スペシャリスト13.5.18

　滋賀中央刑務所。宅間善人は，事件の概要からどの受刑者の事件か次々と当てることができる。10年の服役の間に，受刑者を観察し，実際に話を聞き，様々なデータを記憶して得た能力。宅間は，10年前京都府警の広報課に勤めていた。しかし，仲良くなった記者の大宮がスパナで殴られ意識不明の重体になった事件の際，すぐそばに宅間が倒れており，凶器も一緒に落ちていた。最初は認めなかった宅間も，途中から罪を認め15年の刑が確定した。その大宮の意識が10年ぶりに回復した。えん罪が証明され，刑務所から出ることになった宅間。刑務所を出ると，弁護士が，京都府警副本部長・高倉紀一郎に会わせるために迎えに来ていた。高倉は，宅間を京都府警に刑事として復職させるという。そのために"スペシャルチーム"を用意した。
　特別捜査課。係長；猪熊左千夫。捜査2課から来た松原唯子。警備部から来た堀川耕平。そして，姉小路千波。一課のサポートと言う名目だが，特に何もする必要がなかった。宅間を飼殺しにするための"スペシャルチーム"。「爆弾は手元に置いておく」と言う考えの高倉。宅間は刑事経験ゼロ。しかも，仕事する気は全くなし。一方，何もしないのは「もったいない」と言う姉小路は，捜査本部からこっそり捜査資料を持ってきて，自分たちで捜査をしようとする。宅間が発言しようとすると，姉小路は「刑事経験ないんだから，だまってて」と。「わかるんです。１０年入ってましたから」と言う宅間。犯人の心理から推理をし，もうすぐ犯人が自首してくることまで当ててしまう。「しょぼい事件」と言う宅間に，姉小路は「しょぼい事件なんてない」と一喝。姉小路が自宅に帰ると，母・小枝が営む下宿に新しい人が入ったという。その人物が，宅間。小枝と姉小路の娘・茜の前では，いい人ぶる宅間。
　姉小路は，新たに殺人事件４件の資料を持ってくる。それぞれの事件を２件ずつ，２人ペアになって調べることに。堀川と松原がペアになるが，「毎日甘いもの食べられるって幸せだなぁ」とチョコレートを食べ続けるだけの宅間を見て，姉小路は１人で調べに出てしまう。１つ目の事件は，停職中の小学校教諭・中原道弘が刺殺体で見つかった事件。死因は失血死。殺害後，わざわざ電話バックスまで死体が運ばれていた。２つ目の事件の被害者は，主婦・鳥飼永代。自宅でゴルフクラブで撲殺。財布からわざわざ保険証を抜き出し，胸の上に置かれていた。３つ目の事件の被害者は，美容整形外科・青山潤二。裁ちばさみで刺殺。ポケットにあて名のない，切手が張られた封筒が入っていた。４つ目の被害者は，ホステス・春日浩江。鉄製の天秤ばかりで撲殺。概要を聞いていた宅間は「４つまとめて解決しちゃえば？だってこの４つの事件，つながってません？」。何もかもばらばらに見える事件だが，宅間「わかるんですよ。１０年入ってましたから」。犯人は，余計なことはしていきたくない。だから，現場に残している物は，必ず意味があるはずだと。１つ目の事件は，わざわざ電話ボックスまで運んでいる。２つ目は，わざわざ保険証を取り出して置いて行っている。３つ目は，封筒を残している。４つ目は，普通はない天秤ばかりを残していっている。やらなくてもいい事を，わざとやっている。そこまで言っておきながら，勤務時間が終了し，帰ってしまう宅間。夜，姉小路は，レストランに宅間を見つける。宅間は，妻と息子に会っていた。息子は，事件後に生まれたので，初めて会うことになる。妻は，現在付き合っている人がいて，息子の事もかわいがってくれているという。宅間「よかったよ」と。２人が帰った後，店を出た宅間は，店先のごみ箱にプレゼントを捨てて行った。
　翌日。姉小路は，宅間を無理やり聞きこみにつれだす。中原が勤めていた小学校に行くが，収穫はない。停職の理由も教えてもらえなかった。すると宅間は，刑務所仲間の"ぜにやん"の店に行く。そこで情報をもらった。停職の理由は，スーパーでの万引き。その万引きを通報したのが，２件目の事件の被害者・鳥飼だった。そして，３つ目の事件の被害者・青山と，４つ目の事件の被害者・春日は不倫関係にあった。４つの事件がつながり始めた。しかし，宅間は「まだそこまでなんだ」。宅間は，みんなをサイバー犯罪分析室に連れていく。そこで北本から情報をもらう。キーワードは"殺したいほど強い恨み"。それで被害者４人がつながっていた。中原は万引きを通報した鳥飼に対して。鳥飼は，美容整形手術の結果に不満を持ち，青山に対して。青山は，不倫関係をばらし家庭崩壊させた恨みを春日に対して。しかし，殺された順番から，恨みを持った方が殺すことは不可能。宅間「誰かが殺されると，その人が殺したいほど恨んでた人が次に殺されるっていうルール」。そこで，春日が恨んでいる人を探し始めた。春日が借金をしていたことが判明。その闇金へ行くと，刑務所仲間の"たかちゃん"がいた。宅間が刑事だとわかると，突然逃げ出した。今は，振り込め詐欺を行っていたのだった。たかちゃんに確認すると，春日は闇金自体にお金を借りていたと。そして，悪徳弁護士に恨みを持っていることがわかった。１１０番通報した→電話ボックス。手術がうまくいかなかった→保険証。浮気相手が手紙送った→封筒。天秤ばかりは・・・弁護士バッチ。調べたところ，弁護士・浜崎大地が浮かび上がった。姉小路と宅間が弁護士事務所に行くと，来客中だという。その来客に疑問を抱く宅間。その時，物音が。慌てて姉小路が部屋に行くと，すでにバットで殴られていた。犯人の姿はなかったが，宅間はそっとクローゼットのドアを開かないようにした。そこに犯人が隠れていた。
　浜崎を殺した犯人の取り調べが始まった。「選ばれたんですから。あの連中，ネット上に好き勝手に醜いこと書きまくって。だから，排除することが使命なんだ」と主張していた。宅間は，チョークを見せた。この殺人サイクルを閉じるために，チョークを現場に残しておくつもりだったろうと。それを認める犯人。浜崎と中原は同級生で，いじめがあったと。それで輪が閉じると教わった。誰に教わったのかと言うと・・・「ネットの神様」。取り調べの様子から，姉小路は「犯人と思えない」。宅間「オレもそう思ってます。初めてですね。意見一致したの」。さっそく動き出す２人。調べていくと，中原と浜崎の出身校は違っていた。真犯人に作られた話を信じ込まされていただけだった。
　宅間は，殺しの手段がばらばらな事を気にかけていた。特別捜査かみんなで手分けして過去の殺人事件を調べ始めた。被害者の数が５人で，今回の事件と同じ手段が使われいている事件。条件に一致する事件が，２０年前に起きていた。清水一家５人殺人事件。犯人は，隣の家の住人。犯人は殺害後自宅に戻り焼身自殺。５人が殺された方法が，今回とまったく一致している。家族の中で，唯一生き残った者がいた。当時，林間学校にいっていたため不在だった正紀。家族を亡くした正紀は，１１歳で施設へ。今は，"北本正紀"となっていた。そのころ，なにも知らない松原が，捜査以来のためサイバー犯罪分析室の北本・・・北本正紀を尋ねていた。話をしてる途中で，ネームプレートを見て，探している人物だと気付いた松原。しかし，すでに遅かった。特別捜査課のメンバーが慌てて向かったが，誰もいない。痕跡から，宅間は松原が拉致されたことを推理する。宅間は，北本からもらった４人のデータがあまりにも完璧すぎていたことがおかしかったんだと。北本の本当の目的がわからず，困惑する宅間。北本が何気なく書いた，殺人サークルのが閉じられてないことに気付いた宅間。「五角形じゃない」。もう一人でキレイに閉じる。最後の一人は・・・。
　この日は４月２７日。ちょうど２０年前に事件が起きていた。この日のうちに終わらせるつもりだろう。姉小路と宅間が急いで向かったのは，２０年前事件が起きた自宅。そこには，北本が静かに座っていた。家中に灯油をまいて。そう，殺人サークルの最後の一人は北本自身。時計を見た宅間「まだ時間あるよね。姉小路さんに教えてあげて，殺人の動機」。近隣トラブルがいつの間にか歯止めが利かなくなりエスカレート。一家惨殺事件へと。しかも，犯人が刑に服すこともなく死んでしまったことが許せなかった。復讐することも，憎むこともできなかった。ネット上に気軽に書かれる「殺す」と言う言葉。自分からすれば些細なことなのに。だったら殺してやる。殺したいほど憎いやつがいることがうらやましかった。「５人」としたのは，時間稼ぎ。警察に対する恨みを晴らすためもあった。最初の被害者・中原は，事件当時の担任。いじめられていたことを理由に，林間学校を休みたいと言ったが，強引に連れて行かれた。ジャンボ消しゴムをご褒美として。あの時，林間学校に行かなければ，自分ひとり残されることはなかった。中原のことを恨んでいた。殺人サークルが閉じられた。宅間「完璧じゃん」。
　そろそろ時間。しかし，宅間が「これ失敗だよね。もったいないなぁ」と言い始めた。犯人は１人じゃなかったといいだす。殺人の方法がバラバラだったことを考えれば，１人だったとするより複数犯だったとする方が納得いく。いくら夜中でも，ひとりで５人の人間を殺すのは難しい。助っ人を雇ったとするのが自然。その人物は，"さかいきみお"。同じ雑居棒にいた男だという。宅間「君には，殺したいほどに組む相手がまだいたんだね」と言いながら，北本が手にしていたライターを受け取る。心配なのは，松原。宅間は，もともとここにいるとは思ってなかった。彼女が監禁されていたのは，警察の広報課備品倉庫。そこを調べると，彼女が縛られていた。事件解決。
　姉小路は，北本が許せなかった。ああいうやつを一人でも捕まえるのが自分の仕事だと。宅間「だったら，オレ，やめませんから。犯罪者の側からしか見えないかもしれないけど。やっぱりオレも許せないんですよねぇ。犯罪犯して悪いコトしたやつが捕まることなく，のうのうと生き延びてるなんて。絶対許せないし」。姉小路は「だったら，行方探さないと。"さかいきみお"」。宅間「まだわかってないんですか？ここに何度も来てるのに」。後ろのポスターには，"１日署長・酒井公夫"の文字が。宅間「人を殺しといて，つかまる前に死んじゃうなんて，この世で一番悪いことだと思いません？」。
　高倉に呼びだされた姉小路。高倉は，特別捜査課を解散させるという。宅間以外は，本人の希望通りの配属にすると。宅間は，本部長室付。１人で定年までずっと。宅間は，１０年前から時間が止まっているからだという。姉小路を呼びだしたのは，彼女の意見を聞いておきたいからだという。そのころ，宅間の部屋を訪れていた茜が，壁際のカーテンの裏に隠されたものを発見する。そこには，１０年前に関する新聞記事や捜査資料と思われるものや地図が壁一面に貼りだされていた。高倉「時間が止まっているのは，君も同じだったね」。姉小路がいつもしている腕時計は，夫が使っていたもの。姉小路の夫は，逃走犯に刺され殉職。その資料を宅間も読んでいた。宅間「だからあの人刑事やってんだ」。
　姉小路は，特別捜査課に戻ってくると，「これ」と宅間が捨てたはずの妻子へのプレゼントを差し出す。姉小路「今度会ったらあげなさいよ」。宅間「ダメですよ，こんな皺くちゃになったら・・・ハイ。長い付き合いになりそうだから」と，そのプレゼント・キョッピーのストラップを差し出す。姉小路が，課の存続を希望したことを見透かしていた。