです・・・。
　その夜，陣平はシンポジウムの後辻さんと三田村先生とお食事。高梨家では，寺西君が１人さみしくお茶漬けを食べています。「男として最低だと思う」と言う美久の言葉を思い出して「最低か・・・そうだよな」と・・・。
　大学の構内で，友達と一緒の美久を見つけ，声をかける寺西君。話があると呼び出したところへ，いきなり女の人がやってきて，美久にビンタ。この人はヒロと一緒に住んでいる彼女。美久に言い寄る彼女。いったんは止めに入ったけれど，「関係ないでしょ」と突き飛ばされ，つらそうな顔をしながら，見守る寺西君。そこへ，ヒロがやってきて，彼女をひっぱり「みっともないことするな」と。それを止めに入る寺西君「離しなよ。みっともないことしているのあんただろ！」と。「熱くなんなよ」と相手にしないヒロに「やめなよ。自分のしていることわかってんのかよ」。でもヒロに突き飛ばされ，眼鏡が割れて・・・。それでも寺西君は，ヒロに向かっていって。周りの人が止めに入っても，向かっていって・・・。
　結局警察沙汰になり，警察署から出てきた寺西君を待っていたのは，美久。「ごめんね，私のせいで」という美久に「警察はもう慣れていますから。下着泥棒の時」と寺西君。ヒロに彼女がいたこと「知っていたんでしょ」と美久。ぶつぶつ変なことばっかりいっているから，おかしいと思っていた。「言ってくれればよかったのに。二またかけられているから，だまされないように気を付けろって」と。そんな美久に「言えないですよ，そんなこと」。美久がヒロのこと好きだったみたいだし，そんなこと自分の口から聞いたって，本当に好きなら嫌いにならないはず。「一度好きになったら，どんなことがあっても好きなもんは好きでしょ。たとえその人が，誰のこと好きだろうと，誰とつきあおうと，自分の気持ちは変わらないと思うし」「人を好きになる事って，そう言う事じゃないかな。ボクはそう思うから」と，しみじみと話す寺西君。「だったら最初から何も言うなって感じですよね」「人の悪口なんか言うやつは，最低ですよ」と。
　陣平が帰ってきて，こっぴどくしかられる寺西君。「すいませんでした」と謝るだけで，ケンカの原因については「もともとあいつのこと嫌いで，すごくむしゃくしゃしていて」というだけ。美久のことにはふれませんでした。「以後気を付けます」と謝り，ひとり暗い部屋に戻ります。本当のことを知らない陣平は，美久にも聞いてみますが，美久も「陣平には関係ないことだし」と話しません。そこへ，ヒロから電話。「話がある」と。「話す事なんてない」と言いながらも，部屋へ帰る美久。部屋の外の様子を，心配そうに聞いている寺西君。美久は家を出るとき，心配する陣平に，「彼女がいたの・・・。よくある話」と話します。美久が出ていって，しばらくして，やっぱり心配になった陣平も家を出ていきます。
　お店の外ででヒロと美久の話を聞いていた陣平。ヒロの頬を軽くたたき，「軽々しく口にしないでくれ，愛してるなんて」。そして，美久を連れだし，「帰ってこい」と。だまってうなずく美久・・・。
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＜第３話　片想い＞

　陣平が部屋にいると，玄関のチャイムが。寺西君は，鼻歌なんか歌いながら庭の植木に水をあげていたので気づきません。陣平が出てみると，そこには大量の荷物が。全部寺西君の「生活に必要なモノ」。しかし，今の寺西君の部屋にはとうてい入りません。「ムリかなぁ」と寺西君。陣平は最低限の荷物以外は，送り返すこと。「キミも送り返したっていいんだ」と言う言葉に，あわてて寺西君は「すぐ送り返します」と。
　一方，美久は，アルバイトをはじめるために古着の事を教えてもらっていました。何十万もするジーンズを買っていく人がいると聞いて「どんな人だろう」と・・・。その時，寺西君は，荷物を整理。奈良漬けを発見。美久に届けたいと，陣平に相談。その時，陣平はお見合いのことで電話をしていました。陣平にお見合いの話があることを知った寺西君，口止めをされます。
　寺西君が，奈良漬けを届けに美久の所へ。そこでは，ヒロと仲が良さそうな美久。部屋に行っても，ヒロの自慢話ばかり。「学歴に頼っている人が多い中えらい」「いい大学出ても頼りにならない人が多い」と，京大大学院出身の寺西君を目の前にして・・・。その時美久がはいていたジーンズは，ヒロからもらったビンテージもの。それを自慢された寺西君は，持ってきた奈良漬けを渡すことができませんでした。
　寺西君が研究室にいるとき，陣平の元へ「いかにもお見合い」という内容の電話が。本人がいなくて，辻さんが受けたのですが。遊びに来ていた三田村先生と，助手の石塚さんで話が盛り上がっています。事実を知っている寺西君は，だんだん居づらくなって「用事！」と飛びだそうとしますが，２人に捕まります。ついつい話してしまう寺西君。それを偶然，廊下で聞いてしまう美久。「この話なかったことにして下さい」と寺西君が言いますが。
　その夜，美久は陣平とお店でお食事。うちでは「うるさいのがいるから」週末，お母さんのお墓参りに行く約束をしました。
　美久と陣平が，あんなにケンカしていたのに，どうして仲良く出かけていくのか不思議がる寺西君。「美久さんってボクのことまるっきり無視だもんな」と。石塚さんに「もしかしてキミ，好きなの」と冷やかされ，「何言ってんですか」と照れる寺西君。２人の会話を無視し，「親子ってそういうもの」と元に戻す辻さん。「先生の所は普通と違うし」と寺西君がぽろっと言ってしまいますが，この２人は知らない。また，逃げようとしますが，石塚さんに捕まり・・・。その時，ちょうど遊びに来た三田村先生に「先生から陣平先生と美久さんのこと説明して下さい」とまじめにお願いします。
　そのころ，陣平と美久は，お母さんの実家の方のお祭りに行きます。２人で子供のころの思い出を語ります。
　そして寺西君，辻さん，石塚さんは，いつもの（？）店で，三田村先生から２人の話を聞いています。「人生はすべて舞台」というシェークスピアの言葉を引用する三田村先生。寺西君は，全然わからず「今度，ボクの講義聞きに来なさい」と言われます。
　陣平と美久が帰ってきました。寺西君は２人のためにご飯の用意。美久に誉められ，うれしそうな寺西君。留守中の電話を伝える中に，お見合いのことも。はっきりとは言いませんでしたが，美久はお見合いだと気づきます。誰に聞いたのか，と陣平は寺西君を見ますが，首を振るだけ。これをきっかけに，またケンカになってしまう陣平と美久。陣平は，お母さん以外の人を好きになることはない，と。それは，陣平を好きだと気づいてしまった美久にはつらい言葉でした。「いい加減おかあさんから卒業してよ」と泣きながら家を飛び出します。１人，食卓に残った寺西君。思い立って，美久の家へ。しかし，そこには・・・。美久は，自分の恋の悩みをヒロに泣きながらうち明けていました。そして，慰めるようにキスをするヒロ。その現場を見てしまった，寺西君。うなだれて，そこにたたずむだけ・・・。
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＜第２話　「キスをした夜」＞

　家を出た美久。陣平は，朝台所から，朝食を作る音を聞き，美久が帰ってきたと思いましたが・・・。そこにはエプロン姿の寺西君。陣平は「こんな食べ物で気を引こうなんて大間違いだよ」と不機嫌そう。でも寺西君が「お口に合いますでしょうか」というと「合うよ」。寺西君の実家は料理屋をやっているので，見よう見まねで覚えたそうです。誉められてとっても嬉しそうな寺西君。美久の話になり，「やっぱり心配ですよね，あんなかわいい人」と寺西君。「彼氏はいらっしゃるんですか？」と陣平の気にしていることを，何にも考えないで。さらに続けて「いないわけないよな，あんなかわいい人に」。やっぱり不機嫌な陣平。携帯に連絡してみたら，と寺西君が言いますが，陣平は携帯が嫌い。「今世紀最大の無用の長物」という陣平。「一生死ぬまで携帯電話は使わない」と決めている。
　助手の話を持ち出しますが，断られ。「助手の助手でも」「お手伝いでも・・・」。またこの言葉に陣平は不機嫌に「美久が帰ってこないと言うのか」。「美久さん探してきます・・・」と言ったところで，寺西君の携帯が・・・。「お母ちゃん，今取り込み中」
　大学にも出てきていなかった美久。心配する陣平に，三田村先生はこういうときに危ないんだ，とさらに心配させるようなことを。美久は，女友達とホテルに泊まっていました。ホテル住まいを続けられないだろうと，友達がお兄さんの友達（ヒロ）の古着屋を紹介。そこの２階に住むことになりました。ほとんど物置状態の部屋ですが。一人暮らしに，不安を感じる美久。
　陣平が家に帰ると，夕飯の支度をして待っている寺西君。今夜はすき焼きです。すき焼きの鍋を見つけられたのは，美久から電話があったから，と言います。陣平は「美久から電話があったならそういえ」と詰め寄ります。寺西君「ボク，住所と電話番号教えてもらっちゃいました」と嬉しそうですが「キミに教えた訳じゃないだろう。ボクに伝言しろって事だろう」と陣平。メモをいったんは渡そうとしますが，ポケットにしまい込みます。「お教えしますが，条件があります」と寺西君。「ボクももう後がないんです」。京大の研究室から，１週間以上も休んでいるので，もう来なくていいと言われてしまいました。陣平は，やっと寺西君の手紙（長文）とザトウクジラに関する論文を読んでくれていました。「よくはないけど，悪くなかった・・・メモ，メモ！」と催促しますが，絶対に渡さない寺西君。「わかったよ。そんなにいたいなら，いなさい」と根負け。メモを素直に渡しました。とっても嬉しそうです。電話番号を見て，「携帯だと思いますよ」と寺西君。
　陣平は，美久の住んでいる古着屋へ行きますが，美久に合うことはできず，５万３千円もするジーパンを買ってしまいました。そのころ，寺西君は陣平の研究室へ。うれしそうにワープロを広げる寺西君。「キミのポジションは」と聞かれ「助手の助手です」と。陣平に好きなように勉強しろ，と言わたと嬉しそう。そこへ陣平が帰ってきて，買ってしまったジーパンを寺西君へ。値段を見て「がんばろう，オレ」
　美久は，大家のヒロと夜遊び。その時，携帯に寺西君から電話。助手の助手になれたこと，家にもいられるようになったことを報告。今陣平がいないことをしった美久は，忘れ物を取りに家へ。玄関からでなく，庭から。テーブルに並んだ夕食を見て感動してくれます。時間がないと大慌てで，忘れ物を探す美久。そこへ，陣平が帰ってきました。美久の事が心配で，ヒロのことや，服装・携帯のことをいろいろ言ってしまいます。また，言い争いに。
　飛び出していく美久を「ボク，行ってきます！」と寺西君が追いかけます。「ケンカ分かれはよくないと思うな」。「ボクに何かできることが・・・」美久はそんな寺西君の言葉を遮って「大丈夫」と１人歩いていきます。悲しげな顔をしながら見送る寺西君。
　三田村先生が，陣平を励ますためと，辻さん（新しい助手）の歓迎会をかねて，学生がよく行く店へ。寺西君も一緒。そこでは学生達が合コンをしていました。合流してしまいました。その中に，美久も。美久の隣に座った寺西君。「本当に家に住んでいいんでしょうか」「足りないモノがあったら言ってください」と。すぐにみんなで王様ゲームが始まりました。王様の命令は「１１番が３番のほっぺにキス」。３番は陣平で，１１番が美久。嫌々ながらも，ほっぺにキスをしようとしたとき，写真を撮ろうとした三田村先生が倒れてしまいます。そっちの方を見た陣平の口と，キスをしようとした美久の口が・・・本当のキスをしてしまいました。
　その夜。それぞれが家に帰ってから。美久の所に電話が。陣平からです。外へ出てきなさいと。「ライナスの毛布」のクジラのぬいぐるみを届けに。寺西君から携帯を借りてきていました。素直にあやまる美久。最後に「じんべえにとって，私は何？娘？」。陣平は「ああ。それ以上でもそれ以下でもない」。美久は「誰か好きになってもいい？」「いいよ」と陣平・・・。
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＜第１話「初恋」＞

　今日は美久の誕生日。そんな朝，夜中に干していた美久のパンツが盗まれていました。そんな騒ぎの中，陣平は，誕生お祝いのためにレストランを予約していました。美久は，大学の先輩のお誘いを断ってまで，陣平との約束を優先します。
　そんな日に，京都からやってきた寺西君。彼は，新幹線でおばあさんに親切にしたけれど，そのおかげで新幹線に行かれてしまったりする，いい人だけどちょっとおっちょこちょい。陣平の家をたずねますが，留守。「いないのかな」と庭先に行ってみると，何か落ちていたので拾いました。ちょうどその時，美久が帰ってきて「変態！」と大騒ぎ。その拾ったものは，美久のパンツでした。
　美久は，その後，約束通りじんべいの待つお店へ。そこは，陣平にとって思い出の場所。お母さんにプロポーズをした場所です。美久はその時お母さんが着ていたワンピースを着ていきました。その思い出話をする陣平。実は，お母さんにプロポーズしたとき，そばに小さな美久がいました。陣平と美久は，血のつながりがない。そのことは美久が２０歳になったら話すという約束でした。「それから先は？」とこの後どうしたらいいのか，悩む美久。
　その２人が帰ってみると，寺西君が待っていました。下着泥棒は別のところで捕まったから，とちゃんと説明。寺西君は甚平に，ここへやってきた理由を説明します。ただ，やってきたタイミングが悪く，陣平はちゃんと話を聞こうとしません。新しい助手も決まってしまっていましたから。ただ，新幹線の中で読んだ専門誌に載っていた「白いまっこうクジラ」の話をすると，それに向かって一直線の陣平は，次の日，ニュージーランドへ旅立ってしまいました。
　美久は，１人になり，ビールを飲みながらいろいろ考えていました。ところがそこへやってきたのは，陣平と一緒に行ったはずの寺西君。パスポートの期限が切れているのに気づかず，成田まで行ったのに一緒に行くことができませんでした。結局，寺西君に話を聞いてもらうことに。事情を聞かされ「もしかしてボクはそんな大事な日に？」とことの重大さを知りました。「ものすごくショックをうけてたりしてます？」と聞く寺西君に「陣平と同じ」と美久。クジラのことはよくわかるのに，人の心がわからない。美久は，血のつながらない親子だと言うことは，幼かったけれどわかっていた。だから，それがショックだったのではなく，今更そんな話をしたことがショックだった。出ていけといわれているようで。涙を流しながら話す美久。寺西君も，涙が・・・。
　そのまま泊まってしまった寺西君。電話に出てしまいますが，それは陣平。かなり怒っているよう・・・。寺西君が帰るときに，美久は，わざわざやってきた理由を聞きます。寺西君は，京大でノーベル賞をねらっているチームにいました。データをとる毎日に，行き詰まっていた時，陣平の論文を読んで感銘を受け，自分でクジラ等を調べているうち魅了されてしまった。この話をすれば陣平も受け入れてくれる，と美久。寺西君，美久に話をしている時は，とってもうれしそうな顔をしていました。
　陣平がかなり疲れ切って帰ってきました。寺西君が教えてくれた情報は，２０年も前のこと。勝手に泊まっているわ，飛んでもない情報を教えるわ，かなり怒っています。ちょうどタイミング良くやってくる寺西君。美久と一緒にお説教されます。
　美久は，今度のことについて，陣平に気持ちを伝えます。「出て行くしかない」と，家を出ていきました・・・。

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