「恋におちたら〜僕の成功の秘密〜」

第１話	ずっと探してた人	第２話	憧れのヒルズへ
第３話	ヒルズの成功とは	第４話	ヒルズは歌う
第５話	ヒルズの大逆転	第６話	ヒルズの秘密
第７話	ヒルズの頂点へ	第８話	ヒルズの新社長
第９話	愛を止めないで	第10話	「告白」
最終回	ヒルズに恋して

最終回「ヒルズに恋して」 　 　暗い部屋の中，一心不乱にパソコンのキーボードを打ち続ける島男。その傍らには，大量の卵＆殻が。いつものように龍太が鈴木家の前に来ると，不審人物の姿が。「まり子の新しい男か!?」と，いきなり持ってきた魚で殴りつける龍太。その不審人物とは，宮沢だった。宮沢もフロンティアを辞めてきた。「給料払えないかも知れないよ」と高柳。"鈴木ネジ.net"は，現在スポンサー探しで悪戦苦闘中。神谷は，ダメ下でアメリカの大手プロバイダー・ブライトオンラインに企画書を提出してみた。宮沢は「あいつは？アイランド」と。島男は，ずっと上の自室にこもって作業をしていた。 　フロンティアでは，桜庭と橘が，鈴木ネジの話をしていた。エージェント機能を搭載した検索サイトを作ろうとしていると。桜庭は，メディアに手を回して宣伝できないように，裕美に指示をする。裕美が意見をすると，「やめてもらってもいい」と。そんな桜庭の姿を見て，橘は「何を心配しているんですか。こんなちっぽけな会社ですよ」と言うが・・・。 　鈴木ねじのみんなが営業にまわる中，１人一心不乱にパソコンに向かう島男。そんなとき，高柳に１本の電話が。宮上商事が，契約をしたいと言ってきた。ただし，今の状態では重すぎてサーバーに負担がかかるので，多少クオリティーを落とせば採用するという。夕方。やっと島男が下りてきた。ちょうどみんなも戻ってくる。みんな営業がうまくいかず落ち込んでいたが，高柳がそこへ帰ってくる。宮上商事の話を伝えると，みんな大喜び。ただ，セキュリティーのレベルを下げるという条件を言うと，「できません」と島男。エージェント機能を付ければ，その分ユーザー情報が漏れやすくなる。「セキュリティーが今まで以上に必要なんです。過不足ないセキュリティーが僕の目指すところです。いいネジは妥協したら作れませんから」。高柳が「鈴木ネジの存続がかかっているってことだぞ」と言っても，「わかっています。でも僕にはできません」と信念を曲げない島男。帰り道。高柳に桐野は「またいらついている？」と。「こんなチャンス滅多にないんだ」と高柳。桐野は「あなたも島男君も頑固ね」と。でも島男の才能も高柳やり方も信じているという。フロンティアでは，宮上商事が絡んできたことを知り，桜庭が不安を抱く。でも橘は「大丈夫ですよ」とあまり真剣に考えていない。すると「もう結構です。この件は，私が預かります」と桜庭。そこへ，退職願を持った裕美がやってきた。香織が鈴木ネジ戻ってきて，オフィスにある記念写真を見つめる。まり子と一緒に島男の部屋に行ってみると，倒れるように眠っている島男の姿が。少し前にプログラムが完成したところだった。 　高柳は，スポンサー探しを続けるが，「後ほどご連絡します」と言う答えでも，名刺が置き去りにされたり，なかなかうまくいかない。そんなとき，桜庭から電話が。対面する高柳と桜庭。桜庭は「あなたはあんな小さな会社でくすぶっている人じゃない。私達ロイドブラザーズは，あなたにフロンティアを仕切っていただきたいと思っています。戻るなら社長のイスを用意しています。経営方針もお任せします」と。高柳が「フロンティアに未練はありません」と言うと「フロンティアを捨てきれるわけありません」と桜庭。高柳がまだフロンティアの株を持っているのは，未練があるからだと。「さっさと手放してしまえば良いんじゃないですか？」。 　鈴木家，みんなで団らん。プログラムが完成し，みんなうれしそう。島男は「本当に大変なのはこれからですよ」と。その後，河原で島男と香織が話している。島男は「高柳さんの言うこともわかるんです。でも自分の信念曲げると鈴木ネジを一からやっていく意味がないと思うんです」。「ようやく自分でやりたいことできるんでしょ。ならそれでいいのよ」と香織。島男が「香織さんは？」と尋ねると「やっと今，自分の居場所見つけられた気がする。あなたのおかげよ」と。見つめ合う２人。自然と顔が近づき・・・橋の上で，２人を呼ぶ神谷と宮沢。いい雰囲気が一気に壊される。家に残っているまり子と龍太。龍太は「島男が喜んでいると，オレがうれしくなっちゃう。いろいろあったけど，良かったな。まり子，お前も幸せになれよ」と。するとまり子が「結婚しない？」と突然言い出す。「誰が？」と龍太。「私達」とまり子。すぐに理解できず，ボーっとしていた龍太「うそっ!?」いつもの居酒屋。島男・神谷・宮沢・香織の姿が。神谷は「シャンパンないの？」と。そして「リオハ行こう！」と言って立ち上がろうとすると，龍太が走り込んでくる。「オレ，プロポーズされた！まり子に！」と叫ぶ。「おめでとう！」と島男。抱き合って喜ぶ２人。 　鈴木ネジの新しいポータルサイトがオープンしたが，アクセス数は８万件。目標まであと22万件。うまくいかず，落ち込むメンバー。高柳は「宮上商事やろう。セキュリティーレベルを下げるだけで，大口の契約が取れるんだ」と言い出す。桐野は「社長は？島男君は？どう思っているの」。島男は「セキュリティーレベルは下げません。不要品出しているのと同じだからです。僕達は僕達のやり方で，僕達のビジネスをやるためにこの会社をはじめたんでしょ？」と語る。高柳は「僕達の道の結果がこのざまじゃないか」と言うが，島男は「勝ち負けなんか関係ないんじゃないですか。今の僕には，お金や勝ち負けよりも，質の良いネジやプログラムそのものの方がずっと大切なんです。僕はいいモノを作って社会に提供したいだけです。他に何も要りません。それが，今の僕の仕事だと思っています」と主張する。「現実は甘くないんだよ。金がなければ，会社はつぶれるんだ。また鈴木ネジつぶす気か？夢で飯は食えないんだよ，鈴木島男」と高柳。 　リオハ。裕美が１人飲んでいた。そこへ神谷がやってくる。「いつもの」と言いかけて，「じゃなくてビール」と席に着いたのは，豊田の隣。すると裕美も「私もビール」と豊田の隣に移動する。そしてフロンティアを辞めたと告げる。「むかつくのよね。私のこと人間と思ってない」と言う。すると豊田が「あのー・・高柳さん，フロンティア戻るんですか？噂なんですけど」。高柳がフロンティアに戻るという噂が流れているという。居酒屋に神谷が裕美を連れてきた。島男・香織・宮沢・神谷・裕美・まり子に龍太と言う面々。島男「神谷さん，高柳さんの言うことも最もなんですよね」と言い出す。神谷は「お前は自分がやりたいことやればいいんだよ」と諭す。それでも島男は「でも実際収入ないわけだし・・・」。みんなはそんなことは気にしていないと励ます。みんなの温かい励ましに「みんなありがとう」と島男。バーで飲む高柳と桐野。「また初心忘れかけてるんじゃないの？」と桐野。高柳は「一度濁った水に綺麗な水をそそぎ込んでも，濁ったままなのかも知れない」と言う。桐野が一度全てを失ったんじゃないかというが，高柳は桜庭から持ちかけられた話をする。「戻るの？」と桐野。何も答えない高柳。 　鈴木ネジでは，精力的に電話を続ける高柳。そこへ島男がやってきて「昨日はすみませんでした。宮上商事の件，全てお任せします。せっかく作ったんですから売りましょう」と。暗い中１人考える高柳。一心不乱にパソコンに向かう島男。高柳は，オフィスの一角にあるネジに目を留め，その中の１つを手にする。まり子が，居間に来て，島男が夕飯を食べていないことを確認する。そして高柳の姿を見つける。島男が宮上商事用のプログラムを作っていると知ると「まだいいのに」と高柳。まり子は「レベルを落としたなりに最高のモノを作りたいって」と。高柳が「ちょっと話せるかな」と言うと，ちょっと考えるまり子。そして２人で島男の所へ。夢中でパソコンに向かう島男。高柳が声をかけても，返事もしなければ，振り向きもしない。まり子は「ね？・・あとは自然に下りてくるのを待つしかない」と。いつもそうだった。小学生の頃から，パソコンが大好きで，食事をする時間も惜しんでいた。食事の代わりにたくさんのゆで卵を作ってもらい，そればかり食べていて，栄養失調で入院したことも。まり子は「うらやましいですよね。自分のこと忘れるぐらい打ち込めるモノがあるって」。高柳が手にしたネジも，評判がいいけれど，量産はできない。だから貧乏だった。 　宮上商事に持っていく資料を手渡す桐野。他のみんなも吹っ切れない表情。「これはビジネスなんだ」と高柳。そこへ，スーツ姿の島男がやってきた。２人で宮上商事へ。途中，バス停で高柳がまり子から聞いた話を，島男に尋ねる。宮上商事で，商談をはじめるが，「ちょちょっといじってもらって・・いい具合に。大した直しじゃありませんよね。１日あればできますかね。ちょっと削るだけだから」と軽く言われると，「今，なんて言った!?」と激怒する高柳。「ちょっと削るだけだって？ふざけるんじゃないよ！あんた，こいつがどんな思いでこのプログラム作ったかわかってんのか？こいつはね，毎日毎日飯も食わずに，何十時間も１人でパソコンの前に座って書いてんだよ。何度も何度もやり直して，こだわって，こだわって，こだわり抜いて書き上げたモノなんだよ。何も変わらないだと？ちょっと削るだけ？冗談じゃない！こんな契約こっちからお断りだ！」と，飛び出していく高柳。島男は「すみません。うちの高柳，気が荒くて」と謝りながらも，すごくうれしそう。帰りのバスの中，うれしそうな島男の隣で，反省しきりの高柳。「そんなに落ち込むなら，言わなきゃよかったのに」と楽しそうな島男。「みんな怒るだろうなぁ」と高柳。鈴木ネジに戻って，ことの顛末を報告。「すごい怒鳴ってましたよ」とうれしそうに伝える島男。それを聞いたみんなは，「また営業行かなくちゃ」とうれしそうに言いながら動き始める。「またみなさんにご迷惑かけます」と島男。でも，誰も迷惑とは感じていない様子。そして１人残って反省している高柳に，「何しているんですか。高柳さんも仕事して下さい」と島男。 　フロンティアに向かう高柳。豊田は，驚きながら見送っていた。社長室へ入っていく。「お待ちしておりました」と桜庭。「あなたのイスです」と社長の席を示す。高柳は「あなたの言うとおりです。この会社を愛していました。この会社でいろいろなこと学びました。そして妙な男に会いました。その男は，何も持っていませんでしたが，純粋な信念だけは持っていました。くだらない男，理想ばかりを振りかざす男です。しかし，私は，その男とやっていくことに決めました。このお話は，お断りします」と，フロンティアを後にした。 　鈴木ネジでは，みんな「月間財務表」が映し出されているパソコンの画面を見て溜息をついていた。そこへ高柳が帰ってくる。みんなが今に集まり，今後の対策を考えはじめた。そこへ電話が鳴るが，まり子がとる。なにやら片言の英語で悪戦苦闘している。高柳は「フロンティアの株を売ろうと思っている。もうフロンティアに未練はない。一番良い使い道だろう」と。みんなは反対するが，高柳は吹っ切れている様子だった。このとき，やっとみんながまり子の様子に気づく。電話の相手は・・・ブライトオンライン。島男は，相変わらずパソコンに向かっていた。神谷が声をかけても，全く反応なし。島男の周りには，鈴木ネジのみんなが集まってきた。高柳「交渉はオレたちで進めよう」と。夢中でパソコンに向かう島男を，みんなが見守っていた。 　 　ブライトオンラインに採用された鈴木ねじのエージェント機能付き検索サイトは，検索エンジンシェアNO.1になったと言うニュースが流れる。そして，その鈴木ネジがフロンティアを買収。桜庭が代表取締役を解任され，フロンティアの新社長には，高柳が就任。 　新生フロンティア。高柳は，ゲートを通りながら，豊田に「ご苦労様」と挨拶。豊田は「お帰りなさい」と。「ただいま」と答える高柳。フロンティアに向かう高柳をうれしそうに見送る豊田。フロンティア内では，以前のメンバーが高柳を迎えた。社長室のイスに座る高柳。それを見守る社員達。 　フロンティア大躍進のニュースが流れる。 　教会。まり子の結婚式が行われる。フロンティアの面々も出席。まり子をエスコートするのは，島男。龍太は「次はお前らだな」と島男と香織に。まり子がブーケを投げる・・・。リオハでは，結婚パーティーが行われた。高柳と飲む島男。高柳は「オレは，お前と新しいフロンティアをやっていきたいと思っている。一緒に来てくれないか」と言うが，「すみません。僕は鈴木ネジで，僕自身の仕事を続けます」と島男。「そういうと思った」と高柳。そして島男は「また新しくておもしろいこと思いついちゃったんですよぉ」と高柳に話し始める。みんなが，楽しそうに談笑している。その中には，ブーケを手にする豊田の姿も。 　帰り道。ブーケを手にしている香織と島男。ブーケは豊田がどうしてもと，香織に渡したらしい。香織「まり子さん，キレイだったなぁ」。「龍太も幸せそうだったね」と島男。香織は「みんな幸せそうだった。島男さんも。そして私も」と。「香織さん」と言った島男は，香織にキス・・・。 　 　５年後。学生の就職人気企業No.１になったフロンティア。１人の社員が，高柳に「Linux系のモバイルOSで，新たに特許を申請した会社があります」と報告する。「どこだ？」と高柳。その社員は「町工場みたいな所です。我々の敵ではないですよ・・・鈴木ネジ」と言う。あのときのメンバーはうれしそうに聞いている。「アイツが来たんだ」と高柳。そしてその社員に「少しの動きも見逃すな。何かあったら必ず報告しろ。鈴木ネジを侮るな」と命ずる。その高柳のデスクの上には，あのときの記念写真が。社長室の窓から外を眺め「鈴木島男・・・」とつぶやく高柳。 　下町の鈴木ねじ。以前と同じように，昔の従業員が戻ってきてネジを作っている。龍太＆まり子が，以前と同じように刺身を持ってやってくる。でも，前と一寸違うのは・・・工場の置くには，綺麗なオフィスが。そこでは，香織が働いていた。まり子が「お兄ちゃんは？」と言うと「またなの」と香織。３人で仲良く話している居間の上では・・・相変わらず夢中になってパソコンに向かっている島男。そしてその画面には，鈴木ネジ.net創業時の記念写真が・・・。

第１０話「告白」 　 　島男の部屋。寝ていた島男は，目覚まし時計を見て飛び起きる。慌ててスーツを探す・・・ハッと，もう出勤する必要がないことに気づく。１階に下りていくと，すでにまり子は出勤。食事だけが用意されていた。高柳のマンションには桐野がやってきた。パソコンとたくさんの資料に囲まれ，ソファーで眠ってしまっている高柳。「みっともないと思うなよ。また働こうと思っているんだ」と言う高柳。桐野は「そっ」と答えただけだった。 　関東中小企業投資育成株式会社。話を聞いてもらおうとする高柳だったが，ここは実績に対して投資をしてくれる所。「今のあなたにはどこもお金を貸さないでしょう・・・事業パートナーがいればね」と言われてしまう。どこに行っても，高柳の起業についての話を聞いてくれるところはなかった。あのロイドブラザーズに逆らうことはできないとも言われた。高柳がすでにいろいろと動き出す中，島男は家でダラダラ無気力に過ごすだけだった。高柳は，あの茂田商事へ入っていく。まだ島男が警備員だったころ，高柳がたった２分でフロンティアとの契約を切った会社だった。茂田社長に頭を下げる高柳。社長は「よくもまぁいけしゃあしゃあとよく来れましたね。一時は首をくくろうと思いましたよ」と言って，高柳を追い出す。夜になり，高柳が「どいつもこいつもバカばかりだ」と文句を言っていると，桐野は「まだわかってないのね。だれも王様扱いしてくれないわよ。スタートラインに戻ったのよ」と。 　フロンティアでは，神谷と宮沢が，フロンティアパブリッシングの印刷会社の売却先について話し合っていた。今予定されているところでは，従業員の雇用保障がなかった。「あいつならどうするかなって思ってさ」と神谷。「雇用条件のいい売却先を探すんじゃないでしょうか。外を駆けずりまわって」と答える宮沢。神谷が「宮沢」と言っただけで，「わかりました。探してみます」と動き出す宮沢。その時神谷は，社長室に呼ばれた。今まで神谷が進めてきたプロジェクトを，なかったことにしてしまう橘社長と桜庭。リオハでは，宮沢が「高柳社長の時も，アイランドの時もオレたちの自主性に任せてくれたところ多かったですからねぇ」と愚痴を言う。裕美は「今になってわかるありがたみね」と。みんなの会話を聞いていた豊田は香織に「アイツにあったら言ってください，いつでも待ってる戻ってこいって」と伝言を頼む。「私もって」と守子も。 　島男は，以前のように３人の団らんに戻っていたが，無気力なまま。まり子と龍太が明るく振る舞い，旅行雑誌を見て楽しい雰囲気にしている。しかし，島男は全然話に乗ってこない。そこへ香織がやってきた。まり子と龍太は家の中へ迎え入れようとするが，「香織さん，忙しいんだって」と止める島男。「そこまで送っていきます」。雨の中，歩きながら話をする。島男「何の用ですか」。香織が電話にも出てくれず心配できたといい，リオハでの伝言を伝えるが「行けませんよ。どんな顔していけばいいんですか」と島男。香織が「みんな寂しがっていますよ」と言うと，「そうやってみんなで笑いモノにしようとしてるんですか。利用されてるのも気づかずいい気になって，社長面して，あなたに命令していた男ですよ」卑屈になる。「昔の島男さんが，そんな人じゃなかったわ」と香織。「やめてください，そういう言い方」と島男。そして「フロンティアの僕に興味があったんですよね。もう会うのはやめにしましょう」と去っていく。部屋に戻った島男は，真っ暗な部屋の中で１人・・・。 　満員バスの中に高柳の姿が。疲れ切ってマンションに戻ると，桐野がマンションの解約の手続きは済んだと報告する。過去の取引先のリストを手渡し「フロンティアの株を売ればこんなに苦労しなくてもすむのに」と。「アレはまだだ」と高柳。ワインのコレクションもオークションで売ると。"オークション"というお言葉に島男のことをも出す桐野。「１つのお店のためにあんな一生懸命な人ってなんか新鮮だったわね」。フロンティアでは，宮沢は神谷に印刷会社の売却先について報告していた。「もう少し探してみます。今できる最大限の努力がしたいんです・・・ってアイランドなら言うんじゃないですか」と宮沢。そんな会話を聞いている香織のデスクには，あのロボットがあった。 　家でぼーっとテレビを見てる島男。玄関のブザーが鳴るが，香織とわかると出ようとしない。そこへまり子が帰ってきた。香織はまり子に箱を手渡して帰っていった。家の中に入り，島男の姿を見て驚くまり子。箱を渡そうとしても受け取らない。「会いたくないんだ」と言う島男は「またネジ工場はじめるよ。またネジを作るよ。また１から出直して，１個２円のネジを作るよ」と。するとまり子は「ダメだよ！今のお兄ちゃんにネジ作らせないから。逃げてるだけでしょ！」と反対する。高柳は，今日も交渉がうまくいかず疲れ切って戻ってきた。「以前，鈴木島男に言ったことがある。お前がフロンティアの看板背負ってるから仕事できるんだって。看板で勝負してたのは，オレの方」。ビジネスパートナーも見つけられず，もう潮時だと。すると桐野はこんなことを言い始めた。「今まであなたのことで誰にも嫉妬したことないと思ってたけど，ホントはいるの。鈴木島男・・・」。自分の利益になることだけにしか興味がなかった高柳が，鈴木島男と出会ったとき「おもしろい」と言った。「これほどの賛辞ってある？私は島男君に嫉妬した。あきらめる前に，やり残していることあるんじゃないの」。 　ごろごろと過ごす島男。玄関のブザーが鳴る。高柳だった。「バカにしに来たんですか。僕のこと恨んでますよね。だってフロンティア奪ったのは僕ですよ」と島男。高柳は「それはロイドの桜庭だ。お前じゃない。それがロイドのやり方だからな。ロイドは，人を人ではなく道具のように扱う。会社は，人間ではなく株でできていると本気で思っている」。「高柳さんも同じでしょ？」と島男。「あなたが言ったんですよ。金で買えない物はないんでしょ。今さら違う何って言わせませんよ！」。高柳は「お前，どう思う？」と。「わかりませんよ」と答える島男。高柳は「買えない物は・・あると思う。それをお前から教わった」。「ばかばかしい。おかしいですよ。あなたの口からそんな言葉がでることが」と島男。それでも高柳は「オレは変わったんだと思う」。「変わりましたよ。僕もあなたも。僕達は，ただの負け犬ですから」と卑屈になる島男だが，高柳は「お前は負け犬かも知れないが，オレは負け犬じゃない。勝負は９階裏で終わるんじゃない。あきらめたときに終わるんだ。それもお前から教わった。オレはまだあきらめちゃいない」。 　フロンティアに，大喜びで戻ってくる宮沢。雇用条件の良い売却先を見つけたと，神谷に報告する。「これなら社長も文句言わないだろう」と神谷。しかし・・・。社長に報告すると，却下されてしまった。神谷が「私に任されてたはずです」と主張するが「勝手に動かれては困ります」と橘。実は，権道とのつながりで，最初から売却先は変更できなかったのだ。「そんなことで従業員達が路頭に迷ってもかまわない言うんですか」と神谷。もちろん，橘も桜庭もそんなことは全く考えていない。受け入れられないことがわかると，胸の社員証を取り外し「やめさせていただきます」。社長室を出ると，荷物をまとめはじめた。宮沢が「お出かけですか」と声をかけると「やめた。フロンティアをやめた」とあっさり答える神谷。 　居酒屋で飲む，島男と龍太。龍太は，島男がまり子にネジ工場を再開すると言ったことを知っていた。島男は「人がもう１回やるって言っているのに・・他にやることないんだよね。オレにどうしろって言うんだよ。なんでダメって言うんだろう」。「ホントにまり子が何望んでいるのかわからねぇのか」と龍太。「お前が幸せになるってことなんだよ。そんな簡単なことなぜわからないかな。まり子のためにもさ，お前には幸せになる義務があるんだ」。部屋で一人考える島男。すると携帯が鳴った。桐野からだった。喫茶店で会う２人。桐野は「彼，今必死ではい上がろうとしてもがいている最中なの。島男君，高柳を助けてあげて。彼，孤独すぎるわ。高柳ね，あなたとフロンティアで初めてあった日に，おもしろいって言ったの。私，高柳のことだけ考えて，あなたのこと考えないで言っている。無茶苦茶言っているのわかっている。それでも私は高柳に立ち直って欲しい。あなたに高柳を助けて欲しいの。ただあの人に幸せになって欲しいから。それが私の幸せだから」と訴えた。桐野と別れた後，みんなの言葉を思い出しながら街を歩く島男。とあるビルのロビーで，必死に頭を下げる高柳の姿が。島男に気づいたが，何も言わず去ろうとした。すると島男から「待ってください」と声をかけた。「どうして家に来たんですか。どうして会いに来たんですか」。高柳は「オレはお前と一緒に働きたかったんだ。一緒に新しい会社やっていきたかったんだ。でも，もういい」と。去ろうとする高柳に，島男は「さっき七海さん尋ねてきました。助けて欲しいって言われました。冗談じゃないです・・・助けてもらうのは，僕の方です」。 　家に戻ると，まり子に「オレ，しばらく高柳さんの手伝いすることにした。だから，当分，工場再開できないや。ごめん・・・まり子，いろいろごめんな」と告げる。それを聞いてうれしそうなまり子。このとき，やっと香織が持ってきた箱の存在に気づく島男。あけてみると，あのロボットが入っていた。そして，香織との出会いからのことを思い出していた。「オレ，ちょっと出てくる」。香織の帰りを待つ島男。やってきた香織に「謝ろうと思って。ごめんなさい，ひどいこと言って。ごめんなさい，追い返したりして。ごめんなさい，会いたくないなんて言って。ロボット届けてくれてありがとう」と。香織は「島男さんの大切なモノだから」。「もし，あなたが許してくれるなら，香織さん，あなたも僕の大切な人です」と島男。見つめ合う２人・・・。 　ヒルズを見上げる島男と高柳。高柳「あれはオレの会社だ」。島男「短い期間でしたが，僕の会社でもありました」。不審人物じゃないかと疑う新人警備員に，豊田は「あの２人はいいんだ」と，うれしそうに２人の姿を見守る。島男が「彼らと闘うことできるんでしょうか」と言うと「できるさ。オレとお前の２人だからな」と高柳。すると「３人ですよ」と言う声が。神谷だった。「僕も一緒に連れてってください」。鈴木ねじの前に，トラックが止まっていた。あのネジ工場が，事務所に変わっていた。高柳・桐野・神谷・まり子，そして龍太までが準備に忙しい。楽しそうにしながらも，神谷は「敵が大きすぎて，考えるだけでもめまいがしそうですよ」。すると島男は「大丈夫ですよ。ロイドが持ってなくて僕達が持っているモノがあります」と。あの清川堂の清川が，ネットショップを立ち上げるなら一緒にやらせて欲しいと連絡してきた。「味方はいます。ここからもう１度はじめるんです」と笑顔の島男。清川堂からの差し入れの和菓子をみんなで食べる。すると，事務所の前に香織がやってきた。香織は「白川香織と言います。フロンティアを退職して参りました。御社で雇っていただけませんでしょうか」と自己紹介をする。「はい」と笑顔で答える島男。フロンティアの社長室では，香織までやめていったことについて話していた。ただ，旧フロンティアのメンバーは情をはさみすぎだと。橘が，新会社のことを持ち出すと，桜庭は「今さら何もできませんよ，あの２人には」。桜庭が見下ろす下町にある，新生"鈴木ねじ"の前で，記念写真をとる面々。島男の手にはあのロボットも・・・。

第９話「愛を止めないで」 　 　フロンティアの臨時取締役会が開かれる。新陣営の紹介が行われるが，橘副社長以下，取締役はロイド側の人間が３分の２を越えてしまった。神谷は島男に忠告するが，「心配いりませんよ。敵ではないし，利害も一致しています」と気にしない島男。社長室に戻ると，約束していたフロンティアパブリッシングの種田社長が待っていた。子会社の中で唯一の赤字を出しているフロンティアパブリッシングに，１ヶ月の猶予を与えると。１ヶ月で赤字解消は無理だと種田が訴えると「高柳社長なら，この瞬間にクビを切られてますよ」と島男。種田が去った後，桜庭は「１ヶ月でどんな成果をあげるんでしょうね」と言うが，島男は「あがらなければ切るまでですから」。「それじゃ今切るべきじゃ」と言う桜庭に「フロンティアのことは，社長の私に任せてくれませんか」と島男。 　鈴木家の団らん。島男の茶碗は用意してあるが，全く帰ってこない日々が続いていた。六本木のホテルに泊まっているという。島男は，桜庭に用意された高級マンションを案内されていた。島男が「どうして高柳さんと同じマンションなんですか」と言うと「他意はないです。利便性を考えて・・・高柳さんより上の階を用意しました」と桜庭。神谷は，高柳のお見舞いに行くが，高柳自身には会えず，桐野と話す。神谷は「七海さんがやめるとは思っていませんでした」と言うが，すぐ「いえ，ホントは思っていました」と。桐野が「島男君，元気？」と尋ねると，ちょっと考えながら「はい」と答える。企業評価も上がっていた。「よかったわね」と桐野。 　フロンティアの社長室。香織が島男に，種田が亡くなったことを告げると「誰？全然覚えてないんですけど」と言う島男。香織が説明すると「じゃ，お葬式は神谷さんにお願いしましょう」と言うだけ。香織が「それだけですか!?」と言っても，もう島男は自分の就任披露パーティーの話に変えてしまっていた。種田の葬儀で，神谷は種田の息子を見かける。まだ小学生だった。種田は，夜遅くまで働き，頭痛を訴え運ばれたときには手遅れだった。 　病院の屋上に，高柳の姿が。病室を訪れた桐野が，高柳の姿がないのに気づき，探しに来る。「飛ぶの？全部終わらせて楽になるの？」と桐野。２人で病室に戻る。桐野が「あなたらしくないじゃない」と言うと「全て終わったんだ」と高柳。「フロンティアがオレにとって全てだった」。「新しい何かを手に入れる為に，古いモノを捨てただけでしょ」と桐野。そして「行きたいところがあるの。つきあってくれる？」。 　鈴木家に島男が戻ってきた。島男は「引っ越さないか」とまり子にマンションに一緒に来るように説得する。まり子はこの家があるのにと言うが，「社長に相応しい住むべきとこってあるだろう」と島男。龍太は「おかしいだろう。お前いろいろがんばっているけど，この家のためだったよな。良く思い出してみろ。今は目標達成」と言うが，島男は「冗談じゃない，目標達成していないよ」。龍太に「本末転倒だろう」と言われると「勝手にしろ！オレ，引っ越すから！」と出ていってしまう。リオハでは，豊田が「島男は，遠くにいっちまったなぁ・・・もう一緒に飲むってことないんだろうなぁ」とつぶやくと，香織は「そんなことないと思います。今悪い風邪にかかって，高熱を出しているときなんです。熱が冷めて，また周りがよく見えるようになったら，元の島男さんに戻ると思うんです。信じています」と。「ホントに好きなのね」と守子。 　１枚の絵の前に，高柳と桐野。２人が出会ったのも，この絵の前だった。同じ銀行に勤めていた２人だったが，行内でも有名だった高柳に桐野が声をかけた。高柳が好きだと言ってよく見ていた絵。その当時は，高価な顔料を使って描いた「青」がキレイだと思っていた。「結局，芸術もお金次第だなぁって」。今，改めてその画を鑑賞し「こんな綺麗な絵だったんだ」と高柳。 　島男は，桜庭と橘と一緒に料亭で権道と会食。会食の前に，披露パーティーの出席者の中に自分たちの利害と合わない人がいるので「ご相談を」と桜庭に言われると「社長である私が選びます。口出しは無用ですよ」と島男。会食で持ち出された話は，人工衛星を利用した通信インフラの入札に指名する変わりに，秘書の緑川を雇い，売り上げの15%を給料として振り込むというもの。その給料が権道の活動資金になる。島男は「その条件ではお受けできません。権道先生は，私の人気を利用しようとしただけですよね。世間を信用させたいんでしょ。この話は，私なしには成立しない話なんです。先生にお支払いできるのは，せいぜい5%です」と断る。会食後，桜庭は「いろいろなことを理解していらしゃらないようですね。私の面子をつぶしたんですよ」と島男を責める。それでも島男は「面子で仕事をしているわけではありませんから。政治家の言いなりになる時代は終わったんですよ」。車で去っていく島男を見送りながら，桜庭は「鈴木島男も潮時だな」と橘にロイド側の取締役を集めるよう指示する。 　島男が帰ってくると，マンションの前に龍太が待っていた。高級マンションのすごさに驚く龍太。島男は「お前も来いよ」と言う。龍太が店を理由に断ると「この近くに店を買ってやるよ」と言う島男。「全然わかってないな。オレの店が好きなの」と言う龍太。そして「これからどうするんだ。大会社の社長になってさ，こんな家住んで，もうやりたいことないだろう」と龍太が尋ねると，「こんなの序の口だよ。やりたいことが山ほどあるんだ。・・・金ができたらさらにでかくする方法を見つける。フロンティアはいくらでもでかくなれる」と野望を語る島男。龍太は「きりがないだろう。今のお前は何でも飲み込む餓鬼と一緒だな」と。「お前やっぱりビジネスにむいてないよ」と島男。 　朝，桐野が目を覚ますと高柳の姿がない。慌てて探し出す桐野。香織に連絡を取る。香織は，裕美に事情を話し，病院に駆けつける。「間違ったのかも知れない」と不安がる桐野。そこへ高柳が戻ってきた。高柳は，１人父の墓前に向かっていた。病室の父の想い出。最後は父と握手を交わし，父は「ありがとう」と言っていた。桐野に「ただいま」と告げる高柳。「お帰りなさい」と応える桐野。２人を見守って，そっと去る香織。桐野が「どこに行ってたの」と言うと「父親の所」と答えた高柳は「もう大丈夫だ。今度は僕につきあってくれないか」。２人が向かったのは，フロンティア。「今の島男君が，あなたの言葉聞くかしら」と心配する桐野に，高柳は「それでも伝えなくければならないんだ」。社長室へ行き，島男と対面する。島男は「お加減いかかがですか・・で，今日はなんでしょう。いろいろ立て込んでいるんで，できるだけ手短にお願いしたいんですが」と。高柳は「鈴木島男，桜庭に気を付けろ。ロイドブラザーズは，企業を商品としか考えない会社だ。ロイドの興味はただ１つ。フロンティアの株だけ欲しいんだ」と忠告する。しかし島男は「そんなことありませんよ。桜庭さんのことはよくわかっています。なぜそんなこと言うんです？何かの戦略ですか？それとも未練ですか？」と突っぱねる。高柳が「自分の作った会社が，商品として売買されるのがいやなんだ」と言うと「あなたが長年してきたことじゃないですか」と島男。そして２人にパーティーの招待状を渡す。鈴木家のまり子と龍太の元には，招待状とパーティー出席用のドレス＆タキシードが届けられた。龍太は面白がってタキシードを着て写真を撮ろう何て言っているが，まり子は「返すの！」と無理矢理脱がそうとする。 　フロンティア前。桜庭と橘が密談している。橘は，ロイド側の取締役の確約は取れたと報告する。何かをたくらむ桜庭。定例取締役会が開かれる。島男の議長の下，予定された議題が終了すると，ロイド側の取締役から島男の解任動議が出された。ロイド側取締役は，３分の２を超えている。審議する必要もなく，結果は見えている。島男が「どういうことですか」と桜庭を問いつめると「あなたがいけないんですよ」と言う。「裏切るんですか」と島男。桜庭は「勘違いも甚だしいですね」。島男が「僕の能力を見込んで僕にフロンティアを預けたんじゃないですか」と言うと，「フロンティアが欲しかっただけなんですよ。あなたの人気を利用させてもらっただけ。あなたも自覚なさって太はずじゃないですか・・・おとなしく聞いていればいいものを」。桜庭につかみかかる島男。冷静に「お疲れさまでした」と告げる桜庭。島男は，何も言わずフロンティアを出ていく。途中，宮沢が明日のパーティーについて話しかけるが何も答えない。エレベーターの扉が閉まる瞬間・・・「もう必要がなくなりました」と島男。 　島男が外に出ると，種田の息子が待っていた。「お父さんを返せ！お前のせいで死んだんだ！」と叫ぶ少年。「毎日毎日，お父さんは苦しんでたんだよ。お前が，売り上げ売り上げってお父さんを責めるから。だからお父さんは倒れたんじゃないか。お父さんを返せ！」と泣きながら島男を責める少年を，ただ黙って受け入れるしかない島男は，ヒルズを見上げる・・・。テレビでは，島男解任のニュースが流れた。まり子と龍太，高柳と桐野，それぞれテレビで解任を知った。島男がマンションに近づくと，すでに多くの報道陣が押し寄せていた。気づかれないようにその場を去る島男。呆然と街をさまよい，安いビジネスホテルに落ち着く島男。暗い狭い部屋のベッドで，胎児のように丸くなって休む島男。フロンティアでは，ぼーっと社長室を見ているだけの宮沢に神谷が声をかける。その神谷も，社長室を眺め，島男がフロンティアにやってきてからのことを思いだしていた。リオハでは，豊田が「島男ぉ〜」と寂しそう。「未練がましい人嫌い」と守子。豊田は「平気なのか」と言うが「鈍感な男ってもっと嫌い」と守子。 　鈴木家。島男とは連絡が取れなかった。いても立ってもいられないまり子が外に飛び出すと，島男の姿が。まり子も龍太も，今まで通り島男を受け入れた。龍太の刺身に手をつける島男。何も変わらないように，いつも通り話をし，励ます龍太。泣きながら食べ続ける島男。まり子が泣きながら「お帰りなさい」と言うと「ただいま」と泣きながら応える島男。龍太は「泣け」と言うが，まり子の方が号泣すると「お前は泣くな」と。その時玄関のブザーが鳴る。まり子が外に出ると，今度は香織の姿が。香織が家の中にはいると，島男の後ろ姿が目に入った。 　島男の部屋には，まだあの古いパソコンが。夜中，起きだした島男は，工場の中でネジを握りしめていた・・・。

第８話「ヒルズの新社長」 　 　すっかり顔つきも変わってしまった島男。次々と大きな仕事をこなし，パーティーでも有名人。あちこちから声がかかる。ビジネスネットワークの"マン・オブ・ザ・イヤー"に選ばれるほどになった。その授賞式の後，島男の帰りをずっと待っていたまり子と龍太。ささやかな料理・ビールを用意していた。島男が変えてくると，クラッカーで迎え，さあ祝宴を・・というところで，島男の携帯が鳴る。仕事の話だった。島男はそのまま部屋へ。まり子が声をかけても返事もない。島男の部屋には，あの昔からのパソコンが隅に追いやられ，新しいパソコンに向かって必死に仕事をする島男の姿が。病室のベッドに横たわる男，それを見守る少年・・・高柳は病床の父を思い出していた。 　フロンティアの会議。島男が，ユニエンターテイメントとの提携を提案。みんなは島男の提案に賛成だったが，なぜか高柳だけが猛反対。高柳と島男の対立が始まった。高柳は「この仕事は，利益を生まないって言っているんだ。わかったか」。しぶしぶ「はい」と答えた島男は，高柳をにらみつけていた。会議の後，窓際でタバコを吸う神谷と宮沢。宮沢は「鈴木取締役になってから，顔変わったと思いません？」と。「一生懸命なだけだろう」と答える神谷。「時々恐いんですけど」と言う宮沢は「神谷さん，タバコやめたのに」。「お前も」と神谷。２人は，溜息をつくようにタバコをふかす。香織との食事中もイライラしている島男。香織に「恐い顔しています」と言われてしまう。島男は，ミケーレの件以来はまったというオペラに香織を誘う。香織も喜んで承諾する。龍太が，鈴木家に行くと，あの谷崎が尋ねてきていた。龍太が来ると帰っていく。まり子は「よりもどしたいって」と表面上はうれしそうに伝えるが，なにか様子が変。実は，谷崎は仕事で島男との"コネ"が欲しかっただけだった。 　リオハでは，島男が社長の愚痴をみんなに言っていた。守りに入ってきたんじゃないかと。「やってること普通になってきちゃったんですよ」。神谷は「今の鈴木に，それぐらいの勢いがあるってことだよ。高柳社長が普通に見えるぐらいの」と。でも島男は「違いますよ。何かを怖がってますよ。あの人は」。「それは・・」と神谷は言いかけ「なんでもない」と。そんな様子を，何も言えず黙ってみているだけの豊田の姿が。その後フロンティアに島男が戻ると，桐野が仕事をしていた。「初めてあったの，こんな時間だったわ。あなたは警備員だったけど」と桐野。「そうでしたっけ」と島男。桐野が「忙しそうね」と言うと「時間がないんです」と言う島男。必死に働いて「出し抜いてやるんです」と言う。桐野が「どなたを？」と尋ねると「敵ですよ」と答える島男。そんな島男をじっと見つめる桐野。家に帰ると，まり子が寝ずに待っていた。しかし，まり子の話を聞こうともしなかった。 　フロンティアの会議。スターゲートスタジオとの人気番組シリーズ配信の新プロジェクトを提案する島男。また反対する高柳。日本の企業がハリウッドに手を出して成功した試しがないと。「何を恐れているんですか」と島男。高柳は「リスキーな仕事はやらない」と言うだけ。島男「僕の計算が間違っていますか？計算し直していただいても結構です」と挑戦的。「口のきき方に気を付けろ」と高柳。「どうしてもやりたいんだったら自分の会社でやれ」。宮沢までもが「社長少し変ですよね」と言い始める。島男は，宮沢にこのプロジェクトを進めるように言う。高柳をもう少し説得し，プロジェクトが引き返せない状態の所まで引き延ばせば，ダメといえないだろうと。社長室では，桐野が高柳に話しかけていた。「あなたらしくないわね。島男君にだけムキになって反対しているみたい。そんなに島男君，恐い？」。「オレはアイツにいじわるをした」と言う高柳に，桐野は「面白がって育てたのはあなたなんですからね。責任とって下さいね。最近の彼，あなたそっくり。まるで親子みたい」。２人はモンスターを作ったフランケン博士だと。高柳が「この先どうなっていくのさ」と言うと，「あなたと同じことしたがるんじゃないかしら」。高柳は「フランケン博士の最後知ってるか？モンスターに殺されるのさ」。「このまま黙って殺されるの？」と桐野。「まさか」と高柳。 　鈴木家。落ち込んでいるまり子を見守る龍太。そこへ，島男が帰ってくる。まり子が，谷崎の話をするが，「何のメリットもないんだよね」と相手にしない島男。龍太が「妹の頼みだろう」と言っても，「ビジネスに私情はさまないことにしてるんだ」と答えるだけの島男。そんな島男を殴り倒す龍太。「まり子の気持ちを考えろ！お前，全然わかってねぇよ！」。島男は「オレだって忙しいんだよ！堂でも良いことにつきあってられないんだよ！」。龍太が「まり子のことどうでもいいのかよ」と言うと「なにわかってんだよ」と言い返す島男。すると龍太は「最近，鏡見たか？見ろよ。ひどい顔してっからよ」。 　スターゲートスタジオの小田切と会った島男は「順調に進んでいます」とうそを付くが，小田切にはすでに高柳から連絡が来ていた。島男が話しに来ても無視して欲しい，それはフロンティアとしてではないと。「残念です。私はフロンティアとではなく，鈴木さんと仕事をしたかったんですけど」と言う小田切。龍太が，いつものようにカツオを売っていると，谷崎が通り過ぎる。まり子と谷崎は，河原で話を。まり子は，まだ島男に話をしていないとうそを付く。そこへ，カツオを持った龍太がやってきて，谷崎をカツオで一撃。「お前の魂胆見えてんだぞ！まり子を不幸にするヤツは，許せねぇ！」。するとまり子は「谷崎さんがこんなに情けない人だとは思いませんでした。二度と尋ねてこないで下さい。さようなら」と言い，龍太と一緒にその場を去る。龍太に「ありがとう」と。フロンティア。夜，残っているのは島男と香織。香織が「何かお手伝いしましょうか」と声をかけるが，島男はパソコンから顔を上げようともせず「今日はもう帰っていただいてかまいません」と言う。香織は「今夜の・・」と言いかけて「失礼します」と寂しそうに帰っていく。その手にはチケットが握りしめられていた。 　高級レストランに，島男が高柳を招待。島男「あなたの好きなシャンパンです・・1961年。このシャンパンを愛したヘミングウェイが亡くなった年です」と。そのヘミングウェイは，自殺したと言われている。「文学の最高峰のノーベル賞を手にした男でも，自ら転落することあるんですね」。スターゲートスタジオの小田切と話をしたと伝える島男。「じゃ，わかったな。答えはNOだ」と高柳。すると島男は「僕が自分でやります」と言い出す。高柳は「偉くなったもんだな。鈴木島男」。島男は「あなたがそう育てたんですよ。高柳徹さん」。高柳「あの途方に暮れていたネジ男が」と，今までの島男を思い出す。「でも，僕はここまでやってきました」と島男。高柳は「自分の力だけでここまで来たのか。フロンティアの看板背負っているから，仕事ができるんだよ」と。でも島男は「あなたは，ホントわかってないんですね。現状認識が全然間違っていますよ。いいですか。スターゲートスタジオは，フロンティアに仕事を頼んだんじゃない。僕に頼んだんですよ」と言う。そんな島男に「お前，クビだ」と高柳。 　２人は別々に動き出す。島男は，早速ロイドブラザーズの桜庭に電話をかけ，独立の話をうけると伝える。高柳は，神谷に電話をかけ，島男をクビにしたことを伝え，株主に連絡を取り株の防衛策を考えるように命ずる。神谷はそこまで心配しなくてもと言うが「オレがヤツだったら必ずやる」と高柳。フロンティアはあわただしく動き出した。一斉に株主に連絡を取る。島男がアクセスできないようにアカウントを消去し，さらに島男のパソコンの履歴を調べる。一方，島男は桜庭と会う。ロイドブラザーズが全面的にバックアップすると約束。フロンティアでは，高柳が心配しすぎているんじゃないかという声が。高柳は，ネクサス証券の中江に島男のバックを調べさせる。続けてあちこちとコンタクトをとる。宮沢は，今回は膨大な資金が必要だからさすがに島男でも「今回は無理」と言うが，桐野は「そうかしら。彼は何度もそれを実現してきた」と。高柳は，直接大株主に会いに行く。１軒目は，すでに来客の後。誰が来たのか尋ねると，答えに困る株主。続いて連絡の取れない清水会長の元へ。しかし島男と外出した後だった。フロンティア内は大混乱。中江から連絡が入る。島男のバックはロイドブラザーズと聞き，呆然とする高柳。その日の夕方。桜庭は島男に「終わりましたよ」と告げる。握手を交わす２人。 　テレビのニュースでは，フロンティアが買収されたと伝えている。買収した会社Ｓ＆Ｉコーポレーションは，ロイドブラザーズの完全子会社で島男が社長。フロンティアの正面入り口では，豊田がいつものように警備しているが，なにか複雑な表情。そこへ，多くの報道陣に囲まれてやってきたのは島男。後ろから桜庭が見守っている。颯爽とフロンティアに入っていく島男に，みんなが頭を下げる。そのまま社長室へ行く島男。高柳「ずいぶん待たせるな。ハワイでそんな顔してたら，手帳受け取ってすぐ追い返したろうなぁ」。島男は「悪く思わないで下さい。『世の中金で買えない物はない』。あなたはそういってましたよね。だからフロンティア買ったんです。あなたの言葉，実践しただけなんですよ」と言い放つ。高柳は「イス，取りかえた方がいい。リクライニングのネジがゆるんでいるから」と席を立つ。「ご心配なく。ネジは得意ですから」と島男。「そうだったな」と高柳。「じゃあな」と社員に言って，１人フロンティアを去っていく高柳。社員達は黙って見送る。「おめでとうございます。鈴木島男社長」と桜庭。 　ヒルズを出てきた宮沢と神谷。「いったいどうなっちゃうんでしょうね」と宮沢。すると後から来た桐野が「株価もうなぎ登りだし，心配することない」と言って去っていく。「クールですよね」と宮沢。「神谷さん，どうするんですか。やめるんですか」。神谷は「オレは，高柳社長に育ててもらったわけだし・・・」。２人でヒルズを見上げる。裕美は，香織に「今回は完敗。あなたの方が見る目があった」と言う。香織が高柳の様子を聞くが，もう連絡は取っていないと。バーで１人飲む高柳。移動中の車の中でも，ひっきりなしにパソコンに向かい続ける島男。雨の中，傘も差さず１人で歩く高柳。向こうから来た男とぶつかる。去っていく男の顔を見て「森村」とつぶやく。ふと見た脇腹に，ナイフが。崩れるように倒れる高柳。その騒ぎの側を一台の車が通り過ぎる。その車には相変わらずパソコンに向かっている島男の姿が。 　フロンティア社長室。島男は神谷に「新体制ではやっていけないとおっしゃっているそうですが，僕としては一緒にやって欲しいと思います」と告げる。神谷は「この会社に来たとき，変なヤツだと思った。同時におもしろいヤツだと思った。今のお前はあのときの鈴木島男じゃない。それが少し残念だ」と言う。「僕は心の思うままにやってきました。だから他の人がそうであって当然だと思います。どうしますか」と島男。神谷は「よろしくお願いします」と頭を下げる。病室のベッドに横たわる男，それを見守る少年・・・今度は，自分が病室のベッドに横たわっている高柳。桐野が看病をしていた。「私は来てあげたわよ。あなたと違って。あなたが死にそうな時に。また新しいスタートラインに戻っただけじゃない」と。社長となった島男に，退職願を出す桐野。「わかるでしょ。私にはここにいる理由がないの・・失礼します」と，そのまま出ていってしまう。 　大きなバラの花束を持って，高柳のお見舞いに行く島男。高柳は「オレはお前に負けたんじゃない。ロイドの資金力に負けたんだ」。「負け惜しみですか」と島男。「今にわかるさ」と高柳。香織も小さな可愛い花束を持って，お見舞いに来る。ロビーで出会う２人。島男が「今晩久しぶりに食事に行きましょう」と誘うと「しばらく合わない方がいいと思います」と香織。島男は「社長になったからと言って，変わったわけじゃありませんから」と言うが「ホントにそうお思いですか？失礼します」と去る香織。 　リオハ。「僕は何も変わってないのにな」と島男。すると，対面して座っていた豊田が「ホントにわからねぇのか。ホントに食われちまったんだな・・・顔見てみろ」と。守子が，島男に赤ワインをサービスする。そのグラスに映ったゆがんだ顔を見る島男・・・。

第７話「ヒルズの頂点へ」 　 　島男が出勤しようと居間を通ると，カレンダーには家を明け渡す日（6/1）に印が付いている。母の遺影を見て家を出る島男。まり子は，出社前に龍太に会いに行く。会社に来たことを追及するが，龍太は「あれ，ダメだな。家族捨てる気ない。話を付けてやった。別れろ」と言う。「何勝手やってんの！アンタの顔二度とみたくない！二度と家に来るな！バカ！」と怒鳴って去っていくまり子。 　経済戦略フォーラム。パーティーの一角に人だかりができている。その中心にいたのは・・・島男。今までの実績に，注目が集まったようだった。次から次へと人が集まり，名刺を渡され挨拶をする島男。同業のイーワイヤード社長五十嵐も挨拶に来た。島男は「僕は何も・・」と戸惑うばかり。そんな中「独立とか考えたことないですか」と声をかける男がいた。その男は，ロイドブラザーズの桜庭。そんな島男が気になる高柳。パーティーが終わると，島男は香織と一緒にリオハへ。大量の名刺を見せる。香織は，五十嵐が挨拶に来たことを驚く。五十嵐は，高柳のことをライバル視していた。誰と挨拶したのかも覚えていない島男は，「社長のことどう思っているんですか？もう社長の下では働けないかもしれません。ものすごい後味の悪い仕事でした」。先日の東條貿易の仕事のことをずっと気にかけていた。そのころフロンティアでは，高柳が桐野に「鈴木島男，人気者だったよ」と報告していた。「今度はその人気を利用するの？」と桐野。「そうさ」と高柳。実力は，あるレベルを超えたらほとんど変わりがない。あとはどんな飾りが付いているかがの違い。「同時に危険もあるでしょ。ヘッドハンティング」と桐野。高柳は「ばかばかしい。張り子の寅だぞ」と言うが，桐野は「相手も人気や名声大切なの知っているでしょ。それにそうとう悩んでたみたい，東條貿易の件」と。「ごく当たり前のビジネスじゃないか」と気にしない高柳。「そういう人なのよ，鈴木島男って。あれだけ人脈を持って人気者になってしまった島男君にもしやめられたら・・・」と危惧する桐野。 　リオハ。桜庭の名刺に目を留める香織。直接は知らないが，有名な人物だった。独立の話を持ちかけられたが「そんなに思い上がっていません。自分が１人でやっていけるわけない。そんなに甘くはないですよ」と島男。島男が家に帰ると，まり子が荷物をまとめていた。「いつか買い戻せるかな」と言うまり子に，島男は「古い家だから，取り壊されちゃうよ」と。「みんな私達の周りからなくなっちゃうね。次は何がなくなっちゃうんだろうね」と寂しそうなまり子に「もう何もなくならないよ」と島男。まり子は「このまま居座っちゃおうか」と言うが，島男は困ったような顔をしているだけだった。まり子も，どうすることもできないことはわかっている。島男を避けるように台所へ。そんなまり子の姿を見つめる島男。すると島男の携帯が鳴る。桜庭からだった。 　次の日，桜庭と会う島男。桜庭は，借金の肩代わりをするとまで言う。「買いかぶりすぎです」と島男。桜庭は「起業すべきです。独立しなきゃ，ネジ作っているのと同じなんです。高柳社長のやり方にご不満があるようですし，いかがですか？ロイドブラザーズが全面的に援助しますから」と食い下がる。それでも島男は「せっかくですが，僕は自分の身の程を知っているつもりです」と断る。フロンティアの会議室に呼ばれた島男。高柳は「オレのこと鬼と思ったか？こんなことやるなら，会社を辞めようと思ったか？」と質問する。「いいえ」と答える島男だったが，まっすぐ高柳を見られない。すると高柳は「取締役に推薦する予定だ。これでお前も経営者の一員になるんだ。どうだ」と言い出す。「困ります。そういう器じゃありません」と島男。「それに・・より偉くなっていくと言うことは，より社長の命令に従わなくちゃならない立場になるってことですよね。イヤなんです。この間のような思いするのは」。高柳は「家の方はどうだ。取締役になると，社員じゃなくなる。退職金が出るの知っているか？借金全て払える金額を用意しよう」と提案する。 　いつもの居酒屋で，龍太に相談する島男。すると龍太は「いい話じゃないか」と。でも島男は「高柳社長の下で働きたくないんだよ」と。「まり子の帰りが遅いの何でか知ってるか？」と言う龍太。まり子は，会社が終わった後，銀座のクラブで働いていた。「何きれい事言っているんだよ。家のこととか，まり子のこと考えろ。悩んでる暇なんかねぇだろう。それで確実に幸せになるヤツがいるんだよ，目の前に」と諭す龍太。そのまり子が働くクラブに，谷崎がやってきた。まり子は，龍太の無礼を謝罪する。「変なヤツだな」と言う谷崎。龍太は，いきなり土下座して，事情はわかるが何とかよりを戻してやってくれと頼んだという。しかも，大量の鰹の刺身を持って。「あのバカ」とうれしそうなまり子。龍太が酔っぱらって帰ると，家の前でまり子が待っていた。「昨日はたたいてゴメン」と謝るまり子。家では，島男が真剣な顔をして何かを考えていた。まり子が帰ってくると，「ホントはバイトしているんだろう。ゴメン」と頭を下げる島男。「何も知らなくて。もう心配しなくていいんだ。高柳社長が，全額都合してくれるんだ。もう，この家を明け渡さなくていいんだよ」と伝える。まり子「ホントに？もうお金のこと心配しなくていいの？」。「うん」と島男。まり子「もう住むとこの心配しなくていいの？」。「うん」と島男。まり子「ホント？」。「うん」と島男。まり子「ホントに？」。「うん」と島男。泣き崩れるまり子。そんなまり子の姿を見て涙ぐむ島男。 　次の日。「謹んでお受けします」と取締役になることを受けた島男。高柳は「これからはパートナーってことだ。今までとは全く違う仕事が要求される。取締役というのは，経営者だ。覚えておけ」。でも島男は「取締役になっても，僕のやり方でしかできないと思いますけど，よろしいでしょうか」と言う。「かまわんよ」と高柳は，社長室を出，社員に報告する。香織が島男の秘書になり，宮沢も島男の元で働くことに。みんなに祝福される島男。神谷は「おめでと。このやろ，むかつくような出世しやがって」と言いながら「でも，ホントに大丈夫か」と心配してくれている。「はい」と答える島男。社長室にやってきて「とんでもない手を思いついたものね」と言う桐野。「でもこのまま従順な僕になるかしら？肩書きや報酬さえ与えれば，普通の人間はおとなしくなるけど，彼はそういうタイプじゃないものね。一筋縄ではいかないわ。今まで見たこともない種類の人間だもの。彼は例外かも」と。でも「例外はない。ビジネスに麻薬のような力がある。知らず知らずのうちに，その力に取り込まれて行くんだ。持てる者はますます欲しくなり，勝てる者は勝ち続けなければ気が済まず，二度と負けられなくなる。そういう底なしの欲望に突き動かされて生きているんだ」と言う高柳。「彼がそうなると思う？」と桐野。「なるさ，絶対。それから逃れられる人間なんていない。例外はないだ」と言いきる高柳。 　鈴木家。まり子が仏前に島男の出世を報告する。島男が家の前に出ると，大きな車が迎えに来ている。車でヒルズに行くと，今度は香織と宮沢が出迎えに出ている。颯爽と出社する島男。みんなが「鈴木取締役，おはようございます」と挨拶をする。あの豊田も「島男取締役，おはようございます」と，うれしそうに見守っていた。取締役会に出席する島男。みんなの前で紹介される。その後は，雑誌や新聞・テレビ等の取材が殺到。戸惑いながらも取材を受ける島男。鈴木家では，テレビに島男が映ると大騒ぎをするまり子と龍太の姿が。 　ギガワークスと言うＣＧ製作会社に宮沢と向かう島男。ギガワークスと共同出資して，映画製作の新会社を作るというプロジェクトを宮沢が進めていた。長谷川社長と会って話をした。次の日，宮沢は３億の予算プラスを願い出た。島男は，高柳社長に相談するが「お前が決めればいいんだよ」と言う。「でも３億ですよ」と島男が言うと，高柳は「それがお前の仕事だ。お前は10億・10億を一瞬で動かす世界に，最初の一歩を踏み出したんだよ。取締役と社員の決定的な違いは，株主と従業員に対する責任の重さだ。物事を判断の基準は，株主と社員に利益をもたらすかどうかだ。それを忘れるな。あとはお前が決めればいい」とアドバイスする。島男は，宮沢の書類をチェックする。正式契約をしていないのに11億も使っていることを心配するが，宮沢は「もう大丈夫です」と，島男が長谷川と会ったことで，確信を得た。判を押しながら「契約を急いで下さい」と言う島男。そこへ桜庭から電話が。取締役になり，借金もなくなったので独立はしないと言う島男。でも桜庭は，それは「この世界で通用するってことです。独立すべきです。自分で起業しない限り，全く変わらないんですよ」と説得する。それでも断る島男。「気が変わったら連絡下さい」と電話を切り，ヒルズを眺める桜庭。 　家では相変わらず３人の団らんだったが，島男は必死で今度のプロジェクトに関連した本を読んでいる。「最近はいつもこう」とまり子。会社では，相変わらずいろいろ予定が入り忙しい。そんな島男に，宮沢が「長谷川社長があってくれないんです」と相談する。連絡を取っても，いつも出張中だと断られるという。不安を感じる島男。リオハに行くと，豊田に「すげー出世じゃないか」と声をかけられる。「高柳社長の思惑でなったわけですし，僕自身の実力じゃありません」と島男。守子に「あなたもいつか高柳社長のようになるわ」と言われると，「僕は，高柳社長によって作られた取締役だと言うことはわかっています。僕は絶対に高柳社長のようにならない」と断言する島男。リオハを出ると，香織が「たまには息抜きしないと」と，日曜日に映画に行こうと誘う。うれしそうな島男。当日。大喜びでデートに向かう島男だったが，映画を観ている途中で，仕事の電話を優先してしまう。 　フロンティア。宮沢が，ギガワークスに契約を待ってくれと言われたと報告する。まだ社長も捕まらない。「会いに行きましょう」と島男。ギガワークスに向かうと，偶然長谷川社長が，あの五十嵐と面会し，握手をしている姿を見てしまう。契約を交わしている様子だった。遅れてきた長谷川社長に「契約書にサインをしていただきたいのですが」と島男。しどろもどろになる社長に「何か隠していることでも？」と島男。社長は「他からも同じような話をいただいて・・条件が良かったので・・・」。「もう契約をしたわけじゃ？」と追及する島男。ついに「今，サインをしたところです」と答える社長。社に戻ると，宮沢を責める。このプロジェクト失敗で14億の損失になる。「対抗策は？何かできることはないんですか！」。何も答えられない宮沢に「いいです。１人で考えます！」と別室に閉じこもる島男。家に帰ると，いつも通りにぎやかな団らんのはずが，島男だけがいらついている。２人を怒鳴り散らし，自分の部屋に戻ってしまう。真っ暗な部屋で考え込む島男。高柳の「取締役と社員の決定的な違いは，株主と従業員に対する責任の重さだ。物事を判断の基準は，株主と社員に利益をもたらすかどうかだ。それを忘れるな。あとはお前が決めればいい」と言う言葉を思い出していた。必死で考える島男。 　香織と食事をするが，元気がない島男。香織が「そんな悩まないで。島男さんらしくないわ」と言うと「僕らしいって，どういうことですか」と島男。香織は答えに困りながらも「いつも前向きで，人のために一生懸命で」と答えると「今でも前向きで，今でも一生懸命です。だから困っているんじゃないですか」と島男。香織は「取締役になったばかりだし，誰もあなたのことを責めないと思います」と励ますが，「責める責めないじゃないんです。14億，無駄に消えちゃうんです」。夜，１人フロンティアに残って考え込む島男。 　次の日，大量の資料を宮沢に差しだす。そして「作品を作るのに実質的動いている人は？」と質問する島男。映画を制作するのに中心に動いているのは20人。「その20人を引き抜きましょう。今手を引くわけにいかないんです」と島男。引き抜いたメンバーで新会社を設立する。宮沢がギガワークスが骨抜きになってしまうと心配すると「先に約束を破ったのは，向こうじゃないですか。14億円，ドブに捨てろってことですか？今手を引くわけには行かないんです」と島男。口調も，顔つきも変わってしまっている。周りの人々は不思議な顔をして見ている。20人の中でも中心人物のプロデューサー・加藤に会う。「裏切れません。お金の問題ではありませんから」と断られるが，「10倍出します。新会社の株式も割り当てます。その代わり，全員を引き抜いて下さい」と冷酷に伝える島男。長谷川社長が，ヒルズの受付に駆け込んでくる。島男は「会う必要ありません」と宮沢に。宮沢が童断るか尋ねると，ちょっと考えニヤリとする。その断り方は・・・「出張中です」。「うそだ！うそに決まっている」と叫ぶ長谷川。 　新聞に，新会社・ギガフロンティアの社長に島男が就任した記事と，ギガワークス倒産の記事が。ギガフロンティア設立発表。宮沢が進行している。会場で表情が冴えない島男に，香織が「ギガワークスの倒産のことで，落ち込んでいるんですか。自分を責めることないと思います。会社のためにああするしかなかったと思います」と慰める。すると島男は「違うんです。僕，気持ちよかったんです。スタッフ引き抜いたとき，ギガワークスが倒産したとき，僕は気持ちよかったんですよ。株主や社員のことなんて考えていませんでした。僕は，ただ勝つことだけを考えていました。そして，そのゲームに勝ったとき，今まで経験したことのないような快感を覚えたんです」。ちょうどその時「新会社社長，鈴木島男」と紹介される。今までとは違う，険しい顔つきで壇上へ向かう島男。会場に来ていた桐野と高柳。桐野は「良かったわね，あなたの望んだ通りになって」と言うが，何も答えない高柳。一歩一歩中央へ向かう島男。ステージの中央・・・そこには，人相の変わった島男の姿が。

第６話「ヒルズの秘密」 　 　高柳と東條が談笑している。２人は旧知の仲。東條は，ガンで余命を宣告されていた。しかも彼の会社・東條貿易は月末に不渡りを出してしまうような状況。そこで，高柳に東條貿易を救って欲しいと東條は懇願した。従業員200名が路頭に迷わないように。その会話を，近くで聞いていたのは・・・あのレコード会社をつぶされた森村だった。一方，鈴木家では，借金の利息を支払った残りを全て広げていた。合計33,562円。これが今月の生活費。もちろん小遣いはなし。この家を追い出されたら，まり子は友だちを頼ることにしていた。島男は「龍太に聞いてみる」。その龍太がいつものように鈴木家に向かっていると，鈴木家の前に不審人物が。龍太はしばらく見ていたが，声をかけるとその男は何も言わず去っていった。そのことを龍太が話すと，慌てて外に飛び出すまり子。薄暗い喫茶店。森村は，日刊ワイドの記者・山本にネタを話していた。高柳の父の会社で倒産した高柳商事。これをつつくとおもしろいことが出てくると。フロンティア。桐野しか残っていない。高柳が戻ってきて，桐野に「死にかけたとき，オレが行った方が良かったか」と。桐野は「忘れたわ」ととぼける。高柳は自分のデスクに戻り，東條貿易の取引先を調べる。その中には高柳商事と東條貿易に関する記事もあった。その記事を読むと，関連として高柳商事倒産の記事も出てきた。 　フロンティアでは会議が行われていた。そこで高柳は，「東條貿易はどう思う？」と聞く。その買収にはメリットはなし，負債を抱え込むだけという返事が。「そうか」と返事をする高柳。それでおしまいかと，会議が終了・・・となると，高柳が「東條貿易をやろう」。誰もが反対だった。高柳は「鈴木島男。お前が担当だ」と。桐野をサポートに付ける。島男は「社長が言うからには，もうかる話なんでしょうね」と言うが，桐野は「人のことより自分のこと」と，大量の資料＆本を島男に手渡す。これからM&Aの勉強をしなければならなかった。神谷は，こっそり宮沢に東條貿易について調べるように命ずる。高柳は，東條の家を秘書２人を伴って尋ねる。20年ぶりだった。フロンティアでは，近くにいながらも宮沢が神谷に電話をかけてきた。東條貿易について調べていたが，高柳の父親についてわかったことがあると。東條の家。この家は，実は昔の高柳家。東條が買い取ったものだった。フロンティア。高柳の父の会社・高柳商事がつぶれたとき，面倒を見たのが東條貿易だったと伝える宮沢。東條家。東條は，高柳に忘れ物だと８ミリカメラを手渡す。それは高柳貿易が最初に輸入したもので，高柳の父が大切にしていたものだった。思い出を語る東條に，高柳は「東條貿易を引き取ることにしました」と報告する。感謝をする東條。 　鈴木家。まり子と龍太の２人。龍太が「昨日のヤツだれ？」と聞くと「谷崎部長。私の上司で不倫相手」とさらりと答えるまり子。「でも，ふられた」。リオハには，あの日刊ワイドの山本が来ていた。フロンティアについて聞きたがるが，守子は相手にしない。フロンティアでは，島男が資料で勉強をしていた。桐野に「高柳社長は最初からああいう人だったんですか？」と尋ねてみるが「さぁ，どうだったかな」ととぼけられた。島男は「お金にならないのになんで買おうとするんでしょう」と今回の買収に対する素朴な疑問を投げかける。桐野は「直接本人に聞いてみれば」と言う。 　高柳のマンション。高柳は，１人，少年の頃の父の葬儀や屋敷を引き払った日のことを思い出していた。そこへ島男がやってきた。「社長の真意をお聞きしたくて来ました。どこに利益があるんですか？理由を教えて下さい」と島男。高柳は「東條社長とオレの父親は仕事仲間で，親友だった。オレが11の時倒産した。従業員を引き受けてくれたのが東條貿易だった。企業は人で成り立っていると東條社長はよく言っていた。その後父親は死んだが，いつか恩を返して欲しいと言っていた・・・それじゃ理由にならないか」と。島男が家に戻ると，慌ててアルバイト情報誌を隠すまり子。島男は高柳の話をはじめる。「世の中金だって言っていた社長が。あんな社長見たことない」と不思議がる島男。まり子は「高柳社長も人の子だもん」と。島男が「そうなんだよなぁ」と言うと，まり子は「いいじゃん。情けは人のためならず」。その言葉に喜んだ島男は，夢中になって勉強を続けた。 　フロンティア。日刊ワイドに，東條貿易買収の記事が載ってしまった。東條貿易の買収は不可解だと大見出しが。社内の電話が一斉に鳴り出す。「会見を開こう」と高柳。会見では，いつものように自信満々の高柳。東條貿易の買収は戦略的なことで詳細は話せないと。すると山本が質問をする。「オヤジさんのことなんじゃないですか」。これには答えず，会見を終了させる。フロンティアの株がどんどん値下げしていく。そのニュースを，ビールを飲みながらうれしそうに聞いている森村。株の値下がりは止まらない。一晩で会社の価値が一千億下がったことになる。不安になる社員達。そんな社員達に高柳は「質問を受け付ける」と。「いくらもうかるんですか」と言う質問には「０だ」と言う高柳。それでも「問題ない」と言うだけ。桐野が「社長と東條社長が以前から知り合いというのは？」と切り出す。「本当だ」と高柳。恩人で余命短い東條社長を「助けたい」と。神谷が「会社の利益よりも，恩返しを取ったってことですか？」と言うと肯定する高柳。裕美が「プレスにもそのように対応してよろしいでしょうか」というと「そうしてくれ」と高柳。高柳の行動に理解ができず呆然としている社員達を置いて，高柳は島男を連れて東條貿易へ向かう。島男は正面から出ることを心配するが，高柳は堂々と正面から出ていく。かなりの数の記者を豊田ら警備員おさえ，車へ。島男がいつものように助手席に乗ろうとすると，高柳は「オレの横に座れ。今日はオレのカバン持ちじゃない。フロンティアの代表として，オレと一緒にビジネスに行くんだ」と。そんな島男の姿をうれしそうに見送る豊田。香織と桐野。香織は，今回の高柳の行動を喜ぶ。そして桐野に屋敷を手放した理由を尋ねる。桐野も詳しいことは知らなかったが，高柳の父親は誰かに騙されて借金を負った，父親は情に厚い人だったらしい・・言う話をする。「島男君と似てるのかもね」と桐野。ただ，その後は苦しい生活の中，病気になり「惨めに死んでいった」と高柳は語っていた。 　東條貿易。組合員達は，今回の買収に反対だった。これまでの高柳のビジネスから言えば，自分たちには絶対不利なはずだと。高柳と東條がいくら説得しても納得しない。「証拠を見せてくれ」と言う。困った２人。そこへ島男が「待ってください。証拠ならあります」と説得をはじめる。「東條貿易をM&Aの対象として考える企業は他にありません。失礼ですが，今の東條貿易は買収の対象として魅力的と言えません。しかしフロンティアは利益を度外視して買収を行おうとしています。27年前の恩を返したいという高柳社長の純粋な思いからです。東條貿易従業員200名，誰一人路頭に迷わせたくないという高柳社長の願いからです」。ノートＰＣの画面をみんなに見せ「フロンティアの株です。この買収の話が世間に発表になってからの５日間，フロンティアの株は急激に下がっています。今も下がり続けているでしょう。それでも高柳社長は，この友好的買収から手を引こうとしていないんです。みなさんからばかりでなく，フロンティアの社員からも不満の声が挙がっています。それでも社長は自分の父親が受けた恩を返そうとしているんです。信じて下さい。お願いします」。頭を下げる島男。一緒に高柳も頭を下げた。 　一方，龍太はまり子の会社の前に立っていた。意気込んで中へ。受付で谷崎部長への面会を求める。谷崎部長と話す龍太。「幼なじみのあなたがなにを？」と言われた龍太は土下座をして・・・。龍太が会社から出てくると，まり子と遭遇してしまった。「何しに来たの？信じられない」と怒ってまり子は会社に戻ってしまった。 　フロンティアの東條貿易買収の契約が成立した。東條は「君を見ているとお父さんを思い出す。本当にありがとう」と。リオハ。島男と香織が乾杯をしている。島男は「高柳社長と一緒に仕事できたのがうれしいです」と本当にうれしそう。反対側のカウンターにいる豊田は「高柳社長の側に座るの見たよ。島男，出世したな」と喜んでくれている。島男は「今回初めて高柳社長の気持ちわかった気がしたんです。それがとてもうれしいですよ」。そこへ電話が。呆然とする島男。高柳と島男は病院へ。東條が危篤の状態になった。「東條貿易を頼む」と言う東條。「安心して下さい」と笑顔で答える高柳。 　フロンティアの高柳の元へ，東條が亡くなったと連絡が入る。お悔やみの言葉を言い電話を切ると，すぐに電話をかける高柳。「東條貿易は予定通り君のものだ」と言う高柳。桐野が「売ったのね？どうして？」と言うと，高柳は，ユナイテッド・インストルメンツと言う半導体の会社に売ったという。東條貿易は，ラオスに採掘権を持っていたが，業績が悪化してからは放棄したままで忘れ去られた。そこでレアメタルが発見された。ユナイテッド・インストルメンツはその採掘権がどうしても欲しかった。「取引先を聞いたときピーンときたよ」と言う高柳。最初から転売目的だったのだ。桐野が「どうしてうそを付いていたの」と言うと「外部に知れたら買値が跳ね上がる。余計な出費だ」と。桐野は「島男君が聞いたら大変よ。あなたがいい人になったって思っているんだから」と言うが，「ばからしい。そんなことある分けないだろう。お前が一番知ってるはずだ」と高柳。高柳はやっぱり高柳だった。 　何も知らず戻ってきた島男に，神谷が「買値の３倍で転売だ」と教える。「どういうことですか？」と事態が飲み込めない島男。走って社長室へ。島男が「従業員は？」と質問すると，「転売先の都合によるな。先方は採掘権が欲しかっただけだから・・リストラかな」と高柳。島男が「お父さんの遺言は？」と言うと「最初から考えてない」と高柳。島男が「父親が受けた恩でしょ」と言うと，高柳は「父親は認めてない。あの男はただの負け犬だ。父親も東條も自分の会社を平気でつぶす，能力のない経営者だ」と言い放つ。「平気なわけないじゃないですか！」と泣きながら怒鳴る島男。高柳は「お前もその能力のない経営者の１人だったな」と気にしない。島男は「あなたは託されたんですよ，東條社長から東條貿易と従業員達を！あの死んでいく人が，あなたに託したんですよ。あなたは死んでいく人にうそを付いたんですか！」。すると高柳は「幸せに死ねて良かったじゃないか」と全く気にしない。「あなたは人間じゃない！」と島男。それでも「人になんと思われても，オレはかまわない」と言う高柳だった。 　リオハに勢いよく入ってきた島男と追いかけるように来た桐野。島男は「あの人のことが本当にわからなくなりました」と言う。そこへ，日刊ワイドの山本が近寄ってきた。「結局いつものパターンになっちゃいましたね」と。フロンティアの株は急上昇。今回のことは結局会社のプラスになった。社長室。香織は高柳に「最初から転売のために動いていたんですか？転売して欲しくありませんでした」と意見をする。高柳は「僕らの会社は，こうやって金儲けをするんだよ。じゃないと大切な社員に給料払えなくなっちゃう」と。リオハ。島男は桐野に「あの人は鬼です。いくら口約束でもあの病室で，あんなことが言えるんだろう。人としておかしいです。アイツは人間じゃありません」と。でも桐野は「手が込みすぎてると思わない？この仕事は神谷さんが担当してもおかしくない。それを何であなたに？高柳は迷っていたんじゃないかしら」と言う。部屋で１人，８ミリフィルムを見る高柳。そこには，父親とキャッチボールをする高柳少年の姿が。

第５話「ヒルズの大逆転」 　 　高級レストランにフロンティアの面々が。その中には島男も。なかなか予約は取れないが，神谷のなじみの店と言うことで今回食事をすることができた。でも，高級レストランなんて初めての島男は，勝手が分からず，マナーもわからない。最後には落としたスプーンを拾おうとして，テーブルクロスを引っ張り大騒ぎに。不機嫌な神谷。落ち込む島男。他の面々は去ってしまうが，香織は島男の元に。「最低です・・みっともないとこ見せちゃって」と島男。香織は「そうね。評判ほどおいしくなかった。特にお魚が」。すると島男は「龍太の方がうまい」と言う。「でもみなさんの口には合わないかも・・・」。でも香織は「食べてみたいわ。これから行きましょうよ」と乗り気だった。 　鈴木家では，まり子と龍太がいつものように残り物の刺身を食べながらの団らん。そこへ島男が戻ってきた。香織の姿に驚く龍太。大慌てで新たに刺身を持ってくる。「ホントにおいしい」と感動する香織。楽しい４人の団らんに。香織を送って来るという島男を見送り，龍太はまり子に「好きな人いるんだって」とさりげなく聞いてみる。でも，まり子は怒って家の中に入ってしまった。島男は，香織に「せっかく来てくれたから，いい物見せます」とあるところへ連れていく。島男が連れていったのは・・・桜が咲く場所。いつもここだけ咲くのが遅い。綺麗な夜桜の下で，いい雰囲気の２人・・・。高柳は，裕美と一緒に食事をしていた。裕美は「香織，デートだったみたい」と，島男と一緒にタクシーに乗ったという。心中穏やかじゃない高柳。 　旅行会社・エアドリームへ向かった高柳と神谷。今度提携して新しい業務をはじめる。その担当は神谷に任された。社に帰ると，神谷は「私でいいんですか。鈴木島男かと思いました」と。「こんな大任，アイツに任せられない。お前しかいない」と言う高柳。大役を任された神谷は上機嫌。島男をリオハ（スペインバー）に誘う。他のメンバーも誘っている。もちろん，神谷のおごりで。にぎやかな中，島男と香織が楽しそうに話している姿を，社長室から見つめている高柳。リオハでは，はしゃいでしゃべってばかりいる神谷。今回の仕事がどれだけすごいことなのか，自慢げに話している。守子は，そんな神谷の言動を危惧し，桐野に耳打ち。桐野が制止しても聞かない神谷。反対側のカウンターに怪しい客の姿。カウンターにはレコーダーが置かれている。 　二日酔いの神谷。そこへエアドリームから電話がかかる。社長室では，桐野が高柳に謝罪していた。実は，エアドリームとの提携の情報が漏れ，新聞にすっぱ抜かれてしまった。高柳は「この件は神谷に任せてある」と言うだけだった。エアドリームの平沢常務は，「まだ各方面との話し合いが終わっていない。ルール違反だ」と怒り，「提携の話はなかったことに」。落ち込む神谷。そこへ出社してきた，何も知らない島男は「二日酔いですかぁ〜。新聞に載ってましたねぇ〜」と明るい。さらに落ち込む神谷。島男は，他の面々に事情を教えられる。島男は「どうしてですか!?」と神谷を説得しはじめる。「社長にあって，話をしましょうよ。やってみないとわかりませんよ。まだ何もしていないじゃないですか」と島男は神谷を誘って飛び出していく。神谷もそれに従う。そんな神谷の行動を驚く面々。もちろん，エアドリームに行っても社長には会えない。しかも休暇中だという。エアドリームの吉川社長の情報は少ない。吉川社長の行きそうな所をみんなで考える。宮沢がどこかで読んだ気がするというと，「ブログよ」と香織。みんな一斉にパソコンに向かって調べはじめる。なかなか情報が得られない。やっと宮沢がブログを見つける。社長がいそうな場所・・それは，那須の別荘だった。「行きましょう！」と神谷を誘う島男。神谷が「意味がない」と断ると，「意味あるかないか，今の時点ではわかりませんよ。胃まで切る最大限の努力をしましょう！それでダメだったら，しょうがないでしょう。謝るしかないですよ」。勢いに押されてか，神谷も島男と一緒に出ていく。そんな神谷の行動を不思議がる面々。 　インターフォン越しに面会を求めるが，約束のない面会は勿論断られた。「無駄だよ」とあきらめる神谷。そこへ通りかかるお手伝いさん風の老女。島男は事情を話す。勿論取り次いでもらえない。すると神谷は，財布から１万円札１枚とりだし渡そうとする。完全に相手にされない。これで完全にあきらめる神谷だったが，「ダメですよ，あきらめたら。待つんですよ。社長が出てくるまで」と島男。側の林のの中で待つことに。夜。フロンティアでは，香織が高柳に帰宅の報告をする。高柳は「飯でも行くか」と香織を誘う。鈴木家では，まり子と龍太２人の団らん。そして，那須では・・・アンパンを手にする島男と神谷。別荘の電気が消える。もう社長が外出することはない。安いビジネスホテルへ。不機嫌な神谷は「善人ぶりやがって。ざまぁみろって思っているんだろう」と。次の日の朝，ものすごくさわやかな島男。フロンティアでは，神谷が出社せず，しかもビジネスホテルに止まったことに驚いている。 　また別荘の前で待つ２人。すると，門から１台の車が出てくる。慌てて追いかける２人。もちろん，車は止まらない。神谷が携帯でタクシー会社を問い合わせていると・・・島男は通りかかったトラックを止め，乗せてもらう。なぜか，運転しているおじさんと意気投合してしまう島男。神谷が謝礼を払おうとすると受け取らない。事情は知らないが島男を応援するおじさん。結局，車に乗っている人物には会えなかったが，社長は乗っていなかった様子。また出社しない神谷に驚くフロンティアの面々。完全に島男のペースになっていると。「鈴木島男・・」とつぶやく宮沢。また夜になり，電気が消える。またホテルへ。神谷は「社長と会えば，うまくいくと思っているのか」と言うが「わかりません」と答える島男。島男は，結果がどうであれ，やれることはやってみないと。本当にダメだったら「せめて謝りましょう」。吉川社長が怒ったままなのが耐えられないと。神谷は「どうしてフロンティアに来た」と島男に尋ねる。島男は「高柳社長のようにお金持ちになりたかったんです」と答え「どうしてフロンティアに？」と紙屋に尋ねる。神谷は「長くなるからな」と言うが，島男はかまわない。その理由は・・・ 　神谷の父は外交官。いろんな国を転々とした。勉強もできて飛び級もした。おかげで，同級生は年上ばかり，友だちもできなかった。高校の時，日本に戻ってきたけれど，同級生はガキばっかり。大学もくだらない。日本を出ようとしたとき，起業したばかりの高柳に出会った。高柳は，今までであったことのない人間だった。強烈な何かを放っていた。「その瞬間，まるで恋におちたようだった」。高柳は金が全て「金は決して裏切らない」。神谷はそれが気持ちよかった。それまでつかえていたものが，全部取れた気がした。プロセスが問題ではなく，結果が全てだと教わる。「オレはその通りだと思うし，今でも正しいと思っている」。ところが，島男はやれること全てやって，「結果がダメなら謝りましょう」と言っている。島男のやり方は，高柳社長と全く違う。島男と高柳は正反対の人間。島男のやり方では，フロンティアではやっていけないし，社会でも通用しない。「お前を認めることは，自分のこれまでの人生を全部否定することになるんだ。だから，オレは絶対にお前を認めない」。 ・・・最後，神谷が島男を見ると，熟睡していた。朝。やっぱりさわやかな島男。フロンティアでは，会社好きの神谷が３日も来ないことを不思議がっていた。すると「アイランドだ」と宮沢。 　夜。また電気が消える。神谷はいつものホテルに戻ろうとするが「僕残ります」と島男。神谷は１人ホテルへ行くが，なぜか眠れない。結局，食料とお酒を持って島男の元へ。朝になり，２人が眠りこけていると，あの老女が話しかけてきた。おにぎりと豚汁を差し入れしてくれる。素直に喜ぶ島男。ためらう神谷。それでも神谷は，おにぎりを頬張るとおいしそうに食べはじめる。老女は「社長には会えないわよ」と。いろんな人がいろんな思惑を持って口説きに来るけどうまくいかないようだと。ずっと黙っていた神谷は「１つだけ・・・僕らは口説きに来たんじゃありません。謝りに来たんです。これだけ伝えて下さい。どうもすみませんでした！」と涙を浮かべながら頭を下げる。結局社長には会わず戻る２人。島男は「一生後悔する気がしたんです。神谷さんの言うとおりです。自己満足のためにやっているんです。自分が後悔するのイヤなんです」。 　フロンティアに戻り，高柳に報告。高柳が「４日間の成果は？」と言うと「ありません」と島男。神谷は「提携はなくなりました。申し訳ありませんでした」と謝罪。高柳は「失敗したことは認めるな？リカバーの仕方も違う。これでわかっただろう，鈴木。お前のやり方では，この世界では生きていけない。決定的に間違っている。そうだろう？神谷」。返事をせず，下を向いたままの神谷。「もういい！」と高柳。すると神谷が口を開く。「私は・・こいつは間違ってないと思います」。驚く高柳。 　那須の別荘に，一台の車が入っていく。平沢常務が社長に業務報告にやってきた。その社長とは・・あの老女だった。社長は「フロンティアの件，聞いてあげてね。信じられる？４日もいたのよ，家の前に。ただ謝るためだけに。変な会社ねぇ。でも，私は信じるわ」。フロンティア。「神谷さん，復活してないですか？」と不思議がる香織。神谷は島男に「いっぱいおごってやるよ。いろいろ悪かったな」と謝っている。２人が出ていくと，「神谷さん，謝ってましたよ。みんなおかしくなっちゃってる。アイツが来てからですよ・・アイランド」と宮沢は驚愕。そこへ，エアドリームから電話がかかってきた。電話に応対した宮沢は大慌て。 　社長室では，桐野が「宮沢君，すっかりアイランドのシンパよ。これで神谷さん含めて三人・・私もだから。あっ，もう１人いた。白川香織さん」と言って社長室を出ていく。１人取り残された高柳は，いらだち，机の上のものを投げ捨てた。 　リオハ。豊田にまでおごっている神谷。神谷は「勘違いするな。友だちになったわけじゃないからな」と。「わかっていますよ」と島男。

第４話「ヒルズは歌う」 　 　男達が高柳の面会を求めってやってきた。彼らは，森村と彼の会社の役員達。森村だけを通し「２分だけ話そう」と高柳。「この仕事をやってもらうことになる」と島男にも同席を求めた。森村は「オレたち同士だろう」と。しかし，彼の会社を乗っ取ろうとしている高柳。森村は「ドライすぎやしないか？いろんなヤツに憎まれながらここまでやってきたんだ。ここまでのオレの苦労は何だったんだ！」と叫ぶ。しかし冷静に「このM&Aは，僕からの最大の賛辞だ」と高柳。そして，森村にＰＣの画面を見せる。「たった今，ウチの子会社になった」。冷たく言い放つ高柳につかみかかろうとする森村。森村は警備員達に連れ去られながら「お前も，お前のオヤジのように死んじまえ！」。森村のレコード会社を，新会社として立ち上げる予定だった。その設立イベントに，クラシック界の貴公子・ミケーレ・アンドリーニを呼ぶ。そのイベントを成功させ，専属契約にサインをさせることが，今回の島男の仕事。 　新会社についての会見が行われた。新しいレコード会社は，CDの販売を一切しない。ダウンロードでの販売のみ。その会社名は＜＜フロンティアフォニック＞。そのイベントの目玉になるミケーレ・アンドリーニが来日。高柳自らが空港に出迎える。車の中で，ミケーレにスケジュールを伝えようとするが，顔を向けようともしない。夜。料亭での会席。島男も出席している。島男が「アイランドボーイ」と自己紹介しても，全く無視。心ここにあらずと言う状態のミケーレ。「無愛想ね。接待大変かも」と桐野。すると，突然退席してしまうミケーレ。神谷は「専属契約させるまで期限よくさせとけ。５日後だから」と島男に命ずる。 　会席の余った料理を持ち帰り，いつものように３人の団らん。島男がミケーレのことを「すごい無愛想」と言うと，「ほほえみの貴公子って言われているのに」と不思議がるまり子。龍太は「日本食嫌いなんだよ」。そこで・・・イタリア料理で接待してみるが，やはり不機嫌で帰ってしまう。龍太「逆にジャポネーゼ！」。そこで・・・神社を案内。島男がおみくじを引くと「大凶」。それが当たったのか，やっぱり不機嫌で帰ってしまう。カラオケボックス。島男が「マツケンサンバII」を歌って盛り上げるが，やっぱり不機嫌で帰ってしまう。龍太「やっぱり女だな」。そこで・・・クラブで接待するが，楽しんでいるのはマネージャーの武本だけ。「ミラノに帰る！」と言い出す始末。神谷は「あと２日。機嫌取り続けろ」と命ずるだけ。龍太「ホームシックか」。まり子は「田舎の方が好きなのかも」。ミケーレは，イタリアでも田舎の方の出身。「良いところがある」と島男。次の日，島男が連れていった場所は・・・屋上庭園。そこで，龍太とまり子が田植え風景を再現。でも，やっぱり不機嫌で帰ってしまう。 　いつもの居酒屋。島男と龍太。龍太は「香織ちゃんに会いたかったな。どうなちゃっているの？」と島男と香織の仲を尋ねる。島男は「住む世界が違う」と２人の仲を否定する。それに香織には高柳という彼がいると。一方，島男が龍太にまり子とのことを聞くと「プロポーズしたけどふられた」と龍太。島男は，母が言っていた＜まり子は会社に好きな人がいるんじゃないか＞と言う言葉を思い出した。その言葉にショックを受ける龍太。そんなまり子は，ある日，公園で男と別れ話をしていた。男が別れ話を持ち出しても冷静なまり子。冷静なまり子を理解できない男は「恋愛ってもっと直接的で，感情的で，衝動的なものだからね」と言って去っていく。一人の残されたまり子にサッカーボールが飛んできた。避けようとしたまり子は，階段から・・・ 　リハーサルでも，全く歌わず帰ってしまったミケーレ。不安なまま迎えた専属契約の重要な場。それぞれに渡された契約書も，目を通そうともしないミケーレ。島男が契約書の内容を説明しはじめると，携帯が鳴った。龍太からだった。電話に出ずに話を進める島男。しかし，またかかってきた。気になった島男は，電話に出る。「まり子が落下事故で運ばれた！まり子死んじゃうよ！」と叫ぶ龍太。島男は「すみません。行かなきゃならなくなりました」と。高柳が「何をやろうとしているのかわかっているのか」と注意しても，「すみません」と謝るだけの島男。会議室を飛び出していく。病院前で一緒になった龍太と飛び込んだ病室には，まり子の姿がない。呆然とする２人の後ろに，まり子が立っていた。話を聞くと，たった４段の階段から落ちただけ。レントゲンの検査で，肋骨にひびが入っているが，入院の必要もないという。へたりこむ龍太。安心したのか，涙を流していた。 　島男は急いで会社に戻るが，人の姿がない。神谷を見つけ謝るが，ミケーレと契約できなかったことを知る。島男が飛び出してすぐ，ミケーレも退席してしまった。コンサートもキャンセル。会社の信用も丸つぶれ。「お前にできることはもう何もない」と神谷。暗い社長室。高柳１人。窓から外を眺めている・・・。スペインバーで飲む島男。「下向いて避け飲む男嫌い」と守子。反対側に座っている豊田が島男に「ハイソの世界むいてないんだよ。こっち戻ってこい」と誘っている。そこへ，桐野がやってくる。妹のために契約をすっぽかして出ていったと聞いた桐野。「そういうところが高柳と違うかな」。高柳の昔のエピソードを話し始めた。昔，高柳の近しい人が，肺炎で生死をさまよっていた時も姿を見せなかった。治ってからどうしてお見舞いに来てくれなかったのか問いつめると「死ぬ運命ならもう用はないし，生還するヤツはオレが行かなくても生還する」と言った。「どんなときでもビジネスを優先する。例え自分の女が死にかけても。その時間で新しいビジネスを考える。そういう世界に高柳は住んでいるの。あなたは反対側に住んでいる」と言う桐野。島男が「どうして言い切れるんです？」と尋ねると「死にかけた女が私だから」と桐野。島男は「ミケーレに謝ってきます」と言うが，桐野に今社長が行っているからと止められる。 　ホテルのロビーで，高柳は武本と話していた。武本は「香織さんを一晩貸して下さい」と言い出した。高柳は香織と裕美の元へ。高柳は「白川，明日夜８時。ミケーレの部屋に行って，一緒に食事してくれ。それで鈴木島男の件は水に流してくれるそうだ」と伝える。香織は「食事だけですか？」と尋ねるが，その後は大人の判断だと。すると「行きません」ときっぱり断る香織。「そうか。残念だ」と高柳。 　翌日島男が出社すると，神谷は「よく平気な顔して出社できたな。莫大な損害を与えたんだぞ」と。損害額は30億。それでも「もう１度チャンス下さい。直接謝りたいんです」と頭を下げ続ける島男。神谷は「前の仕事に戻った方がいいんじゃないか。成り上がり君」と嫌みを言って去る。そんな島男の姿を見つめる香織。それに気づく島男。島男は「僕の失敗なんです。もう一度ミケーレに会いたいんです。何か方法ないでしょうか」と香織に相談する。香織は「本気？この仕事手に入れたい？成功して社長のようになって，お金持ちになりたい？」と言い出す。島男が返事をすると「わかった。何とかするから」。立ち去ろうとして，前を向いたまま「何も聞かないで，がんばれって言って」。訳も分からず「がんばってください」と言う島男。香織は，高柳の元へ行き「昨日の話お受けします」と言う。 　スペインバー。落ち込んでいる島男。裕美がやってきて「香織，今何しているか知っている？ミケーレのホテルにいるわ。女が使う武器なんて１つしかないに決まってる」と知らせる。「社長が命じたのよ」と言う言葉に，飛び出していく島男。ミケーレの部屋に向かう香織。必死で走る島男。 　ミケーレの部屋。武本と話す香織。「今日の話はなかったことにして下さい」と武本。不機嫌な原因が判明したのだった。ミケーレは，元貴族の出。恋人を紹介したら，両親に猛反対された。身分が違うと。それが来日直前の話だった。落ち込むミケーレを説得する香織。「どうしてあきらめるの。何で何もしないの」と香織。ミケーレは，あの両親を説得させることは無理で結婚はできないと落ち込むばかり。そんなミケーレに香織は「ホントに好きだったら，損あんこと考える前に行動している！」と叱責する。そこへ，なぐり込みに来た島男。激情し，何も聞かないままミケーレを殴ってしまう。夢中で香織の手を取り，外へ連れ出す。やっとそこで事情を聞いた。「バカね，余計なことをして」と香織。しゅんとする島男。「どうしてこんなバカなことしたの」と香織に言われると，島男は「気が付いたらここに来て・・気が付いたら殴ってて・・すみません。良く覚えてません。またやっちゃいました」。「取り返しの付かないことをね」と背中を向けながら，顔は笑顔の香織。 　コンサート中止の会見をする神谷。理由はミケーレの体調不良とした。張り出されたポスターも撤去された。社長室で，事情を話す島男。「僕の責任は僕がとるべきです。香織さんが負う物ではありません」。高柳は「妹のために大事な契約を反故にする・・美しい友情のために取引相手を殴る・・自分の過ちは自分で償う・・どれも素晴らしい正義だ」と。しかし，島男が出した損害は，30億と会社に対するマイナスイメージ。これはかなり大きい。「この責任をどう負うのか，具体的に提示して見ろ・・・正義じゃ飯は食えないんだよ，鈴木島男！」。社長に怒られる島男を，うれしそうに見ている神谷。そこへ，武本から島男に連絡が来た。 　ミケーレに会いに行く島男。ミケーレは「何で殴った？彼女，守りに来たんじゃないのか？」と言うが，島男はただ謝るだけ。「彼女を愛している・・そうなんだろう」とミケーレ。そして電話をかける。イタリアの彼女に。「愛している」と改めてプロポーズ。両親を説得するし，それでも反対されても結婚すると。電話を切ると「香織が教えてくれたんだ。気づかせてくれたのは君たちだ」とミケーレ。そして，専属契約は結ぶし，コンサートも開くと。島男が，会場はキャンセルし，チケットも払い戻ししてしまったというと「場所はある」とミケーレ「君が教えてくれたじゃないか」。 　屋上庭園。オーケストラを従えて歌うミケーレ。街行く人が，何事かとキョロキョロしている。フロンティアにコンサートの問い合わせの電話が。神谷が「中止だって」と言うと，「やっているって」と宮沢。ヒルズ周辺では，多くの人が足を止めてミケーレの声に聞き惚れていた。桐野が窓の外の様子に気づく。それが高柳にも伝わる。高柳は週刊誌からの問い合わせの電話に「計画通りです・・サプライズ。これがフロンティアフォニックのテーマです」と答える。しかし，なぜかいらだっていた。「何いらついているの？」と桐野。マスコミも予定以上に集まり，HPのアクセスもかなりの数に。「よかったじゃない。さすがフロンティアって評判よ」と桐野が言うと「ただの結果オーライだ。オレの完璧な計画を乱されるのが何より気にくわないんだよ」と高柳。桐野は「あなたをいらだたせているのは，そんなことじゃないわ」と。「あなたはビジネスと人の心を天秤に掛け，ビジネスを選択する。結果，何も問題を起こさず，計算された通りのものを，全て最短の速さで手に入れる。一方，いつでも迷わず人の心を選択する男がいる。途中，混沌を生み出すけど，そこから斎場の結果を手に入れる。彼はビジネスと心の療法を同時に手にするのよ。あなたをいらつかせるのはアイランド。そして，彼を恐れはじめている自分自身・・そうでしょ。賭は私の勝ちかもね」と去っていく。「鈴木島男・・・」と高柳。庭園には，まだミケーレの歌声が響いていた。ベンチに座り聞き入っている島男と香織。

第３話「ヒルズの成功とは」 　 　部屋で熟睡中の島男。まり子が起こすと「香織さぁ〜ん」と寝言。今日は休みだけれど寝ていられない。借金の話を運送屋さんとしなければいけない。喫茶店で，運送屋さんにあまたを下げる島男とまり子。先代からの長いつきあいだからと，返済を待ってくれると言う運送屋さんに「利子だけでもお支払いします」と島男。隣には，龍太の姿も。ケーキを何個も食べる龍太に対して，全く甘いものがダメな島男。昔もらったバレンタインのチョコも無理して食べたら気持ち悪くなってしまったほど。ケーキも食べた代金は3,280円弱。島男とまり子は「ごちそうさま」と龍太の支払いにして帰っていく。龍太は「割り勘だろう！」と追いかける。一方，高柳は，高級ホテル・小倉ホテルのレストランで，小倉男爵とお茶をしていた。このホテルは売る気がないという男爵。すぐに仕事の話はやめ，一緒に旅行に行く話をする。車で行こうという話になり，男爵は電話をかける。気に入った車があり，それで行こうと。その代金は５千万円。支払いは・・・「割り勘にしましょう」と高柳。高柳は立ち去るとき「ここのお茶代はお願いします。車は自分が払います」と，豪快な"割り勘"話。 　桐野が島男のスーツを見立てている。ホームパーティー用に作るよう，高柳に命じられていた。スーツ一式の値段は100万円強。島男の歓迎会のホームパーティーには，まり子も出席。高柳は，島男を次々と証券会社代表取締役や銀行のオーナー等に紹介していく。その様子を見ていた神谷は気に入らない。まり子が化粧室に行くと，裕美と香織がいた。裕美は「いいのね，社長を独占しても」と香織に言い放っていた。桐野に香織を紹介され，まり子は島男の寝言と結びついた。パーティーの最中香織と島男が顔を合わせるが，島男がすぐに呼ばれて言葉を交わすことなく別れてしまった。 　フロンティア。宮沢がどうしても和菓子屋を落とせなかったと報告している。和菓子屋の店主は頑固者で，断る理由も教えてくれないらしい。すると神谷が「仕事だ」と島男にその仕事を任せる。ネットショップの目玉になるはずの和菓子屋・清川堂の参加を取り付けると言う仕事。期限は10日。神谷「やれるな」。事情を知らない島男は「はい」と。島男が行ってしまうと，神谷は「社長のお気に入りがどれくらいのものか見せてもらおうじゃないか」と笑みを浮かべる。 　社長室。神谷が「小倉ホテルの株はどうしますか？」と言うと，高柳は「男爵の理解を得たい。敵は作らないことにこしたことがない」と。そして「鈴木島男はどうしている？」と尋ねる。「清川堂やらせてます」と神谷が言うと「どういうことだ？いじわるだな・・・面白い」と高柳。 　島男は，清川堂を尋ねていった。店の前に行くと，営業マンが追い出されていた。その後店に入った島男，ドアが開くなり水をかけられてしまった。島男を客だと思った店主・清川は平謝り。先ほどの営業マンは，デパートの出店依頼に来たという。島男が「なんで出店しないんですか」と言うと，全て手作りで清川１人では１日500個が限界だから，これ以上広げられないと。自慢の品・あんこ餅を勧められるが，甘いものがダメな島男。いったんは断りながらも，恐る恐る口にする。すると「うまい」と笑顔に。その後，島男が自己紹介すると・・・やっぱり追い出されてしまった。一方，小倉ホテルでは，男爵と高柳が談笑。小倉ホテルは，男爵の曾祖父の家だったところ。男爵が生まれたとき母親が植えてくれた思い出のバラが植えてある庭園。思い出が詰まった小倉ホテルだった。男爵は「あなたは，金のために私がこのホテルを経営していると思っている」と。「違いますか？」と高柳。男爵は「何もわかっちゃいない。思い出の庭を維持するためにホテルを経営しているのです。庭をつぶしてまで，何かを変えなければならないんだったら，私はホテルをやめます」と語る男爵。男爵の言葉が理解できない高柳。フロンティア・社長室。「どうだ，和菓子屋は」と高柳。島男が「苦戦しています」と言うと，「金はいくら積んでも良い。金で動かない人間はいないぞ」と高柳。 　会社の外で偶然香織に出会う。「どうして逃げるの？」と香織。「あの日は誤解よ。疲れて眠っちゃっただけ」。でも島男は「僕とあなたは住む世界が違うんですよ。僕は油まみれの貧乏人で，あなたは一度たりとも泥にまみれたことのない，無菌室の純粋培養のお姫様ってことですよ」と去っていってしまう。スペインバー。いらだつ香織。一方，居酒屋には島男と龍太。島男は「全然わかってないんだよ，あの女！」と荒れている。「惚れた？」と龍太。酔っぱらって家に帰ると，まり子が縫い物をしていた。島男は「靴下の穴縫ってんのぉ〜？買えよぉ〜」と酔っぱらったまままり子に言う。鈴木家は借金だらけ。まり子の給料は利子を払うだけでなくなってしまう。生計を立て，借金自体を返すのは島男の給料だけでやらなくちゃいけない。そんな状況だから，とても新しい服を買うことはできない。「のんきに酔っぱらっている場合じゃない！」と靴下を投げつけるまり子。我に返った島男「オレ，もっとがんばるから」。 　清川堂。パソコンを出し，いろいろと説明をしようとする島男だが，清川は全く取り合わない。必死な島男は，言いにくそうにしながらも「特別なんですが・・・参加していただいた時点で・・200万お支払いします」。何の返事もないまま，扉は閉ざされた・・・。島男は帰り道，河原でリコーダーを吹く清川の息子・大介を見つける。リコーダーは，母親のだという。「この間はありがとう」とジャケットを乾かしてくれたお礼を言うと「僕に取り入ってもダメだよ」と大介。母親は死んでしまったという。「オレのお母さんもこの間死んじゃったんだ」と島男。すると大介は「死んだらどうなるの？天国ってどこ？どうしたらお母さんに会えるの？お父さんはもう会えないって言うけど」。島男は，胸に手を当てて目をつぶるとお母さんの声が聞こえると教える。「聞こえないよ」と言う大介。「お母さんの声は，すごく遠くて小さいから，うんと耳を済まさないと」と島男。２人で目をつぶり，胸に手を当てて，静かな時を過ごす・・・。「ホントだ！お兄ちゃんすごい」と笑顔になる大介。 　鈴木家。いつもの通り３人の団らん。清川堂の話になり，島男が「なんでもうかるのに」と言うと，龍太は「こだわりがあるんだろう」と自分の経験談を話す。ハッとする島男。「お前に何か教わったの初めてかも知れない」。島男は次の日，和菓子屋巡りをはじめる。それを全部フロンティアへ持っていき，１つずつ食べては記録している。桐野が何をやっているのか尋ねると，甘いものがダメなのに，清川堂で食べたのはとてもおいしかったと。いろんなお店のを食べてみても同じようなおいしさがない。それがなんなのか探ろうとしている。桐野は「そんなの和菓子屋しかわからないわよ」と。すると「数日休みを下さい！」と飛び出していく島男。 　島男は，昔なじみの和菓子屋へ「和菓子を教えて下さい」と頼み込む。和菓子屋へ弟子入りして，実際に作り方を教わりながら，和菓子について伝授してもらう。夢中になって研究をする島男。フロンティアでは，島男の行動は理解されていない。やっと和菓子屋のオヤジさんに認められた和菓子ができ，自分で食べてみて，島男はふと気づく。 　男爵と高柳。高柳は，ホテル買収の話を進める。「125億ではいかがですか？誰も損をしません。一番合理的な方法ではありませんか」。男爵は「それであなたは幸せですか？本気でアンタが心配だよ。お金で全て解決する。そういう生き方ででやっていけるのかね」と。「私は大丈夫です」と高柳は自信たっぷりに。すると「売らない理由ご存じですか？」と男爵。「アンタが嫌いだからだよ」。この言葉にムッときた高柳は，ホテルを出るなり，電話をかけ「小倉ホテルを買い占めろ！全部だ！」。 　フロンティア。高柳は「古き良き時代の人には，早く引退してもらいたいもんだ」と。それに同調する裕美。しかし香織は，「お金じゃない方法もあるんじゃないですか」と意見する。「誠意とか真心とか」。高柳は「どうやって誠意のあるなしを判断するんだ？君の主観だ。金は万人に平等だ。金は人を裏切らない。裏切るのは人の心のほうさ」と言い切る。その時，桐野が香織を呼び出した。島男がずっと休んでいるので，様子を探ってきて欲しいとお願いする。 　清川堂。珍しくすんなり中へ入れてくれた。「大介が世話になった」と清川。母親が亡くなってから，一言も口を利かず，いじめにもあっている様子。島男と話し，そんな大介が変わった。「何か良いことあったみたいで。少しずつ口を利いてくれるようになりました。そのことに対して礼を言います」。ただ，出店に関しては断ると。「はい，無理です」と島男。「いろいろ調べてみたんです」と，自分の和菓子研究の成果を語る。「やってみてわかったんです。こんなに手の込んだもの，機械では作れません。味を変えるぐらいなら，やめた方がましです。あきらめます」と笑顔で伝える。 　清川堂を出ると，神谷から電話が来た。「ダメでした」と報告する島男。島男が，また河原を通りかかると，橋の上で大介がいじめられていた。持ち物を川の中へ捨てられてしまう。あの，お母さんの形見のリコーダーも。必死に探し出す２人。そこへ，様子を見に来た香織が通りかかる。一緒に川の中に入って探す香織。島男が止める言葉も聞かずに。「お父さん呼んできて。人が多い方がいいでしょ」と。大介が清川を呼びに言っている時，香織は足を滑らせて転びそうになる。それをしっかりと捕まえて助ける島男。しばらく見つめ合う２人。大介が清川を連れてきて，４人で探し続けた。やっと，香織がリコーダーを見つけることができた。喜ぶ４人。 　テレビでは，フロンティアによる小倉ホテル買収のニュースが流れていた。男爵は寂しそうにバラの庭園を見つめる。男爵が，従業員に見送られホテルを去るとき，高柳がやってきた。「お金はいくら持っていても天国へは持っていけませんからね」と高柳に話す男爵。何も言わず従業員に迎えられながらホテルの中に入っていく高柳の後ろ姿を，見つめる男爵。 　フロンティアでは，桐野が清川堂からの電話を受けた。清川堂が契約をすると連絡してきたのだった。１日限定250個と言う条件で。「やってくれるわね」と桐野。報告を受けた高柳は「いくら積んだって？」。「聞いていません」と香織。高柳は，その場で清川堂に電話をする。そのころ，出社をして初めて契約のことを聞いた島男。島男は，清川堂の和菓子を差し入れし，みんなにそのおいしさについてうれしそうに語る。他の社員も，感心しながら聞いている。神谷は，島男中心の輪ができているのが気に入らない。高柳が清川に謝礼金の話をすると，そんな話は出ていないと言う。「私は今までたくさんの営業を断ってきました。札束で頬をたたくような商売には，正直うんざりしています。私は鈴木さんの人柄に惹かれたんです。お金でと言うことであれば，お受けしてなかったと思います」と言う清川。話を聞きながら，黙って島男を見つめる高柳。１人はずれていた神谷だったが，島男に勧められ，やっと和菓子を食べる。「うまい」と一言。「ですよねぇ〜」と笑顔の島男。電話を切っても，黙って島男を見つめる高柳。 　その夜。街で香織と出会う。「ごはん，まだでしょ？何食べたい」と香織が声をかけても黙っている島男。「まだ私のこと避けてる？」と香織。しばらく黙っていた島男だったが「できれば甘いもの以外のものが」と答える。２人仲良く，夜の街を歩いていった。

第２話「憧れのヒルズへ」 　 　ほこりかぶったパソコンが片隅に・・。鈴木家の団らんは，島男・まり子・龍太の３人だけになってしまった。島男は「警備の仕事こんなに合うと思わなかった」と言うが，龍太は「無理してんじゃないの」と。この家もあと１ヶ月で競売に。「オレが大金持ちになって，買い戻してやる！」と野望を語る龍太だったが，「それは野望じゃなくて無謀」とまり子。 　警備中。高柳が戻ってくる。いつものように多くの記者達に囲まれる高柳。島男は先輩の豊田と一緒に必死で警備する。ゲートを越えた高柳が「キミ！」と声をかけてきた。「鈴木島男君だね。あとで社長室に来ていただけますか」と言う高柳。豊田は「何しでかしたんだ」と心配する。約束の１時間後。フロンティアに向かうと，丁寧な出迎えがあり案内されながら社長室へ。仕事中のフロンティア面々も島男の姿に気づき驚く。そんな視線を浴びながら，ちょっぴり誇らしげな島男。社長室に入ると，「訪ねてきてくれたんだって」と高柳。「やっぱり来ましたね」。「僕が間違っていました」と島男。高柳が「用件は何でしょ」と聞くと「是非教えてもらいたいことがあります」と島男。「お金持ちになる方法を教えて下さい。あなたのようなお金持ちになりたいんです」。すると高柳は「見てもらいたい物があります」と。 　高柳は，島男と秘書の香織を連れて外出。向かった先は小さな会社。そこで，契約を切る話を持ち出す。こんな重要な話を２分で片付けるという高柳。相手がどんなに契約の継続を懇願しようとも全く相手にせず，本当に２分で終わりにしてしまった。そのまま高級レストランへ。「かわいそうだと思いますか」と高柳。島男は「僕自身が経験したことですから」。島男は自分の話をする。高柳は「どうしてお母様は亡くなったんでしょう」と投げかける。本当の原因は何なのか。「わかってるでしょ。貧乏だから・・違いますか？」と高柳。「その通りです」と島男。「だから，金持ちになりたいんです。どうしたら金持ちになれるんでしょう。SEとしては自信があります」。今度は，高柳はあの新聞記事を出した。「６年前買収したのは僕ですから」と高柳。島男が父の工場を継ぐと言うときに，共同経営者の友人が勝手に売却した相手が高柳だった。島男は，経営を友人に任せていたので，高柳のことは全く知らなかった。「あなたが経営を任せきりにしなければ，会社を失うことなく，貧乏になることなかったかも知れない。お母様も亡くなることはなかったかも知れない」と高柳。「プログラマーとしての年収はいくらでしょう？一千万？二千万？」。その程度の"金持ち"でいいのかと。高柳が住むのは10億20億を一瞬に動かす世界。「その世界に住人になりたくて来たのではないですか？世の中には，二種類の人間しかいない。使う者と使われる者・・・貴族と奴隷」。"奴隷"とは，自分で自分の運命を決められない人。「あなたはどちらを選びますか？」。 　スペインバー。豊田と飲む島男。島男は「金持ちになるには非情になるしかないんですか」。「当たり前だ」と豊田。島男は「もっと別な方法があると思うんですけど」。２人の会話を聞いていた守子は，「ひがんでる男嫌い」「うじうじしている人も嫌い」と言いながら２人に「サービス」とハム＆ワインを出した。 　家に帰ると，母の遺影を見つめるまり子の姿が。何か考え事をしていた様子だが，島男の姿を見つけるといつもの元気なまり子に戻っていた。島男は部屋に戻ると，ほこりをかぶったパソコンを取りだし，スイッチを入れた。 　警備員室に豊田の大きな声が響いていた。その後ろにはスーツ姿の島男の姿。豊田の後ろ姿は肩が震えていた。警備員をやめフロンティアに就職するという島男。豊田は「気を付けろよ。あそこの奴らは，人間じゃねぇ。気を許すと壊れちまうぞ」と涙を流していた。島男は，フロンティアの経営事業部に就職。社長室では，桐野が高柳に「SEとして雇うと思った」と。高柳は，島男が「金持ちになる方法」をストレートに聞きに来たのが面白かったと言う。桐野が「ものになると思っているの？」と尋ねると，「つぶれてもかまわない。アイツの人生だからな。お前は？」。「私？・・・賭ける？」と桐野。「どっちに？」と高柳。その時，神谷が島男にリサーチをやらせると報告に来た。高柳は「おもちゃ屋の件やらせろ」と命令する。「もちろん，ものになる方に」と答えて社長室を去る桐野。 　フロンティアショッピングの出店説明会の日。説明は桐野が進めている。業績が上がらない店には，アドバイスがあるので心配ないと笑顔で答える桐野。そのころ，神谷は島男に仕事を説明していた。島男の仕事は，フロンティアショップのリニューアルを機会に業績の悪い店を切るということ。「なるべく穏便に。明日までにキリを付けろ」と神谷。そのお店は，商店街の一角にある「かめや」と言う小さなおもちゃ屋。ネットの売り上げが唯一の収入源だという。それだって贅沢をしているわけではない。ギリギリの生活。店主はなんとか切らずに継続させて欲しいと頭を下げる。困った島男は「明日また来ます。書類準備しておいてください」と帰っていった。帰り道，魚屋により，龍太といつもの河原で話す。龍太は「なんか変じゃない？」と島男の様子を気にかけるが「いつも通り」と島男。龍太は「お前がネジ作っていようが，警備員だろうが，フロンティアの社員やってようがさ，なんだっていいんだよ。お前はお前じゃん」と詳しいことは聞かずに励ます。 　翌日かめやへ。店主はまだなんとかならないかと言ってくるが，妻の方が「サインしましょう」と。ネットショップに参加していなかったら，もっと早くダメになったからと。妻に説得され，店主がサインをしている間，島男が店の中を見回すと・・・。印鑑を押そうとする店主を慌てて止める島男。印が押されたのは，書類ではなく島男の手の甲。「あれ，何ですか？」とおもちゃの山を指さす。親が残したがらくただという。それを１つ１つ確認した島男は，驚いている。 　社に戻ると，オークションシステムを作ると言い出す島男。しかし，フロンティアにはオークションサイトがなく，システムもない。「全て２日でやります。絶対に利益上げます」。認めようとしない神谷だったが，桐野は「いいんじゃない」とあっさり認める。「"あの鈴木島男"がオークションのシステム作って，テストしてくれるのよ。上手くいけば会社の利益になると思うけど」と桐野。パソコンの前，目を閉じじっと考える島男。ひらめくと，夢中になって動き出した。 　夜。家にはまり子と龍太の姿しかない。２人の団らん。龍太は意を決して「結婚しねぇ？オレたち・・競売かけられても，オレの家にくればいい」とまり子に言う。「障害が一つ」とまり子。その障害は「私・・・龍太のこと何とも思ってない」とあっさり言い放つ。 　１人残って仕事を続ける島男。そこへ香織が顔を出す。島男は「高柳さんに内緒にして下さい。SEの仕事なんです」と香織に自分のやっている仕事を説明する。「僕は僕のやり方でしかできないってわかりました。宝の山を見つけたんです。おもちゃのアンティークです」。「がんばってね」と立ち去ったように思えた香織だったが，島男がまた顔を上げると香織の顔が。「私にできることある？」。香織も手伝いながら，着々と作業が進んでいく。「香織さん，できました」と島男。机で居眠りをしていた香織も起き，完成したオークション画面を確認する。島男は「僕はただ甘いだけなのかも知れない」と言うが，香織は「高柳社長のようになる必要はないわ。今のままで充分」と励ます。島男には幸せなときが過ぎていく・・・。 　自分の部屋で熟睡している島男の元に電話が。「オークション見て！」と言う香織の声。大急ぎでパソコンを開いてみると，おもちゃの値段がどんどんつり上がっていく。大慌てでかめやへ向かう島男。かめやでは，みんな興奮気味。フロンティアでも，この動きにビックリしていた。島男は「１日で500万円売り上げました」とうれしそうに報告するが，「社長の気持ちは変わらなかった」と桐野。かめやを切るという判断は変わらなかった。納得行かない島男は，高柳の自宅へ連れていってもらった。 　高級マンション。島男が「おもちゃのかめやの件ですが，今日だけで500万儲けたんです」と言うと「今後の見通しは？」と高柳。島男は「これを元手に新たな展開を・・」と言うが，「この世界で重要なのはスピードだ。お前が500万稼いでいる間に，世界最大のおもちゃメーカー・トイプラネットを獲得した」と言う高柳。トイプラネットの売り上げは14億１千万円。桁が違う。それに，トイプラネットが参入する条件は，競合他社を参入させないこと。つまり小さなかめやでもダメと言うことだった。「ビジネスに情をはさむな。母親のことも忘れろ。自分が優しい人間だと思っているかも知れないが，それは違う。お前は優しくなんかない」。かめやを救うと，トイプラネットを失い，フロンティアに大きな損害が出る・・・。その時，ソファで寝ていた香織が起きだした。顔を見合わす香織と島男。ショックを受ける島男・・・。 　次の日。香織がかめやに行き，説明をする。店主は「一時だけど，いい思いをしました。これを元手にがんばります」と，晴れ晴れとした顔をしていた。そして「最後の一つ・・・島男君に」とロボットのおもちゃを差しだす。香織が社に戻り島男に手渡すが，よそよそしい島男。逃げるように出ていってしまう。香織が社長室を見ると，そこでは高柳と桐野がシャンパンを飲みながら語らっていた。「オレの方に分があるな」と高柳。桐野は「どうかしら。まだ負けてないわよ」。 　スペインバー。いつもの場所に豊田。入り口すぐのカウンター，豊田のいる場所と，フロンティアの面々がいつもいる場所と，ちょうど中間の場所に島男。豊田は眠ってしまっていたが「島男，こわれちまうぞ・・・」と寝言を言っている。「もう壊れちゃったわよねぇ。落ち込む男って大嫌い」と守子。島男は「知ってたんですか。香織さんと高柳社長がつきあってること。どうして教えてくれなかったんですか」と。守子は「あなたに教える筋合いはないじゃない」。「余計なことはいろいろ教えてくれるのに，肝心なことは言わないんですね」と島男が言うと，「嫌みな男も嫌い・・・はい，サービス」と守子。

第１話「ずっと探してた人」 　 　ほこりかぶったパソコンが片隅に。ここは下町にあるネジ工場。郵便屋が来ると，いつものように受け取りを担当する経理の中田。今日は給料日。島男は従業員一人一人に給料を手渡す。その後は，従業員と家族と一緒の団らん。ただ，今回は中田がいない。そこへ，妹・まり子も帰ってきて合流。そして島男の幼なじみ龍太も残り物の刺身を持ってやってきた。賑やかな食卓。まり子がテレビを付けると，そこには高柳が映っていた。今をときめく有名人だが，島男は知らない。高柳は，38歳で大金持ち・大会社の社長。「こういう勝ち組と結婚したい」とまり子。すると龍太は「どうせ，オレらは負け組さ。金のない暮らしはイヤだ」と。でも島男は「お金は大切だけど，一番大切じゃないからね。今が何より一番なんだ」とこの団らんが一番だという。 　その後，島男は龍太と居酒屋へ。うれしそうに通帳を見せる。50万貯まっていた。このお金で母・藍子をハワイ旅行に連れていくという。その帰り道。中田がヤクザ風の男達に絡まれている。話を聞くと50万の借金が返せないと言う。「母が病気で」と土下座をする中田。そんな中田にせっかくためた50万円を渡してしまう。島男の行動にあきれる龍太。「また稼げばいいさ」と言う島男。「情けは人のためならずって言うじゃん」。それでも龍太はあきれている。 　町内の福引きに真剣に挑戦する島男。出てきた玉は「金」。特賞のハワイ旅行が当たった。「父さん，神様ありがとう」と島男。藍子を連れて，初めてのハワイ旅行へ。ハワイを十分に満喫する母子。子供のようにはしゃぎまわる島男は，プールサイドを走っていて，女性・香織とぶつかり，二人して深いプールに落ちてしまう。水中で見つめ合う２人。プールサイドに上がると，２人で「大丈夫？すみません」と謝る。藍子は，お詫びにと香織をホテルのポリネシアンディナーショーに誘う。ディナーショーが始まっても，香織の姿はない。高級ホテルに泊まっていると言う香織が，こんなツアー客相手のショーには来ないと言う島男。そこへ，香織がやってきた。島男の名前がわからず手間取ったと。「アイランドの島に男です」と自己紹介する島男。島男にとって幸せな時間が過ぎていく。 　次の日。島男は香織が忘れた手帳を届けに高級ホテルへ。案内された部屋は，スイートルーム。部屋を見ただけで呆然とする島男。そこには高柳の姿があった。朝食に誘われるが，大きなテーブルに高級そうな食事。しかも，高柳と香織は仲が良さそう。食事の後は，シャンパン。朝からシャンパンを飲むことに驚く島男だったが，高柳は「これが飲みたくてがんばってきた」と言う。高級なシャンパンを飲む夢を手に入れ，夢だったサッカーチームを手に入れた高柳。彼の野望が次々と語られる。世界規模のとてつもない野望。そんな野望を聞いていた島男は「そうやって全てを手に入れたら，どうするんですか？」と投げかける。高柳は「そうなったら暇だから，毎日このシャンパンを飲んで暮らすさ」と言う。「今飲んでいますよね？苦労してやっと手に入れる幸せはもう手に入っているのに」と島男。そんな島男に高柳は「君はビジネスマンにはむいていないようだね」。島男が帰ろうとすると，高柳は数枚の紙幣を取り出す。「受け取れません」と島男。「僕のお金じゃありませんから」。高柳は，お金はあっても困らない「この世で金で買えない物はない」と断言する。「そうでしょうか」と島男。今度は，名刺を差し出す高柳。「困ったことがあったら，いつでも訪ねておいで」と。「たぶんおじゃますることはないと思います」と言う島男に「そう思うかい？」と高柳。島男が去ると「ああいう連中がいるおかげで，オレはどんどん金持ちになって行く〜」と高柳。 　海を見つめる島男と藍子。藍子は，大学を無理に辞めさせて工場をつがせたことを後悔していた。「続けていたら，香織さんなんかがいる会社に勤めていたのかなって。コンピューターでお金持ちになっていたのかも」と言う藍子に，島男は「もうコンピューターの話は言わないでよ。孫の顔でも見たくなった？孫はまり子が産んでくれるよ」と。そして２人とも今が最高に幸せだと。 　ハワイから自宅に戻ると，工場の物が運び出されていた。慌てる島男。奥の茶の間に行くと，まり子が「倒産しちゃったの！」と叫ぶ。経理の中田が全てを持って逃げてしまった。あの50万円の借金も芝居。荷物を運ぶトラックを呆然と見つめていた藍子は，突然倒れてしまう。医者によると，治療法は心臓移植しかない。その費用は５千万円。飛び出す島男。どこでもいいから借金をしてくると。もちろん，そんな大金を無担保で貸してくれるところはない。走り回る島男に，まり子から電話が。「お母さんが・・・」。島男が病院に駆け込むと，もう息を引き取った後だった・・・。「母さん，オレ，何か悪いことしたっけ」とつぶやく島男。 　病院の支払いは，75万。母を弔うにも通夜も葬儀もないと言う最低でも24万円。それを払うお金がない・・・。薄暗い部屋。まり子が戻ってくると，母の遺影の前でつぶやく島男「ネジを１個作って２円なんです。ネジは一日中働いても，２万個しかできないんです。僕が５千万円稼ぐには，30年かかるんです・・・こんなの金じゃないよな。オレが今まで汗水流して稼いでいたのは金なんかじゃない」。テレビには高柳の勝ち誇った姿が。じっと名刺を見つめる島男。 　六本木ヒルズ前。しばらく見上げていたが，意を決して中へ入っていく島男。受付で高柳と面会を求めるが，約束もない面会は断られる。偶然通りかかった神谷にも話をする。「アイランドの島に男です」と自己紹介するも，「社長に話しておきます」と門前払い。仕方なく外に出る島男。神谷は，社に戻ると島男を要注意人物に載せた。その手続きをしている間，島男は名刺の番号に電話をかけていた。電話受付が手続きをしていると・・・要注意人物リストへの掲載も終了。受付が名前をインプットした途端，要注意リストが。瞬時に電話は切れてしまう。その時島男の目に入ったのは，警備員。 　警備員室へ向かった島男。そこで雇ってもらうことに。早速，豊田と一緒に警備。そして社内見回りへ。フロンティアに堂々と入っていく島男。もう残っている人は少なかったが，社長室の近くで桐野に出会う。島男が「鈴木島男です」名乗ると，桐野の方から「アイランドの島に男」と言う。高柳は今イタリアに出張中で，明日帰ってくると。島男がいってしまってから，島男の名前に引っかかりを感じ，パソコンで調べていた桐野は「そうよ！彼よ！」。 　次の日。島男が警備をしていると，高柳が戻ってきた。たくさんの記者に囲まれている高柳に近づこうとするが，記者の勢いに負け倒れ込んでしまう。高柳が社長室に戻ると，裕美が出張につきあわせるのが香織ばかりとひがむ。高柳は，明日のプロジェクトが成功したら２人でお祝いしようとなだめた。 　スペインバー。豊田と一緒に飲みに来た島男。豊田は，フロンティアの社員とは口を利いてもいけないという。豊田から，香織が高柳の秘書だと聞いて，うれしくなった島男。その時，桐野や神谷らフロンティアの社員達がやってきた。カウンターの向こう側で談笑するフロンティアの面々。島男が名刺を持って桐野の所へ行こうとすると，守子が止めに入る。「いくらの時計しているの？・・シャツは？」。島男の腕時計は2980円，神谷のは230万円。島男のシャツは980円，桐野のスーツは30万円。「向こう側とこちら側では，簡単に越えられない壁があるの」と諭す守子。でも，島男はそんな忠告も聞かずに近づく。もちろん相手にされない。それどころか，名刺は「どこで拾ったんだ」と宮沢に破かれてしまう。その後，フロンティアの面々は出ていってしまう。座り込んでいる島男に，守子は高級シャンパンを差しだす。「人間にはいくら努力したってたどり着けない場所があるの」と。このシャンパンは１杯２万円。島男の１日の働き分以上。ハワイで飲んだシャンパンを思い出し，高柳の言葉を思い出す。家に戻った島男。「なにやってんだろう，オレ」と１人缶ビールを飲む。 　フロンティアは，プロジェクトに向けて活気づいている。スタッフに説明をする桐野。プロジェクトは，世界初のリアルストリー民具によるサッカーのネット中継。視聴者参加型の企画もある。「我々は常に勝ち続ける！」と誇らしげな高柳。その時に向かって時間が過ぎていく。 　島男は定例の社内見回りに向かう。サッカー中継はもう目の前と言うとき，フロンティアでは重大な問題が発生した。不正アクセス。セキュリティーブロックも突破され，プログラムが次々と書き換えられていく。その場にいるスタッフではどうすることもできない。神谷に連絡を取るが，今社長はスタジアムでパーティー中。とても抜け出せる状態ではない。現場のスタッフでなんとかしなければならない。プロジェクトが失敗すれば50億円の損失。桐野は，全ての電源を落とし回線とサーバーを同時に切るという決断をした。島男がフロンティアの巡回に来たときに，その処置の為に飛び出していく宮沢に出くわす。何事かと島男はフロンティアの中へ。その時社内が真っ暗に。島男が声をかけても相手にされない。電気がつくと，緊迫した状態のスタッフの姿が。プロジェクトスタートまであと20分。最終手段としてとった処置だったが，復旧せず。じっとパソコンを見つめていた島男は，キーボードをたたく。そして「これはハッキングじゃない，サーバー侵入型の新型ウイルスです」と。宮沢は，島男につかみかかり追い出そうとする。しかし，桐野がそれを止め「できるのね」と。しばらく画面を見つめて考える島男。桐野が「あと10分」と言うと「楽勝です」と笑みを浮かべる島男。島男の指がものすごいスピードで動き出す。感心して見つめるフロンティアの面々。島男は楽しそうにキーボードをたたき続ける。時間切れギリギリに直し，問題なくプロジェクトはスタート。社内は一斉に忙しくなる。ふと我に返る島男。桐野が周りを見渡すと，すでに島男の姿はなかった。 　次の日の朝。桐野は，高柳に報告していた。「鈴木島男」が直したと。「覚えていない？」と桐野は，６年前の記事を取り出す。そこには＜学生起業家ビジネス支援上を展開／天才プログラマーソフト開発で利益＞と言う見出しが。島男の写真の下には＜株式会社ハイアイランド代表・鈴木島男＞と言う説明が。「あいつか。なんでハワイで思い出さなかったんだ」と高柳。桐野「鈴木島男」。高柳「鈴木島男」。その「鈴木島男」は，下町の閉鎖された工場で，スエット姿でネジを手にしていた・・・。