| 第１回 極道から老人介護への華麗なる変身 | 第2回 頑固ジジイの涙 |
| 第3回 阻止せよ老人虐待 | 第4回 詐欺ヘルパー現る |
| 第5回 憎き母との再会 | 第6回 認知症患者の恋 |
| 第7回 非婚アラフォーのシングル介護 | 第8回 敵対組長の襲来!!そして女の覚悟 |
| 第9回 愛の討ち入り！！任侠おくりびと | 第10回 正体がバレ，告白・自殺そして火災発生 |
| 最終回 最終回１５分拡大スペシャル・・・最後の手段 |
| ＜最終回＞ タイヨウの騒動の後，鷹山の元に集まった彦一たち。鷹山は「幹部を決めるのはタイヨウの火が完全に消えてから」というが，りこは「いつまで待たされるんですか。勝負ついてんじゃないですか，このメンツじゃ」と彦一の方をにらみながら言う。鷹山「最初からあきらめてるようなヤツは選ばねぇ」。 火事ですすけてしまったタイヨウ。入居者たちはホールに集まって生活していた。晶は，自分が入所する施設も決まり，涼太の行き先も決まったので，タイヨウを出て行くことになった。りこは持っていた晶の荷物を彦一に押しつける。彦一が荷物をタクシーに詰め込むと，泣き出しそうな涼太。そのほっぺをいつも通りにつかむ。彦一「すぐ泣きを入れるようなヤツにアニキなんて呼ばれたくねぇな」。晶の提案で，3人の写真を撮ることになった。相変わらず仏頂面の彦一。タクシーに乗り込む晶に，彦一は何か言おうとするがなかなか言葉が出てこない。やっと出てきた言葉が「がんばれよ」。晶「がんばる」。晶と涼太は，皐月に付き添われタイヨウを出て行った。寮に戻ると，りこに「結局何も言えないまんまいかれちまったのかよ。なさけねぇなぁ」と言われる。彦一は「あの女が決めたことだよ」というが，りこは「あんたがあの女に決めさせたんだよ。良かったのかよ，それで。あんたはどうしたかったんだよ」という。そして「１つ頼みがあるんだ」と。りこが話し出す前に，晴菜が駆け込んできた。タイヨウの前にマイクロバスが止まり，たくさんの老人たちが降りてきていた。責任者らしき男が，施設がつぶれてしまい行き先がないから，しばらく預かって欲しいと頼み込んでいた。いわゆる"介護難民"だった。とりあえず，老人たちを受け入れているが，その体には縛られていた痕が。 涼太は，父親の藤堂の家で新しい生活を始めていた。タイヨウでは，介護難民の老人たちを連れてきた男と連絡が取れず，困惑していた。役所に連絡を取ると，彼らの受け入れ先は探してくれるが，それまでは預かっていて欲しいと。タイヨウの入居者の受け入れ先も見つからない状態。彦一と晴菜が，彼らがいたという"施設"を訪ねていった。施設とは名ばかりの，普通の狭い住居。部屋一杯にしかれた布団。ゴミだらけ。ひどい匂いもする。とても人が生活できる状態ではない。最低料金で最低のサービス。今，こういった無認可施設が増えてきている。そういうところでも，入りたい人はたくさんいる。晴菜「うちに残っている人たちも，このままだと・・・」。彦一は，手足を縛られた老人や，劣悪な状況で生活している老人の幻を見てしまう・・・。利用者たちの書類等を探していると，電話が鳴った。彦一が仕方なく出てみると，振り込め詐欺だった。相手を追い込めるように対応すると，突然正体を現した電話の相手。電話を切った後，彦一は自分の腕の彫り物を見て，嫌悪感を覚える。振り込め詐欺。タイヨウにやってくるまでに自分がやってきたこと。そのことに気付いてしまった。あわてて外の空気を吸い，深呼吸する。 晶の元へ涼太が遊びに来ていた。以前の涼太に戻ったような様子。晶が何を聞いても「普通」と答え，笑顔が見えない。晶は「帰りなさい。約束したよね。新しい場所でお互いがんばろうって。新しいお家に早くなれるように，しばらくは離れてがんばろうって，約束したよね」。涼太は何も言わず出て行った。涙をこらえながら見送る晶。タイヨウでは，今までの入居者と新しくやってきた老人たちが，協力しながら生活していた。食事の世話は彦一たちがやっていた。老人たちに感謝される彦一たち。それに対して，老人たちを励ましているりこ・三樹矢・五郎・二本橋。それを見ていた彦一が，突然キレ，飛び出してしまった。4人が心配して追いかけてくる。彦一は「わかってんのか，おめぇら。研修終われば，オレらはよ，また年寄り食いもんにして生きていくんだよ。難民だろうが，くたばろうが関係ねぇ。骨の髄までしゃぶり尽くして，それでおさらばだ。オレら戻んだぞ，極道に」。「だからなんなんですか」と晴菜。極道の世界のことは関係ない。「あそこにいるご老人たちには関係ないことじゃないですか。謝ってください」。そういわれても出て行ってしまう彦一。寮に戻ると，涼太がDVDを見ていた。彦一が放り出そうとすると，必死にかみつく涼太。泣き出さないように必死で自分のほっぺをつかんでいる。じっと見ていた彦一は，そっと手を取り握りしめる。我慢していたことを全部はき出すように泣き出した涼太。そんな2人の様子を見つめるりこ。 晶が3人で撮った写真を見ていると，藤堂から電話がかかってきた。涼太が夜になっても戻らないので，心当たりを教えて欲しいと。涼太は，一晩タイヨウに泊まり，手伝いをしていた。そこへ，藤堂たち役人が視察にやってきた。この状況に指導が入る。りこ「お国がなんとかしてくれよ」。もちろん，そんなことはしてくれない。それなら仕方ないだろうと。藤堂「劣悪な状況に高齢者を押し込んで，介護施設と名乗る。そんなものは介護とは呼ばないんだよ」。彦一「じゃ，なんなんだよ。介護って言うのは。教えてくれよ。頭の悪いオレにはわかんねぇんだよ」。藤堂「頭のいいオレにも分からないな。たぶん，答えはないだろう」。彦一「答えもわかんねぇで制度作ってんのかよ」。藤堂「それがオレたちの仕事なんだよ」。結局，今の状況では，保健所のチェックを入れられ，移動の準備が必要だと言われる。ただ単に移動させられるだけでは，その後たらい回しされるのが目に見えている。「お待ちください」とやってきたのは，六車。「集合住宅として申請すれば，誰も出て行かなくていいんですよね」。六車が言っているのは高専賃・・・つまり，高齢者専用賃貸住宅として申請すれば，ほとんど今のままで運営できる。しかも管轄が国土交通省に変わるので，藤堂には何も言えなくなる。そういわれると，藤堂も何もできなかった。あとは涼太のこと。彦一が呼んでも出てこようとしない。「ガキは責任持って帰しますよ」と彦一。とりあえず，帰って行く藤堂たち。そこへ，辞めてしまったヘルパーたちも，噂を聞きつけ戻ってきてくれた。 りこは，彦一を屋上に呼び出した。りこ「頭は，あんたを幹部にしようとしてんだよ・・・こえぇのか，極道に戻るのが・・・私だってこえぇんだよ。だけど戻んなきゃいけねぇ。幹部の椅子と一緒に。あんたには守りたいもんがあるんだろう？私には守んなきゃいけねぇもんがあるんだよ」。彦一「だったら何なんだよ」。突然土下座をし，「頼む。幹部の座，譲ってくれ」。 朝になり，ソファに寝ていた涼太が咳き込んでいたが，彦一は気にもしなかった。ところが，タイヨウに行くと，医者が来ていて大騒ぎになっていた。施設内感染。肺炎を起こしている老人もいる。慌てて涼太の元へ戻る。涼太を抱きかかえ，何とか救急車に乗せようとするが，すでにたくさんの老人たちが搬送され，ごった返してる。それでも，なんとか病院へ運ぶことができた。藤堂たちも駆けつけてきた。涼太は熱はあるが大丈夫ということだった。藤堂は，今回のことを堅調に指導したと。集団感染を出した施設では，高専賃の申請も難しいだろうという。藤堂「制度はお宅らのような人間から，高齢者を守るためにも必要なんだよ。介護を悪用し，高齢者を食い物にする人間たちがいる。だからこそ，厳しい基準を設定せざるを得ない。お宅たちには，誰も救えやしないよ・・・涼太にはもう関わらないでくれ」。 病院からの帰り道。道を挟んでそこで生活するホームレスと遊んでいる子どもたちがいる，そんな公園を歩いていた。そこに，あの老人たちを捨てていった男を見つけた。追いかける彦一。その男は「捨てて何が悪いっていうんだよ。奴らは捨てられたからうちに来たんだよ。最初に捨てたのは誰だ？家族じゃねぇか，国じゃねぇか」。そういわれ，一瞬すきを見せてしまった。 がらんとしているタイヨウ。みんなの行き先が決まり，翌日，病院からそれぞれ新しい場所へ移動していくことになった。園崎「今日までよくがんばってくれました。心から感謝します。タイヨウは終了します。本当にありがとうございました」。寮に集まった彦一たちに，和泉が鷹山からの伝言を伝える。「幹部は翼彦一。明日総会で発表する。準備をしておけ」。彦一「ふざけんなよ。それだけかよ。ちゃんと説明しろよ。何のための研修だったんだよ」。和泉「それは自分で考えろ」。すると五郎が「わかんねぇよ。ハンパに終わっちまってよ。結局なんにもできなかったじゃねぇかよ」。彦一が1人，外に出てタクシーに乗り込もうとしている。今から戻ると電話をかけながら。ふと門の方を見ると，入居者の老人たちが戻ってきていた。何人かの老人たちが，タイヨウに戻ってきた。園崎も迎え入れる。その様子を見ながら，彦一は「行くか」というが，五郎は「飯でも作るか」と。着ていた洋服を脱ぎ，背中一面の竜の彫り物が見えた。その上に，黄色いヘルパーのユニフォームを着る。「アニキ」と彦一に一礼。それを見ると，彦一は1人出て行った。。老人たちは，明日には新しい施設へ向かう。りこと晴菜は，2人で居酒屋へ。まるで普通に友達同士が飲んでいるよう。無理矢理日本酒を飲むりこ。組長は日本酒を飲まないとダメなんだと。本当はグループフルーツサワーが好きなのに。それを聞いた晴菜は「グレープフルーツサワー１つ！」と注文する。りこは苦笑いをしながら「組長，降りるしかねぇなぁ」。 彦一は晶を訪ねていった。すでに眠っているよう。そんな晶に語りかける彦一。「ガキ，親父の元へ戻ったぞ。タイヨウはつぶれちまったよ」とベッドの足下に座り込む。「偉そうなことばっか言ってよ。結局よ。なんも守れなかったんだよ。幹部って言われても，うれしくねぇしよ。そんなオレが幹部やって何ができんだよ」。涙をこらえている彦一。すると眠っていると思っていた晶が「あなたらしくない」と。そして「私も何もできなかった。涼太になにも」。彦一「んなことねぇよ」。晶「でも，私は私だって言ってくれたのは，あなたじゃない。今日ね，食事の時間に厨房から焦げたにおいがしたの。そのとき，涼太のお弁当作っている自分を急に思い出した。それまであの子の存在すら忘れていたのに。あなたの言ったことは正しいんだと思う。記憶がなくなっても，私は私でしかない。あなただってそうでしょ」。涙をぬぐいながら彦一は聞いている。 りこは，隼会の総会が行われている会場へ向かう。部屋に入る前，意を決して，バッチを取り外して・・・。ところが，会場には誰もいなかった。そこへ鷹山がやってきて，「総会は中止だ。バカの気まぐれでな」。その頃，タイヨウでは，彦一・和泉・五郎・三樹矢・二本橋がバリケードを作っていた。老人たちは，一角で守られている。和泉は彦一に「変わってるよ，あんた。幹部の座捨てて，こんなことするなんて」。彦一「そういうてめぇも同じ穴のムジナじゃねぇかよ」。和泉「仕方ねぇ。任侠知っちまったからな」。そこに電話が鳴った。外には警官隊が。藤堂の姿もある。その藤堂が電話をかけてきていた。彦一たちは，タイヨウに立てこもっていた。涼太・晶・六車はそれぞれの場所で，このニュースを見ていた。藤堂と電話で話す彦一。「ここにいるじいさん，ばあさんは，この施設で最後まで面倒を見る」。外では突入の準備が進んでいる。藤堂は新しい施設での受け入れが決まっていると言うが，彦一「たらい回しにされるだけだろ。だから，最後まで面倒を見るって言ってんだろ」。藤堂「前例認めたら，同じこと考える人間が現れる。みんながみんな目の前の老人だけを救っていたら，介護行政は崩壊する」。彦一「目の前にいる人間を見殺しにしなきゃ成り立たない制度だったら，いっそのことつぶしたらどうだ」。その頃，りこは鷹山と話していた。鷹山「幹部は辞退するとさ。自分よりよっぽど気合いが入ってるヤツがいるからってよ」。出て行こうとするりこを止めようとする鷹山。「あいつの気持ち，くんでやれ」。止める手を振り払って出て行くりこ。 藤堂「早く解放しろ」。彦一「こんなことしたって，一部の年寄りしか救えねぇ。何の解決にもならねぇ。そんなこと，わかってんだよ。神様じゃあるめぇしな。だけど，オレらは目の前にいる弱ぇやつらほっとくことできねぇ。ましてや少しでも関わった連中を途中で放り出す気になれねぇ。これがオレたちの筋の通し方だ」。合図で警官隊が突入していった。壮絶な戦いが繰り広げられる。お互いをかばいながら，老人たちを守りながら，警官隊と戦っている。園崎や晴菜も，警官隊に立ち向かう。彦一たちは強かったが，大量の警官隊に押され，次々と捕まっていってしまう。彦一は，1人ずつ名前を叫んでいた。彦一「なめんじゃねぇぞ！」。そして「じいさん！ばあさん！」と老人たちのことも呼んでいた。その彦一も，最後に取り押さえられてしまった。保護された老人たちは「彦一さん！」と心配して車から出てこようとする。そこへ，四方木連合の連中が駆けつけてきた。久米「しょうがねぇなぁ，うちのお嬢ちゃんは」とうれしそうに。老人たちは「りこちゃん！」とうれしそうに呼んでいる。りこの姿を見た彦一は「ばかやろうが」。りこ「まだ終わっちゃいねぇぞ！てめぇら！」。組員総出で警官隊にかかっていった。それを見守りながら，彦一は連れて行かれていった。 警察。保護された老人たちが廊下で楽しそうに話している。「今日は盛り上がって良かったねぇ」。何度も同じ話をしている。「私ら，どうなるんだろうねぇ」。「たらい回しだろうねぇ」。「でも盛り上がって良かったねぇ」。そこへ六車がやってきた。「翼彦一さんの依頼で参りました。みなさん，今日から私の施設でお預かりします」。六車は，新しい介護事業を始めていた。新聞には，彦一たちの事件が載っていた。ただ，介護問題に一石を投じる・・・という内容で。＜介護業界の闇に切り込んだ＞＜介護行政の見直しを迫られる厚労省＞。その記事を読んだ藤堂は「やられたな」。介護行政に関する会議で，藤堂は発言していた。「こんな制度はいったん忘れて。まずは現場ありき。考え方をシフトした方がいいと思います」。周りは反対。それでも藤堂は「自分の身近にいる弱者を守るためにどうしたらいいのか。僕たちは本気で議論をするときが来たんだと思います。介護ってそもそも弱きを助け強きをくじくってことじゃなかったでしたっけ？」。 隼会では，りこの幹部就任の儀式が行われていた。鷹山は親分，りこが頭。五郎は，介護の勉強のために学校へ通っていた。そんな五郎のそばには晴菜がいた。二本橋は，以前と同じように娘と会っていた。三樹矢は相変わらず。巫女をナンパ。ただ，仕事を聞かれると「男の仕事」と答えていた。和泉は鷹山の片腕になっていた。 海岸に車の行列。りこだった。たくさんの組員を引き連れている。車から降り，海岸に向かうと，そこには彦一の姿が。りこ「いつ出てきたんだよ」。彦一「つい最近だ」。りこ「初耳だな」。彦一「わざわざお出迎えなんて古いしな」。りこが連れてきた組員たちを見て，彦一「さすがだな，幹部は」。りこ「バカにしてんだろ」。彦一「まあな」。しばらく海を見つめる2人。彦一「じゃ，行くわ」。りこ「どうすんだよ，これから」。彦一「まだ決めてねぇよ」。りこ「組に戻んねぇのか」。彦一「さぁな」。りこ「１つ頼みがあんだけどよ」。彦一「また土下座か」。さっと彦一を組員たちから見えないところへ引っ張り，キス。そのまま立ち去ろうとするりこ。彦一「おい！」。りこ「おいじゃねぇよ，頭だって」。 晶が生活している施設。涼太が「アニキが来たよ！」とうれしそうに報告する。その後ろから，ひまわりの花束を持った彦一が。晶は「アニキって，ぼくのお兄さん？」。涼太「今日は忘れちゃってるみたい」と笑顔で言えるまでになっていた。彦一「そうか」。涼太は飲み物を取りに行ってしまう。２人きりになる。彦一「いい天気だな」。晶「そうですね」。彦一がたばこを吸おうと口にくわえ，ライターを開くと・・・その音にはっとする晶。表情が変わる。晶「ここは全面禁煙よ」。以前の晶だった。笑顔になる彦一。 園崎が自転車に乗り，タイヨウへやってきた。板打ちされて閉鎖されているタイヨウ。そこには閉鎖のお知らせの看板が。その看板を勢いよく取り外した！  |
| ＜第１０回＞ タイヨウの職員たちに，彦一たちが極道であることがばれてしまった。そんな騒ぎを知らない彦一は，晶が涼太のために残していたビデオレターを，晶の家で涼太と一緒に見ていた。そのビデオで晶は病気のことを告白していた。その晶は，自分の部屋で呆然としていた。遊園地に行ったことすら覚えていない晶。そして涼太のことも。その世話をしているのは，秘書だった皐月。皐月から遊園地のことを聞いた晶。カッターが目に入る・・・。一方，騒ぎになっているタイヨウにはハートフルバードの弥生がやってきていた。りこたちが極道であるということに嫌悪感を現す職員たちに，和泉は「ヘルパーとして真面目に働いていただけです」と。それでも納得できない職員たちに，「オレもこいつらと同じだ」とリストバンドを外して彫り物を見せる。さらに驚く職員たち。そこへ，弥生の携帯が鳴った。本社から，タイヨウのフランチャイズ契約解除の決定が伝えられた。晶の家では，皐月が買い物に出かけいていた。涼太は，彦一に「ママの病気治らないの？僕のこと思い出せないの？」と尋ねる。答えられない彦一。そこへ部屋から出てきた晶が通りかかった。シャワーを浴びてくるという。その時，彦一にりこから連絡が入った。すでにりこたちはタイヨウを出ていく準備をしていた。あわてて戻ろうとする彦一だったが，涼太が晶が着替えも何も持たずに浴室へ行ったと聞かされると，浴室へ走っていく。涼太は中に入れないようにし，晶に呼び掛ける。何の反応もない。彦一が扉をあけると，晶は手首を切っていた。病院へ運ばれる晶。付き添っている彦一のもとへ，園崎とりこがやってきた。晶が目を覚ましたが，手首を切ったことも覚えていない。ただ，涼太を心配している様子から，涼太の存在は思い出せたようだった。涼太は皐月が預かってくれていた。彦一とりこは病室を出る。園崎は，彦一たちに残ってほしいと言っているらしい。フランチャイズ契約を切られ，新しいヘルパーを見つけることに時間がかかるから。鷹山は，残るのも出て行くのも自分で決めろという。それも研修の1つだと。病室では，園崎が晶の今後について話していた。晶は，若年性認知症の専門施設を探してもらっていて，涼太については涼太の父親にお願いするか，ダメな場合は里親を探そうと考えていた。園崎は「よろしければ，うちの施設にきませんか」と。 タイヨウでは，まだ利用者たちには彦一たちのことはばれていなかった。ただ，りこが今までのように声を荒げると，ほかの職員たちがビクビクしてしまうう。すでに和泉はやめてしまっていた。そんなタイヨウに晶が入所してきた。その手伝いをする皐月。皐月は，晶と一緒に会社を辞めてしまっていた。晶にあこがれて仕事をしていたからと。和泉は，鷹山と会っていた。今回の写真のことは，鷲津組を破門された連中の仕業だろうと，和泉が動くことになった。鷹山「またこの世界にもどるのか？」。和泉「まだ迷ってます。たぶん，あいつらも」。彦一は，一人になると若年性認知症の資料を読んでいた。真剣な表情で。そんな時，りこがやってきた。晶の担当になったという。彦一「気をつけてみてやれよ」。その言葉に，りこは「そんなに心配なら，てめぇで面倒みりゃいいだろ」といらつく。そのころホールでは騒動が起きていた。五郎が，ほかのヘルパーの態度にキレて暴れていた。「少し頭冷やしてこい」と彦一。その場を離れる晴菜を追いかけていくりこ。晴菜は，彦一たちを怖がっていた。今までは，乱暴でぶっきらぼうだけれど，やさしくていい人だと思っていたの，極道と分かると自分たちとは違うと思うと。「怖いんです。一緒にいるの」。寮に戻り頭を冷やしている五郎。まだ組に入る前，一人暴れていた頃も同じような目で見られたと。六本木のシマでボコられて，彦一の口利きで組に張ることになってからは，少しはましになった気がしていた。「もう一人じゃねぇって」。そして，ここで働くようになって前よりもいい感じがした。「てめぇがマシになった気がしたっていうか」。二本橋も「私もです」。ただ，六車は「それでも僕らは堅気じゃない。堅気じゃないんだ」。彦一は，涼太と話していた。涼太は「どうしてみんなやくざが嫌いなの？」。彦一「悪いこといっぱいしてっからだろ」。涼太「アニキも？」。彦一「あぁ」。他のヘルパーたち5人が一斉に辞めてしまう。怖くて働けないというだけでなく，ここのやり方も限界だろうと。涼太はタイヨウから通学するようになった。晶は，涼太が学校へ行くとビデオレターを残すようになった。 厚生労働省老健部・藤堂のもとに，ハートフルバードの新社長があいさつに来ていた。藤堂は，晶はクーデターで辞任に追い込まれたのだろうという。さらに，最近フランチャイズ契約を打ち切った施設があるが，その理由を教えてほしいと。晶の病状は確実に進んでいった。夜中目を覚ますと，そこから逃げ出すために涼太を連れ出そうとした。必死に止める涼太だったが，晶に無理やり引っ張られ倒れた拍子に頭を打ち付けてしまった。暴れる晶をヘルパーたちが押さえる。その姿を泣きながら見ている涼太。涼太は，寮のリビングで寝ることになった。泣いている涼太を残し，いったんは自分の部屋に戻った彦一だったが，涼太のそばに戻ってきた。「オレの部屋，蚊がいんだよ」。そばで寝転んだ彦一のタオルケットを，ギュッと握る涼太。彦一はその手にそっと手を乗せ，握り返した。思いっきり泣きだす涼太。朝になると，そのことを全く覚えていない晶。涼太のことは覚えていて，朝見送りをするが，涼太の頭にこぶができていることに気付く。涼太は「蚊に刺されたから」とごまかす。涼太が出て行ったあと，晶はビデオカメラを操作しようとするが，その操作方法も思い出せない。そこへ彦一がやってきて，ビデオを操作してあげる。晶は「私，あの子に何かした？教えてよ，覚えてないんだから」と。「わざとじゃねぇ」と彦一。すると晶は「お願いがあるの」。晶と彦一が2人で外出した。行先は，晶が駆け落ちした相手。晶に言わせると，かけ落ちというより，晶の方が転がり込んだらしい。その相手が，藤堂だった。藤堂は，だいたいのことは分かっていると。涼太のことは妻に話してみると言ってくれた。晶「お願いします」。話が終わると，藤堂は彦一に「君たちのことは我々も把握している。自分たちの世界にさっさともどるんだ」と。そのころ，和泉は写真を送りつけた犯人を見つけ出し，追及していた。しかし，すでにマスコミには全部流してしまったという。 タイヨウにはマスコミが押しかけていた。ただでさえ，ヘルパーが辞め，人手不足のタイヨウでは，混乱が始まっていた。利用者のことは一人で何とかしようと無理をする晴菜。涼太も手伝いを続けていた。そんなときに，紙の鍋をコンロにかけるようになった利用者が出てきた。晶は，夜になると暴れてしまう。タイヨウの混乱はますますひどくなる一方。晶は，ビデオに「ママは忘れてしまうかもしれないけど，涼太は覚えていてね。ママが涼太のこと大好きだってこと」と残した。混乱の中，一人で何とかしようとする晴菜も限界に来ていた。利用者につらく当たってしまうようになっていた。五郎が心配して声をかけるが，「全部あなたたちがわるいじゃないですか」と泣きだす。新しいヘルパーもアルバイトも見つからない。松原は「もう限界じゃない，所長」。この状況を判断できる時の晶は「身体拘束して」とりこに頼む。りこは園崎が許可しないというが，「人手が足りてないんでしょ。効率も悪いわ」と晶。りこは「効率の問題じゃねぇ」。晶「縛ってもらった方が，こっちも楽なの」。りこ「つぇよな。私もあんたぐらい強ければよかった」。とうとう六車がヘルパーを辞めて出ていくと言い出した。六車「これ以上いても，タイヨウにとってマイナスにしかなりませんよ」。 園崎は，晶と話をした。園崎「私は，経営者に向かないタイプなんでしょうね。うちは破綻しかけてます。このままだとつぶれてしまう」。晶「改善策はあるでしょ」。園崎「極道だと騒がれているヘルパーたちを解雇して，人員不足のうちとしては，効率を重視する・・・そういうことなんでしょうね。でも，彼らは不器用なりに真面目に一生懸命働いてくれています。それに，効率化をはかった身体拘束は，する方もされる方もつらいもんですから」。晶「だから，自分たちが無理をすると」。園崎は，晶のシステマティックな介護も認めるが，「私たちみたいな，小さな施設ではなかなかできないんですよ。結局，気持ちで無理を通すしかないんです。あなたがここにいる間，絶対身体拘束はしませんから」。 五郎は，夜勤で一緒の晴菜に「もう少ししたら，オレ，ここ出て行くから。迷惑掛けてごめん」と。何も答えない晴菜。寮では，彦一が考え込んでいた。そんな彦一にりこは，「何考えてんだよ。ここで出行くことか？あの女のことかよ。惹かれてんだったら，なんでなにもしようとしねぇんだよ。待ち続けんのかよ。あの女の病気が進んで，わけわかんなくなって，てめぇの中でケリつけなくちゃいけなくなるまで」。彦一「うるせぇんだよ，おめぇ」。逃げようとする彦一を抑え込んだりこ「こっちはいつまで待てばいい？極道だったら，さっさと決めろ！」。 明け方。タイヨウでは，またコンロに紙の鍋を掛ける利用者の姿が・・・。鷹山のところへは，六車が押しかけていた。六車は資料を渡す。隼会系列で借金を抱えている者の中でヘルパーの資格所有者のリストだった。六車「借金と相殺で彼らをタイヨウに送る許可をいただきたい」。鷹山「どういう風の吹きまわしだ？」。六車「これが頭の思惑でしょ」。二人の視線の先には＜任侠道＞の文字が。タイヨウでは，非常ベルが鳴り響いていた。煙も充満しはじめてきた。パニックを起こしている晴菜は，利用者たちをうまく動かせずいらついている。そんな中，彦一たちは冷静に，利用者たちを誘導していた。その姿を呆然と見ている晴菜。晶は，ビデオレターを気にして部屋に戻ろうとするが，りこが無理やり外へ避難させた。晴菜は，利用者を助け出そうとしたが，限界が来て倒れこんでしまった。その晴菜と利用者を助け出したのが，五郎だった。救急車・消防車がかけつけてきた。外には野次馬とマスコミが集まってきている。園崎と松原もやってきた。全員無事に避難できたと思ったが，晶の姿がなかった。ビデオテープをとりに戻ってしまったよう。彦一は，上着を脱いだ。現れた彫り物に，野次馬とマスコミが騒然とする。そんなことは気にせず，火の中に飛び込んで行った彦一。晶を助け出そうとするが，晶はテープを取り戻したくて言うことを聞かない。晶「あれがないと何も残せない！」。彦一「残したいもんがあんなら，面と向かって言ってやれよ！ガキにとっちゃ，これからもおめぇはおめぇだろうが！」。火に包まれるビデオテープ。 晶を助け出し，外に戻ってきた彦一。野次馬やマスコミは騒ぎだした。すると晴菜が立ち上がり「この人たちはヘルパーです。利用者さんたちを支えるヘルパーなんです」。それでも騒ぎは収まらない。すると今度は彦一が叫びだした。「極道なめんじゃねぇぞ！オレら，こっから出て行くからよ！もう迷惑かけやしねぇからよ。なんだかんだぬかすんじゃねぇよ！」。そこへ一台の車が入ってきた。県庁保健指導部課・小泉が，タイヨウの認可取り消し，業務停止命令を伝えに来た。 |
| ＜第９回＞ エレベーターの様子に気付いた和泉が駆け寄るが，扉が閉まり，間に合わなかった。そのまま和泉は階段を駆け下りていく。エレベーターが１階に下り，扉が開いた瞬間，彦一は鷲津の車いすを蹴飛ばし逃がしながら，りこをおさえつける。りこは「あんたもう極道でもなんでもねぇよ」と言い放ち，その言葉に一瞬隙を見せてしまう彦一。りこはその隙を逃さず，彦一に逆襲。りこが鷲津に襲いかかろうとした瞬間，和泉が駆け付けりこの腕からナイフをけり落とす。りこが逃走すると，彦一は後を追いかけて行った。しかし，踏切に遮られ，姿を見失った。その時，彦一の携帯が鳴った。涼太が，晶が約束したのに帰ってこないし，連絡もつかないから一緒に探してほしいと泣いている。電話を受けながらも，りこの姿を探すが見当たらない。結局，りこを追いかけることはあきらめ，涼太と一緒に晶を探すことにした。レストラン等を探しても，晶の姿はない。何度電話をかけても出ない。高級老人施設・ハートフルバードへ行ってみると，そこのロビーにポツンと座っている晶の姿があった。晶は，涼太と約束したことを全く覚えていなかった。どんな状況になっているのかもわからない様子で，なぜ彦一が一緒なのかもわからない。そして彦一に，ハートフルバードの説明をし，「誰かに言われたことあるけどね，まるでブタ箱みたいだって」。それは，彦一が言ったことだった・・・。 鷲津は，彦一を部屋に呼びつけた。隼会のものだとわかってしまった。名前を名乗る彦一。鷲津は「オオカミの巣に捨てられるとはよ。極道らしく死ねた方が幸せか」と，短刀をとりだす。「この首くれてやる。オレの寿命はオレが決める。未練はねぇ。極道として死なせてくれ」。そう言われた彦一は，短刀を抜き，鷲津の首に充てる。その勢いに身構える鷲津。しかしそれ以上は短刀を動かさない。彦一「みっともねぇこと言ってんじゃねぇ」。部屋を出ていくと，廊下には和泉がいた。彦一「おめぇ，堅気じゃねぇな」。和泉は，サポーターを外し，彫り物を見せた。実は，彦一たちの研修の監視役が和泉だった。今回の一件で，鷲津頭組の狙いは，彦一たちに鷲津頭をやらせることだと判明した。今回の首謀者・尾国は，鷲津組の中でも武闘派で有名だった。抗争のきっかけを作るのが目的だった。いまだにりことは連絡が取れない。三樹矢は，りこを探しに出て行ってしまった。 タイヨウの利用者たちは，鷲津を怖がるようになっていた。彫り物を見せてしまったのが原因。そのころ，夏夫の息子が看取り介護の依頼にやってきた。看取り介護は，特別な延命治療は行わず，最後の時まで側で介護をしていく。家族も一緒にできるよう部屋を用意することもできると園崎は伝えるが，その気持ちはないようだった。ただ，息子は「父は喜んでくれるでしょうか」と悩んでいた。園崎は「それはわかりません。わからないなりに，精一杯やるしかないんです」と。また鷲頭と夏夫が同室で生活するようになった。 和泉は，彦一に鷹山からの指示を伝える。出て行った二人に関係なく，研修を続けるようにと。抗争は絶対に避けるという鷹山だった。彦一「お前，ここに５年ぐらいいるんだよなぁ。オレらの研修も，そんぐらいかかるってことかよ」。和泉「おれは自分の意思でここにいる」。理由は教えてくれなかった。涼太が，昨日の御礼にやってきた。彦一「あとでコーヒーおごれよ」。テレビからは，羽鳥晶社長辞任のニュースが流れていた。涼太は，彦一に一緒に遊園地に行こうと誘う。彦一「なんでそうなんだよ」。 りこは，兄の墓参りに来ていた。そこに姿を現した三樹矢。りこは「極道がやられっぱなしでいられっかよ」と。兄に「組っていうのは，どこにも行けないはぐれ者同士が，肩寄せ合って作っている。血がつながってない分，痛みはみんなで背負っていく」と教えられていた。三樹矢「オレも付き合うよ。それに，狙うなら鷲津じゃねぇし」。 涼太は，またヘルパーとしてタイヨウで手伝いを始めた。夏夫の介護を彦一・晴菜と一緒にやっていた。晴菜は，夏夫の様子を細かく日記に記していた。夏夫の家族は，結局一度も顔を見せに来ていないかった。晴菜は，今までのようにうそをついて，夏夫に花を届けていた。鷲津もそれについて何も言わなくなった。逆にいいことだと受け入れたよう。夜になり，鷲頭は夏夫に話しかけた。「何考えてんだ。家族もこねぇで，なーんにもできなくてよ」。夏夫の様子をじっと見た後，「息してんな。がんばってんじゃねぇか」と手を握る。彦一たちは，４人だけの食事をしていた。４人の食事当番は大変だ，迷惑だと言いながら，りこたちのことを心配している。そのころりこと三樹矢は，尾国をはっていた。 涼太がタイヨウで手伝っているとき，テレビが見たいと言い出す。晶の会見があった。それを聞くと，彦一はテレビのチャンネルを合わせた。晶の挨拶が始まる。原稿を読んでいた晶の言葉が止まる。会見会場，そしてタイヨウでもざわめきが起こる。一瞬，ハッとした後，また読み始めたが，またすぐ黙ってしまった。しかし，今度は原稿を下に置くと，自分の言葉で語り始めた。「誰かを救おうなんて考えたことないわ。神様じゃあるまいし・・・私にとって，介護施設とは，理想から一番遠い場所です。介護施設の本質は，現代の姥捨て山だと思うからです。皆さんの中で，自分が年老いたとき，介護施設に入ることを考えたことのある人がいますか？家族に看取られることもなく，介護施設のベッドの上で死んでいく姿を想像したことがある人はいますか？思い浮かべてみてください。もし，介護施設に入れられたら，皆さんは自分の家族を責めますか？あなたの介護の大変さで，家族が疲れ果て，壊れそうになっていたとしても。世の中には今，介護することに苦しんでいる人たちがたくさんいます。私は，そんな介護する側を助けたかった。そのために私は姥捨て山を作りました。システマティックに。まずは介護する側の負担を減らすこと，そうすることで結果的には多くの老人が孤独に死んでいくことを防げると思ったからです。人が人として生きるために何が大事なのか，私たちは今見つめ直す必要があるのではないでしょうか」。 みんなが会見を見いっているとき，夏夫の旅立ちの準備が始まった。晴菜に呼ばれ，ヘルパーたちが夏夫のもとへ集まって行った。涼太も一緒に。ヘルパーたちに見守られる夏夫。家族には連絡がつかない。息子も電話には気づいていたが，大事なプレゼンを前に電話に出る勇気がなかった。ヘルパーや利用者たちが，夏夫の名前を呼んでいる。鷲津は，夏夫が好きだった歌を歌って聞かせた。その中で，夏夫は一筋の涙を流し，旅立っていった・・・。彦一が夏夫の体をふき，晴菜が荷物を片づけていた。鷲津は「どっちの涙だったのかな。大勢に囲まれてうれしかったのか，家族がいねぇで悲しかったのか」。誰もその質問には答えられなかった。その時，晴菜が引き出しの中から１枚の紙を見つけた。それは，夏夫が必死に書いていたものだった。それを読んで涙を流す晴菜。そこには＜みなさん，ありがとう 花ありがとう ワシズさん ありがとう＞と。途中から赤い文字になっているのは，鷲頭が投げてやった赤いペンで書いたからだった。晴菜「花のこと，気付いていたんですね」。彦一「うれしかったんじゃねぇか」。鷲津は夏夫に「良かったな。みんなに看取られて，精一杯生きて」と。 六車が彦一を呼びに来た。りこと三樹矢の情報が入った。２人とも尾国につかまってしまっていた。倉庫に監禁されている２人。４人で出て行こうとすると，和泉が止める。「頭からの命令だ。動くな」。彦一「聞こえねぇな」。和泉「全部パーになるんだぞ！けじめをつけることになるんだぞ！」。それでも彦一は「それぐれぇの覚悟できてねぇと思ってんのかよ。仲間やられてうごかねぇ極道なんかいねぇんだよ」。和泉の制止を振り切り出て行った。４人で倉庫に乗り込んでいった。尾国のものと乱闘が始まるが，彦一たちは強かった。助け出されたりこに，彦一は「無理すんなよ」。りこ「うるせぇな」。尾国「ただで済むと思うなよ」。その時，たくさんの車が乗り込んできた。助けが来たと喜ぶ尾国だったが，違っていた。逆に和泉に取り押さえられてしまった。そこには，鷹山と鷲津の姿が。鷲津は，この場で手打ちをするという。「てめぇのけじめは，しっかりつってもらうからな」と尾国に。そして，鷲頭は彦一に「仕切れるときに仕切っとかねぇとよ。あのじいさんに笑われちまう」。尾国は，車に押し込められ連れ去られていった。鷹山は「やってくれたな，てめぇら」。りこ「けじめは私がつけますんで」。彦一「かっこつけんなよ」。鷹山「連帯責任って言葉の意味わかってねぇのかよ。しっかり罰はうけてもらわねぇとな」。 タイヨウの寮の台所には＜四方木・鷹山は２週間飯当番＞という張り紙が。これが罰だった。研修は今まで通り続いていた。和泉「バカ息子が，初めて男を見せたからそれに免じてだそうだ」。夏夫の息子は，晴菜がつづった日記を読んだ。そして，誕生日のお祝いの写真も。その様子を見て，息子は「もっと会いに来てやれなかったんでしょう。無理しないとこれなくて・・・無理すればこれたってことですよね」と後悔の涙を流した。彦一は，どこかへ出かけようとしていた。行先は遊園地。彦一が来てくれたことに喜ぶ涼太。「通りかかっただけだよ」と彦一。はしゃぐ涼太に，つまらなそうなしながらもちょっと嬉しそうな彦一。そのころ，タイヨウには匿名で封書が届いていた。晴菜が開けてみると・・・鷲津組の連中と乱闘をする彦一たちの写真が。また遊園地では，晶がめまいに襲われていた。心配して近づく彦一と涼太。涼太が「ママ」と呼ぶと，戻ったような晶だったが，涼太を見ると「どうしたの？迷子？お母さんは？」。 |
| ＜第８回＞ タイヨウでは，利用者とヘルパーに看取られ亡くなる老人が。家族は来ない，他人だけに見送られる。他のヘルパー達は慣れた様子だが，彦一達には不思議な光景だった。そこへ今度は，新しい利用者がやってくることになった。その利用者は，実は鷲津組の組長・鷲津莞爾。あわて出す彦一達6人。彦一は，鷹山に電話連絡をする。鷹山によると，鷲津が事故にあって半身麻痺になったという噂があったという。鷹山「何を企んでいるか調べるから，お前らは普通に仕事しろ」と。その鷹山の側にいたのは，あの和泉。いつもリストバンドで隠れていた左手首には＜隼會＞という彫り物が。鷲津は，個室を希望するが満室と言うことで，大部屋へ。文句を言うが，部下に大部屋の方が安全だと説得される。大部屋とはいえ，同室の利用者は，山浦夏夫のみ。しかも，言葉も話せず，わずかに左腕を動かせるのみ。これからの生活に不安を抱く鷲津。園崎は，彦一に鷲津の担当になるようにお願いをする。彦一は断るが，入浴は自分がやるからと，無理矢理担当にした。彦一は，鷲津の元に行くときには名札を外していった。鷲津は，他の利用者の様子を見てもうんざり。そんな鷲津の様子を，離れてみているりこたち。どうやら鷲津には彼らのことはばれてないよう。ただ，ちんぴら一人ついていないのを不思議がる。鷲津は，夏夫に話しかけてみるが，何の反応もない。そのうち，大音量で音楽をかけ始めた鷲津。そのとき，夏夫には息子から花が届いた。豪華ではないが，毎週会いに来れない分，送られてくると言う。ちょうど同じ時に，鷲津には＜会社＞から豪華な花が届いた。「若いもんも来たろう」という鷲津だったが，花屋が届けただけで，誰も来ていなかった。すると，必死に何か探し出す鷲津。携帯電話を探すが，どこを探してもない。 晶は，忘れることが多くなっているが，それをうまくごまかしながら仕事を続けていた。会議の席で，重役会で決定された事項を忘れてしまっていることが発覚。何とかごまかそうとするが，重役の一人が会議出席者に晶の診断書を配布する。そこには＜アルツハイマー型認知症＞という診断名が。秘書の弥生が「社長，ご説明を。会社のためです」と。その後，晶が家に帰ると，部屋中に紙が貼ってある。そこには涼太の文字で，晶がやったことやこれからの予定等が書いてあった。涼太「こうすれば忘れないでしょ」。晶が何か言おうとすると，涼太は「いいよ，言わなくて。ママは仕事がんばって」。そんな涼太を，後ろから抱きしめる晶。 鷲津は，タイヨウの事務室を荒らし始めた。自分の契約書を出せと言う。どうしても連絡先を調べたいからと。入所したばかりだが，突然連絡が取れなくなったことに対して不安を抱いている。りこ「何焦ってんだよ。捨てられた訳じゃねぇし」。仕方なく，書類を渡すと，鷲津は自分で電話をかける。しかし，留守番電話になるだけで，結局連絡が取れない。いらだつ鷲津。その頃，四方木連合の久米が何者かに刺された。組長への連絡は，久米自身が止めていた。翌日，鷲津は施設内に響き渡るほどの大音量で歌を聴いていた。彦一が注意に行き，曲を止めた。すると，今まで何もしゃべったことがない夏夫が，その歌を口ずさみ始めた。それから，鷲津と夏夫の生活が始まった。夏夫は，1日かけて字を書く練習をしている。1日かかっても，ほとんど書けないが，必死に書いている。ペンを落としてしまうと，もう何も書けない。すると，鷲津が自分が持っていたペンを投げて渡してやった。徐々に2人の交流が始まる。鷲頭が，いろいろ話を聞かせる。夏夫は，聞いていると手を挙げて意思表示をする。2人で将棋を指したり，一緒に歌を聴いたり。そのタイヨウの外では，久米が襲われた時すぐ側にいた車が止まっていた。その中の人物は，りこが写っている写真を手にしていた。 鷲津の元には，豪華な花だけが届き，誰も訪れない。りこ「ホントに鷲津組の組長かよ。ただのジジイにしか見えなくなってきたし・・・あんたもな，ただのヘルパーにしか見えなくなってきたな」と彦一に。そのとき，晶がやってきて，彦一を呼び出す。その呼び出しに応じて出て行ってしまう彦一。ちょっぴり嫉妬するりこ。晶と彦一は屋上に行った。晶は，彦一が涼太に病気のことを話したんだろうと思っていた。彦一は話していなかったが，一緒に生活していればわかるだろうと。晶は会社を辞めると言い出した。涼太と一緒に過ごす時間を増やしたいから。そのとき，涼太からメールが届いた。今夜約束があるらしい。うれしそうに返信する晶。彦一は，その様子を見て，涼太が最近タイヨウにやってこない理由がわかった。そういう彦一もうれしそう。晶「あなたに感謝しなくちゃね」。彦一「オレ関係ねぇよ」とちょっと照れている。そして「クビにしなくていいのかよ」と。涼太に黙っていることが約束だった。晶「忘れたわ。他の人に気付かれないようにして」。晶が去っていき，ふと下を見た彦一は，りこが出て行く様子が見えた。六車によると，四方木連合が4日前に「かしこまれた」という。りこが事務所前に行くと，襲撃された事務所が警察により封鎖されていた。四方木連合では，女組長をよく思わない連中もいて，組長が孤立状態。ねらわれやすい状況だった。三樹矢は「じいさんに聞いてくる」と出て行こうとするが，彦一は「担当はオレだよ。確かめてぇことがあんだよ」と止める。 鷲津がふと外を見ると，晴菜が花を買って戻ってくるのが見えた。その花は，夏夫に届けられる花。突然暴れ出す鷲津。和泉が止めに入り，説明をする。入所以来，誰も会いに来ない夏夫のために，晴菜が嘘をついて花を贈っていたと。余計に怒り出す鷲頭「お前ら全員偽善者だ！」。暴れながら「帰る！」と騒ぐ。彦一は「帰る場所なんかあるのかよ」と。開き直った鷲津はみんなの前で「このあたりを仕切ってる極道・鷲津組の組長だ。これでもオレの世話しようってぇのか！」と上着を脱ぎ始める。彦一が機転を利かせて，電気を消し，和泉がさっとテーブルクロスを背中に掛けた。そして，彦一がさっと連れ出す。鷲津の背中には立派な彫り物が・・・。ばれたからここにいられないだろうという鷲頭は「オレには帰る場所なんてねぇ。捨てられたんだよ。あのじいさんと同じだよ。金ならいくらでもやる。誰か組のヤツ呼んできてくれ」と彦一に懇願する。鷲津は，不安になっていた。彦一は，夏夫が手に持ったままのペンを取ろうとする。すると様子がおかしいことに気付いた。夏夫は息をしていなかった。 りこは，久米のところへ行っていた。りこ「そんなにいらねぇか。じゃまで，恥ずかしくて，どうしようもねぇ存在なのか，私は」。久米「そりゃそうですよ」。今回のことは，りこだけでなく，本家にも言っていなかった。久米は，系列の中で株を落としてて，さらに恥をさらしたら四方木連合はつぶれると。りこ「だから私に言えなかったのか」。久米「研修のじゃましたくなかったので。あんたそれでもオレ達の組長なんだよ。こけにされるわけにはいけねぇ。オレら，あんたをもり立てていく覚悟するしかねぇんだよ。幹部の椅子，待ってますので」。襲った相手は，鷲津組の末端だという。 夏夫は病院に運ばれた。そこで待ってる間，彦一は和泉に「ヘルパーにしちゃいい動きしてんな」と。和泉は「動けなきゃ，ヘルパーつとまらないからな」。そこへ夏夫の家族が駆けつけてきた。医者によると，心筋梗塞を起こしていたが，処置が早く一命は取り留めた。ただ，体力がなく難しい状況。延命治療をするか，自宅もしくは施設で過ごすことになる。息子は延命治療を選んだ。すると，息子は会社に戻ると言い出す。孫娘も帰ると。鷲津は「いつ来れんだよ」と詰め寄る。息子達は答えられない。鷲津「何のために延命なんかするんだ。こんな姿になっても，てめぇのこと待ち続けなくちゃいけねぇのか」と怒鳴りつける。そして，酸素吸入のチューブをつかみ「天国へ送ってやる！これで生きてるっていうのか・・・」と泣いている。彦一が「これはよ，他人が口出しすることじゃねょ。この家族が決めることなんだよ」というと，鷲津「捨てられた物はどうなるんだ！」。彦一「てめぇを捨てたのは，こいつらじゃねぇだろ！」。そして泣いている鷲津に「帰るぞ」と声をかける。そっと手を離す鷲津。病室を出て行く彦一と鷲津に，息子は「父もきっと喜んでいると思います」という。すると彦一は「なんでわかんだよ。親父さんが喜んでるって。てめぇがそう思いたいだけだろ。てめぇらの都合で，人の寿命決めんじゃねぇよ」。 その頃，涼太は晶を待っていた。約束があるのに，戻ってこない。病院では，和泉が手続きに，晴菜が園崎に連絡をしに離れていった。鷲津と彦一だけになると，鷲津は「外の空気吸いたいな」と。タイヨウでは，ヘルパーの松原が，園崎は鷲津のことをわかっていたんじゃないかと。入浴はいつも園崎一人でやっていたから。園崎は「うちは利用者選ばないから」と答えただけ。彦一は，鷲津をエレベーターに乗せた。鷲津「年取ると，自分の寿命も消えられないのか・・・」。エレベーターの扉が閉まる瞬間，りこが乗り込んできた。和泉も気付いたが，すでに遅く，扉が閉まってしまう。りこは，鷲津の目の前でナイフを抜いた・・・。 |
| ＜第７回＞ 長岡初美は，同窓会へ向かったが，自分とは違い，家庭を持ちながらも着飾っている同級生たちに気後れしてしまう。彦一と晴菜が，初美が留守中，母親の孝江の訪問介護を担当していた。気難しくわがままな孝江の態度に，いらつく彦一。一方，初美は滝本に声をかけられる。初美は独身で，滝本はバツイチ。初美は本当は同窓会に来たくはなかったが，孝江に代わりにスピーチするように言われ，仕方なく出てきたという。そのころ，晶はスクープを追いかけるカメラマンに付きまとわれていた。彦一と晴菜が訪問介護中，初美の部屋から大音量の目覚ましが鳴った。仕方なく彦一が止めに行くと，そこには大量の睡眠薬とレンタンが用意されていた。その時，初美が帰宅した。初美が帰ってくると，頼りっきりになる孝江。ヘルパーへの文句だけでなく，盗まれたものがないか調べろと言い出すほど。彦一はけんか腰で対応してしまう。孝江はヘルパーを拒否しており，初美ももう頼まないと孝江に約束する。実は，同窓会も抜け出してきていた。 晴菜と彦一が戻り，状況を伝える。和泉は人選ミスだとおこっている。孝江は，中学校の校長を経験しており，プライドも高い。家族は初美だけで，典型的なシングル介護で心配だと園崎。その時，利用者の家族が乗り込んできた。ある雑誌に晶のゴシップ記事が載っていた。その見出しには＜母親殺し＞と。ハートフルバードとフランチャイズ契約をしていることが伝わり，利用者の家族は心配していた。そのころハートフルバードでは，晶と秘書たちが今回の件で話をしていた。雑誌の記事に加え，ネットでの批判。利用者の契約解除やフランチャイズ契約の打ち切り希望が続出。秘書はネガティブキャンペーンではないかと。晶は苛立ち，秘書に当たるように対応を任せる。秘書たちが部屋から出ていくと，必死に手帳にメモをする。 タイヨウでは，園崎は「うちはうちのやり方でいけばいいさ」と楽観視していた。彦一たち6人は，休憩室で今回の件について話し合った。雑誌の記事には，認知症の母親を捨て男と逃げて母親を死なせてしまったと書いてある。六車は「どうするんです。これからこういうスキャンダルは僕らにとってもまずいでしょ。そろそろ潮時かもしれません。ヘルパーとしてのノウハウは学んだ。頭に決断を迫る時期ですよ」という。その時涼太が入ってきた。広げられている雑誌を見つけ，手に取ろうとするが，彦一が取り上げた。そのまま彦一は涼太を外に連れ出そうとする。六車は「話の途中ですよ！」と言うが，「かってにやってろ」と彦一。 万福フーズでは，初美に配達の手伝いをお願いしていた。孝江の介護のため，内勤ののを希望していたが，人手不足で仕方ないと。それでも，携帯を手にしたまま配達へ行こうとする初美。早速電話がかかり，途中で家に寄ることに。そのころ，彦一は涼太を玄関先に連れ出していた。いつものように外でおしっこをしてしまう老人を見ると，彦一は，以前のようにキレることなく，口は悪いもののきちんと対応していた。その様子を驚いてみている涼太。そこへ，万福フーズが食事を配達に来た。大幅な遅刻。ひたすら謝る社長だったが，初美は電話がかかってくるとそちらを優先していた。 晶が帰宅し，ある郵便物をじっと見つめる。そこへ涼太が来て，あわててカバンにしまった。晶が食事の準備に行くと，こっそりそれを見ようとした涼太。カバンを倒してしまい，代わりに見つけたのは晶の手帳。びっしりと1日の行動が書かれていた。そこには涼太の様子も細かく書いてあった。タイヨウの休憩室。晴菜とりこと彦一が，初美のことを話していた。晴菜とりこは，初美は介護と仕事を両立していて偉いと感心しているが，彦一は「どうだかな」と。晶が画した郵便物は，母の十三回忌のお知らせだった。そこにはぜひ来てくれという叔母からのメモも。初美は，目覚ましで起こされ，おむつ交換をしている。 夏休み中，涼太はタイヨウで手伝いをすることにした。かいがいしく働く涼太。りこは「変わったよな，あの子も」と言うが，「”も”ってなんだよ」と彦一。りこ「べつに」。食事のケースが間違って足りないからと，彦一と五郎が和泉に言われて万福フーズまで取りに行った。ケースが足りなかったのは，初美のミスだった。ケースを受け取り，戻ろうとすると，初美が戻ってきていた。手にはしっかり携帯を握りしめている。彦一は，五郎だけを先に帰し，自分は初美のところへ。孝江との電話が終わり，彦一の姿を見つけた初美。彦一は「追いつめられてんじゃねぇか。できてねぇだろ，一人で介護なんて」と言うが，初美は「だからってヘルパーさんには頼めません」と。父親も認知症だったが，孝江が一人で介護をしていた。根っからのヘルパー嫌い。彦一「自殺されちゃ，夢見悪いんだよ。あんた見てっと，介護が必要なのはあんたのほうじゃねぇかと思うぜ」。夜，内職をしている初美のもとに，滝本から電話がかかってきた。嬉しそうに話す初江だったが，途中で孝江が何度も名前を呼んでいた。結局，電話を切るが，滝本は食事に誘ってきた。 晶が帰宅すると，涼太が起きてきた。晶「タイヨウでお手伝いしているんだって？」と嬉しそうに言葉をかける。涼太は「ママは本当におばあちゃんのこと捨てたの？嫌いだったの？」と尋ねる。「大好きだったよ。でも，ママはダメな子だったから」と晶。涼太は，老人たちに人気があった。みんなが涼太とのかかわりを求めていた。そのころ，晶は十三回忌に出席しようと会場へ向かったが，伯母は歓迎しながらも，伯父が怒鳴りつけ追い返された。その足で，タイヨウにやってきた晶。彦一と二人になると「涼太じゃまになってない？」。彦一「年寄りは，ガキの方がいいみてぇだから」。晶「あの子強くなった気がする」。彦一「だったら，話してもいいんじゃねぇか」。晶「時期が来たらね。私が何も分からなくなったら，あの子どうするかしらね。嫌いになるかしら。私がそうだったみたいに」。彦一「あの記事，どこまでホントなんだ」。晶「全部よ。逃げたのよ。そうしないとこっちまで壊れそうだったから。何かのきっかけで母を殺してしまいそうだったから。結局，逃げ切れなかったけど」。 仕事中抜け出して孝江の介護をする初美。仕事に戻ると，ほかの従業員から不満が爆発した。社長もかばいきれないと。一人職場を後にした初美に，孝江から電話がかかってきた。今回は無視してしまう初美。そして，滝本と食事に行く。最初は楽しく食事をしていたが，孝江のことが気になってしまう。携帯をみると，孝江から大量の着信が。滝本に断り，食事の途中で家に帰ってしまう。そのころタイヨウには，万福フーズの社長が謝りに来ていた。問題の従業員は解雇したからと。その話を彦一とりこは聞いていた。彦一は，そのまま五郎に呼ばれ，麻雀に向かった。初美が家に帰ると，孝江はテレビのリモコンがないと騒いでいる。彦一は，五郎・三樹矢・二本橋と街を歩いていたが，ふと気になり立ち止る。初美は，ベッドの下にリモコンがあったと孝江に伝える。すると孝江は「なぁ〜んだ，バカみたい」とのんきに言う。プッツリと何かが切れた初美「私を何だと思っているの！もう疲れちゃったよ。楽になろう」と包丁を孝江に向ける。「ごめんね，ダメな娘で」。そこへ，彦一が駆け込んできた。すると初美は，彦一に包丁を向けた。孝江に気付かれないよう，無言のままの彦一。追いつめられた初美は，彦一に包丁を突き出した。それを素手で止めた彦一。血が滴り落ちる。それでも，気付かれないよう，痛みをこらえながらも無言。初江にも何も言うなと風に首を振って伝える。その場で泣き崩れる初美。 晴菜が孝江の介護をし，りこが彦一の傷の手当てをする。彦一とりこは，初美と話をする。初美は「母には言わないでください。これからも母を支えていかなきゃいけませんし」という。彦一「明日にばあさん連れて行くよ。しばらくうちで預かるんだよ」。初美は反対するが，彦一は初美の胸ぐらをつかみ「そんなにいい娘でいてぇのかよ。そのままてめぇの人生棒に振るのかよ」。そこへ孝江が初美を呼ぶ声が聞こえてくる。初美「毎日つらくて。何度も思ってました，一緒に死のうって」。 タイヨウに孝江を連れてくる。1週間のショートステイ。必死に抵抗する孝江。初美を呼ぶだけで，ヘルパーの介護を受け入れない。食事もとらなければ，夜中脱走しようとする。落ち込んでいる孝江のもとへ，彦一は涼太を向かわせる。涼太「ヘルパーの羽鳥涼太です」。かわいいヘルパーに心を許す孝江。そのころ，初美は職探しをしているが，介護をしているというとなかなかうまくいかない。孝江は，涼太に勉強を教えてあげる。孝江は「涼太君，いい子ね。うちの娘と大違い。私のこと嫌ってるみたいだから。こんなところに押し込められて。ずっと二人で暮らしてきたのに。捨てられたの，私」。涼太「孝江先生は，嫌いなの？先生の子供は，ダメな子なの？」。初美のもとには，滝本が来ていた。滝本の誘いに，初美は「自分だけふらふらできないから」。滝本「いいんじゃないかな。たまにはふらふらしても。また来るよ」。部屋で考え込む孝江。そこへ，彦一が食事を運んできた。彦一「あんた立派な先生だよな。あんな一生懸命親の面倒みる生徒いてよ。でも，いい加減，娘さん卒業させてやったらどうだ」。 孝江は，文句を言いながらも，晴菜の支援で食事を撮り始めた。初美はレンタンをゴミ捨て場に捨てた。1週間のショートステイが終了し，自宅に戻った孝江。今後は，正式に訪問介護を受けることになった。和泉が「今度はちゃんとしたヘルパーを」と言うと，曽根崎が彦一ご指名だという。「言葉づかいあらいけど，いいヘルパーだと。うれしいねぇ」。 晶の秘書・弥生は，誰もいない部屋で，誰かに電話をしている。晶の病名を告げ「機は熟したかと」。タイヨウでは，涼太に引っ張られていく彦一が。そこで，彦一の誕生日をお祝いするために，利用者たちが集まっていた。そのころ，外には鷲津組の車が。そんなことも知らず，みんなにお祝いされる彦一。複雑な表情で見ているりこたち5人。利用者のおじいちゃん・おばあちゃんに促され，ケーキのろうそくを吹き消す彦一。 |
| ＜第６回＞ パソコンで診断結果を見ようとした晶。そのとき涼太が入ってきて，あわてて消してしまう。心配そうな涼太。彦一は，晴菜に認知症のことを聞いている。認知症でも感情はちゃんと残っている。そして，若い人に発症する「若年性認知症」が最近増えていると言うことも。 入所者の風間は，入所2週間で4回の夜ばい（未遂）をし，女性ヘルパーや利用者へのセクハラもエスカレートしており，問題になっていた。新しい入所者が女性で，しかも家族が神経質そうだったので要注意だと。その新しい女性入所者は，徳田多恵子。2年前に夫を亡くしているが，それも忘れてしまっている。寮で，いつものメンバーが話をしている。風間は，遊び歩いたあげく，現在まで独身。五郎「落とした女の数ならアニキの方が上ですよね」と言ってたたかれている。その様子を複雑な心境で聞いているりこ。二本橋は，愛する女子性は生涯一人という。バツイチだが，復縁もあきらめていない。今度娘に会えるのがうれしくてしょうがない。ちょうどそのとき，娘から電話が。元妻の再婚話があることを告げられる。多恵子がやってきた日，風間が多恵子の嫁に手を出し，近づけさせないように言われてしまうが，風間は名前を知って態度が変わる。 涼太がやってきた。晶の病気が心配だという。彦一に，「ママに聞いてくれない？」。彦一「そんなくだらないこと，人に頼むんじゃねぇ」。そこへりこが呼びに来た。涼太は「アニキ，ママのこと嫌い？」と。彦一は「いけすかねぇからな」。がっかりしながら帰る涼太。風間は，突然，部屋にあったH本等を片付けてしまった。ベッドサイドにあるのは，学生時代の写真。女性と2人で映っている。あんなに激しかったセクハラも全くせず，落ち着いている。じーっと見つめているのは多恵子の姿。風間は，二本橋と彦一に話をした。多恵子が，初恋の相手だったこと。片思いで，結局告白できず。再会できたのは運命だから，デートに誘って，きっちり告白したいと。風間に触発されたのか，五郎は晴菜をデートに誘い，三樹矢はりこに言い寄る。その晴菜もりこも，恋愛談義。晴菜は，1回しかおつきあいの経験がなく，2年間彼がいないから，どうしていいか忘れてしまったと。一方りこは・・・一度もないと。 二本橋は，娘と会っていた。娘は，二本橋の格好を見て「なんでその格好で来るわけ」。こんな仕事をしている人に家族を幸せにできないと言われ離婚をした。変わらないなら，再婚してしまうと。考え込む二本橋。二本橋がタイヨウに戻ってくると，風間はマジメにリハビリをしていた。二本橋は，娘とのことを説明し，風間に仕事を辞めると話す。風間は「肝心なのは，あんたがどういう人生選ぶかってことだ。あんたの選んだ人生なら，娘もわかってくれるよ。幸せだろうなぁ。心底惚れた女と一生添い遂げるなんてよ」。 晶は，医者の説明を受けていた。脳の写真を見ながら，晶は「病名はわかっているんです。進行状況だけ教えていただければ結構ですので。多少の知識はありますから。それに，私の母も同じでしたから」。廊下に出た晶は，めまいを起こす。そして，あの桜吹雪が彦一の彫り物だと思い出した。彦一が一人，玄関でたばこを吸おうとしていると，晶が一人でやってきた。彦一「ガキが心配してんぞ」。晶「話があるの，そのことで」。二人が出て行くのを，屋上にいたりこが見つけた。晶は「涼太はあなたのこと知っているの？入れ墨」と言い出す。彦一が「覚えていたのかよ」というと，「思い出せたの，さっき」と晶。そして「アルツハイマー型認知症。これからどんどん進行していく。あなたがどういう人なのか聞かないし，このことは誰にも言わない。だから，ワタシの病気のことも言わないで。特に涼太には」。彦一が言葉をかけようとすると，晶は「何も言わないで，くじけそうになるから」。黙ったままたたずむ2人。その様子を離れたところから見ていたりこ。夕食時。二本橋が「研修を抜けさせていただきます」と宣言。五郎は「組にいられなくなるぞ」というが，彦一は「てめぇの人生だ。好きにすりゃいいだろ」と。 りこは一人海岸で考え事していた。そこへ涼太がやってきた。涼太は，晶は病院に行ってもどこも悪いところがなかったと言うが嘘だと見抜いていた。「アニキにママのこと守ってって頼めないかな。本当は僕が守ってあげたいんだけど」。強くなりたかったのは，晶を守りたかったから。父親のことを覚えていないという涼太に，りこ「お父さん，欲しいか」。涼太「ママのこと守ってくれるなら」。風間は，意を決して，多恵子の部屋に向かった。部屋にはいると，多恵子は苦しそうな様子。ヘルパーを呼んでこようとすると，多恵子が引き留めた。代わりに着替えをさせようとしているところへ，多恵子の嫁がやってきて騒ぎ出す。そのまま連れて帰ると言い出した。「汚らわしい」という嫁に，彦一は「何が気にくわねぇんだ」と。嫁は「私たちは家族です。我慢できるわけない」。彦一「年寄りは好きになったりしちゃいけねぇってか」。嫁「いけないわよ。恥ずかしい」と去っていってしまう。和泉は「利用者の色恋に首をつっこまないでくれ。今回のように認知症の方はやっかいなんだから」と注意をする。彦一「認知症だって感情はあるんだろ」。和泉「亡くなったご主人と間違ってるだけなんだ。正常な判断能力がない人に言い寄ろうというのがどうかしているんだ。がんばったところで，過去を取り戻せる訳じゃないのに」。風間の気持ちもよく知っており，また自分のことも重なってか，二本橋が突然激情し，殴りかかってきた。二本橋「年取ったやつが恋しちゃいけねぇのか！」。みんなで止めにはいるが，はねとばされる。彦一でさえも。血が上った彦一は，二本橋に頭突き。逆に殴りかかった。今度は彦一がおさえられる番。なんとかその場は収まった。 二本橋は風間の元へ。風間は「デートに誘う間もなかったよ・・・・肝心な惚れた女にはさわることもできなかったよ。惚れた女と一緒になれりゃ，それが一番幸せなんだよ。でも，そのonが別の幸せを見つけてくれたなら，それはそれでありがたいと思わなきゃ」。夜の屋上。彦一の元へりこがやってくる。彦一「許されねぇことばっかだな，年寄りっていうのは。惚れたはれたに歳は関係ねぇのによ。誰だっているだろうが，好きなやつぐれぇ」。りこ「あんたは？あんたもいんのかよ」。彦一「あほか」。りこは，彦一がすっていたたばこを取り上げ，自分ですってみたが，すぐに咳き込んでしまう。そのまま立ち去るりこ。 彦一がコーヒーを買おうとロビーにいると，どこかへ行こうとする二本橋を見つける。そのまま2人で夜の街を歩いていった。向かった先は，多恵子の家。多恵子は，勝手に化粧をしていた。「お父ちゃんとお出かけするの」とうれしそう。しかも，押し入れの中からなにやら探し出していた。嫁が見ると，何かの写真。ちょうどそのとき，二本橋達がやってきた。二本橋は，風間が多恵子をデートに誘うのを認めて欲しいと。そのとき，玄関から多恵子が出て行こうとするのを「恥ずかしい」と止める嫁。二本橋「認知症の人だって，人を好きになる気持ちはあるんです。人を好きになる気持ちを奪うことは，誰にもできないんです。絶対に，そういうことをしちゃいけないんです」。土下座をしてお願いする二本橋。それを門のところで見ている彦一。 おしゃれをした風間がデートへ向かう。二本橋も，いつもとは違う格好でいる。それぞれ"惚れた女"に会いに，それぞれの待ち合わせ場所へ向かった。りこは，屋上で彦一がいつも飲んでいるブラックコーヒーを口にしてみた。「苦っ」。風間は，ずっとベンチで待っていた。ずっとずっと。うれしそうに待っていた。一方，二本橋は，元妻との待ち合わせ場所へ。元妻は，男の運転する車でやってきた。心配そうに見守る男。その様子をじっと見ている二本橋。約束の時間を過ぎても，多恵子の姿がない。それでも待っている風間。底にやってきたのは，彦一。そして風間に「ばあさん，死んだ」と伝えた。肺炎をこじらせ，朝亡くなったという。それを認めたくない風間は「もう少し待つから。昔から女の支度の遅いのはしょうがないんだ・・・でも，待ってる・・・女は・・・しょうがねぇなぁ」と泣き崩れる。 今度は，娘と待ち合わせをした二本橋。今度の格好は・・・もろ。その姿を見て，娘は怒り出す。でも，二本橋は「これが本当のお父さんの姿だから」。怒って行ってしまう娘。多恵子のお葬式には，和泉と晴菜が行った。嫁が，多恵子が風間と同じ写真を持っていたことを伝える。もしかしたら，亡き夫と間違えていたのではなく・・・と，後悔する嫁。和泉は「誰にもわかりませんから」。その写真は，多恵子の棺桶にいれられることに。二本橋は，いつも通りに戻っていた。元妻は再婚を決めてしまったが，吹っ切れた様子。一方，和泉はネットで掲示板を見ていた。そこに書かれていたことは・・・「ハートフルバードは現代の姥捨て山」「羽鳥晶は母親を殺した」。 |
| ＜第５回＞ 晶が倒れながら彦一の彫り物を見てしまった。ただ，そのまま倒れ込み，病院へ。りこだけには，晶に見られたことを伝えた彦一。彦一は，他の人には迷惑かけず，1人でケジメをつけると言うが，りこは「連帯責任だろ」と。まだ晶のことはわからないから，見られたことは誰にも言うなと言うりこ。 遺書を書き，首を吊ろうとしているさくら。何も知らない小澤義男がさくらを呼んでいる。その声を聴いて，躊躇してしまい，足をすべらせ，倒れてしまう。 晶が病院で目を覚ますと，涼太がそばにいた。晶はどこで倒れたかも覚えていない。タイヨウにいたことも覚えていない。秘書達は精密検査のための入院手続きを取るが，晶は仕事があるからと断る。秘書に「涼太君のことも考えてください」と言われると，来週時間ができるからその時にと。タイヨウでは，毎年恒例の地域交流会の出し物の相談が始まっていた。晶が無事だったという知らせを聞いた園崎は，俄然張り切りだした。 そんな中，小澤がタイヨウに臨時入所することになった。さくらが入院してしまったためだった。しかし，「さくらを呼べ」と言うだけで，ヘルパーの介護を受け入れようとしない。彦一は「さくら」と言う名前にドキッとしている。和泉・りこ・彦一がさくらの病室へ。今回は緊急処置のため，小澤がタイヨウにいられるのは今月いっぱい。その後は，訪問介護を受けながら自宅で過ごすことになる。病室にはいると，彦一はさくらの右腕のやけど跡を見てはっとする。さくらは，もう小澤の介護をするのは無理だという。和泉やりこが励ましながら説得をするが，彦一は「無理だよ，その女には。その女に他人の世話なんか無理だって言ってんだ」と言い出す。そしてさくらに「わかんねぇか？わかんねぇよな。そりゃ，28年もたっちゃよ」。そう言われたさくらは，彦一の顔をじっと見る。「彦一？」。その言葉に，病室を飛び出す彦一。りこが追いかけていくと，「オレとオヤジを捨ててった母親だよ」と彦一。 タイヨウに戻ってきた和泉は，彦一とさくらのことを説明する。28年前，彦一が7歳の時に男と駆け落ちして出ていった母親がさくらだった。さくらはこのことを小澤には話さないで欲しいと言っていた。彦一はまだ戻らない。晴菜が心配して彦一を捜しに行くと，りこが見守っていた。彦一「まさか生きていたとはな。一目でわかっちまった」。さくらは，必ず戻ってくるからと幼い彦一の目の前で家から出て行った。アル中の父親は，その後すぐ死んでしまい，彦一は親戚をたらい回しにされた・・・。彦一「あの女，また同じことするぞ。次は無理心中っていうのがおちじゃねぇかよ」。晴菜「気持ちはわかります。でも，せっかく再会できたんですから，彦一さんがきっと支えになれます」。彦一は「オレはあいつに関わる気ねぇよ」と行ってしまう。晴菜は，りこに「おかしいですよ。親子なのに」と。りこ「親子だからだよ。あんたみたいなのにはわかんねぇよ」。 小澤は食事もろくに取らず，さくらを呼ぶだけ。彦一は，誰もいないことを見計らって，小澤の部屋へ入る。文句ばかり言っている小澤。彦一は「あんた，嫁さんが何したのかわかってるのかよ」と。小澤は，自殺未遂のことはわかっており，いつものことだと。そして「あいつはワシを置いて死んだりはせん」。彦一「何年つれそってんだよ」。小澤「30年だな」。彦一は，ギュッとこぶしを握りしめた・・・。そこへ和泉が入ってきた。さくらを連れて。出ていった彦一は，休憩室でたばこを吸い始める。隣の事務室には，さくらがやってきて，小澤と同じ部屋で世話をしたいと申し出た。 晶がタイヨウにやってきた。彦一に助けてくれたと礼を言うが，彫り物のことはまったく覚えてない様子。さくらは，献身的に小澤の世話をした。小澤も，今まで自分から動こうとしていなかったが，さくらがいると，普通に生活をはじめていた。屋上にさくらがいると，ガラスを1枚隔てたところへ，彦一がやってきた。じっと見守るさくら。彦一は気づかない。彦一を呼びに来たりこだけが気づいていた。 晶は，涼太に「久しぶりね，晩ご飯まで作ってあげれるの」と笑顔で接している。涼太は「病院は？」と心配するが，晶は「行ったわよ，ちゃんと」と言う。グラタンを皿に盛っていると，心配そうに見ている涼太。皿を出されても，すぐに食べ始めようとしない。晶「どうしたの？大好きでしょ」。そう言われると，食べ始めた涼太。タイヨウの寮では，6人がいつものように食事をしていたが，何となくくらい。テレビでもつけようとすると，画面に出てきたのは離ればなれになっていたライオンの親子が感動の再会・・・すぐに消された。六車「あの状態で施設を出たら，共倒れになりますよ」と小澤夫妻について言い出す。必死に介護をするさくら。その様子を廊下で聞いている彦一。彦一は，さくらがやけどを負った時のことを思い出していた。りこは「あんたに会いたくてここにきたんじゃねぇのか。あんたと話がしたくて」という。「何話すっつーんだ」と彦一。 みんなで賑やかに交流会の準備をしている。その一方，涼太が彦一に話があると。ただなかなか話し始めない。いらだつ彦一は「またママとなにかあったか？親なんか信用すんな。人間は1人で生きていくしかねぇんだよ。信じられるのは，自分だけだ」と言い出す。去ろうとする彦一に，すがるように涼太は「グラタン・・・グラタン作ってくれたんだ・・・2日続けて。前の日のこと全然覚えてないみたいに。ママ，病気なのかな」。驚いたような彦一だったか「知るかよ」。その晶は，取材中，ぼーっとしている。頭に浮かんだのは桜吹雪。ただそれがなんなのかまで思い出せない。 交流会のうたの練習中，小澤とさくらが見学にやってきた。出ていこうとする彦一を，晴菜が止めようとする。それを止めるりこ。結局彦一はさくらの前へ行き，「オレと話してぇのか？何話すっつーんだよ。言ってみろよ」と暴れ出す。みんなで押さえるが，止まらない。彦一「これ見よがしに，ダンナの世話なんかしやがって。言い訳したくて，死のうとしたのに，いいひとぶってんじゃねぇよ。結局，てめぇは，このじじいから逃げたんじゃねぇかよ。いまさら何やったっておせぇんだよ。なんとかいってみろよ！オレを捨てて，どんだけ楽しい人生おくってきたか，聞かせろよッ!!」。怒鳴り続ける彦一の頬をひっぱたくさくら。彦一は黙り，出て行ってしまう。呆然と見ていた涼太が後を追いかける。「アニキ」とすがるが，振り払われてしまう。小澤はさくらに「なんでいわなんだ・・・」。 彦一が海岸に向かう途中，晶の車と出会った。彦一はまったく気づかず，行ってしまう。その様子を気にした晶は彦一の元へ。「遅れてきた反抗期ってとこ？今度はあなたが捨てるの？捨てられたお返し。断ち切ることなんかできないの」。彦一「おめぇに何がわかるんだよ」。晶「捨てる気持ち・・・私は親を捨てたから。でも今はわかる。子どもに嫌われることがどんなに悲しいことか。どんなにこじれても，親子は親子だから」。涼太も離れたところで聞いていた。 夕飯の時間になっても戻ってこない彦一。他のメンバー達も心配している。夜遅く，戻ってきた彦一は，小澤の部屋の前へ。ドアを開けようとすると，中で人が倒れる音が。慌てて中にはいると，さくらが倒れていた。突然倒れたという。晴菜が，今は看護師がいない時間だと。彦一は，さくらをおぶって，病院まで必死に走った。医者によると過労と言うことだった。後から来た晴菜を，先に返す彦一。晴菜は「ごめんなさい。家族のことに口出しして」と帰って行った。2人きりになって，さくらが目を覚ました。さくら「あなたにずっと謝りたかった。28年間，ずっと。謝ったって，今すぐ許してもらおうと思わないけど。母さん，あんたを迎えにいけなかった。あの人と着の身着のまま逃げて，一生懸命働いて。今日迎えに行こう，明日迎えに行こうって思ってた」。彦一「ふざけんなよ」。さくら「私が体壊したの。長いこと病院を出たり入ったりしてね。お金もなくて。そう言う私を，あの人はずっと支えてくれて」。彦一「それで今は言いなりかよ」。さくら「小澤はね，いつも言ってた。元気になったら，子ども迎えに行こう，自分はいい父親になるんだって。やさしい人なのよ。結局，2人の間に子どもはいないの。私には，彦一がいたから。あなたに会えてよかった。辛くて，辛くて，死んで逃げようと思ったけど，あなたの顔を見て，あの人とまた生きようと思った。ありがとう，彦一」。 彦一が，小澤の元へやってきた。さくらが無事だったことを伝える。小澤は，彦一にトイレの介助を頼んだ。座りながら，ぎゅっと彦一をつかみ，小澤「立派に育たれて何よりです。お母さんを奪ったこと申し訳ないと思っております。これから，さくらを・・・」。彦一は遮るように立ち上がり，トイレの扉を閉める。扉の前で，涙を流しながら，彦一「ありがとうございます。おふくろ・・・おふくろを支えてくれて。これからもよろしくお願いします」。その様子をりこは廊下で見ていた。 地域交流会当日。小澤とさくらは，夫婦で入れる施設へ移っていった。彦一は見送りに行かなかったが，見送りから帰ってきた晴菜に礼をいう。晴菜「お母さん，手紙書くっていってましたよ」。交流会でみんなが歌っているとき，晶がやってきた。涼太が一緒に歌うように引っ張っていく。最初は仕事があると断るが，笑顔で一緒に歌い出した。その様子を見ている彦一。そしてりこに，「おふくろのやけど，ガキんとき，オレのことかばってできたんだよ」と。子どもの頃，母親の元へ走っていった彦一が躓き，ストーブのやかんが落ちてきた。彦一をかばっていた腕に，やかんのお湯がかかってしまった・・・。 夜。寮でくつろいでいるとき，彦一の彫り物を見たりこ「おふくろさんの名前もさくらだなって思って」。みんははっとし，納得する。彦一は「関係ねぇよ，そんなもん」と部屋に入ってしまう。その頃，晶はパソコンでなにやらアンケートに答えていっていた。そのサイトの名前は・・・＜若年性認知症相談窓口＞。 |
| ＜第４回＞ タイヨウのテレビから，ヘルパーが詐欺事件を起こしているというニュースが流れている。先日の出来事以来元気のない彦一とりこ。晴菜はりこに，責任を感じることはないと励ます。晴菜がヘルパーをやっているのは，「誰かがやるべきこと」だから。りこに家族がやればいいはずと言われると「人それぞれ事情があるから・・・ヘルパーは家族の代わり」と。「なれねぇ，そんなもの」とりこ。研修メンバーでいつものように夕食。三樹矢は，最近このメンバーがうまくやっていると言うが，六車はそんなのんきでいいのかと。「こんな研修でどうやってきめるんです。選ぶ基準は？まともにやってたら，介護は金にならないし」と，頭の言うことをそのまま信じてはいないという。 晶は，秘書から夜のレストランの予約を伝えられると，何のことだか思い出せない。実は，この日が涼太の誕生日。手帳にも書いてあるし，プレゼントも購入済みだった。それなのに，まったく覚えていなかった。その時，涼太の担任から電話がかかってきた。その涼太は，彦一の所へ。涼太は何も言わなかったが，彦一は涼太のこぶしの傷を見てケンカをしたと気づく。晶が，タイヨウに涼太を探しに来た。涼太は晶を無視して出て行ってしまう。彦一「ガキのケンカだ。ちゃんと話，聞いてやれよ。相手はずっとあいつのこといじめてたヤツだってよ」。晶「そう言うこと，あなたには話すのね」。自宅に帰ってから，晶は相手の家に電話をするが相手にしてもらえない。晶は涼太に「どんな理由があっても，暴力はダメよ。相手に仕返ししたって，何も解決しないの」。何も言わない涼太。晶は，涼太に誕生日プレゼントを渡す。涼太はその場でプレゼントをあけ，グローブを見て喜ぶ・・・が，すぐに表情が暗くなった。「ありがとう」とつぶやいて，リビングから出て行ってしまう。 彦一は，他のヘルパーや利用者達と公園に散歩に来ていた。彦一が，北浦ナツの車いすを押して歩いていると，ナツが「レイコさん！」とある女性に声をかけた。最初は躊躇していたその女性も「ナツさん」と応じる。以前，ナツが一人暮らしをしているときにヘルパーとしてきていた人だった。タイヨウに一緒に戻ってくる。ナツは突然になくなったレイコを心配していた。仕事の都合で街を離れたとわびるレイコ。レイコは，仲間と小規模な訪問介護を行っていたと。無認可なので，規則に縛られることなく，ボランティアのように自由に動いていた。レイコとの再会に喜ぶナツ。そんな姿を見てその場を去っていくりこ。それを追いかける彦一。りこ「あんた，案外お節介なんだな。死んだ兄貴に似てるよ」。 それ以来，レイコはタイヨウにやってきては，ナツの世話を焼いたり，他の利用者の手伝いをしたりしている。いろいろ気が利き，よく働くレイコは，利用者の間で人気者になった。ただ，夜になり自宅にいるレイコは，老人達のデータを入力していた。かかってきた電話では「楽に稼げるカモと再会できた」と話している。 晶は，会議に参加していた。そこでは，晶の方針のおかげでヘルパーの離職率が減ったと報告されていた。ただ，それには弊害もあった。利用者からのもっとヘルパーとコミュニケーションがとりたいという声だったり，時代に逆行する介護の仕方だと言う声だったり，年寄り使った金儲けという非難の声だったり。晶はいらだち「だったら家族が自分で世話すればいいのよ！」と怒鳴ってしまった。いつもと違う様子に，不思議がる秘書達。 涼太は，１人壁を相手にキャッチボールをしていた。そこへ彦一が通りかかる。うれしがる涼太だが，相手にしない彦一。それでも一緒に歩き出す涼太。まだケンカの相手に謝っていないと聞くと，彦一は「遠足は家に帰るまでが遠足って言うだろ。ガキのケンカは，仲直りするまでがガキのケンカなんだよ」。その時，レイコがある家から出てくるのを見かけた。ただ，そこの老人からは「あゆみ」と呼ばれていた。 和泉も，レイコのことが気にかかるのか，レイコがナツの世話を焼いているのを心配そうに見ている。ヘルパー達の噂では，利用者からレイコがお金をもらっているらしい。ただそれはあくまでも感謝の気持ちで，ヘルパーが規則でできない部分をやってくれているからだろうと，他の人たちには評判はいい。ナツは，レイコに今度の日曜日に何かやって欲しいと願いしていた。それを廊下で聞いていた彦一。彦一は「なんであゆみってよばれてんだ」と。レイコは，認知症のおばあさんが勘違いしていると説明する。そのまま帰って行くレイコの後ろ姿を見送っていると，りこがやってきて声をかけた。何でもないという彦一に，レイコ「好みなわけ？」。彦一「ドンピシャ」。彦一は，１人屋上で考えていた。ナツとレイコの姿に，自分とチヨの姿を重ねていた。 レイコは，通っていた家の通帳をこっそり持ち出した。あちこち名前を変えて，お年寄り達の家を訪ねていたレイコ。そんなレイコを尾行する彦一。和泉もタイヨウでなにやら調べていた。彦一は，レイコが鷲津組の連中と会っているところを目撃する。"詐欺ヘルパー"，これがレイコの正体だった。りこたちにこのことを伝えた彦一「鷲頭組とつながってるんだ。かたぎのわけねぇだろ」。なかなか信じられないメンバーにたいして，六車は「本当に詐欺師かもね」と。六車が調べたデータを見ると，詐欺事件の地域が少しずつ近づいており，この街がターゲットになってもおかしくなった。しかも，その地域は，全て鷲津組の縄張り。みんなが「どうしたら」と困惑していると，六車は「僕らの研修とは関係ないですから。鷲津組が絡んでいるなら，関わらない方がいいでしょう」と。それにみんなが納得していると，彦一は「気にくわねぇな。女使ってきたねぇ商売しやがって」。六車に「「前の自分も似たようなことしてたでしょ」と言われると，彦一は「なんだと，こらぁ！」とつかみかかってきた。六車「研修の目的ってこういうことだろ！年寄り相手に金儲けさせようとしているんだ。結局，あの女と似たようなやり方だろ。僕らは年寄りのためにやってるんじゃない」。彦一がナツの部屋の前で考えていると，りこ「話す気かよ」。でも話しても信じてもらえないだろうというりこ。ヘルパーでしかないから。 彦一が屋上に行くと，晶がいた。彦一「ヘルパーって言うのは不自由だな。規則のせいで，年寄りの頼みきけねぇこと多いしよ」。晶「喜ばせたいならボランティアになりなさい」。＜介護施設は理想から一番遠い場所＞について，彦一は「変えていこうと思わねぇのかよ」と晶に。晶は「安い賃金で労働条件は過酷，その上理想まで求められたらヘルパーの数はどんどん減っていくわ」。例えシステマティックな介護でも，誰からも介護を受けられないよりましだと。目の前の人だけを助けられればいいと言う物ではない。彦一「あんた案外やさしいな。ガキにもそう言う話してやれよ。同級生にあんたのことぼろくそ言われたんだと。年寄り相手に金儲けしてるとか，テレビ出て生意気だとか。ちゃんと話聞いてやれっつったろ」。去っていこうとした晶だったが，めまいで倒れそうになる。彦一が支えたところを，りこに見られてしまった。りこは，彦一に缶コーヒーを渡しながら「ジャマしたな」。 その頃，ナツがレイコと連絡が取れなくなったと騒ぎ出した。慌てて彦一とりこが飛び出していく。レイコのアパートに向かったが，すでに引き払った後。和泉がナツと話をした。タイヨウにやってくる前，１００万円，レイコに盗られていた。しかし，警察には何もいっていない。ナツは，１人で寂しいときにやさしくしてくれたレイコに感謝していた。ヘルパーは規則で時間もやれることも決まっているが，レイコは何でもやってくれた。ナツ「詐欺師だっていいじゃないの，やさしくしてくれたら。ちゃんとお別れしたかったけど，それが無理なら無事に逃げ切って欲しいわ」。 りこは彦一に「どうしようもねぇって，うちらには」と言うが，彦一は「鷲津組にいきゃ，何か手がかりあんだろ」と。りこが「落ち着けって」となんとかその場にいさせると，六車がレイコのデータを教えてくれた。本名は＜新藤綾＞。父親の介護施設で働いていた介護福祉士。その施設が倒産し，その直後父親が過労死。鷲津組からの多額の借金を抱えていた。さらに，二本橋・三樹矢・五郎が，レイコがヘルパーとして通っていた家へ話を聞きに行っていた。どの家でも，名前を変え，お金も取っていたが，みんな感謝していた。お年寄りの希望をきちんと叶えてから姿を消していたし，お金も貯金のほんの一部だけ盗っていた。だから，誰も警察には知らせていない。しかし，どこでも彼女の手がかりは得られなかった。りこが「他になんかねぇのかよ」とつぶやくと，彦一はナツが日曜日のことを頼んでいたことを思い出した。 ナツの夫の墓参りにやってきたレイコ。そこへ彦一とりこが姿を表した。レイコは悪ぶりながらも「まともなヘルパーをやっているときから思っていたんだ。自由にやって家族代わりになった方がずーっといいって。お年寄りをほったらかしにしている家族の方が，よっぽどろくでなしでしょ。詐欺だろうが何だろうが，あれはもらって当然の報酬なのよ」と。りこ「ナツさんも言ってたよ。逃げてくれればそれでいいって」。その言葉を聞いて考え込んでいるレイコ。すると彦一はレイコの胸ぐらをつかんで「ふざけんなよ！来い！お前を助けYOUなんて思ってねぇんだよ！」と大洋まで連れて行った。彦一は「てめぇのこと心配していたじいさん・ばあさんだよ。だましてたんだろ，てめぇは。だったら，はっきりそう言え。詐欺師は感謝されたまま逃げんじゃねぇよ！だまして逃げんなら，憎まれろ！許して欲しいと思ったんだったら，きっちり筋通せ！」。レイコが「私は・・・」と話し出すと，ナツが近寄ってきて「ホントは綾さんって言うのね。やさしくしてくれたのも，お金を取るためだったのね」。レイコ「はい」。ナツは，レイコを叩きながら「ひどいじゃないの。こんな年寄りだますなんて」。レイコが泣きながら謝ると。ナツは「いいのよ。ちゃんと返してね。それまで待ってるから」とやさしく抱き寄せる。レイコ「約束します」。その様子を涼太は黙ってみていた。二本橋は，彦一に「彼女自首しても，鷲津組からずっと追われますよ」と言うが，彦一は「そうはさせねぇよ」。 涼太は，グローブを持って，殴った友だちの所へ。言葉はない物の，仲直りをする２人。タイヨウのテレビでは，レイコ＝綾が詐欺師として捕まったニュースが流れ，園崎が驚いていた。そして，鷹山が一席設け，鷲津組に手を引いてもらうよう口添えをしてくれた。ナツは，来年の墓参りの心配をしているが，晴菜に自分で行くように勧められる。足が悪いことをいい訳にすると，晴菜は「甘えないでください。明日からリハビリビシバシがんばっていきますからね」と。ナツ「厳しいわね」。晴菜「ヘルパーですから」。 彦一は鷹山と会っていた。彦一が礼を言うと，鷹山hは「かまわねぇよ」。彦一「オレたちがここで身につけるしのぎってぇのは，年寄りだますことなんですかね」。鷹山「お前はそのつもりなのか？仕事に戻れ。その答えはてめぇで見つけろ」。 晶は，タイヨウで倒れてしまった。その晶を支えようとした彦一。必死で彦一の襟ぐりをつかんだ晶は，彫り物を見つけてしまった・・・。 |
| ＜第３回＞ りこは身内の一周忌でタイヨウを休んでいた。一周忌会場では，威勢を張るも，組員達は小バカにしている様子。若頭の久米が幅をきかせている。四方木組は伝統のある組で，代々四方木家の人間が跡を継いでいた。そのため，りこが組長になったが，古参組はそれでよいが，納得いかない連中もいるらしい。久米によると，四方木のシマで薬を売っている堅気がいると。久米は，四方木組が薬も扱えばいいと言うが，りこはそれを認めない。久米は幹部のイス持ってきて箔をつけてもらわないと困るという。四方木組は最近他からなめられがちだから。 晶は，頭痛に悩んでいた。秘書にタイヨウの素行の悪いヘルパーの履歴をリサーチするように命じたことも忘れていた。彦一達の履歴を見ながらも，それほど興味を持たず，涼太の話になる。その涼太は，浜辺で彦一にケンカのやり方を教えてもらっていた。彦一は，ただ近くにいるだけだったが。一周忌の帰りそこを通りかかったりこは「もっと鼻っ面狙え」とアドバイス。 翌日から急に張り切って働き出したりこ。そんなある日，デイサービスのおじいちゃんが，虐待をうけているのではないかという相談を持ちかけてきた。その虐待をうけている老人は，渡辺節子。訪問介護サービスの契約をしているが，今は孫と住むようになったので休止中。相談を持ちかけたおじいちゃんの話も，家の前を通りかかったら物が壊れる音がしただけなので，何も手を出せない。晴菜は，仕事が終わったら彦一と様子を見に行くと言うが，その日は晴菜と和泉が夜勤だった。するとりこが「私が行くよ」と。りこは渡辺家へ向かうが，彦一もついてきた。「最初に相談されたの，オレだろうが」と。渡辺家では，気のよさそうな孫・高志が対応してくれた。節子はもう寝ているという。高志が一緒に住むようになって，安心したのか寝ていることが多いという。ただ，目が離せず，大変な状態は変わらない。彦一が「ウチのサービス契約続いてんでしょ」と言うと，高志は「オレが世話してやりたいんです」と。節子が台所に来て，洗い物をはじめた。彦一とりこの前では，やさしく接する高志。ただ，高志が席を外したとき，節子の腕に縛られた跡があった。ただ，それだけでは虐待と言い切れない。保護するための身体拘束の場合もある。しかし，実際に，高志は節子と2人きりになると，殴る蹴るの暴行をしていた。 りこは次の日も1人で渡辺家へ出向いた。高志がいないからと，ドアも開けない節子。その様子を見ていた高志が，本社に苦情を訴えてきた。注意を受けるりこ。彦一「何焦ってんだよ」。りこ「あんたには関係ねぇだろ」。2人が話していると晶がやってきた。晶は「お節介は利用者にとって迷惑になるだけよ。おばあさんが助けを求めない限り，何もできないわ。他人のあなたにはね」。りこはその後も通い続けた。「友だち」として。徐々にうち解けてきて，玄関先での対応から，だんだん部屋の中へも入れてくれるようになった。りこのやっていることを知った晴菜は一緒に行くと言い出した。晴菜は彦一も誘うが，りこは「いいんだよ，そいつは。下手打ちたくなくて，おとなしくしているだけだからよ」。彦一「手柄たててぇんだったら，慎重にやれってんだよ。」。りこ「ちっちぇー男」。 りこと晴菜は2人で渡辺家へ向かった。その途中，晴菜は「彦一さんと仲がいいみたいですね」と，2人の関係を気にする。そして「彦一さんってどんな人なのかなって」。りこは「ちっさい男。最悪」と言うが，晴菜は実は優しいんじゃないかと。その晴菜の様子を見て，りこは「あんたさ，男の趣味悪いね」と。そのころ彦一は雀荘通いをしていた。三樹矢から，四方木組の話を聞き出していた。そして，じっと見つめた視線の先には，高志の姿が。 りこと晴菜は，節子への虐待がだいぶ収まってきているが，まだ油断できないと話している。和泉は彦一に「あまり目立つ行動させない方がいいぞ。あんたら羽鳥顧問ににらまれてるし」と忠告する。 晶は，塾を休んでいる涼太に，タイヨウに行くことを辞めるように言う。晶が「学校にも塾にも同い年の友だちがいるでしょ」と言うと，涼太は「いない」と下を向いたまま答える。晶「どうして？」。涼太「もういない」。何も言おうとしない涼太に，晶「言いたいことは言って。2人だけの家族なんだから」。「どうして2人だけなの？」と涼太。その涼太の表情は，彦一の前で見せる物とは違い，固い。部屋へ行ってしまう涼太を見つめる晶は，また頭痛に悩まされる。 りこがまた節子の所へ行く。カギがかかっていて，呼びかけても出てこない。留守と思い立ち去ろうとしたとき，何かが割れる音が。慌ててあいている窓から中へはいるりこ。皿やコップが散乱している台所を，1人で片付けている節子の姿があった。慌てて駆け寄ると，払いのける節子。「あんたらが来るから，また・・・お願いだから，堪忍して」。りこが傷の手当てをしてあげるが，自分でやったと言い張る。節子は「私にはあの子しかいないから。あの子は家族だから。ヘルパーさん頼んでも，ずーっとそばにいてくれんし。でもあの子は，ずーっとそばにいてくれる。だから，あの子は悪くない」。この話を聞いた晴菜は，りこに，虐待相談窓口に連絡しようと提案するが，りこは「喜ぶと思うか？」。 高志が家に帰ると，晴菜がいた。すぐに帰って行くが，晴菜はりこのことが心配になる。実は，りこは押し入れの中に隠れていた。それを知らない高志は，晴菜が帰ると，すぐに暴力を振るいだした。りこが飛び出し止めにはいるが，今度は包丁を持ち出し，暴れ出す。力では勝てないりこは，すぐに倒されてしまう。感情のまま蹴られるりこ。何もできない。高志が電気ポットで殴りつけようとした瞬間，彦一が一発で殴り飛ばした。りこ「なんでだよ」。彦一「研修メンバー欠けたら，連帯責任だろ」。その後，とりあえずタイヨウへ向かう。園崎の前で反省する高志。しっかり反省をしているからと，そのまま帰す。園崎は彦一達に「結果はオーライだけど，今後はこういうことしないようにね」と注意をする。家に戻った高志は節子に「ごめん」と謝った。 浜辺で涼太のケンカの練習。涼太は彦一に「アニキのママって，どんな人？」と訪ねる。彦一「覚えてねぇよ。ずっと1人だよ」。 仕事中のりこの元に，組から電話がかかってきた。あの薬を売っていた素人が見つかったと。電話を受け，呆然とするりこ。「ばあちゃん」とつぶやき，飛び出していった。それを追いかける彦一。その素人が高志だった。節子の家に行くと，全てにカギがかかっていた。彦一が窓を割り，中へ。節子は縛られ，倒れていた。高志は，四方木組の連中が連れ去っていた。救急車が到着し，節子を運ぶ。りこが一緒に行こうとするが，彦一が止める。「向こうどうすんだよ！」。りこ「うちの連中が勝手に始末つけんだろ」。彦一「てめぇの背負ってる組だろうが。てめぇできっちりけりをつけろよ！」。彦一が救急車に乗り込んでいった。 りこが高志が連れて行かれたところへ乗り込んでいった。久米が「こいつ，始末しますから」。高志は「最初は世話してやろうと思ったんだよ」と。介護が思いの外辛かったと。りこは「自首させろ」と言い出す。久米「極道のやり方でけりつけるのが普通でしょ」。りこ「組長は私だよ。メンツなんぞ，私が幹部になって取り戻してやるよ」。渋々去っていく組員達。りこは高志に「てめぇみたいなヤツでも，婆さん待ってんだよ。身も心もキレイにして，婆ちゃんのとこ，戻ってやれ。次やったら殺すぞ」と言って去っていく。 治療を終え，退院した節子は，タイヨウに入所することになった。高志が麻薬取締法で捕まり，疎遠になった身内しかいないという状況で，問題のあるケースだったが，晶「だからよ。いいサンプルなの。あの施設のヘルパー達にとっては」。タイヨウにやってきた節子は，言葉をかけてもぼーっとしていて反応がない。そのうち「たかし！」と昼夜関係なく叫び続け，大暴れをはじめた。和泉が身体拘束をしようとして，彦一は止めようとしたが，園崎も認めたと。ガラスに頭を打ち付けるなど，節子自身の身も危険な状況だった。りこ「ここでも縛られるのかよ」。落ち込んでいるりこと彦一に，晶は「あなたたちは良くやったわ。ヘルパーとしてあのおばあちゃんのためにね。少なくとも肉親から虐待をうけることはなくなった。これが私達にできる限界よ。私達はむやみに心に踏み入るべきではないわ。ヘルパーは家族にはなれない」。 夜。寮に戻ったりこと彦一。りこ「うまくいかないよな。家族じゃないから婆さん助けられないし，男じゃないから極道やんのもしんどいし。兄貴がいたんだよ。死ぬ前に言われたよ。お前は跡継がなくていいって。普通に幸せになれってさ」。ずっと黙って聞いていた彦一「明日も早いぞ」。 |