スペシャリスト３

　人質籠城事件が発生。特命捜査課の面々も現場に駆け付ける。捜査一課は煙たがるが，本部長命令と言われるとどうしようもない。本部長は，宅間を飼い殺しにするための課だということをごまかすために，捜査を命じていたのだった。結局，特命捜査課に任された仕事は，現場の交通整理。そして，宅間は現場にいない。姉小路が電話をかけると，「まだ解決してないの」と宅間。犯人は何も要求してこないし，全く動きがない状態。イライラする姉小路に，宅間はのんびりと刑務所の中で出会った男の話をする。強盗殺人事件のアリバイ工作のために，友人に下着泥棒を依頼し，下着泥棒として捕まっていた。人質籠城事件現場付近は，交通規制が敷かれている。通りかかった現金輸送車は，仕方なくコース変更をしていた。そして，迂回した場所で襲われてしまう。しかし，駆けつけた特命捜査課が強盗犯を捕まえる。人質籠城事件も一件落着。なぜわかったのかと聞かれた宅間。籠城事件のほうは，何も要求しない上に，時間ばかり気にしている。そして女性のほうは，下から覗かれるのをわかっていたかのように見せパンをはいていたと。立てこもり犯の方も，「殺す」等の脅し文句を言っていないから，罪も軽いと。すべてお芝居だろうと判断。相変わらず，現場に行かずに事件を解く宅間に，姉小路は苛立ちながらも感心している。

　殺人事件が発生。被害者は元検事の久保田周。撲殺されていた。現金だけ抜かれており，現場では強盗殺人と判断された。自分の事件じゃないとしぶしぶやってきていた宅間は，それを聞いて「ブブー」。凶器と判断されたバットを夜中に持ち歩いているのはおかしい。なので，野球の練習（素振り）をしているふりをしてたのだろうと。実際に現場にはそのあとが残っていた。ということは，計画的な犯行。現金を抜き取ったのは，強盗殺人に見せかけるための偽装。現場近くに人形が落ちていた。それを見て宅間は「オレが解くべき事件かもしれない」と言いだす。実はその人形は，「キョートマン７」といい，宅間が作ったキャラクターだった。現場にあったキョートマンの背中には，検事のマーク。「制服警官」「刑務官」「刑事」「弁護士」「検事」「裁判官」「国会議員」の7つの職業の人形が一体化されている。わざわざ切り離されて残されていたことには意味があるはず。宅間は1人で捜査をしたいと，姉小路とのコンビを解消。
　宅間は，姉小路の夫・竹彦の事件の資料を見ていた。宅間「つながっているってマジだったんだ。これやばすぎるでしょ」。宅間は下宿に戻っても，1人で事件のことを考えていた。姉小路は，娘の茜に竹彦のの仕事ぶりを伝えようと，竹彦が集めていた新聞のスクラップを見せる。ところが，1部破かれている部分があった。そしてそのスクラップブックの中に，キョートマン7のパンフレットも挟まれていた。宅間「つながっていたんだ」。宅間の事件と竹彦の事件はつながっていると，脚本家こと佐神に教わっていた。
　竹彦の事件は，単純な強盗殺人事件と考えられていた事件が発端。警ら中，容疑者の岡崎を発見した姉小路の夫は取り押さえようとして，駐車場まで追い詰めるも殺されてしまった。その後岡崎はトラックにはねられて死亡。当時は無関係と思われいた現場の残されていたものの中に，キョートマンがいた。それは制服警官のキョートマン。実際に現場を見てみると，逃げ場のない駐車場で，逃走中の犯人が逃げ込むような場所ではない。疑問ばかりが残る。つまり，事件は何もあきらかにされていないということ。そのため，姉小路が冷静な判断ができなくなると思って，捜査から遠ざけようと思ったのだった。宅間「オレの事件に巻き込むことできなかった」と。姉小路は「同時に私のヤマでもあるんだから。絶対私が見つけて見せる」。コンビでこの事件に挑んでいく。
　他につながりのある事件を探していく。過去の資料を見て，キョートマンが残されている事件がないか調べていく。しかし，資料があるのは捜査一課の管理下。こっそり入れないはずだが，宅間がピッキングで資料庫に忍び込んだ。大量の資料の中から，「刑務官（中島輝一）」「裁判官（杉山秋臣）」の事件を見つけ出す。しかし，それぞれの事件に共通点は見つからない。キョートマン7の職業のアイディアは，大宮が提供してくれたものだった。大宮の入院している病院に行くとリハビリ中だった。大宮の周りには，市民サークルの仲間がいた。「サークルが復活」「最後まで行ける」と話していた。何のサークルか尋ねると，マッチ棒で建造物を作る活動だと。その仲間が去ってから，大宮にキョートマン7のことを尋ねたが，特に収穫はない。大宮が襲われた事件について聞いても覚えていないというだけだった。
　姉小路は，竹彦の同僚で鴨川署副署長の沢田篤史に会いに行った。スクラップの破られている部分について，同僚だった沢田が何か知っているんじゃないかと。姉小路が家に戻ると，家の前に宅間の妻・美也子がいた。2人で話す。宅間から手紙が届き，そこには二度と会わないから安心してほしいと書いてあった。今付き合ってる相手・武藤が警備会社に勤めており，警備のプロなら2人を守れるだろうと。姉小路は，美也子の携帯に見覚えのあるストラップを見つける。それは手紙に入っていたという。美也子は，この手紙の内容が宅間の本心なのかどうか確かめたいと。姉小路は，宅間の事件が冤罪だったいうことは，真犯人がどこかにいるはず。そのため，宅間が襲われる可能性もあり，美也子と息子・紀彦を巻き込まないために手紙を書いたんだろうと伝える。そこへ，武藤が紀彦を連れてやってきた。仲良さそうな2人。そのころ，宅間は1人，美也子と紀彦の写真を見ていた・・・。

　5件目の事件が起こる。今回の被害者は，沢田だった。残されていたのは，刑事のキョートマン。宅間は，手口の違いに疑問を持った。沢田は，15年前，竹彦と同じ署に勤めていた。スクラップブックの破られていた部分も，15年前に当たる。宅間「何かがあったんだ」。沢田の通話記録を調べるが，宅間は姉小路と会った後で十分だと。調べると2か所に電話をしていた。スターコートプロダクションと天谷総研。残されているキョートマンは，弁護士と国会議員。スターコートプロダクションには，弁護士の南佳代子が所属している。天谷総研の代表・天谷隆治は，元国会議員。天谷総研に向かうも，対応したのは息子の裕作。天谷は今は引退していて誰にも会わないと，居場所も教えてもらえなかった。スタジオ収録後，南に話を聞くが，命を狙われる覚えはないという。しかし，何か知っているという反応だった。
　高倉本部長から呼び出される。捜査中止の命令だった。天谷のほうから圧力がかかったようだ。宅間は「動けるようにすればいいんですよ」と，何かたくらんでいる様子。すぐに，南関連で，ネットが炎上。様々な噂が流される。宅間は，北本からアイディアをもらっていた。実行したのは，ぜにやん。南のもとには，マスコミが押しかけ，休む暇がない。それが狙いだった。常にマスコミの目があるので，守られている状況を作ったことになる。宅間は時間がほしかった。何かこの連続殺人にはルールがあるはずだと。天谷と南の不倫記事もクローズアップされた。
　宅間は滋賀刑務所から呼び出される。外部との不正通信があるが，特定できない。宅間は，受刑者リストも見るが，唯一全員に接触できる人間・・・看守長と断定。その看守長は，高級時計をしており，さらに駐車場には新しい会社が止まっていた。給料だけでそれは買えないだろと推理。その場で看守長は取り押さえられた。宅間は，成功報酬として，刑務所に潜入した。佐神に会うためだった。宅間が解けない疑問，「手口が異なる点」「11年前3件で止まって再開した理由」。宅間「オレが出所したから？」。佐神「否定できませんね」。この事件は，復讐でもなく，快楽でもない。人生の目標や生きがい，存在意義・・・ある種の「教義」かもしれないという佐神。佐神「気をつけた方がいいですよ。今見えているのは氷山の一角にすぎません。まがまがしいものが潜んでいるかもしれません。わたし好みの」。

　南が殺された。やはり，キョートマンが残されていた。謎が完全に解けない宅間は，ソファに寝っ転がり赤ちゃん返り。しかし，刑務所から持ち帰った木工品のパズルに，ヒントが隠されていた。パズルを解いて並んだアルファベットを読むと＜simple code＞。宅間は，何かひらめいた。事件の資料が張り出されていたホワイトボードに向かい，カードを事件が起きた順に貼りなおした。キョートマン7のそれぞれのキャッチコピーの最初の文字を読んでいくと・・・＜おりはたまこと＞と読むことができた。織旗誠。殺人事件の容疑者だったが，拘置所内で自殺。事件の被害者は，星田翔太。不良グループ内のリンチによる殺人。織旗は，そのグループのリーダー格で，犯人と断定された。有罪を言い渡した裁判長が杉山。検事が久保田。弁護士が南。自殺した時の拘置所の刑務官が中島。警ら中に見つけ，暴行を受けたことから逮捕したのが，竹彦。捜査担当責任者が沢田。ここまで殺された被害者全員が，この事件の関係者。つまり，明確な動機のある連続殺人。ただ，天谷だけが関係性がわかっていない。宅間「関係あるよ。じゃないと，トリは務められないもんね」。　
　織旗誠には，勇という弟がいた。両親は離婚し，弟は母の姓・照屋を名乗っていた。照屋勇は，竹彦の事件の通報者。そして，もう一人いた人物が星田満子。年齢的に，星田翔太の母親の可能性が高い。ここまで関係が出て来た。偶然，この2人が発見したとは思えない。竹彦を刺殺したのは，岡崎ではない可能性が出て来た。南の事件現場にあった防犯カメラの映像に，宅配便に扮した不審人物が映っていた。背格好から，勇の可能性もある。星田満子の自宅を捜査すると，写真を発見。姉小路は，あることに気づいた。星田にも勇にも会ったことがあった。大宮の病院に行ったとき，市民サークルの仲間と紹介された中に2人がいた。
　宅間「わかった。すべてが」。本当は，織旗誠が犯人ではない。真犯人を隠し，織旗に罪をかぶせるため，何らかの圧力がすべてにかかっているとしたら・・・。勇と満子は仲間を集めて，7人の関係者を殺す計画を立てた。大宮は，最初から連続殺人のためにキョートマン7のアイディアを提案。1年に１件ずつ，殺人が行われいたが，大宮が襲われたことで中断。今回大宮が目を覚ましたことで，再スタートした。宅間と姉小路が病院に向かうと，すでに大宮は退院していた。まだ十分に1人では動けないから，たぶんあの仲間が一緒だろう。
　今回の連続殺人は，罪の軽い順に殺されている。自殺の兆候を見抜けなかった刑務官。殺人の容疑者として逮捕した制服警官。冤罪を見抜けずに判決を下した裁判官。何も疑わず起訴した検事。これ以降は，不正の認識があって冤罪にしたと考えられる。犯人じゃない可能性を無視し犯人と決めた刑事。誠を守るべき職務を放棄した弁護士。そして最後のひとりは・・・。南の愛人・天谷が，表に出ずに，すべてがうまくいくように圧力をかけていたのだとしたら。
　宅間は，南の葬儀会場に急いで向かう。天谷が絶対に現れると。葬儀会場は，公園。開かれた場所。犯行の手口は，今まですべて違っていた。残された手口は・・・射殺？周りを見渡すと，大宮がライフルを構えていた。みんなが大宮をおさえに行く。宅間は，1本のロープを引く。すると，大量のハトが飛び出してきて，現場が混乱する。ライフルで簡単に狙えない。銃声が鳴ったが，裕作のスーツをかすめただけだった。その間に，大宮は取り押さえられた。大宮「宅間さん，恨みますよ」。宅間は，仲間全員が集まっているはずだと。あちこちから1人ずつ集まってきた。
　実は，狙いは裕作の方だった。裕作は，事件当時18歳でグループを仕切っていた。バットで殴りつけリンチを行ったのが裕作。そのしりぬぐいを父親に頼んだ。天谷は，各方面に圧力をかけ，裕作が犯人という事実をもみ消し，織旗誠に罪を擦り付けた。勇と満子以外の5人は，何らかの罪の意識があった。大宮は，事件に関する記事を書いており，それが凶悪な犯人という世論を形成し，自殺に追い込んだと。そういう怪文書が届いていた。バイト先の人は，誠がバイトに入っていたと証言をしていなかった。担任教師は，かばうことをせず，不良グループのリーダーのように供述してしまった。全員が，そういう罪の意識を持ち，悩んでいた。そして，全員に怪文書が届いていた。勇と満子に依頼されることで，やるべきことが現れたと感じた。これは復讐ではないという。生きていた証・・・人の命を奪った人間から，その命を奪うしかない。唯一自分で選べた答え。存在意義のための殺人。1人が1人ずつ殺していく。誰を殺すかは，くじで決めた。方法は，自分に合った方法で。
　しかし，この現場には6人しか来ていない。大宮のケータイに残された写真を見る。そこに映っていたのは，美也子が付き合っている男・武藤だった。宅間「つながっていることの本当の意味だったんだ」。武藤が2つの事件を描いた。そのころ，武藤は美也子を車で連れ出していた。宅間は急いで美也子のもとへ行こうとする。武藤は，美也子が宅間の元妻と知って付き合った。武藤は車の中で，ニュースを聞き犯行が失敗したことを知る。宅間は，盗聴器で武藤と美也子の会話を聞いていた。美也子のケータイについていたストラップは盗聴器だった。会話以外にライブの音が聞こえてきた。あるアイドルのイベント会場。そのイベントについて，偶然雑誌で見かけていた宅間。運転席の姉小路にその場所に向かってもらう。
　会場に到着すると，うまく姉小路をだまし，姉小路を手錠でハンドルにつなげ，1人で向かう。必死に探す宅間の目に，透明なエレベーターで上に向かう武藤と美也子の姿が映った。後を追う宅間。屋上に2人の姿。大宮たちを引き寄せる怪文書を書いたのは武藤。大宮たちが自分の意志で殺人を起こすよう操っていたのが武藤だった。佐神が言っていた「教義」のように。竹彦は，武藤が殺した。竹彦自身にも，キョートマン7のパンフレットを渡し，あれは冤罪で，のちに自殺したと伝えた。竹彦はかなりショックを受けていた。岡崎を利用し，竹彦をおびき寄せて，武藤が刺した。通報者としてあの2人にも来てもらっていた。大宮を襲って，宅間に罪をかぶせたのは・・・武藤「全ては，おたくが振り出し」。連続殺人は，大宮を言いなりに使うためのもの。宅間が大宮を信用しきっていたから。大宮を殴ったのは武藤。宅間を階段から突き落としたのも武藤。宅間のそばに凶器を置き罪を押し付けたのも武藤。武藤「おたくが，我々の存在に気づいちゃったから」。宅間「それは犯罪が好きで好きでしょうがなくって、殺人も犯しちゃう人？」。これには答えず，小さなビンを転がしてくる。美也子を殺されたくなかったら，その中身を飲めという。悩んだ挙句，宅間が飲もうとした瞬間，銃をかまえた姉小路が飛び出してきた。宅間「なんで出てきちゃうかなぁ。あとあと切り札になったのに」。この状況を楽しんでいる武藤。竹彦を殺したと挑発してくる。宅間「こいつは生きたまま捕まえないと」と姉小路に訴える。膠着状態が続く。武藤は，美也子の首にナイフを滑らせる。うっすらと血がにじんでくる。
　その時，銃声が鳴った。狙撃班が武藤を狙撃。宅間は，美也子に駆け寄る。姉小路は，武藤に銃を向ける。武藤「オレを殺せば，止まっていた時間がまた動かせる」。宅間「ダメだよ！」。武藤「撃てよ」。姉小路は引き金を引いた・・・空に向かって。武藤はそのまま息を引き取った。
　高倉本部長は，発泡許可が問題なかったかどうか確認する。そして，盗聴器を傍受した音声データを受け取る。＜おたくが，我々の存在に気づいちゃったから＞。武藤のこの言葉を繰り返し聞いている。
　救急車に美也子が運ばれていく。姉小路「付き添っていきなさいよ」と宅間に。宅間は，美也子のもとへ。美也子は「どうしてあんなことに？」とたずねる。宅間「もうそんなこと考えなくていいよ。大したことじゃないし。もうすべて終わったんだから」。「うん」とうなずく美也子。やわらかい雪が降っていた。