| 第１話 刑務所の中の宅間。「オレはまたここに戻ってきた。ここには何もない。自由も，権利も，日常の平和で退屈な生活も，なにも。同時にここにはすべてがある。人間社会で起きるあらゆるわずらわしさ，悪意，たくらみ，そして犯罪につながる心が・・・」。 １０か月前。２０１５年３月１４日。警視庁にある備品保管室。そこに荷物を持った我妻真里亜がやってきた。彼女を待ち受けていたのは滝道博喜。ここは名前も決まっていない急ごしらえの部署。我妻は「ボーダーレス化する凶悪犯罪に対応するため，縦割りの組織を超えて円滑な捜査，情報収集，分析するチーム」と教えられてきたが，実は宅間のための部署だった。宅間が１０年間服役していたと聞いても，信じようとしない我妻。この部署は，滝道と我妻，そして宅間だけの部署。我妻は，気づいていなかったが，部屋の隅のソファで宅間は寝ていた。そこへ，捜査一課の野方希望がファイルを抱えてやってきた。野方は捜査一課所属だが，この部署とのパイプ役だった。滝道は，適当にファイルを１冊選ぶと，宅間に捜査をするように命ずる。宅間「基本仕事しないんで」と断るが，滝道は，お菓子を山積みし，宅間の興味をひく。ファイルに目を通す宅間。 捜査に入る前，我妻は資料を見て，宅間の過去を知る。冤罪で１０年間服役したこと。これまでの捜査実績。 宅間と我妻は，新宮司直兎が亡くなった事件を捜査するため，自宅マンションを訪れる。マンションの最上階ワンフロアーが新宮司家。執事の君原兼文が出迎えた。直兎の妻・新宮司朱子に話を聞く。直兎は，小説家。しかし，処女作が新人賞をとって意向，ほとんど作品を書いていない。亡くなった当日は，先代の命日で，身内だけのパーティーが行われいていた。その時の出席者は，ライターの横内幹也，顧問弁護士・近藤竜行，君原の娘・清香。食事の用意ができても直兎が部屋から出てこないので，君原と朱子が行ってみると，内側から鍵がかかっている。体当たりしてドアを開けると，直兎が首をつっていた。君原は，朱子に横内と清香を呼んでくるように依頼する。みんながやってきて，直兎を下ろそうとすると，背中にナイフが刺さっていた。 カギは外側からは開けられないタイプ。ベランダはないし，マンションの最上階，飛び降りることは不可能。宅間「謎はそれだけじゃないよね」。死体が握りしめていたのは，ジオラマに不自然に並べられた十二支の人形のうちのニワトリ。同じ人形の兎が落ちていて，首が取れている。ミステリーの定番ネタが満載。我妻がわかったのは，「密室」，兎が＜直兎＞ということで「見立て」，ニワトリを握りしめているのは「ダイイングメッセージ」。まだあるという宅間。ジオラマには，＜台風で欠航＞と書いてあり「クローズドサークル」。兎の首が取れているのは「首なし死体」。ナイフは直兎のコレクションで，検死の結果，死後刺されている。額縁が傾いているのに気付いた宅間。外してみると，そこには隠し金庫が。朱子も君原もその金庫の存在を知らない。宅間が，いつものピッキング道具で開けてみると，金塊と生命保険の書類が。宅間は，雑居房で一緒だったバレやんの話をする。バレやんは，寒い冬，仏像を盗んだがすぐに見つかり，お寺に戻される。住職はバレやんにあげたものだというが，それに怒りだす。窃盗で捕まり，刑務所に入りたかった。寒い時期，刑務所で過ごしたかったということ。宅間「時に人は犯罪じゃないのに，犯罪にしようとする・・・そうですよね。君原さん」。保険の受取人は君原。自殺を決めた直兎は，世話になった君原にお金が入るよう，免責期間が過ぎる１年後に自殺。しかし，自殺では保険金が出ないと勘違いした君原が，直兎の気持ちが無駄にならないように，他殺に見せかけるためナイフで刺した。密室だったので，自殺意外に考えられないという宅間。他のミステリー要素は，自殺の動機。長いスランプに陥っていた直兎。私小説が基本なので，経験していないことがかけない。ミステリーに転向してみるが，経験するわけにはいかず，ジオラマで疑似体験。ニワトリは，朱子の旧姓が「鳥越」だった。しかし，自分の才能に気づき自殺。君原も自供。 滝道「白川警察庁長官も喜ぶだろうね」。我妻「叔父と私は関係ありません」。裏付け捜査に出かける我妻。１人になった滝道はどこかに電話をする。「なんとか無事に発進できそうです。長官のお望み通り」。 我妻が清香が入院している病院に行くと，すでに宅間が来ていた。清香は，先天性の肝臓疾患。肝移植が必要だが，血液型がレアのためドナーがなかなか見つからない。生体肝移植は，日本では家族しか認められていない。君原は恒例のためドナーにはなれない。海外で手術するには巨額の資金が必要。我妻「もう少し調べる必要があると思います」。宅間も納得していない様子。 ライターの横内を訪ねる。横内によると，君原は先代から仕えていて，新宮司には子供がいないため清香を子供のようにかわいがっていた。横内が，新宮司家のことを書こうと思ったのは「呪われた家計のストーリー」があると。弁護士の近藤は，実は直兎の実の弟。直兎を生んで妻が死んでしまったため，先代は他人に近藤を養子に出した。それを知った近藤は復讐を誓い，財産も朱子も奪い取ろうと考えた。横内「マジでヤバイですよ」。近藤のサイン会に顔を出し，揺さぶりをかける宅間。動じない近藤。その様子を観察する宅間。 新宮司家に戻ると，宅間は密室の謎を解こうとしていた。我妻「そもそも自殺だと断定したのは宅間さんだし」。宅間「犯罪を犯した人間が，捕まらずにのうのうと生き延びてるなんて，絶対許せない」。密室の謎が解けるが，その手段では傷がついてしまうが，その報告はない。部屋を物色していた宅間は，鏡を見つけると「わかった」。 君原と面会。宅間「密室の最後のピースはめた」と君原に。君原たちが部屋に入ったとき，まだ実行犯は部屋の中に隠れていた。その実行犯，近藤の姿を見つけた君原は，朱子を部屋の外に出す。近藤に清香の手術費用を出すと脅され，言われたとおりにするしかなかった。ナイフを刺したのは，自殺とされるのが許せなかったから。君原は「あの方の逆らったら，娘も私もどんな目に合うか」と，事実を話そうとしない。宅間は「供述は無理そうだね」と出て行く。娘の命が人質になっているから，君原は絶対に口を割らない。しかし，横内なら・・・。そう話していると，野方が横内が自殺したと伝えに来る。現場に行くと，横内は転落し。＜病気だから死にます＞という遺書のようなメモもあった。末期のすい臓がん，余命６か月の診断だった。机の上の写真やパンフレットを見ていた宅間。横内の母は高級老人ホームに。横内は近藤と取引をしたのだろうと。全て知っていることをあの世に持っていく代わりに，母親を何の不自由もない余生を送らせる。横内が近藤のことを「モンスター」と呼んでいるのにも納得できる。 滝道に報告をするが，証拠は全くない。宅間は「ぜったいとっかかりがあるはずだ」とタブレットを片手に悩んでいる。しばらくすると，近藤の居場所を確認する。今日は新宮司家にいると聞くと，宅間は「近藤みたいなやつは殺すしかないんだ」と飛び出してしまう。新宮司家についた宅間。事件のあった部屋に入ると・・・銃声。気が付くと，右手には銃，左手は血で真っ赤。そして近藤が銃で撃たれて死んでいた。駆けつけた我妻と野方に緊急逮捕される。異例のスピードで有罪判決。懲役２０年の実刑判決を受け，東京刑務所に収監されて１０か月がたった。 前回と同じ日暮が弁護士だった。日暮がまた冤罪じゃないかというが，宅間は覚えてないというだけ。日暮に日付を聞いた宅間は，１月１４日と聞き，何か思い浮かべた。すっかり物置部屋になってしまった，新部署の部屋。野方が資料を片付けに来ると，我妻は宅間のタブレットを見ていた。履歴を確認してみると，＜生体肝移植＞と＜女性の再婚禁止期間のデメリット＞というサイトを見ていた。我妻は飛び出していく。役場に行き，君原と朱子が結婚しているのを確認。入籍したのは４か月前。清香は，生体肝移植を受け，術後は順調。 滝道は宅間と面会。滝道は，宅間に，殺してもいないし，犯人も知っているんだろうと。宅間「言わないよ。だってその通りだもん」。我妻は君原と会い，話をしていく。２組の話で今回の事件が明らかにされる。朱子は，近藤に手術資金を依頼するが断られる。近藤を殺すしかないと考えたが，捕まるわけにはいかない。清香を助けるには，生体肝移植が必要だが，親族しか認められていない。朱子にできることは，君原と再婚し，ドナーになること。しかし，半年間は結婚できない。移植ができるようになるまでは，捕まるわけにはいかなかった。滝道「時間稼ぎの替え玉が」と宅間を指さす。宅間に噴霧式の麻酔をかけ，眠ったところで銃を握らせ発砲。宅間「まんまと罠にはまっちゃったわけ」。滝道「わざと服役したってことか」。宅間「日本の警察は優秀だから，犯人じゃないと主張すれば，再捜査で逮捕されちゃうかもしれない。絶対罪を認めないよ。時間がかかりすぎて，移植できなくなっちゃう」。再婚できるまで半年，手術の準備，移植，退院できるまで１０か月と予想。滝道「自首すると思ったのか。お人よしすぎるだろ」。宅間「滝道さんと違って，性善説だから」。そこへ日暮がやってきて，朱子が自首したと伝える。さっそく釈放の手続きが取られる。日暮「京都の君のお仲間が動いてくれたおかげだよ」。 出所した宅間を待っていたのは，姉小路。この１０か月間，宅間のためにただ働きをしていたという。この日も松原と一緒に朱子に付き添っていった。宅間は，「呪われた家系のストーリー」ができすぎていると。当時のことを知っているのは，ただ一人，君原だけ。朱子が，直兎のコレクションの中から，使える銃がわかっていたのはなぜか。管理していたのは・・・。我妻に連絡するも伝わらない。野方に連絡し，君原のところに行ったことがわかると慌て出す。姉小路は堀川に連絡し，向かってもらうがすでに誰もいない。我妻のスマホだけが落ちている状態だった。我妻は，君原の車の後部座席で眠らされていた。松原は，新宮司家の財産のほとんどが，ニューカレドニアの銀行に入金されていることを発見。宅間「天国に逃げるつもりだ」。 コンテナ置き場にやってきた君原。車いすに乗せた我妻を，コンテナの１つに入れていく。君原にはめられていたのは近藤。近藤の口座を経由してニューカレドニアの銀行に入金していた。近藤が顧問弁護士の立場を利用しているかのように見せるため。近藤を悪役にし，君原自身は「共犯者」の立場にしていた。直兎を殺したのは近藤だが，これも君原の入知恵。警察が他殺の疑いを持った時に，自分に捜査の手が伸びないように，わざとナイフで刺しておいた。横内を殺したのは，「呪われた家系のストーリー」がウソとわかったとき，ネタ元の自分が疑われるのを防ぐため。近藤が横内を自殺させたと思わせ，朱子に近藤を殺させた。宅間は，我妻は高飛びするまでの人質。逃げられれば，我妻の命が危ないと。我妻は，気が付いたが，手錠でつながれて動けない。大声を出すも，誰にも伝わらない。 空港で君原に追いつく。とぼける君原。すべての罪を近藤に押し付け，近藤を朱子に殺させ，自分は財産をすべて手にして，海外で余生を過ごす。そう推理を伝えても，とぼけるだけ。直兎と横内は自殺。お金は法外な退職金だと。その時，宅間に電話がかかってきた。朱子がすべて自供した。清香にもすべて伝えてあると。これで君原も観念した。しかし，我妻の居場所は教えない。曇った時計を拭きながら，今頃は天国に旅立っている予定だと。堀川に君原を任せ，宅間と姉小路は君原の車へ。しかし，我妻の姿はない。車いすがひんやりとしている。考える宅間・・・「わかった」と駆け出す。向かったのはコンテナ置き場。「冷凍のやつ探して！」。見つけだすと，その中には気を失った我妻が。２人で助け出す。意識を取り戻した我妻「宅間さん，どうして」。宅間「わかるんですよ。だって，オレ，１０年入ってましたから」。姉小路「プラス１０か月でしょ。朱子からこの供述を弾きだすため，わざと入っていたの？」。宅間「前は滋賀県だったから，関東の刑務所の受刑者のデータアップデートするいい機会だったから」。姉小路「ホントは罪滅ぼしなんでしょ」。朱子の犯行を止められなかったから。何も言わない宅間。 備品保管室。我妻が掃除をし，資料等を野方が片づけえている。何もしてない宅間。そこへ滝道が，部署の名前が決まったとやってきた。＜総合事犯対応係（仮称）＞。そして新メンバーもやってきた。そのメンバーは・・・姉小路，堀川，松原の３人。今回の件で，使えると判断され引き抜き。１０か月もこの事件にかかわっていたので，今さら京都にも戻れない様子。文句を言うような３人。宅間「お礼にさ，刑務所特製のお土産送ったじゃない」。特捜係に送ったというが届いていない。ワイワイガヤガヤ楽しそうなメンバー。我妻「なんなんですか，この人たち」。滝道「なんなんだろうね」。 謎の部屋に入る宅間。鍵のかかったキャビネットから，ファイルを取り出す。そこには，京都で滝道が見えたＵＳＢが。我妻は滝道に「一つ聞いてもいいですか。この部署は＜我々＞と何か関係あるんですか」。滝道「その言葉口にしない方がいいよ」。宅間は，１人，パソコンにＵＳＢを接続し，音声を確認する。「お宅が，我々の存在に気づいちゃったから」。あの屋上で聴いた言葉。繰り返し確認する。  |
| 「科捜研の女」 ある日，謎の荷物が科捜研に届く。できたのは木彫りの熊等。誰も心当たりがない。宛名を見ると＜特捜係＞とあるが，悪筆のため、間違って＜科捜研＞に届いてしまったよう。しかし，この荷物がきっかけで捜査の突破口が開いた。 捜査が一段落したある日。この荷物をトリに来た男がいた。それが宅間だった。 |
| 第２話 謎の部屋で極秘資料のファイルを見る宅間。パソコンにパスワードを推測して打ち込んでみるがエラー。 事件現場。捜査一課が捜査中。しかし，犬の散歩の途中に工事現場の穴に落ちて死亡という事案。事件性はないと一課は手を引き，野方に調書を押し付ける。それで野方は，総合事犯対応課（仮称）にこの事案を押し付ける。現場に行ってみるが，珍しく宅間もやってきていた。しかし，スマホをあちこちかざしているだけ。どうやらゲームのキャラクター集めが目的だったよう。被害者は，板野朋之。玩具会社・ユキザワトイ勤務。防犯カメラの映像で確認すると，犬が突然走り出し，追いかけているうちに落ちたのが確認できた。なぜか落ちた現場だけ柵がない状態。映像を見た宅間は，何かに気づく。すぐ近くに棒を発見。そして，風呂当番で一緒だったボラッチの話をする。ボラッチは，セールスマンで訪れた家の情報を，空き巣に提供していた。ポスト等にマークをつけていく。それはことわざを利用した暗号。今回の件と何が関係があるのかみんなわからない。宅間は「日本人の生活には，かくもことわざがしみついているといい例だと思ったんだけどなぁ」。ボラッチは，番犬のいる家には棒の絵を描いていた。つまり＜犬も歩けば棒に当たる＞。何者かが棒を投げ，犬が走り出すようにし，事故を仕掛けたのだろうと。 捜査会議。主任の姉小路を中心に事件を検討していく。宅間は自分から，勤務先に聞き込みに行くと言いだし，張り切って出て行く。行き先が，ユキザワトーイだから。ユキザワトーイにつくと，ディスプレイされているキャラクターやおもちゃに夢中。営業部の連城明弘に話を聞く。仕事上のトラブルを確認するが，何か態度が怪しい。しかし宅間が聞いたのは，ゲームの攻略法。そのため，開発部に連れていってもらった。そこで開発部の開発リーダー・辻岡益美に攻略法を教えてもらう。一方，堀川と松原は，板野の所持品の中に，＜い＞と書かれたカードを見つける。それを宅間にメールで伝達。何かに気づいた宅間。その時，社内に警告のサイレンが。セキュリティ違反があったという。社内にいる人間は一歩も外に出ることができなかった。持田氏禁止のファイルを添付したメールが送られていた。その場で調べると，辻岡のパソコンから，ライバル会社へ開発中のゲームのデータが送られていた。すぐに出社命令が出され，その場からも連れ出される。宅間が，辻岡のパソコンのキーボードを持ち上げてみると，そこには＜つ＞のカードが。板野のカードと同じ種類だった。宅間「なるほど」。ロビーのショーケースへ。いつものピッキングで開けると，いろはカルタを取り出す。宅間「＜つ＞なんて誰も知らないよね」。＜つ＞のカードは＜つきよにかまをぬく＞。明るい月夜に釜を盗まれる（盗む）。堂々と盗みを働くという意味に使ったよう。宅間「いろはカルタ連続殺人事件・・・だけじゃなくて，いろいろ起きるかもしれない事件」。我妻は「どこにそんな月夜が」というが，ガラス張りの壁を見上げると，見上げるとそこにはきれいな満月が。我妻「どうして何でもわかちゃうんですか」。宅間「わかるんですよ。だって，オレ，１０年入ってましたから・・・あ，１０年１０か月か」。 総合事犯対応課（仮称）では，宅間をはじめ旧京都メンバーがいろはカルタを並べている。カードを見ながら，次の事件を予想している。姉小路「子供のころにやったのと違う気がするんだけど」。あきれ顔で見ている我妻と野方。カルタになぞられて事件が起きるということがどうしても理解できない我妻。堀川「どうして信じられないのかな」。我妻「人が犯罪を犯すには，動機が必要だからです」。松原「動機なしの快楽殺人もあるんじゃない？」。我妻は「どこの世界に，いろはカルタになぞって半歳を犯すバカがいるんです」。宅間「もっと変なのがいたんだよ」。京都で解決してきた事件を挙げる。それでも理解できない我妻。宅間は，次のターゲットから考えようとみんなに提案する。板野には＜い＞，辻岡には＜つ＞のカード。名字の最初の文字が使われている。 松原は，辻岡のパソコンからメールを送ったのは別人だということを突き止める。しかも，社内の人間。宅間と我妻は，連城に話を聞きに行く。２人を共通で恨んでいる社内の人間はいないか。絶対にいないという連城。ユキザワトーイは，もともとは老舗の玩具会社。時代の流れで，売り上げは激減。それが社内改革を経てV次回復した。そういう状況の時は，社内で軋轢が生まれるはずだと。営業部のスケジュールを示すパソコン画面に＜CK＞という文字を見つける。連城に聞いても何も言わない。宅間は，就業時間終了だと部屋を出る。どうせ教えてくれないからと。堀川の調べでは，そういった部署はなく，取引先にもない。宅間は「確かめてみよう」とどこかにメールをする。連城は，スマホを見て，慌てて飛び出していく。行った先は，倉庫のようなところ。あわてて飛び込む連城を追いかけるように，宅間と我妻もやってくる。実は，犯行予告メールを宅間が連城に送っていた。それを見て，連城はこの場所に慌ててやってきたのだった。中に入ると，無気力に必要もない作業をしている男たちがいた。名目は＜キャリア強化室＞＝＜CK＞。いわゆる追い出し部屋だった。自己都合退職してほしい社員を集め，無意味な作業をさせ，グループディスカッションという名の悪口の言い合いをさせる。自主退社を促すものだった。警備員も定期的に巡回している。ここに来たということは，連城には犯人に心当たりがあるはず。この中の人間に，２人の被害者，両方に関係のあった人間がいるはず。 浮上してきたのは，布田央彦。カルタなどの知育玩具の開発を担当していたが，辻岡が取締役の山辺に直談判したことで知育玩具開発部門が撤廃，慣れない営業部へ。営業部では，部長の板野が，部下の連城を使って布田を苛め抜いた。そして布田はキャリア強化室に異動させられる。布田は４日前に出社して以来，行方がわからない。その時我妻に，連城が激怒しながら電話をしてきた。連城に＜れ＞のカードが届き，また宅間のいたずらと思われていた。宅間「冤罪だよ。必要のないいたずらはしないから」。つまり本物の犯行予告。カルタを確認すると，＜れ＞は＜れいやく（りょうやく）はくちににがし＞。毒殺と推測される。布田の家を我妻と野方が捜索をする。そこでノートにはさまれた４枚のカルタの読み札を見つける。今まで現場にあった＜い＞＜つ＞のほかは，＜れ＞と＜や＞。連城には堀川と松原が張り付いている。口にするものはすべて検査。宅間「なんか引っかかるんだよね。なんで最後＜や＞なのかな」。＜や＞は，取締役の山辺和幸と思われる。動機としてはおかしくない。しかし＜や＞は＜やすものがいのぜにうしない＞。殺人じゃないことが気になる。 電話をしていた連城が，２人の隙を見て逃げ出した。探し回るが見つからない。そして連城は，廃材置き場で串刺し状態で見つかった・・・。スマホをチェックすると，布田からの電話がかかってきており，メールも届いていた。ＣＫをネタに連城を呼び出したと考えられた。ここでいろはカルタと内容が違ってしまっている。宅間「この方法じゃないといけない理由があるはずだ」。姉小路から連絡が入る。板野は，後ろから頭を鈍器で殴られて絶命しており，穴に落ちたときにはすでに亡くなっていた。殴った相手は，傷口の角度から，身長１７４ｃｍの板野よりも背が高いはず。布田は１６６ｃｍと小柄。布田が犯人ではない？辻岡のパソコンは，セキュリティレベルが高く，一般の社員ではアクセスできない。一定レベル以上の権限を持っている人間，取締役か経営陣でないといけない。ＣＫの布田には到底無理な話。ここでも布田の犯行の可能性が否定された。そのころ山辺は，焦って布田を探させていた。山辺のもとに＜や＞のカードが届いていたのだった。 宅間「何かが違うんだ。駒も手札もそろっている。なのにルールが違う」。イライラしながら考えている。その時，警備員の「たいがいにして」という言葉，姉小路の「子供のころやったのとは違う気がする」という言葉が浮かんだ。宅間「わかった」。みんなを連れてユキザワトーイへ。真っ暗なロビー。懐中電灯を片手に，山辺が見えない布田に言い訳がましく語りかけていた。その時，山辺を拳銃で狙う男が。するとおもちゃが走り出し注意がそれる。その隙に，堀川がその男を取り押さえる。その男は・・・警備員の京野。宅間「やっぱりここに呼び出すと思ったんだよね。ここには布田さんのおもちゃがいっぱいあるからねぇ」。犯人は，京野の犯行だった。宅間が言うには，「いろはカルタ」自体が違っていたと。いろはカルタは，地方によって内容が違うものがある。今までみんなで考えていたのは，一般的な＜江戸カルタ＞。姉小路は京都生まれなので，違いに気づいていた。＜京カルタ＞で考えてみると・・・。 最初の事件：夜，暗い穴に落ちて死亡・・・＜一寸先は闇＞ 第２の事件：江戸・京，共通。京野は，社内セキュリティーの担当で，辻岡のパソコンにアクセスすることができた。 第３の事件：腹部を棒で突き刺されて死亡・・・＜連木で腹を切る＞ 第４の事件（未遂）：銃で狙われる・・・＜闇夜に鉄砲＞ 布田の家にあったカルタは，江戸カルタ。しかし，京野にとっては，＜いろはカルタ＞といえば＜京カルタ＞だった。辻岡を取り押さえたとき，「たいがいにして」と言っていたのがこの京野。履歴書調べたら京都出身だった。実行するにあたり，京野が＜京カルタ＞に置き換えた。警備員「こうでもしなきゃ，布田さんは・・・」。布田は，屋上でひっそりと自殺していた。服毒自殺。それを見つけたのが京野。彼は，布田の作ったおもちゃが大好きだった。ロビーのおもちゃを見入っているときに，布田に声をかけられ，それ以降交流を持つようになった。布田はおもちゃが本当に好きで，おもちゃの話になると目を輝かせていた。そんな布田を，会社は必要がないと判断。営業部で苦労させられ，追い出し部屋へ送り込まれてた。それでも布田は負けなかった。ケータイゲームを主流にするなら，カルタを使ったゲームの企画を考え提案した。布田の考えたゲームは，殺人なんて怒らない，ほのぼのとしたもの。でも，布田がゲームの相手に選んだのは，，板野・辻岡・連城・山辺の４人。その４人にこの企画が認められれば，開発部に戻れる，そう考えていた。しかし誰も相手にしない。内容すら見てもらえなかった。ＣＫから現場に戻ることは許されてなかった。それを知り，１人屋上で自殺。しかし，誰も布田がいなくなったことに気づかなかった。京野「オレのやり方で，布田さんが最後に作ったおもちゃを世に出してやりたかっただけだよ！」。宅間「ふざけるなよ。あんたがしたのは，自分の犯罪欲求を。死んだ布田さんを言い訳に実行しただけじゃないか。せっかくの布田さんの最後のおもちゃを，自分勝手に捻じ曲げて，くだらない殺人ゲームに変えちまったんだよ」。 取調室で自分のやったことにやっと気づく京野「布田さんにとんでもないことを」。取り調べを見ていた姉小路「大好きだった布田さんが，あんななくなり方をしたことが，この男の心をゆがめてしまったのかもしれないわね」。我妻「理由はどうあれ，人を殺したことには変わりはありません」。姉小路「確かに」。我妻は，宅間が言っていた＜この世界には，犯罪に取りつかれ，犯罪が好きで好きで仕方なくなってしまう人間が確実に存在するということ＞という言葉をあげ，「ホントにそんな人間が存在するんでしょうか」。姉小路「私達は京都で，宅間と一緒に，その手の犯罪を何人も相手にしてきた。たぶん，この東京でも，いずれそういうときが来るはず。宅間には，その手の犯罪者を引き寄せる力があるの。その時宅間が向こう側に絡みとられないようにするのが私の役割だから」。その手には，高倉が持っていたコインが。宅間は，カルタの＜た＞を確認する。「＜旅は道連れ＞・・・へぇ。＜た＞はこれなんだ」。 |
| 第３話 １月２8日８:５０pm。我妻が閉じ込められている倉庫には，爆弾が１つ。アタッシュケースが２つ。一方には爆弾を解除するリモコンと倉庫のカギが。もう片方は，開けたら爆弾が爆発するトラップが。その倉庫の場所は特定できていない。堀川と松原が必死に探している。総合事犯対応係（仮称）では，対応に追われている。どちらのアタッシュケースを開けるか。姉小路「焦って開けないでよ」。宅間「開けなくても，時間がきたら爆発するんだけどね・・・だからこそ選ぶしかないんだ」。 １０時間前。0:35pm。野方・堀川・松原が食堂で話しをしている。野方が36歳と知り驚く2人。我妻にもですます調で話していることを指摘すると，彼女の後見人が、警察庁長官の白河だからと言う。しかし，我妻はそのコネを利用はしていない。白河が「後見人」になっているというのは，母親とは小学生のころ死別，父親は高校生のころ事故で亡くなり，叔父の白河に引き取られて，大学まで出ることができたということだった。 姉小路がおもちゃで散らかっている総合事犯対応課（仮称）を片付けていると，3人が戻ってきた。我妻は一緒ではなかった。突如，部屋の隅から姿を現した宅間によると，みんながランチに行ったあとも仕事をしていたと。そして，1冊のファイルを見つけ，そこにあった写真を，パソコンと見比べていたと思ったら，慌てて飛び出していった。パソコンを確認すると，予備校生のふざけた動画。それが我妻に送られてきていた。何の関係があるかわからない。宅間は，天突き体操で一緒だったバケちゃんの話を始める。バケちゃんは，スリの常習犯。警察にマークされないようように，毎日違う衣装で出かけてスリをはたらく。しかし，あっさり捕まってしまった。それは，毎日違う衣装で，変装までして出かけるのを不審に思った大家さんが通報したから。現代は，ケータイやタブレット，監視カメラと高機能カメラがあふれた世界になっている。もしこの動画に，映りたくないものが映っていたとしたら・・・。改めて，我妻が見ていたファイルを見てみると，それは10年前の死亡自己の調書。被害者は，我妻公昭（50歳）。我妻の父親だった。10年前，法務省の入国管理局で働いていた。仕事で立ち寄った倉庫で爆発が起こり，死亡。事故として処理されていた。爆発事故の調書にしては，なぜか女性と一緒に映っている写真がある。宅間は，その写真に写っている女性が，我妻が見ていた動画に偶然映っていたのに気づいたと推理。確かに隅の方に映っていた。なぜ今頃か。発生日時が2006年1月29日午前0時5分ごろ。明日でちょうど10年。。我妻はこの女性に会いにいっただろうと。そこまで話すと，宅間は，ほかのメンバーに取り調べのように追及されいてた。なぜ積極的なのかと。実は，このファイルは宅間が公安部から，黙って借りて来たものだった。ただの爆発事故ではなかったのか？ 我妻は，丹羽奈津美に会っていた。丹羽の運転で，どこかに向かっている。丹羽は，我妻の元家庭教師。予備校では講師ではなく事務員として働いていた。我妻が会いに来た理由は，ずっと気になっていたことがあったから。爆発事故の直前，父親から電話があり，留守電が10年前の携帯に残っていた。それを聞いてほしかったから。＜実は，ある人を深く傷つけてしまった。お前のよく知っている人だ。いつかお前も知るときが来るかもしれない。真里亜。父さんな，お前と母さんのこと，愛してるぞ・・・わかった・・・すまない。明日も早いんだよな。おやすみ＞。この電話については，当時調査に来た警察署の人には話したが，爆発事故とは関係ないと判断されていた。そして，ファイルに入っていた写真を見せる。ちょうどそのころ。2人がついた場所は倉庫。 宅間は，この爆発事故のファイルが公安にあったことを不思議がる。爆発が爆弾が原因で殺人であったなら，殺人の時効は撤廃されたから継続捜査をされていてもおかしくはない。写真の女性が事件のカギを握っているかもしれない。 我妻は，丹羽についていき倉庫の中へ。言われるがままにイスに座ると，手錠でつながれてしまう。丹羽「教えてあげるわ。10年前，あなたのお父さんに何が起きたのか」。丹羽は，当時の電話を録音した携帯電話と手錠のカギを取り上げる。 なぜ公昭が，公安がらみの事件に巻き込まれなければならなかったか。宅間「爆弾とかテロとか調べるのは，警視庁公安部だけじゃないよ・・・」。公安調査庁もその一つ。宅間たちが，そうやって話し合っていると，パソコンの画面が突如，倉庫の中の映像に切り替わった。我妻が監禁されている。丹波が話をしている。我妻の父・公昭は，実際には公安調査庁で働いていた。国内の過激派テロ集団の情報を収集していた。姉小路「誰がこの映像を」。宅間「当然，この女でしょ」。堀川は，丹羽の務めている予備校へ丹羽について調べに出て行く。松原は，サイバー分析室へ，この映像の送信元を調べに出て行く。丹羽の話は続いている。丹羽は公昭の協力者だった。対象組織内に協力者を作り，情報を手に入れていた。丹羽は，家庭教師を辞めた後，大学の研究室もやめていた。そんな時，大学で学んだ知識を利用して，兵器を作ってほしいという依頼が，とあるテロ組織からきた。どう対応したらいいか公昭に相談すると，初めて身分を明かし，協力者になってほしいと逆に依頼された。 松原によると，海外のサーバーを経由しているため，送信元を突き止めることはできなかった。堀川は，丹羽の身元を調べて来た。経歴から爆弾を作ることは可能と思われた。堀川と松原は，丹羽の家へ向かった。 我妻は，父は爆弾で死んだとわかった。それを作ったのが丹羽。丹羽は，4年かん協力者として働いた。緊張と不安の毎日。それに耐えられたのは，公昭の役に立ちたい，ただそれだけ。限界を感じた丹羽だったが，爆弾を完成させてほしいという公昭。公昭「オレを信じてくれ」。丹羽は公昭のことを愛していたのだった。任務が終わったら，いっしょになってほしいと告白する。しかし，公昭は「協力者に終わりはないんだよ」と拒絶。丹羽が突然組織をやめたら，疑いを持ったテロ組織は地下に潜ってしまう。協力者をやめるなら，公安部に逮捕させるとまで言われた。結局，爆弾を作り続けた。そして，あの日，その倉庫に呼び出した・・・。丹羽「今と同じ状況」。 宅間「ヤバイよ。この女，10年前の出来事を再現しようとしてるんだ」。 1つの爆弾とアタッシュケース2個。片方に，手錠のカギと調べ上げた組織のすべて，時限装置を止めるリモコン。違う方を開ければ爆弾が爆発。丹羽は，公昭に告げる。「あなたを愛した気持ちに変わりはない。だから教えてあげつ。助けるために開けるのは白い方よ」と。 丹羽「あなたの前に，10年前と同じ仕掛けがしてある」。野方「何のゲームですか」。宅間「ゲームじゃないよ。そこ意地の悪いトラップだよ」。公昭のことが本当に好きで，助けるつもりで，本当のことを言っているのかもしれない。それとも，自分に恨みを持ち，殺そうとしているのであれば，逆のことを教えているのか。考えれば考えるほどわからなくなる。迷っているうちに・・・爆発。同じ罠に我妻をかけた。爆発時刻は，午前0時にセット。我妻「どうしてこんなこと」。丹羽「あなたが私を見つけてしまったから」。全てを忘れてひっそりと生きて来たのに。我妻「奈津美先生は私に優しかったし。わたしもだ好きだったのに」。そして，丹羽「かわいそうで殺せなくなっちゃうじゃない。だから教えてあげる。助けるために開けるのは白い方よ」と，10年前と同じことを告げ，取り上げた携帯を白のアタッシュケースの上に，そして手錠のカギは近くに放り投げて出て行く。我妻は，手を伸ばし，手錠のカギを手に入れ自由になる。しかし，扉は開かない。叫んでも誰も応えてくれない。2:44p.m. 堀川と松原が庭の部屋を捜索。無駄なものは何もない，簡素な部屋。何かあったらすぐ逃げられるようにか。とりあえず，部屋のものを写真に撮る。帰り際外を見ると，不審な黒い車が1台。丹羽の車は，Nシステムにも引っかからなかった。宅間「全て計画的だったんだ。あの女ただものじゃない」。宅間が，部屋に残されていたものの写真の中から，引っかかるものを見つける。「女か虎か」という1冊の本。8:50p.m.。我妻はアタッシュケースを前に呆然とするのみ。 堀川と松原は，監禁されている倉庫を必死に探すが，なかなか見つからない。姉小路「焦って開けないでよ」。宅間「開けなくても，時間がきたら爆発するんだけどね・・・だからこそ選ぶしかないんだ」。我妻は1人，白か黒か悩む。残り，3:08。動画は，我妻を呼び出すために利用したと考えられる。ただ，この倉庫の生中継はなぜか。宅間は，あえて残されていた「女か虎か」に意味があるはずと考え始める。本をめくっていた宅間「これがネタ本だったんだ。倉庫は見つからなくても，丹羽奈津美を見つければいいのかも」。そして・・・「車だして！」と宅間は飛び出していく。 建物の前に花を供える丹羽。そこに宅間たちがやってきた。爆発が起こった倉庫は工場に建て替えられていた。とりあえず，丹羽を確保また，不審な黒い車が来ていた。宅間「公安調査庁だろうね」。あの動画を見て，丹羽を見つけたんだろうと。宅間は，貸倉庫のサイトをチェック。考えていた宅間は「わかった。すべて」。それを聞いて，はっとする丹羽。 11:50pm。宅間1人が丹羽を取り調べる。宅間「どっちがあたりのケースか教えてもらえるかな？」。もちろん教えてくれるはずはない。我妻に伝えるすべもない。倉庫の場所も教えてはくれない。そろそろ爆破の時刻。宅間は，一緒にその瞬間を見てみようとパソコンの画面を見せる。宅間「決定的瞬間見逃したくないしねぇ」。宅間は，丹羽に話しかけ続ける。10年間，都内でで堂々と生きていられたのは妙だと。丹羽は，事故として処理されていたし，「木を隠すには森にといいませんか」。捕まるかもしれないという恐怖はあったはず。あの動画のせいで顔がネット上にアップされてしまった。しかし，逃亡もせず，我妻をおびき寄せた。お金と手間がかかりすぎているが，準備する時間はなかったはず。あのトラップにかけるのが目的じゃないかと。しかし，我妻を死なせてしまったら，また逃げ続けなければならない。ただ怖い目，ひどい目に合わせたかっただけ・・・。 丹羽「その時間ももうすぐ終わりですね」。爆破まで10秒切る。みんなが焦っているが，宅間は落ち着いたまま何も行動を起こさない。タイムアップ。中継画面には何も変化がなかった。宅間「おめでとう。時効成立だよ」。丹羽「そこまでわかってたんだ」。爆弾での過失致死なら，この時点で時効成立。手掛かりは２つ。時限爆弾のタイムリミットがちょうど10年目。復讐でもないのに，その前日に我妻を殺す合理的理由がない。あくまでも口封じ。そして手口が優しすぎる。乱暴なことは何もしていない。倉庫にはカギのかかった扉のほかに，出入り口があるはず。もちろん鍵も開いている。鍵が締まっていたら監禁罪になってしまうから。爆弾も偽物。単なる＜過激ドッキリ＞を仕掛けただけ。訴えても執行猶予。宅間は「ドラマチックだよねぇ」と，「女か虎か」を取り出す。10年前の話は，これをもとにしたフィクション，というか妄想だといい切る。丹羽が公昭にかなわぬ恋をしていたのは本当だが，現実はもっとみじめなはず。宅間「ぜひ聞きたいな」。 10年前。爆弾を完成させたくない丹羽は，途中でやめたいと相談する。しかし，公昭は摘発するために完成させろという。丹羽「私の気持ちに気づいて，いいように利用しているだけじゃないですか」。公昭「君をそういう目で見ることはできない。妻の思い出と，真里亜もいる」。完全に拒絶されてしまった。みじめだった。「もうおります」と倉庫を出て行く丹羽。残された未完成の爆弾。公昭は，なんとか自分で完成させようと焦っていた。そして間違えて爆破・・・。そうなれば，やはり殺人ではなく事故死。罪に問われるとしたら過失致死。過失致死なら，時効は10年。10年の時効を待っていればよかったが，あの動画がアップされたことで焦ってしまった。公安調査庁の人間が動き出した。宅間「連中に逮捕される前に，わざとオレたちに逮捕されたんだ」。丹羽「そこまでお見通しなわけ」。宅間「マジで頭いいよね」。わざと逮捕させて，ここで追及されている間，過失致死で逮捕もされない。丹羽「貸倉庫の場所もだいたい見当がついているんでしょ」。丹羽が出て行こうとすると，我妻がやってくる。パソコンの画面には，まだあの倉庫が映っている。もちろん我妻の姿も。しかし，我妻と思われたのは松原がわからないように座っていただけだった。 宅間は，現場の倉庫は，不法侵入にならないよう正式な貸倉庫だと判断。全て見通した宅間の指示で見つけ出していた。我妻は，10年前の携帯を届けに来たという。丹羽の話では，自分が倉庫を出てから，公昭が誤って爆発させてしまった。携帯の音声を分析してみる。その結果，公昭の言葉はすべて娘に向けた言葉だと考えられていたが，違うことがわかった。「これでいいのか？わかった」という突然の自問自答。ノイズと公昭の声を取り除くと・・・「ちがうわ。そっちじゃない」。丹羽の声がしっかりと入っていた。まだ倉庫にいた証拠。公昭は，丹羽にいわれた方のコードをつなぎ合わせ，爆発が起きてしまった。宅間「10年前に起こったのは，ドラマチックな妄想でも，みじめな女が起こした過失致死でもない。れっきとした殺人だよ」。これだけのトラップを仕掛けたのは，過失致死だったと信じ込ませるための芝居。我妻「罪をちゃんと償って・・・」。丹羽「あんたにいわれたくないわ。あんたさえいなければ，公昭さんは私のものだったの。だからあんたにだけは絶対に謝らないわ」。 我妻「あれが，宅間さんが言っていた人の姿ですか・・・犯罪を好きで，犯罪に取りつかれているという」。宅間「違うな。丹羽の場合，我妻さんをひどい目に合わせたかった，それだけが動機だったみたいだし」。我妻「そんな人たちが本当にいるなんて，とても」。宅間「わかるんだよね，オレ。だって，10年10か月入ってたから」。 総合事犯対応課（仮称）。我妻は，姉小路に，なぜ父親の事件のfileがここにあったのかと尋ねる。姉小路「宅間のやつ，過去のいろんな事件を，他の部署から好き勝手に集めて回ってるみたいなの」。我妻「なんのためにですか」。姉小路「集めた事件には，宅間にしか見えない共通点があるんじゃないかしら」。我妻「父の事故のことで叔父に聞かれたことがあるんですけど・・・”公昭君は，我々のことを調べていなかったか”って」。あの地下室で，カギのかかったファイルを開ける宅間。そこには＜「我々」の存在に関する報告＞と言うタイトルが。ほとんどが黒く塗りつぶされている。その中に，公昭に関する資料もあった。宅間「やっぱりつながってたんだ |
| 第４話 姉小路がパソコンで誰かの資料を調べている。＜2016年1月26日出所＞という一文に驚く。そのすぐそばでは，宅間がソファに寝転がっている。姉小路に電話がかかってくる。姉小路は，ある男に会いに行った。男は利用されただけで，自分はやっていないと主張する。当時自供をしていたが，「信じてください。わたしは無実なんです」。 殺人事件発生。被害者は，キャバクラのボーイをしている加瀬信行（28歳）。アパートの一室で，ナイフで刺されて失血死。窓ガラスが割られ，窃盗目的から見つかって殺人と考えられた。この事件が総合事犯対応係の担当になる。野方は「そうじ係」と思わず口に出してしまう。我妻はあくまで前向きで，係の名前の略称だととらえているが・・・。堀川と松原は，納得しない。一課が扱わないような事件を「掃除する」ための係だと思われていると。それを聞いても，やっぱり前向きな我妻。 姉小路は何やら考え込んでいる。宅間は知恵の輪をやっている。そこへ，我妻達３人が戻ってくる。事件の内容を，我妻のメモをもとに伝える。居直り強盗ということで片づけられそう。宅間「それで帰ってきちゃったわけ」。そして，清掃当番で一緒だった瞬間くんの話を始める。瞬間くんは昼間専門の空き巣。忍び込んだ家の玄関のカギ穴に接着剤を入れ，住人が帰ってきてカギを開けるのに手間取っている間に，裏口から逃げるという手段をとっていた。ところが，裏口が開かず，捕まってしまった。その家は違法建築で，家が傾いていて裏口のドアが開かなくなっていた。宅間「詰めが甘かったんだよねぇ・・・泥棒にとって，一番大事なのは，逃げることなんだよねぇ」。逃げることを考えて窃盗をはたらくので，逃げにくい場所ではなかなかやらない。今回の事件現場は，アパートの一番奥の部屋。板塀があり，その向こうは急斜面。しかも電車がひっきりなしに走っている。そんな逃げ場のない場所は，プロの窃盗犯は選ばない。居直り強盗の線はなくなった。最初から殺人目的ということに。つまり，殺人事件。捜査開始。いつものように，堀川と松原のコンビ。そして我妻は・・・「聞き込みなら姉小路さんと行って」と宅間。「オレにはこれを解くという大事な任務があるからね」とまた知恵の輪を手にする。姉小路は，しぶしぶという雰囲気を出しながら出かけていく。 姉小路と我妻は現場へ。窃盗目的としては金目のものはない。姉小路は，見逃しているところはないかと，天井裏を見てみると，そこには束になった通帳が。全て名義が違う。架空口座だろう。加瀬が務めていたキャバクラへは，堀川と松原が聞き込みに行く。加瀬は居てもいなくてもいいというぐらい存在感がない。ただ，１度だけ加瀬の古い友達という男がやってきたことがあった。その男は関西弁を使っていた。総合事犯対応係（仮称）で，堀川と松原が報告。なぜか，主任の席に宅間が座っている。「一度やってみたかったんだよねぇ。刑事ドラマのボス役」。姉小路と我妻が戻ってくる。通帳のほうは，架空口座で合わせると２０００万円になる。振り込め詐欺で使われた形跡はない。しかもここ5年間，入出金すらなかった。いつまでその席に座っているのかと言われた宅間は「これの説明書き蹴るまでね」とパソコン画面を見せる。宅間は，姉小路がずっと調べていた男。その男は，矢橋宗一。平成23年に強盗容疑で逮捕。懲役5年。京都市南区での事件。２０１６年１月２８日に出所したばかりだった。実は，姉小路が加瀬の名前を聞いて何か知っている様子を見せていた。それを宅間が指摘。すると姉小路は，まだ宅間と出会う前のことを語り始めた。まだ一課にいたころ。竹刀の金属加工工場の事務所に何者かが侵入。宿直の工員を縛り上げ，金庫から純金を盗んで逃走。手掛かりがなく，捜査は難航すると思われたが3日後にスピード解決。当時の姉小路は，検問の手伝いをさせられていた。そこで，車のトランクから純金を見つる。運転していたのは，その工場の税理士だった矢橋。その場で身柄確保。最初は否認していたが，証拠もあり，取り調べが進むと自供を始めた。その事件で被害を受けた宿直の工員が今回の被害者・加瀬。逮捕を逆恨みして，矢橋が加瀬を殺した？姉小路は「そんなはずないわ！景気を全うしてちゃんと出て来たんだから。今さら犯罪を起こすとは思えない」と否定。宅間「たとえば，死んだ加瀬が矢橋の共犯者だったら？裏切られた恨みから殺害なんてあり得るでしょ」。架空口座の大金も法主だった可能性も。姉小路「勝手に決めつけないで」。宅間「感情移入しすぎると判断誤ると忠告しているんだけどな」。姉小路「わかったようなこと言わないで」。宅間「わかるんですよ，オレ。だって10年10か月・・・」。姉小路「宅間！矢橋のことは，私が誰よりも一番わかっているの！」と飛び出していく。険悪なムード。廊下を歩く姉小路にメールが届き，その文面を見て驚く。振り向くと・・・。 堀川と松原は，質屋へ。なぜか金庫の写真を撮らせてもらう。宅間の指示だった。さらにその金庫の写真を指定されたサイトにアップするように言われる。さらに，張り込みの準備をしてくれと。張り込みといえば，牛乳とあんぱん・・・だが，宅間はあんぱんは嫌いだからメロンパンにしてほしいと。我妻は，姉小路の尾行をしていたが，尾行が下手でバレバレ。姉小路に見つかってしまう。この尾行も宅間の指示。矢橋は，ネットカフェや安く泊まれるところを利用しているだろうと。しかも，地方から出てきてもわかりやすい上野や東京などを利用するだろうし，姉小路も同じような場所を探しているだろうと。すべてお見通し。姉小路は，我妻をお茶に誘う。我妻によると，宅間は「姉小路さんと我妻さんってけっこう馬が合うんじゃない？同じ側の人間だし」と言っていたらしい。その意味を尋ねる。姉小路は「お父さんの事，ショックだった？事故じゃなくて殺されたと知ったとき」。我妻「はい。でも，犯人も捕まりましたし」。姉小路「私の夫を殺した男は・・・」。あの時のことを思い出す。姉小路「確かに，同じ側の人間かもしれない。刑事であると同時に犯罪被害者でもあるんだから」。 宅間は，堀川・松原・野方とともに車で張り込み。質屋を見張っていた。宅間は，いちごミルクとメロンパンを口にしている。そこに,１人の男が忍び込んだ。金庫を開けようとしている。それを見ている宅間たち。松原は，この時点で逮捕しようというが，宅間は「渡来させててあげようよ」という。３分２１秒で解錠。喜ぶ男。そこへ宅間たちが姿を見せる。もちろん逮捕されるが，宅間の知り合いだった。 姉小路と我妻。我妻は「被害者の気持ちがわかるっていい刑事としての条件みたいじゃないですか」という。しかし姉小路は「たしかに犯罪者の気持ちがわかる刑事よりはいいかもしれないわね。だとしても，私はいい刑事ではないわ。刑事として１番やってはいけないことをしてしまったんだから」。我妻に連絡が入る。我妻1人が戻ってくる。姉小路は宅間の力は借りないと言っていたと。堀川「宅間とのケンカ，まだ根に持ってるのかよ」。取調室では， 宅間が１人で取り調べ・・・だが，取り調べというよりプチ同窓会。その男はとくちゃんと呼ばれていた。いろいろな犯罪の中で一番スポーツマンシップを問われるのは，金庫破りこと鍵開け師。一流の鍵開け師ほど，金庫を開ける記録に挑戦し続けている。宅間が張っていた質屋の金庫は，鍵開け師の中では幻の金庫だった。宅間「本題。ここもそそるんじゃじゃない？」とある金庫の写真を見せる。とくちゃんは，すぐにでもいって開けたいというが，すでに５年前にあけられていると。つまりあの事件の金庫。このクラスの金庫を破れる人を教えていほしいという宅間。 名前が上がってきたのが，井澤富士雄。窃盗の前歴がある鍵開け師。5年前の事件で開けられた金庫は，素人の矢橋が番号を覚えたぐらいじゃ開けられないもの。しかし，井澤は記録を連発するほどの鍵開け師。次は，井澤が狙われるのではないか。井澤の居場所を探すのが先決。我妻が姉小路に合流しようとすると，宅間「姉小路さん，案外鼻はきくからな」。姉小路は，すでに井澤について聞き込みをしていた。そこに我妻がやってきた。この5年，どこにも姿を現さない。宅間「足洗ってたりして」といいながらも知恵の輪を続けている。姉小路と我妻は，ホームレスから情報を得た。そのホームレスは「守り側に落ちるとはな」と嘆いていた。井澤は，警備会社を経営していた。結婚をして，養子に入り，名前を変えていたので，誰にも気づかれていなかった。井澤のもとへ，姉小路と我妻が向かったが，井澤はしらを切るばかり。加瀬のことも矢橋のことも知らないという。 我妻は，姉小路が言っていた「刑事として1番やってはいけないこと」が，矢橋のことかとたずねる。姉小路は，語り始める。矢橋を自分が初めて捕まえたこともあり，無理を言って取り調べもやらせてもらった。否認する矢橋を，激しく追及。物証も状況証拠もそろっていた。姉小路の刑事としてのカンも働いていた。しかし，出所した矢橋に呼び出され，「やってません」と告白された。自供はしているが，矢橋「取り調べ受ける側になったことありますか？認めたほうが楽になれるって考えるようになるんです。取調室は，常識の通用しない異常な空間です。信じてください。わたしは，無実なんです」。刑事として一番やってはいけないこと・・・姉小路「無実の人間を罪に陥れてしまうこと・・・皮肉なものね。10年かん冤罪で苦しんだ宅間と組んでた私が，実は冤罪を生み出していたなんて」。実は，加瀬が殺されたあともう一度矢橋と会っていた。矢橋は車のカギを一度なくしていたと話した。それが工場で見つかった。矢橋が，めったに車のトランクを開けることがないということは，工場の人間なら想像がついていた。そしてそのなくしたカギを見つけたのが加瀬。矢橋「刑務所生活の間中，どうしてこうなってしまったのか，何がいけなかったのか，納得できる答えを必死で探していました。だけど・・・答えなんかあるわけないんだ！だって私は何の罪も犯してないのに，人生の貴重な時間を奪われたのだから」。姉小路「その言葉が深く突き刺さった・・・」。矢橋が無実なら，考えらる犯人は，加瀬と井澤。加瀬を殺したのは井澤の可能性が高い。姉小路「私は5年前，無実の矢橋を罪に陥れてしまった。だから今度は絶対に，矢橋の無実をあきらかにしないといけないの」。 相変わらず，ソファに座って知恵の輪をやっている宅間。野方が指摘すると，宅間「頭は仕事してるんだけど」。井沢が鍵開け師を引退し，会社を設立したのが5年前の事件の後。資本金1億。被害にあった工場は，脱税の疑いで国税局にマークされていた。事件の1か月後，社長は自殺。宅間「わかった。そういうことか」。テーブルに置いた知恵の輪も解けていた。矢橋の目撃情報が入る。宅間「車だして！メロンパンといちごミルクも！」。 姉小路と我妻は，矢橋がいたという宿泊施設に向かったが，すでにいなくなっていた。宅間たちも車でその場所を張り込んでいる。姉小路たちには知らせていない。堀川「いい加減仲直りしてくれないと，矢橋が逃げたとき連携できないと・・・」。宅間「矢橋なら来ないよ。姉小路さんを張り込んでるんだ」。姉小路はメールを見ると，我妻をまいて出て行く。我妻が報告に来る。矢橋に呼び出されたのかもしれない。姉小路が警察が張っているから戻ってくるなと矢橋に教えていた，と宅間。宅間「贖罪の気持ちあるよねぇ」。我妻「矢橋という男に感情移入しすぎてるように思えて」。我妻に電話が。井澤が誰かに呼び出されたという。宅間「当然矢橋だろうねぇ」。姉小路は，井沢が加瀬を殺したと考えているから，井澤の居場所も矢橋に教えたのではないかと疑う面々。宅間「だから絶対見逃さないでよ」。その時タクシーが止まった。タクシーを降りた姉小路は，とある店に入る。宅間は，裏口にぬけられる店の作りだと。路駐をして待っているタクシーの運転手に聞いてみると，10分かんそこで待っているふりをしてほしいと頼まれたと。チップも弾んでくれたと，それを宅間たちに見せる。あわてて店の裏に回るが，姉小路はすでにタクシーでその場を去っていた。宅間「姉小路さんには最悪な展開かも」。 姉小路が屋敷に入ると，井沢が倒れていた。そばにいた矢橋は「いきなり襲い掛かってきたんです」とおびえている。護身用に持ってきたスタンガンで応戦したと。その屋敷は，井澤の別荘。井澤は，加瀬お金をゆすられていたといっていたと言っていたという矢橋。井澤は，気を失っているだけで，姉小路は必死に呼びかけて意識を取り戻させようとしていた。その姉小路に，ナイフを向ける矢橋・・・。宅間たちもそちらに向かっている。宅間「自分を逮捕して，刑務所に送り込んだ刑事まで・・・」。 襲い掛かってくる矢橋に，「ようやく本性表したわね」と姉小路。矢橋を取り押さえる。宅間たちがやってきた。姉小路「遅かったじゃない」。宅間「わかりにくいんだもん，あのサイン」。タクシーの運転手が見せたチップには，地図が添えられていた。宅間「あの男の計画だよ」。姉小路に近づいたのは，井澤の居場所を調べさせるため。矢橋は，加瀬を殺し，井澤と姉小路を同時に殺害するつもりだった。姉小路「悔しいけど，宅間の予想が当たったのよね」。いつも通りの2人。堀川「けんかしてたんじゃなかったのか」。宅間と姉小路そろって「何の話？」。 矢橋は，加瀬殺害を認めた。5年前の事件は，冤罪ではない。3人で組んで仕掛けた事件だった。今回の事件は単なる仲間割れ。盗む目的は，純金ではなく，脱税でため込んだ裏金。金庫には1億数千万円が隠されていた。純金は，あくまでもおまけ。現金に関しては，警察に届けることはできない。純金は隠す予定だったが，検問で見つかってしまった。矢橋は，逮捕されたことで新たな計画を立てた。盗んだ金には，5年間は手を付けないという約束が3人の中でなされていた。しかし，井澤は2000万円だけ加瀬に渡し，残りは自分の会社設立に使ってしまった。矢橋が加瀬を殺したのは，井沢を見つけるため？しかし，加瀬も知らなかった。井澤を見つけるための保険として，姉小路を利用した。携帯番号を教えるふりして，GPSで居場所を追跡できる違法アプリを入れていた。それを見抜いていたのは宅間。宅間「だって，姉小路さん言ってたもん」。「矢橋は刑期を全うしてちゃんと出て来たんだから」，このセリフは会ってないといえない。あの廊下で受け取ったメールは＜そのスマホ 盗聴されてるかも タクマ＞というもの。振り向いて，そこにいたのは宅間。そのあとはそれを利用して，罠にはまったふりをしていた。姉小路が我妻に語っていたことは，すべて矢橋がきいていた。わざと聞かせるために話してもらった。堀川「オレたちまでだましていたのかよ」。宅間「定番だけど，敵をだますにはまずは見方からって言うでしょ」。 取調室。姉小路が矢橋を取り調べている。我妻「でも私には，姉小路さん，本気で矢橋のこと信じていたように思えて」。宅間「本気モードだったのは確かだけどね」。あの廊下での槍と。姉小路「5年前の事件にまだ裏があるってことでしょ。だったら私がけりをつける。私のヤマだから」。そういっていた。宅間「それが姉小路さんにとっての，刑事としてだったんだろうね」。矢橋は，アプリに気づいたからばれたのかというが，それでなくても分かったという姉小路。加瀬の家に侵入のに，井澤だったら窓を割る必要はない。カギを開ければいいだけのこと。姉小路「それと冤罪で刑務所に入る悔しさを話してたわね・・・本当に冤罪で服役していた人間の心は，もっと冷たく冷え切って，もっと静かに強くなるものなの・・・」。じっと見つめている宅間。矢橋「どうしてそんなことが」。姉小路「わかるんですよ，私。私の相方，10年10か月入ってましたから」と宅間のポーズをしながら。姉小路「言われちゃいましたけど」。宅間「まあいいか」。 |
| 第５話 白骨死体が発見された・・・。総合事犯対応係（仮称）では，なぜか下手な寸劇の練習が行われている。野方が監督のように指示をしている。防犯PRイベントで見せる寸劇。これも押し付けられた仕事。宅間にも役が与えられていたが，練習に参加していない。タブレットで何か見ている。服役中，楽しみに見ていた探偵もののドラマ。決め台詞は「真実は斜め左に隠されている」。その主演は，藤村毅。今は人気俳優だが，10年前関西ローカルで放送されていたの作品。終業時間になると，いつものように帰ろうとする宅間。藤村に会いに行くという。藤村毅２０年前の幻の初主演映画のプレミア上映会の招待状が当たったと。宅間「いつ応募したか覚えないんだけどねぇ」。招待状1枚で2名まで。それを見た姉小路が，一緒に行くと言いだす。テレビのニュースでは，昨年１２月に発見された白骨遺体の身元が判明と言っていた。星野孝之という男性だった。遺留品からはなかなか身元が判明していなかった。 上映会場へ。姉小路は，ここで携帯を忘れたことに気づく。試験前の茜が，化学のテストがよくなくて落ち込んでいたので励まそうと思っていたのに。化学が得意だったという宅間「水兵リーベ僕の船・・・」。姉小路「中学生レベルじゃない」。ロビーに入ると，すでに招待客が集まってきていた。1人，ひどくせき込む男性がいた。開場時間になる。なかは自由席。上映前に，武田健吾監督と藤村の舞台あいさつが行われる。武田のあいさつ中は，ポップコーンを食べるのに夢中だった宅間は，藤村が話し始めると夢中で聴いていた。藤村は，映画の相手役の小宮山月子のおかげでこの映画に出演することになったと話す。舞台あいさつが終わり，緊張したという宅間は，上映までの時間でトイレに向かう。宅間が出て行くときに，トイレの個室は１つ扉がしめられたままだった・・・。 上映が始まったが，途中で止まってしまう。スクリーンには＜執行の時がきた。敗者は死をもって罰せられる＞という文が映し出されていた。続いて＜「１６」「６８」「１３」＞の3つの数字が映し出される。劇場内が明るくなる。すると女性の悲鳴が。その女性の隣に座っていた男性が死んでいた。姉小路が調べていると，座席の下に毒ガス発生装置が置いてあった。男性のシャツの襟には，何か吹き付けられた跡が。宅間によると，犯人に装置に仕組まれた毒ガスと同じものを吹き付けられ，上映中に亡くなったんだろうと。その男性が，ロビーでせき込んでいた男性だった。観客たちが一斉に逃げ出そうとする。するとまた照明が消える。姉小路が「開けちゃダメ！」と叫ぶ。またスクリーンに文字が映し出されていた。＜見せしめにひとり公開処刑した。扉を開ければ たちまちこの雲に覆われ 全ての命が失われる＞。扉にはセンサーがつけられていた。開けたら毒ガスが発生してしまう。宅間「この事件かなりやばいかも」。姉小路「なんでわかるの」。宅間「わかるんですよ。だって，10年10か月入ってましたから」。 総合事犯対応係（仮称）では，残ったメンバーでまだ寸劇の練習をしていた。その時，姉小路の机の上で携帯が鳴った。みんな手にしようとしたが，松原がゲット。姉小路に届けに行くと出て行く。上映会場では，宅間が中をくまなく見て回っている。中では携帯の電波が遮断されており，圏外。中からはそれを解除することができない。つまり，外部と連絡を取ることが不可能。出入り口も，センサーが取り付けられた1か所のみ。宅間は「大丈夫だよ。助かる道ならちゃんと残されてるし・・・無差別殺人なら，犯行予告なんか出さず，とっとと毒ガスばらまいててるでしょ」。3つの数字の謎を解かせるための時限装置のはず。毒ガス発生装置にはタブレットが装着されている。そこに正解を入力すれば，解除できるはず。宅間は試しに表示された数字を入力してみる。時限装置は止まらない。しかも，入力は残り2回になってしまった。宅間「なんで限定の試写会を狙ったのか・・・藤村さんのマネージャーさん，なんか知ってます？」。戸惑うマネージャーの山本に，藤村は「全部話した方がいい」。実は，先月から同じ手紙が藤村宛に何十通も届いていた。今日も届いていた。その内容は＜敗者は死をもって罰せられる＞。スクリーンに映し出されたものと同じだった。いたずらだと思い，警察には知らせていなかった。今，藤村に悪いイメージをつけさせるわけにはいかなかった。今回の上映を巡って，武田とトラブルがあった。気が付くと，武田の姿がない。そのため，その場にいた人たちは武田が犯人だと決めつける。武田なら，毒ガス発生装置を座席の下に設置することも可能。今回の上映を決めたのも武田だった。お金に困っていて，藤村の人気を利用しようとしたのだろうと。 姉小路の携帯を持った松原がやってきた。スタッフに声をかけると，スタッフは上映が終わるころだろうとドアを開けようとしたがあかない。そこに警備員が慌ててやってきた。中では，藤村に数字の心当たりがあるか尋ねてみたが，心当たりはないという。宅間は静観している。すると，松原の声が聞こえて来た。聞こえたら防犯カメラに手を振ってほしいと。中の声は聞こえないが，カメラを通して中の様子がわかった。松原は警備室からマイクで話しかけていた。実は，男子トイレの個室で武田が殺されていた。状況を知らない松原は，ドアを開けるといいだす。そこで，音響システムがダウンしてしまい，松原の声も届かなくなる。中の人間たちは，必死でそれを止めようとジェスチャーで伝える。姉小路は，毒ガス発生装置を掲げて見せた。状況を察した松原は，指示があるまでドアを開けないようスタッフに伝える。そして，参加者名簿を提出してもらう。 宅間は「みんな先走りすぎ。武田監督は犯人じゃないし」。そして，娯楽室で一緒だったチャメやんの話を始める。チャメやんは，いたずら大好き。それが大騒ぎになるのを楽しみにしていた。ところが，どんどんエスカレートして，大きな犯罪行為まで起こしてしまった。騒ぎになった現場を，野次馬と一緒に見るのが1番の楽しみだった。姉小路「犯人はこの中にいるってこと？」。宅間「犯人にとって，この犯行はゲーム。だから謎の数字を提示した。でも密室空間でしょ。外から確認できないから。今もこの話を，この中でドキドキしながら，聞いてるんじゃないかな」。みんながお互いを疑い，騒ぎ出してしまう。宅間は，身分証と荷物のチェックをするという。スタッフのひとりが「刑事さんに身分証と手荷物を出ししましょう」と。 劇場に，堀川と我妻もやってきた。スタッフによると，招待者を決めたのは抽選で，故意に操作することはありえないという。しかも，そのリストに宅間の名前はなかった。確かに宅間は，応募した覚えはないようなことを言っていた。宅間は「一歩でも動いたら逮捕だよ」とちょっとでも動いた人に「はい，逮捕～」とちょっと楽しそうに言っている。しかし，目は真剣。チャメやんの話には続きがあった。刑務所の中でもいたずらが好きでよくやっていた。そして，騒ぎをよく見える場所で眺めて楽しんでいた。宅間「ここで言うなら・・・あの位置かな」と指さした場所には，スタッフが立っていた。スタッフならドアにセンサーを取り付けるのも可能。スタッフとして誘導することで，観客たちがパニックになって勝手に動き出すのも防いだ。しかも「刑事」と言っていた。警察のものとは言ったが，「刑事」とは言っていなかった。そのスタッフの右手の甲には大きなあざがあった。宅間「あのあざどっかで・・・」と考えていたが，刑務所の時のことを思いだした。宅間「同じ刑務所にいたんだ」。しかし受刑者ではなく，刑務官だった。 捜査結果，15名の当選者の中には，偽名を使っている人はいなかった。犯罪データに残っている人もいない。中にいるスタッフは2名。1人はベテラン。もう1人はボランティアスタッフ。藤村のファンだから無給でもいいので，働かせてほしいと1週間前にやってきたという。そのスタッフの名前は，真壁修輔。宅間「最初から狙いはオレだったんだよね。元刑務官の真壁さん。制服着てないから気づかなかった」。刑務官時代に，宅間が「名探偵早乙女明」が好きだったことを知ったんだろうと。だから，チケットを送りつけておびき寄せた。宅間「オレをゲームに参加させるには，この方法しかなかったんだ」。真壁「やっと気づいたか」。真壁は，タブレットを手にする。それがスイッチになる。毒ガス発生装置には，シアン化水素が仕掛けられていた。空気中に放たれると，一瞬で建物の中に充満する。しかも500人分の致死量がある。姉小路「そうなったらあなただって死ぬのよ」。真壁「このゲームに勝って死ねるなら本望だよ」。なぜこのゲームを仕掛けたか。真壁「そんなこと宅間に聞けよ」。宅間「オレ？」。真壁「忘れたのか。5年前にお前がしたこと」。宅間「何かした？」。真壁「配膳係で一緒だった受刑者の不正を暴いたろ！」。 刑務所でタバコを吸っている真壁のもとに，1人の受刑者がたばこをめぐみに来た。もちろん，禁止されている。快くタバコを渡すふりをして地面に落とし，靴をなめたらタバコをやると。それを知ったほかの受刑者が，それをネタに真壁をいじめるようになった。いいように使われ，ボロボロになる真壁。そんな真壁を守ってくれた1人の受刑者がいた。守ってもらう代わりに，彼ののぞみをかなえた。そして宅間は，携帯を使って外部と取引をしているその受刑者のことを暴いた。守ってくれる人がいなくなった真壁は，またいじめられるようになってしまった。「私は負け犬です」と言わされる真壁の目に，楽しそうに笑っている宅間が映った。 姉小路「逆恨みじゃない」。真壁「宅間のせいで，人生が狂ったんだ。お前がいなければ人生はすべてうまくいったんだ」。宅間「オレに復讐するためにこんなことを？」。真壁「そうだ。生きるか死ぬかのゲームだ。お前はゲームに負けて，多くの犠牲者を出して死ぬんだよ。これが，オレからおまえへの罰だ」。真壁は，刑務官をやめた後，実家の化学工場を継いでいた。しかしそこも半年前につぶれてしまい，妻にも逃げられてしまった。真壁「得意の正義面して，助けてみろよ。残り10分切ったぞ」。宅間は，真壁をいじめたことで懲罰を受けた受刑者を思い出す。彼らの受刑者番号が「１６」「６８」「１２」。あと3人が懲罰を受けていた。その3人の番号を思い出す。「５３」「９５」「８」。数字がわかっても，どの順番で入れればいいかわからない。必死に考える宅間。受刑者の序列だと気づき，入力する。OKボタンを押すも，何も起こらない。真壁は「残念～」と大喜び。チャンスはあと１回。 さらに宅間には，気になることがあった。これほど典型的な劇場型の真壁が，なぜ武田をトイレで殺したのか。犯人のルールに統一性がない。姉小路は別のルールがあるんじゃないかというが，宅間は1つの犯罪に2つのルールはないと。また考える。次々と色々な場面が頭に浮かぶ。宅間「わかった。なんで２つルールが存在するのか」。宅間と姉小路が防犯カメラに訴えて来た。姉小路が持つ映画のチラシに，宅間が「真実は左斜めにある」のポーズをする。それをヒントに，松原たちがチラシを見ると何か発見した。 残り１分を切る。真壁は「土下座して靴をなめればヒントぐらいだしてやるよ」。自分がやらされたことを宅間にもやらせようとした。宅間「なにかあの数字を変換しないと」と考える。ふと劇場に入る前に，姉小路とした会話が浮かぶ。「すいへりーべ僕の船」。元素記号と数字を一致させる。そして浮かんできたのは＜I am a loser＞の文字。思い切って入力してみると・・・時限装置が解除された。残り１２秒。ギリギリだった。真壁が，宅間が「I am a loser」とつぶやいたことを大喜び。あくまでも，宅間に「負けた」と言わせたいらしい。真壁「オレは負け犬じゃない！勝ったんだ！負け犬はお前の方だ」と高笑い。堀川に逮捕されても，真壁「もう一度言ってくれよ！」と大騒ぎ。宅間は「犯罪に勝ち負けなんてないし。この犯罪の主役だと勘違いしてない？悪いけど君，ただのわき役だからね・・・ですよね？主役の藤村さん」と。表情がこわばる藤村。宅間は，藤村の座席の下に毒ガスを防御するためのマスクがあることを見つけ出していた。 宅間「せっかくだから映画の続きを見ませんか？」。映画を見始めると，藤村が映画の中で来ていたジャケットから社章が途中からなくなっていることに気づいたという。映画のチラシの写真にもついていない。宅間「なんで急になくなったんですかね」。白骨死体発見現場の遺留品の中に社章があった。しかしそれをもとに遺体の身元を探そうとしたができなかった。その社章は，映画のための架空のものだったから。２０年前の事件とつながっていた。宅間と姉小路がチラシを刺しながら訴えていたのは，映画のロケ地が白骨死体発見現場と近いかどうか調べてもらうため。実際，すぐ近くの場所だった。２０年前，星野を殺したのは藤村。 星野は，月子のヒモだった。映画の撮影現場にもお金をせびりに来ていた。しかも暴力まで。それが藤村は許せなかった。月子は，藤村にとって恩人だった。今は売れない役者でも，必ず芽が出るからと励ましてくれていた。だから，星野を殺して埋めた。小道具の社章は，遺体を埋めたときに落とした。白骨死体が発見されたことで，この上映会を中止にしたかった。姉小路は，雑誌のインタビューで，犯罪者の役作りのために危険なところへも出向いていったと言っていたと。そこで知った犯罪闇サイトで見つけた真壁を利用することにした。真壁のターゲットが藤村のファンだということ知り，真壁と連絡を取るようになった。あくまでも場所を提供する立場として。武田を殺したのも藤村だった。舞台挨拶後，トイレで武田にに事件のことでゆすられて，お金を取られた。それだけではなく，武田は月子のこともばかにしていた。武田のことを許せなかった藤村はその場でネクタイを使って首を絞める。トイレの外から，宅間の歌声が聞こえ，慌ててそのまま個室に隠れた・・・。藤村「これが私のやった全てです」。藤村は逮捕され連行される。 宅間「１つ気になるんですよね。ヒロインの女性って，右利きだよね。ずっと左手しか使ってないんだよね。右手ケガするシーンってあったっけ？」。姉小路と映画の続きを見る。姉小路「もしかして月子さんが星野さんを殺したってことない？その時に右手をケガしていたとしたら・・・亡くなった月子さんの名誉を守るために，今回の犯行を計画したんじゃ。２０年経ってもずーっと月子さんのことを」。宅間「どうなんだろうね。真実は斜め左に隠されている・・・なあんてね。案外いいかも。ラブストーリー」。そして，宅間「姉小路さん，やっぱりファンだったんだ。雑誌の記事もチェックしてたんだもんね」。 |
| 第６話 あの謎の部屋。かすかな灯りのもと，1冊のファイルをよむ宅間。 ガード下で殺人事件が起きる。現場には，楽譜が残されていた。事件の捜査は，総合事犯対応係（仮称）に任される。野方「変な事件は，そうじ係にぴったりじゃないですか」。この扱いにうんざりする堀川と松原。それでも捜査が開始する。被害者の身元は不明。被害者は何回も背中を刺されているので，怨恨による殺人と考えられた。すると宅間が「怨恨にしちゃ変だと思う」と言いだす。恨みを果たしたいなら，苦しむ顔を見たいはず。それなのに，背中しか刺していないということは，まったく顔を見ていない可能性が高い。ただの怨恨じゃない。現場に残された楽譜は，雨宮薫作曲「聖者のレクイエム」。雨宮の名前を聞いてもピンとこない総合事犯対応係（仮称）の面々。野方によると，日本を代表する世界的なピアニストで人気があると。ドイツを拠点に活躍中で，今は凱旋中。3日後にはドイツに戻る。実は野方は，小さいころからピアノを習っていたので詳しかった。楽譜には彼女のサインが残されていた。 堀川と松原は，被害者の身元を洗う。宅間と我妻は，雨宮に楽譜について聞きに行く。事務所に行くと，セキュリティがしっかりしている。雨宮のいる部屋の入り口には2人の警備員が立っているほど。雨宮は，被害者の写真を見ても知らないという。ただ，楽譜の写真を見せると，意味ありげな表情をするマネージャー。実は，1週間前に無くしてしまった本人のものだと。話に参加していなかった宅間は，ぬいぐるみを手にして，これが犬なのか熊なのか気になると。そのぬいぐるみは，ファンからもらったもので，日本滞在中は，事務所に置いてあるそうだ。事務所から宅間と我妻が出てくる姿を見つめている謎の人物の姿があった。 鑑識の鑑定結果が出た。楽譜には指紋が残されていなかったが，被害者の衣服から指紋が検出された。ナイフが曲がるほど何回も刺していたことから，力の強い人間とわかり，女性よりは男性の可能性がある。被害者の男性は，桑原武彦（45歳・独身）。定職にはついておらず，日雇い労働で食いつないでいた。雨宮の事務所のセキュリティについて、宅間は，事務所自体というより，雨宮個人を警護しているように感じていた。彼女の周りで何かが起きているのではないかと推理。そして宅間は，楽譜のとある音符のパターンが何度も繰り返されていることが気になっていた。刑務所内で幅を利かせていた鬼っちの話を始める。鬼っちは，見かけは怖いが，実は気が弱くて甘えん坊。刑務所から出す彼女への手紙は，検閲を考えて暗号を忍ばせていた。横読みして「あいしてましゅ」と入れていた。わざわざ殺人現場に楽譜を置いておくって言うことは，なにか暗号が隠されているいるのではないか。野方も，作曲者の中には楽譜に暗号を忍ばせている人がいるという。音名を使って，言葉にする。「ドレミファソラシド」＝「CDEFGABC」。言語によっていろいろな言葉が表現できる。ブラームスは，別れた恋人の名前を忍ばせていた。「聖者のレクイエム」で気になる部分は「レミラレシミドドラ」。これは「DEAD BECCA」と読み取れた。つまり「死んだベッカ」。さらに野方が楽譜を読み解く。最後の繰り返される不協和音の部分は「ラレ」。「AD」となり，意味が分からない。この曲は，15年ほど間に作られた。15年前のことを調べる必要がある。雨宮は翌日まで東京には戻らないため，すぐに話は聞けない。 堀川と松原は桑原の自宅へ。部屋を捜索しても，音楽には無縁に見えた。堀川は愉快犯じゃないかというが，松原「見つけた音楽の接点」。その手にはピアノの教本が。宅間と我妻は，雨宮の大学時代の友人に話を聞いていた。「聖者のレクイエム」は，ドイツ留学のためのコンクールのために作った曲だった。当時の写真を見せてもらうと，必ず雨宮に寄り添うように映っている女性の姿があった。彼女は「ベッカ」だという。名前は，渡辺麗香。あだ名が「ベッカ」だった。雨宮とすごく仲が良かったが，コンクール目前に自殺。麗香は，学生結婚をしていたが，1か月前に夫を事故で亡くしていて，後追い自殺だと考えられていた。宅間「これでつながったね」。テレビのニュースでは，この事件の情報として，楽譜の暗号のことも報道されていた。そのニュースを見ている青年が・・・。 麗香はビルの屋上から飛び降り自殺。当時，麗香には3歳の息子がいた。渡辺仁。養護施設で育ち，現在は都内の大学に通っている。そして，雨宮は桑原のピアノの教え子だった。桑原は25年前は音大生。アルバイトとしてピアノ教室で働いてた。そこに通っていたのが雨宮。桑原は，雨宮に関する記事は何でもスクラップして残していた。我妻が雨宮に話を聞きに行くというと，自分から張り切って一緒に行くという宅間。その前に，ぜにやんから何やら荷物が届いていた。 マスコミに追われる雨宮。仕方なく事務所に入る前に会見を行った。暗号に残された名前は友人のこと。悩みごとの相談に来た麗香の話を聞かずにいたことを後悔していると。「聖者のレクイエム」は，彼女がなくなった後に作った，彼女への贖罪の曲だと説明。マスコミの輪の後ろには，あの青年の姿が。この後予定されていた日本公演はすべてキャンセルになった。唯一，児童養護施設での演奏が残されていた。これだけはやりたいという雨宮。宅間と我妻が話を聞く。被害者のことを知らないといったことを追及すると，雨宮「怖かったんです。桑原先生は，あの男に殺された・・・私に付きまとってるストーカーです」。マネージャーにも黙っていた。桑原から25年ぶりに連絡があり，あの夜2人で会っていた。ストーカーの男はずっと監視をしていた。事件翌日に写真と手紙が送られてきていた。写真は，雨宮と桑原の写真で，桑原の顔はつぶされていた。手紙には＜邪魔者は天罰を＞。最初は普通のファンレターだったが，だんだんエスカレートしてきて，最近は死んでいっしょになろうとまで書いてきていた。宅間が，だまってあのぬいぐるみを差し出す。何やら装置をそのぬいぐるみに当てると・・・ブザーが鳴る。宅間「やっぱりぜにやんからもらったのは質が違うな」。ぬいぐるみには，盗聴器が仕掛けられていた。ぬいぐるみはストーカーからもらったもの。しかしそのストーカーの名前どころか，顔も分からない。 楽譜が置かれていたのは，雨宮の行動を制限するためだろうという宅間。騒ぎが大きくなれば，公演はキャンセルになる。マスコミが大勢駆けつければ，紛れ込める。マスコミを避けひとめのないところに逃げれば，望み通り殺せる。ただ気になることが。ストーカー男が，なぜ楽譜の暗号や15年前の自殺のことを知っていたのか。姉小路は，粘着質なタイプで色々なことを調べ上げたんだろうと。指紋から，ストーカーと殺人犯は同一人物と確定した。しかし，顔も名前も分からない。宅間「粘着質なストーカーなんだよね。だったらその粘っこさをそれを利用しちゃうのはどうかな」。 姉小路と宅間は，雨宮を訪ねる。事件について説明をし，外出は控えるようにと伝えた。雨宮は，児童養護施設でのボランティア演奏だけはいきたいと話す。姉小路は1つ提案をする。マスコミに会見を開くと発表してほしいと。実際に会見をする必要はない。犯人をおびき寄せるための作戦。児童養護施設での演奏会は予定通り行う。そしてあのぬいぐるみはその場に置いてあるままだった・・・。 児童養護施設で，雨宮の演奏が行われた。総合事犯対応係（仮称）の面々が警護に当たっている。盗聴されていることを意識して，会見について提案した。あのやり取りを聞いていたストーカーは，きっとここに現れるだろうと。施設内を歩いていた宅間は，掲示板に貼られたある記事に目を止めた。＜亡き両親の血を受け継ぐ天才ピアニスト＞という記事の見出し。その記事には麗香の息子・渡辺仁の写真が載っている，「聖者のレクイエム」を演奏して優勝したという。一方，演奏を終えた雨宮が，一人廊下を歩いていると，ストーカー男が現れた。手にはナイフを手にしている。対峙する2人。その間に堀川が現れ，ストーカーを取り押さえる。ストーカーは「邪魔ものは消してやったじゃないかぁ！」と叫んでいた。そのころ，宅間はまだ記事を読んでいた。そこには「幼いころに母が何度もこの曲を弾いてくれた記憶があるんです」と書いてあった。宅間「そういうことか」。姉小路と合流。宅間は「まだ事件は終わってなかったんだ。なんかおかしいと思っていたんだ。マスコミも，警察も，犯人さえも，作られたストーリーの上を歩かされただけなんだ」。宅間は，我妻に何かを頼んだ。 雨宮は，仁と会っていた。この施設での演奏を依頼してきたのは仁。再会を喜んでいる雨宮に，仁は「本当のことが知りたいんです。15年前，母に何があったのか。本当に自殺だったんですか。あの曲は，母が作ったものじゃないんですか」。雨宮は，仁が「聖者のレクイエム」を演奏している動画を見ていた。麗香にそっくりだった。何もかもがそっくりだった。雨宮「だから思ったのよ。あなたにも死んでもらわなきゃ」。仁「あなたがお母さんを・・・」。雨宮「バカなとこもベッカそっくりね。ベッカは，私が欲しかったのも全部持ってた。全部消し去ったと思ったのに，まだ残ってたなんてね。あんたも消えてよ」。手にしたスタンガンで，仁を気絶させる。 宅間「これは雨宮が作ったストーリーだ。彼女が1番のぞんでいた結末は・・・」。次々といろいろなシーンが浮かんでくる。宅間「わかった。あの場所だ。15年前と同じ目にあわせようとしているんだ」。 仁が気が付くと，屋上のフェンスの前に立たされていた。体に巻き付かれたロープは，雨宮が握っている。雨宮は，自分で飛び降りるか，背中を押してほしいかと尋ねる。答えないでいると，雨宮「私が背中を押してあげる。あなたの母親と同じようにね。あんたがいけないのよ。あまりにもベッカに似ているから」。宅間たちがやってくる。宅間「こっちはすべてわかっちゃったし。犯行動機は単純明快。あの曲が盗作だったってばれたくなかったんでしょ」。雨宮は，麗香が亡くなった後に作ったといったが，仁の記憶の中に麗香が演奏してくれていたことが残っていた。仁の記事は，桑原に教えてもらったんだろう。何でもスクラップしていたから。そこで，雨宮は盗作が見つかったと思って，ストーカーに桑原殺させた。盗聴器が仕掛けられていたことも知っていた。ストーカー心理を利用したのだった。楽譜は自分でこっそりおいていった。しかし，桑原は盗作に気づいてはいなかった。純粋に教え子を心から応援していただけ。宅間は，被害者の服には指紋が残っていたのに，楽譜には一切残っていないことがおかしい、楽譜を置いた人物は別人じゃないかと気づいていた。雨宮は，自分で自分の楽譜を残していくのはおかしいというが，それは仁を殺すために必要だった。日本滞在中の短期間で仁の居場所を見つけるために，わざと騒動を起こした。自分からマスコミに情報を流した。日本に戻ってきたのも，この殺人計画を実行するため。ストーカーに桑原を殺させたが，仁は自分でこの場所で殺したかった。雨宮「どうしてわかるの」。宅間「わかるんですよ。だってオレ。10年10か月入ってましたから」。雨宮「すべて憶測でしょ」。我妻から電話がくる。野方が楽譜の音名を各国の言葉に直した。もう一つの隠されていた暗号の意味。宅間「答えられるよね。自分で作ったのなら」。あの不協和音の部分の暗号。それは，和名表記にすると「イ ニ イ ニ」。つまり「仁」。夫を失って深い悲しみの中にいた自分も，仁と一緒に生きようと前向きになった・・・そういう希望の曲だった。だから幼い仁に演奏して聴かせていた。宅間「この曲の本当の意味を知らないあんたは，偽物の以外の何ものでもない」。ナイフと落とし、観念する雨宮。 屋上に残った仁。ずっと母が自分を置いて自殺した理由を考えていたという。宅間「自殺なんてするわけないって最初から思ってたけどね。幼い子供残して死ぬ親なんていないよ。そんなの親じゃないし・・・わかるんだよね，オレ。こう見えても人の親だから」。仁「ありがとうございました」と頭を下げる。立ち去る宅間。姉小路は「もしかして会いたくなった？紀彦君と美也子さんに」。京都に残してきた2人を思い出す。アラームが鳴る。宅間「時間なんで。オレ帰ります」。姉小路「私にもわかるわよ。人の親だから」。姉小路は仁のもとへ。 謎の部屋。宅間が見ていたファイルには，あの楽譜と雨宮の写真が・・・。 |
| 第７話 玄豊会総合病院。宅間と我妻，野方が訪れている。＜玄豊会病院に恐ろしいものがまかれる＞という怪文書が届いていたからだった。その文以外，具体的なものは何も書かれておらず，いたずらだと思われた。そのため，捜査一課も”そうじ係”に任せて，捜査をしたという事実を残せばいいと考えていた。この怪文書が7通目だった。一方，堀川と松原は殺人事件について調べていた。被害者は，梶村隼男。撲殺。物盗りではなく，怨恨の線が考えられたが特にトラブルも抱えてなかった。なぜか，遺体の近くにはどこのものかわからないカギが残され，被害者以外の血痕が残されていた。なぜ2人が調べているかというと，宅間がこの事件が病院への怪文書とつながっていると言いだしたからだった。総合事犯対応係（仮称）では，姉小路のパソコンが机の上になくなった。宅間の机の上に移動されていた。何を見ていたのか履歴を確認すると・・・玄豊会病院のサイト。セキュリティの良さがアピールされていた。それを見た姉小路は，改めて梶村殺害の捜査資料を見る。梶村は，帝徳電機産業のシステムエンジニア。調べてみると，梶村は玄豊病院のセキュリティシステムを担当していた。 病院では，山本茂文事務長，高沢憲一外科部長から話を聞いた。宅間は，骨格標本と遊んでいたが。今までに届いた怪文書は，＜整形外科でリハビリを受けると金運が下がる＞＜眼科には目玉の神様がいて常に見張っている＞＜産婦人科にはお産の時に亡くなった妊婦の霊がいる＞＜消化器内科で月末に死んだ患者は翌月生き返る＞＜泌尿器科ではトイレのヤギコさんが紙を食べる＞＜小児科では夜中にいないはずの子供が泣く＞。ここまでは，いたずらと思われ相手にしていなかった。しかし今回送られてきたのは＜玄豊会病院に恐ろしいものが撒かれる＞。各診療科ではなく，病院自体についてであり，さらに内容も心配になる。山本は，徹底的に警察に調べてもらいたいというが，高沢はその必要はないと主張する。山本は「卵は1つのかごに盛るな，の例えもありますから」と説得している。すると宅間は，慰問の手伝いで一緒だった，猪鹿さんの話を始める。花札賭博が大好きだが，なかなか勝てない。大損し始めると，警察の手入れが来たと嘘をつき，みんなが逃げ出した後，残されたお金を盗む，ということを繰り返していた。ある日，珍しく大勝しているときに，ほかの人間が同じように手入れが来たと叫ぶ。それを信じず，逃げ遅れて捕まってしまった。どういうことかというと，「天災は忘れたころにやってくる」。宅間「6回空振りでも，7回目はホームランなんてこともあるんだよね」。野方「ホントに何かまかれるってことですか」。宅間「そうならないように，オレたちが呼ばれた。そうじゃないですか」。高沢も，患者のプライバシーに気をつけてほしいと，しぶしぶ承諾する。宅間「任せてください。オレ，10年10か月入ってましたから」。 病院の特別室には，スマートトレンド社のCEO・大城慈夫が極秘に入院していた。山本と高沢が早めの手術が必要で，本日14時半から手術を行うと説明している。外部には絶対手術のことを漏らしてはいけない。 宅間は，案内ボランティアの馬場小百合からいろいろな情報を仕入れていた。イケメン心療内科医・鮎原巧が若い看護師・鳥塚蕗子を口説く。そして，鳥塚を注意する看護師長・成田喜和子。宅間は，馬場に怪文書を見せてしまうが，これは病院の「七不思議」だということがわかった。その話を聞きだそうとすると，馬場はある人物に気づく。臨月で予定日すぎているのに，なのに入院せず毎日通院している女性。その人に話しかけるのは妻を亡くし，寂しさを紛らわすために毎日やってくる男性。宅間たちが怪文書と七不思議を照らし合わせていると，医者に手土産を渡し取り入ろうとす営業マンの姿が目に入る。改めて七不思議を確認。しかし，7通目だけは違った。七不思議では＜玄豊病院にはカルテのない患者がいる＞だった。宅間「問題は，どうして7通目だけ文もんを変えたのか」。そこで，鳥塚に案内役を依頼する。「七不思議」を調査するための案内役。病院内を「検査する」と張り切る宅間は，カバンから白衣を出し羽織り，さっそうと歩きだす。そこころ，姉小路は，病院に提出してもらった防犯カメラの映像を確認していた。堀川と松原が戻って来たとき，映像の中に大城が映っていることを発見。病気だという話は聞いたことがなかった。 宅間が最初に向かったのは，整形外科。比較的お年寄りが多い。おしゃべりをしている人たちも大勢いた。先ほど，妻を亡くしたという男性の姿もあった。宅間は「わかった。ちょっと精密検査が必要かな」とその男性に近づいた。カバンの中からレコーダーを取り出す。その男は会話を録音し，お年寄りたちの情報を記録していた。この情報の使い道は特殊詐欺。七不思議は，詐欺にあいやすくなるという意味。さらに探ると，名義の違う通帳がいくつも出て来た。その場で逮捕。検査結果＜詐欺＞で判定はE。 堀川と松原が、スマートトレンド社で秘書を問い詰め，大城が極秘入院していることを聞きだしてきた。表向きは東南アジアに出張しているということにしていた。心臓に問題があり，一刻も早く手術が必要。そして，殺人現場に残されていたカギが，芝浜埠頭の倉庫のカギと判明した。堀川と松原が向かう。 宅間たちが向かったのは，眼科。視力検査票の上に置いてあったのは，説明のための目の模型。模型を開けてみると，録画機能付き小型カメラが隠されていた。盗撮と思われたが，眼科で何を盗撮していたのか？”画像診断”として，録画された映像を見てみると，医者の行動をチェックしていた。つまりあの営業マンが設置したと考えられる。盗撮ではなく，担当医師の好みを知るための営業努力。その営業マンが，カーテンの向こうに隠れていた。＜迷惑防止条例違反＞で判定はC。出入り禁止というところ。 堀川と松原は，倉庫に到着した。そこには，パソコンの周りに、様々な図面，そして玄豊会病院の偽装カードが作られていた。梶村が殺されたのは，病院のIDを奪うためだったのかもしれない。さらに大城の記事がスクラップされていて，その周りには「復讐」「殺す」「ウイルス」というような言葉が書きなぐられていた。そのころ病院では，清掃作業員が身分証カードを使って特別室のあるフロアへ。大城の病室に入ろうとしたが止められてしまった。倉庫を捜索していた堀川と松原が，湊修一郎という男性の身分証を発見。そう，あの清掃員が湊だった。松原は，＜恐ろしいもの＞は病原性のウイルスではないかと。堀川が宅間に電話するも，携帯は切られたままだった。 その宅間たちは産婦人科へ。宅間「診察予約してないのにずっといるから”幽霊”なんだ」。あの臨月なのに入院していない妊婦。実は，妊婦体験ジャケットを着ていただけ。尾行していた不倫相手の奥さんに見せるための偽装妊娠。子供ができたから分かれてくれと言ったことから，引くに引けなくなってしまっていた。＜不倫こじらせ＞で判定A。「安静にしていれば時期に解決するでしょう」と宅間。続いて，消化器内科。医者が書類に何か書いていた。宅間「年って，31日に死んだ患者さんが1日まで生きていたことにすれば。その月の分までもらえるんだよね」。遺族のために死亡日時を書き換えていた。＜私文書偽造＞でC。泌尿器科では，大量のトイレットペーパーを無断で持ち出している女性が。＜窃盗罪＞C。小児科。我妻がソファのクッションに座ると，赤ちゃんの泣き声が。クッションをめくると，赤ちゃんの人形。これは＜いたずら＞で判定外。七不思議のうち6つを解決。残りはあと一つ。宅間「それならもう解けたよ」。 堀川と松原は，湊を探すため病院へやってきた。防犯カメラをチェックすると，宅間の姿を見つけた。宅間は，山本，鮎原，成田を呼び出して話を聞く。最後の怪文書と七不思議の違い。6通目まで怪文書を送りつけていたのは，鳥塚だったと見破る。宅間が鳥塚に七不思議のことを尋ねたときは，知らないと答えていたのに，実際に七不思議に関連する場所をまわり始めると，正しく言いなおしたり、細かい部分を指摘したり，知らないとつじつまが合わない行動をしていた。鳥塚はあっさりこのことを認める。宅間は，あちこちの診療科をまわりながら，医者1人に対する患者の数をチェックしていた。ほとんどのところが，医者1人にたいして，1時間あたりの患者数は5人程度。しかし，心療内科だけは，20人。ありえない数字だった。つまり水増し。鮎原と成田がカルテを改ざんしていた。鳥塚は，2人に脅されていた。宅間たちが見たのはその様子だった。＜私文書偽造と詐欺＞判定F， 鳥塚は，怪文書を送れば，警察が介入して，水増しをやめるだろうと思った。最後に送ろうと思ったのは七不思議と同じ内容。しかしその前に，なぜか7通目が届いてしまった。別人が送り付けていたのだった。そこに，姉小路・堀川・松原の3人がやってきた。姉小路は，7通目を送ってきたのは湊だと。簡単に，梶村殺害事件について説明する。大城を殺そうとしていると。湊の父親は，IT企業を経営していたが，2年前に自殺。その直前に，会社は大城のグループに買収されていた。父親の自殺の原因になった大越への復讐。あのスクラップを見た野方が，恐ろしいウイルスがまかれるってことじゃないかと大きな声で言ってしまい，それを馬場がきいてしまう。 宅間と姉小路が大城の病室へ。堀川と松原はみなとの捜索。そして我妻と野方が避難誘導。それぞれが動き出す。湊は清掃用カートを押しながら，工事中のフロアへ。カートには謎の液体が。宅間と姉小路が特別室に向かうも，すでに大城の姿はなかった。宅間「手術室だ」。高沢は時間ばかり気にしていた。高沢は、心臓血管手術の第一人者だった。手術が始まってしまったら，避難することは不可能。急いで手術室へ向かう。ぎりぎり間に合う。事情を伝えた。堀川と松原は，倉庫に残された図面でチェックされている部屋へ。そこでは機会に何か設置されている。外部から信号が送られ，操作されているようだった。湊は，工事中のフロアで，パソコンに向かっていた。馬場が仲間を連れて逃げようとしていた。すると，病院の中のシャッターがしめられていく。開けようとしてもあかない。そこに居合わせた我妻と野方。野方は「まずいですよ。外に逃げられない状況でウイルスをまかれてもしたら」と叫んでしまう。周囲には多くの人が。さらに電気も消えてしまった。湊がパソコンですべて操作していた。 大城は別の病院へ転院することに。そのため，宅間たちと一緒にエレベーターで移動していた。それも湊はパソコンの画面で確認していた。宅間「ねぇ。妙だと思わない？」。犯人がウイルスで大城を殺そうとしているなら，怪文書を送る必要はない。なんで予告なんかしたのか。次々といろいろな場面を思い浮かべる。宅間「わかった」。湊は，大城を連れだすことも計算していた。宅間「まずい，すぐエレベータおりないと」。そのとき，エレベーターが止まってしまった。外とも通信できない。すべてみなとがコントロールしている。今度は，エレベーターが下がっていく。病院にまかれたウイルスは，コンピューターウイルスだった。病院のセキュリティシステムに侵入。そのころ，パソコンを操作していた湊は，またカートを押しながら動き出した。エレベーターの中。高沢は，病院のセキュリティは簡単にハッキングなんかされないはずだと主張。宅間は「だから内部に仕掛ける必要があった。そのために，帝徳電機産業の梶村さんを殺害したとしたら」。エレベーターは2階で止まり，扉が開く。そこは大勢の人が閉められたシャッターの前でパニックになっていた。宅間「これ犯人の罠だよ」。その人たちが，大城の存在に気づき，今度は大城に携帯を向け，大騒ぎしている。宅間「湊って男は，最初からこの状態狙ってたんだ。殺したいほど憎んでるなら，確実に自分の手で命を絶つ。犯人は，病院ドックの間ずっとオレたちを見張ってたはずなんだ」。宅間は，またいろいろな場面を思い浮かべる。病院をあちこち動いているとき，どこかしらに清掃員がいた。そして，清掃員に扮した湊を見つけ駆け出す。湊はナイフを手にし「大城！」と駆け寄ってくる。誰も間に合わない。車いすが宅間の目に入る。車いすがすーっと進路を妨害する。宅間「車いすさん，おもちゃじゃないんだけどごめんね」。取り押さえられた湊は「あいつを殺させろ！」と叫んでいる。会社を奪われた父親はどん底の状態で自殺。湊「その後，オレはどういう思いで生きて来たか」。宅間は「その崖の上の独白，後でいいよね」と駆け出す。宅間「まだ最後のオペ残っているんだ」。 すでにこの騒動の動画がネットにアップされていた。誰かがパソコンでスマートトレンド社の株を売っている。株価が急落。男は「間に合った」と車を発進させる。駐車場を走ってくる車の前に立ちはだかる宅間「みーつけた。この病院をむしばむ，1番の病巣」。車に乗っていたのは，山本。スマートトレンド社の株を大量に空売り。東証の午後の取引を後場という。午後3時，後場が締まる直前にウイルス騒ぎを起こした。大城の騒動をネットにあげさせさせるための計画。実際，大城の入院・手術がわかると，株価が急落。確実に下がる株を空売りすると儲かる。山本が黒幕だとわかったのは，最初にあったとき株をやっているとわかったから。たとえ話は，株式投資の格言。「趣味で株をやってるだけ」ととぼける山本。事務長という立場で，大城の病状と手術の情報を知る。それが大金を生む情報だと気づいた。守秘義務やインサイダー取引になってしまうため，普通にしていたら大金を手にすることができない。そこで病院に届いた怪文書に便乗した。手術の時間も調整した。ネットに流れた情報ならインサイダー取引にはならない。まだとボケている山本。湊のことも探し出して利用したんだろう。山本「自分の病院の患者を殺させる指示なんて出すわけないじゃないですか」。宅間「最初から殺す気なんてないんだよ」。わざわざ手術当日に宅間たちを呼んだのもそのため。手術の中止も，湊の逮捕も計画されていたこと。あくまでも目的は株価の操作。山本は，大城を殺そうとしたのは湊で，梶村を殺したのも湊に決まっていると。山本「私にはまるで関係がない話」。宅間「その口ぶりだと，湊に自分の正体ばらしてないようだね。つくづくこざかしいやつ」。山本がその場を去ろうとしたとき，堀川と松原がやってくる。防犯カメラを確認したところ，梶村が殺された時間に，湊は病院にいたことが判明。殺人現場に犯人に直結するものが落ちているのがおかしいと宅間は思っていた。樫村は，山本と湊がセキュリティシステムに細工をしているのを見つけてしまった。ごまかし切れず，梶村を殺害。湊から盗んでいたカギを残して，湊を犯人にしようとした。しかし，残された血痕の血液型は湊とも梶村とも違う。DNA判定をすれば動かぬ証拠に。これで観した山本。宅間「事務長さんが起こしたのは紛れもない殺人。判定結果は刑務所で絶対安静」。そういうと一人去っていく。 総合事犯対応係（仮称）。姉小路と我妻2人だけ残っている。我妻「ここに配属になって，宅間さんと組んで，１つ気づいたことがあるんです。宅間さんって犯人を捕まえるたびに，いつもどこか残念そうな顔見せるような気がして」。姉小路「それはたぶん，宅間が求める事件や犯人と出会えてないからかもしれないわ。その正体は，私にも，おそらく宅間にもまだわかってない。組織なのか，誰か個人をさすものなのか。でも我妻さんにも確実に関係あることだと思う」。 謎の部屋。宅間が，古びたロッカーを移動させると，そこに現れたのは・・・事件記事の切り抜き，関係する人間の写真，それをつなぐような赤い線。それを見ながら考える宅間・・・。 |
| 第８話 美也子が同窓会のために上京し，宅間と会った。宅間は，法彦の誕生日をすっぽかしたことを謝る。しかし美也子はすべてわかっていると。2人のために冤罪で服役し，今回そのことを明らかにするために東京にやってきたことも，全部美也子と法彦のためだって言うことを。美也子「待ってることにしたの。『まだいけない』が『もう帰れる』になるまで，ずっと」。宅間「もう少しだから」。美也子「何したい？すべて終わったら」。宅間「何にもしたくないな。美也子と法彦と一緒に，何もない浜辺で波の音聞いていたいな」。「あれを見ていってるでしょ」と美也子。壁には浜辺の絵があった。美也子は，宅間に封筒を手渡す。その中には，宅間が昔編集していた広報誌が入っていた。押し入れで見つけたという。美也子と別れ，いつもの部屋で封筒の中身を出して見てみると，同人誌も一緒に入っていた。その姿を離れた場所からそっと見ている人物の影が。 総合事犯対応係（仮称）に戻ってくる宅間。堀川と松原は，ラブホテルでの殺人事件に向かっていた。捜査一課は，連続殺人で手いっぱいだったので2人が向かっていたのだった。野方は，連続殺人は宅間好みかもしれないという。１件目。被害者は，大木尚文。行きつけのジムのシャワー室で射殺。２件目。高野富江。パート帰りに近所で射殺。３人目。笠置。繁華街の路地裏で射殺。この３件には共通点があった。拳銃は同じもの。深夜人目のつかない場所での犯行。腹か胸に数発の銃が撃ち込まれている。手口は同じでも，被害者３人に共通することはなかった。そして，妙な遺留品がそれぞれ残されていた。それを聞いて引っかかる姉小路と宅間。野方は，みんなに追及され，租遺留品についてばらしてしまう。その遺留品は，小さなタイルに矢印がいろいろな形で書かれていた。それを見た宅間は「やな予感がするな。まだまだ続きそうな感じ」。そして雑居房対抗運動会で二人三脚で一緒だったウオちゃんの話をする。ウオちゃんは，団地専門の空き巣。名字を選んで空き巣に入っていた。実は，ウオちゃん，釣りバカで魚の名前の家ばかり狙っていた。管轄の所轄署にも釣り好きがいて，先回りされて逮捕されてしまった。これは・・・たくさん出てくれば共通する意味が分かるということ。宅間は，今こんなマークが出ていたら，とあるマークを描く。それが出てきたら，６件，１６件，もしくは３６件と続くかもしれないという。堀川と松原が捜査していた現場でも，同じような遺留品が残されていた。映像を送ってもらうと，宅間が予想した通りのマーク。宅間「やばいよ。これ。マジでオレ好みの事件かも」。 ラブホテルで殺されていた被害者は，郡司喜作。元暴力団組長。腹部をナイフで刺されていた。14年前，傷害致死の罪で逮捕されていたが不起訴。若い組員が犯行を自供していた。実は，ほかの3人の被害者も，逮捕歴があった。大木は，11年前，立ち入り禁止の送電塔に上っていた時，仲間の男性が転落死。金銭トラブルがあったため殺人の疑いがかけられた。しかし，事故として処理され罪を問われることはなかった。高野富江は，10年前，同居してた母親の遺体を山中に埋めて死体遺棄で逮捕される。殺人の疑いもあったが，病死と主張し，判決は執行猶予。笠置幸二は，ストーカー殺人の容疑がかかるが，目迎証言も，物証もなく，証拠不十分で起訴猶予。宅間「やっぱりつながったでしょ」。今回の被害者たちは，みな殺人の疑いがかかりながらも，殺人の罪は問われていない。犯人は，犯行現場では余計なことはしない。つまり，現場に残されていたものには必ず意味がある。4つの形を画像検索かけるようサイバー犯罪分析室に頼んでおいた。その全てが載っている裏サイトが見つかる。チェスが映っている。ただしクイーンはない。駒の上には矢印のマーク。遺留品として残されていたマークは駒の動かし方を表していた。宅間「いやな予感，マジで当たっちゃったかも」。チェスの駒には数字とアルファベットが書かれている。そして，いくつかの駒が倒れている。数字に着目すると，今回被害者たちが起こしたと思われる犯行の年月。アルファベットを並べ替えると，被害者たちの名前になる。つまり，８あつの駒は，殺人のターゲットを示している。8人が全員，人を殺したのにそれ相当の罪に問われていないとしたら・・・。司法に変わって殺すという殺害予告なのか。宅間は，参加者を募って殺させる，殺人リクエストだと考えた。競争をあおって，ご褒美を用意しているのではないか。そう考えることで，3件目と4件目の犯行手口が違うことにも納得がいく。最初の参加者が3人を射殺。次の参加者が，4人目を刺殺。残りの駒は4つ。次の犯罪が行われる前に，犯行を止めなくてはいけない。残りの駒が誰を刺しているのか急いで捜査する。姉小路「いったい誰がこんなゲームみたいな」。宅間「見覚えない？」。誰もが知っているゲームを，ネットを使って，不特定多数の人間を巻き込む犯罪に仕立て上げる男。姉小路「まさか，あの男が」。 犯罪占い銭やんの館。怪しげな部屋。そこに宅間がやってきた。占い師として座っているのは，あの銭やん。再会を喜ぶ2人。宅間は，あの裏サイトには別ページがあるが，パスワードがわからない。そのパスワードを銭やんに調べてもらうためにやってきた。銭やん「そのサイト，危険すぎるわ。取り扱い要注意やで」といいながら，パスワードがかかれたメモを渡す。そして宅間は「それからもう1つ。あの男，出てきてるんだっけ？」とたずねた。 裏サイトは，海外のサーバーを経由しており，管理者不明，閉鎖も不可能。チェスの駒に書かれていた4人が判明。牧瀬輝美。14年前に再婚相手の子供を虐待で殺した疑い。虐待と死因の因果関係が特定されず，不起訴。小池智英。同級生に危険ドラッグを大量に与え死亡させた疑い。未成年で，傷害罪での立件もできず保護観察処分。未成年だったため写真も残されていなかった。安西圭子。15年前に夫に対する保険金殺人の共犯の疑い。主犯の浮気相手は国外に逃亡して行方不明。アリバイもあり，殺人を依頼したという証拠もなく不起訴。浦賀和也。14年前，不良グループによるリンチ殺人に関与。当時14歳で罪に問われず。現在全員と連絡が取れない状態だった。すべてが10年以上前の事件。宅間「あいつが外にいたときの事件ばかりだね」。銭やんから聞き出したパスワードをもとに，別ページに入室してみる。そこには、ターゲットの名前と犯罪の詳細が載っていた。あくまでも本当に殺したこととして。宅間「8人のターゲットは，あきらかに殺意があって人を殺したのに，誰1人として罪を償っていないってことなんだよね」。我妻「そもそもここに書かれてることって，ホントなんですかね」。宅間「でたらめかも。でたらめでもいいんだよ。サイトに書かれて，不特定多数の人間の目に触れた瞬間に，でたらめが真実になり，免罪符になるってわけだから」。松原「免罪符？」。宅間「そんな人間は殺されてもいいという免罪符」。姉小路「だけど，これを見ただけで，無関係な人間が人を殺すなんて，私には信じられない」。宅間「人を殺したかった，なんてふざけた理由で，ホントに殺す人間，嫌だけどいるよね」。このサイトは，人が心の奥深くに眠らせて，普段絶対表に出さないようにしている”殺意”という爆薬に，ターゲットと免罪符を与える，起爆装置なんだ。ゲームを殺人の動機にして，人の心の中の悪意を巧みに揺さぶりをかけて，表に出させる。宅間「そんなこと思いつくやつ，1人しかいないよね」。姉小路「佐神」。佐神は，すでに出所していた。宅間「この事件はね，佐神の匂いがぷんぷんするんだ」。裏サイトを作って，殺人リクエストやらせている。そうしている間に，だれかが裏サイトの管理者のページに入室しているのがわかった。アクセスもとを調べさせる。渋谷のネットカフェだった。至急，向かう。宅間「もしかすると，これ，佐神からオレへの挑戦状かも」。そんな宅間の姿を，不安そうに見守る姉小路。 ホテルに部屋で，便せんに何かを描いている美也子。法彦の写真を取り出し，見つめている・・・。 堀川と松原がネットカフェに向かう。先ほど入室していたパソコンがあるブースはロングステイの人間が使っていた。2人が乗り込むと，確かにサイトにアクセスしていた。会員証の名前を見ると＜小池智英＞。ネット仲間から，サイトに名前が載っていることを教えてもらい，ほかの人間が殺されているのも分かった。それで家に帰れず，ここで生活していた。せめて自分のことだけでも消せないかと，管理者ページに入室してみたという。警察なら保護してほしいと。そして5番目の殺人がおきた。殺されたのは牧瀬照美。撲殺だった。凶器は鉄パイプと思われたが，残されていなかった。しかし，なぜかそこにはナイフが残されていた。牧瀬の指紋は残されておらず，血痕も残されていた。ナイフで刺そうとして失敗し，手近にあった鉄パイプで殴ったのかと思われた。あのマークも残されていた。 取調室。小池は，殺す気はかなったと主張。「あいつみたいになりたくない」と。裏サイトの駒がいつの間にかと倒れていた。残りは３つ。小池は保護したが，残り2人は見つかってない。須賀は小池とつながっていた。小池に裏サイトの存在を教えたのが須賀。連絡が急に取れなくなり，隠れ家を訪れるとすでに死んでいた。怖くなって小池は警察には届けていなかった。その遺体は1か月前に，発見されていた。特に外傷もなく，病死として処理。すでに遺体は荼毘に付されていた。わからないように殺すことは可能という宅間。遺留品も残されていなかった。1か月前ということは，このゲームの最初の被害者。しかし，サイトの駒は倒れていない。まだ佐神は知らないのか。残りは2人となった。小池の事情聴取をしてい野方に電話がかかってきた。廊下に出た野方は，状況を説明している。 宅間に美也子から＜7時の新幹線で帰ります＞というメールが届いた。姉小路もその子とは知っていた。姉小路「見送りに行けば」。宅間「それどころじゃないだろ」。姉小路「これは主任命令よ。今の宅間は，少しでも事件から離れた方がいい。さもないと，取り込まれそうで怖いのよ」。宅間は黙っていってしまう。我妻「取り込まれそうで怖いってどういうことですか」。姉小路は，高倉にいわれたことを話す。姉小路「宅間は，犯罪が好きで好きでしょうがない人間や，人を殺すことに痛みすら感じないような犯罪者に出会うと，相手の心理や精神構造をひたすらに理解しようと躍起になる。もしそれが，少しずつ宅間の心をむしばんでいるとしたら，いつか一線を越えてしまうときが来るかもしれない。佐神のような男の犯罪に没頭している今，宅間には危険すぎる。だからこそこちら側に引き留めてくれる人が必要なの」。我妻「それがわかれた奥さん」。姉小路に連絡が入る。野方が電話中に，小池が逃げ出した。保護を求めていたはずなのに。 ホテルのロビーで，美也子は見知らぬ男とぶつかってしまう。その後，バッグの中に手紙が入っているのに気づく。そこには＜大切な人に渡してください＞と書いてあった。そこに宅間がやってきた。宅間「帰る前に一言言っておきたくて。約束するよ。絶対に君と法彦のもとに帰るから」。美也子「私も，何があってもずっと待ってる」。宅間「そのために，佐神って男に会わなきゃいけないんだ。会って聞きたいことがある」。その名前を聞いて，美也子は先ほどの手紙を差し出す。手紙を裏返すと，差出人として佐神稚洋の名前があった。美也子が，駐車場の方に去っていったというと，宅間は猛然と走り出した。駐車場に着き，佐神の姿を探していると，突然鉄パイプで殴り掛かられる。隊員ぐよく，姉小路と我妻が駆けつけて来た。犯人はバイクで逃走。姉小路と我妻は，逃げ出した小池がここのあたりで見たという情報を得てやってきたのだった。宅間は，「まさか」というと走り出す。探し回った結果，小池が殺されているのを発見。 美也子には部屋から出ないように伝えておいた。小池を殺したのは佐神なのか。小池の死因は脳挫傷。凶器は宅間を襲ったのと同じ鉄パイプと考えられた。バイクは盗難車。マークも残されていた。これまでのことを整理すると，殺人リクエストの参加者は4人になる。裏サイトでは，小池の駒が倒れた。科捜研から連絡が入る。牧瀬殺害現場に残されていたナイフの血痕は，郡司のものだった。2つの殺人の狂気が1つの現場に残されている。それはなぜか。狂気を使い分けた？宅間はそれを否定する。犯罪者は1番慣れた方法を選ぶ。宅間「そもそも小池は警察に保護されたのに，なんで逃げ出してホテルに向かったのか」。殺されに行ったようなもの。宅間はふと思いだし，手紙をカバンから取り出す。佐神からの手紙にはこう書かれていた。＜これは，私が昔，あなたが探し求めているもの のために書いたシナリオです。聞き残る駒はただひとり。くれぐれも気をつけてください＞。いろいろな場面を思い浮かべる宅間「わかった。すべて」。すると，ボードに並んでいた写真を並べ替える。それを今度は線でつなげる。出来上がったのはトーナメント表。そして宅間は，松原にメモを渡し，裏サイトの管理者のページにこの場所を書き込んでほしいと依頼する。宅間「犯人をおびき寄せるんだ」。不特定多数を対象にしたゲームではなかったのか。宅間「さすが佐神の作ったシナリオだよね。これはただの殺人リクエストなんかじゃなかったんだ」。管理者ページに，須賀和也の名前で＜吉上町の廃ボウリング場で待つ＞と書き込みがされた。 須賀が死んでいた廃ボウリング場。黒いヘルメットをかぶり，全身黒の人間が鉄パイプをもってやってきた。須賀が眠っているような場所を見つけると，鉄パイプで殴りつける。もちろん，そこには須賀はいない。ボウリングの球と毛布があるのみ。宅間「そこまでだよ。白のナイトさん」。鉄パイプで抵抗するも，取り押さえられた。ヘルメットをはずすと，そこには安西の姿があった。なぜ宅間はわかったのか。それは「ただ1人の生き残り」だったから。裏サイトは，一見，不特定多数の参加者に殺人を起こさせる殺人リクエストに見えたけれど，ターゲット本人たちにとっては，もっと恐ろしい意味があった。それぞれに，裏サイトの別ページへのパスワードが書かれた”招待状”が届いた。人を殺したのに罪に問われていない8人のターゲットに自分が選ばれただけではなく，与えられたパスワードで管理者のページに入ると，＜ただ1人生き残った人間のみ栄冠が輝く＞，そう書かれている。8人の人間が互いに殺し合い，最後の1人だけが生き残れるという告知。安西「殺し合わなきゃ，あいつらが殺しに来るの。助かりたければ自分からやるしかないでしょ」。このゲームは，実は殺人トーナメントだった。宅間「ヒントは最初からあったんだ」。手口の違い。違うだけではなく同じ手口が続いて途中で変わったということ。奇妙なのは牧瀬の殺害現場にナイフが残されていたこと。最初の3人を殺したのは郡司。元組長なら拳銃も手に入りやすい。そして，牧瀬が郡司を刺殺。さらに，その牧瀬は安西をターゲットに選んだ。安西は，牧瀬がナイフで襲い掛かったところを鉄パイプで殴った。そのため，郡司殺害に使われたナイフが残っていた。同じ手口で小池を殺した。宅間を襲ったのは目撃されたと思ったから。まだ捕まるわけにはいかなかった。安西は，まだ須賀が生きていると思っていたから。安西「あそこで捕まったら，最後の須賀をやれないから」。ここで安西は須賀が死んでいることを知る。安西「だったらただ一人の生き残りなのよね。私には資格があるのよね。なら放して！あいつらが来る前にやらなきゃいけないの！」と暴れ出す。そのまま連行された。須賀をやった人間はいまだ謎のまま。我妻「信じられません。いくら脅されたからと言って，8人もの人間が殺し合いをするなんて」。宅間「安西圭子は ”資格”って言ったよね。ご褒美に変わるなにか狂信的なマジックワードがあったのかもしれない。裏サイトの履歴調べれば何かわかるかも」。 姉小路と我妻が裏サイトを見ると，駒が全部倒れてる。中央のキングの駒には宅間の名前が刻まれた。そして日付は15年前、２００１０２１１だった。。しかし，宅間はその日に何があったのか思い出せない。宅間「まだ何かあるんだ。佐神のシナリオだもん，一筋縄ではいかないんだ」。佐神からの手紙に書かれた＜生き残れるのはただひとり。くれぐれも気をつけてください＞。宅間「やらなきゃいけないことって，まさか」。殺人トーナメントで生き残った1人に，最後のキングへの挑戦権を資格として与えるというもの。＜あなたが探しているもの＞。宅間「我々・・・」。 美也子の部屋に，水を運んでいくホテルマン。 宅間は，取調室に行き、安西に「真ん中のキング，オレだった」と伝える。それを聞いた安西がつかみかかってきた。宅間「答えろ。どうしてオレが最後のターゲットなんだ。どういうシナリオなんだ」。安西は「あんたがあたしたちを作ったんじゃない。言い出しっぺあんたなのに，今さら何？あんたが”我々”を作ったんでしょ」。何のことかわからず困惑する宅間。あの部屋にしまっておいた同人誌が何者かの手に。 ホテルの美也子の部屋に，ホテルマンが到着する。水が運び込まれる。 宅間「オレが作った？どいうこと？」。すると裏サイトの駒が変わる。中央はキングではなくクイーンに。安西「なんだ。あんたじゃないんだ。言い出しっぺはクイーンなんだ」。＜２００１０２１１＞という数字と，名前は・・・室町美也子。 美也子は薬を運ばれてきた水で飲む。その直後，倒れてしまう。 宅間たちが駆けつける。美也子の部屋にはすでに救急隊員が駆け付けており，美也子の脈を図っている。部屋から連れ出され，抑えられる宅間「美也子！」。 |
| 第９話 美也子は一命はとりとめたものの，予断を許さない状況が続いている。石は意識が戻らない可能性が高いという。何も言わず，美也子を見つめる宅間。病院に，姉小路の義母・小枝が駆けつけた。法彦のことは，姉小路家で茜が面倒を見ているという。姉小路は，宅間にとって美也子は船のイカリのような存在だと話す。宅間が犯罪者の側に行かずに踏みとどまっていられたのは，美也子の存在があったから。弱音を吐く姉小路に，小枝は「あんたを何のために東京に送り込んだと思ってるの。こんな時こそ，宅間さんを守らんでどないすんの」と叱責する。姉小路の手には，あのコインが握られていた。そのコインは，宅間が東京に来る前，置いていったもの。それを姉小路が手渡そうとすると，宅間は「預かっておいてよ。お守りがわりに。姉小路さんのじゃなくて，オレのお守り。姉小路さんが持っててくれkればそれでいいから」。姉小路「私が宅間を・・・」。美也子のベッドサイドで何か話しかけるようにしていた宅間は，集中治療室を出ると，「行こう」と姉小路を促す。ここにいても何もできることがないから。「美也子をこんな目に合わせたやつを捕まる。それって，オレたちにしかできないことだから」。 美也子の部屋にあった水差しから，有機系の毒が検出された。即効性の高い神経系の毒で，表面に目だった変化がでないもの。殺人トーナメントでの最初の殺害に使われたものと同じ毒と考えられる。ホテルランドリーからボーイの服が1着盗まれていた。それを使ってボーイに成りすまし，部屋を訪れたと考えられた。宅間「発端は，裏サイトからだよね」と，今回の事件をまとめる。最後に生き残った安西がキングへの挑戦権を獲得したが，警察に捕まってしまった。そこで仕方なく，管理者Ｘが美也子を殺そうとしたのではないか。そのＸは佐神なのか。前回の佐神のシナリオは，最後に宅間たちが阻止した。そこで再戦を挑んできた。そう考えると，この殺人トーナメントは最初から宅間を狙っている。最後のターゲットがどうして変わったのか・・・佐神を見つければ明らかにできるはず。そのためにやることは3つ。偽物のボーイの正体を暴く，安西とＸのつながりを調べる，トーナメントを洗いなおす。いつものように推理し，張り切って出て行く宅間。そんな宅間を心配するメンバー。 松原と野方は，ホテルの防犯カメラで，偽ボーイをチェックする。しかし，顔は映っていない。姉小路と堀川は，安西にサイトの話を聞きだす。正体不明のメールが届き，そこにはあの裏サイトのアドレスとパスワードが書かれていた。送り主は「管理者」。そのサイトの管理者ページに行くと，あの8人がさらされていた。すぐにメールをすると，参加しなければ，過去にやってきたことを世間にばらすと脅された。助かる方法はほかの7人を殺すしかない。そう思わされていた。管理者Ｘの顔は見ていない。メールの感触では男。しかもかなり頭の切れる。犯罪が好きで好きでしょうがないという匂いがぷんぷんしたという。宅間と我妻は，最初の殺人を洗いなおす。第一発見者の巡査・岸田に話を聞きに行ったが，交番の前が何やら騒がしい。交番の中には，テーブルに突っ伏している岸田の姿が。すでに脈はない。床にはお茶が入っていた湯のみが転がっている。一方，野方は，ホテルの防犯カメラの映像に，美也子が男とぶつかった所を見ていたが，その近くである男がずっと美也子を見張っていたことに気づいた。松原が映像の解析をする。宅間たちは，岸田の拳銃が奪われたことを発見。宅間が交番の前の野次馬を見ると，怪しげな男が逃げ出した。追いかける宅間と我妻。途中，その男が人とぶつかり転び，その顔が見えた。なんと，１０年前に爆死したはずの我妻の父・公昭だった。しかし，踏切で逃げられてしまう。そして，松原が映像解析した結果，美也子を見張っていた男も公昭だった。 岸田は，美也子と同じ毒で殺されていた。拳銃を奪うためだったのか。第一発見者に何か証言されたくなかったのか。そしてどうして公昭がこの現場にいたのか。公昭の事件の資料を見ると，ろくに司法解剖はされていなかった。遺体の損傷がひどいのに，身元確認のためのDNA鑑定がされていない。我妻は見ない方がいいという理由で，遺体の確認は公昭の同僚と白河長官がおこなっただけで，我妻は遺体を見ていない。公昭は，丹羽の策略に乗ったふりをして，自分は死んだことにした。公安調査庁の任務でもぐるために？たった一人の娘を残してまで，そうしなければいけない理由は何だったのか。宅間は，安西に公昭の写真を見せる。宅間「やっぱり肝心なことしゃべってないね」。安西は，最初から「我々」「私達」という言葉を使っていた。トーナメントの参加者8人は最初からつながりがあった。宅間「あんたも，”我々”の人間なんだろ」。安西は笑って否定。 宅間はあの部屋のロッカーを移動し，事件関係の一覧を見る。そして，公昭の写真を＜「我々」関係者＞の方へ移動する。宅間が総合事犯対応係（仮称）に戻ると，テーブルの上にチェスの駒と封書が置かれていた。姉小路は掃除の人が入ってきていたという。それを聞いた宅間は，猛然と駆け出した。しかし，そこにはその姿はなかった。宅間は姉小路に「招待されたみたい」と封書を見せる。その差出人は＜W.S＞。佐神稚洋。招待状には＜本日お待ちしています＞という文と，＜インスタレーション展＞と書かれており，場所も記されていた。どうしても１人で行くという宅間。姉小路は「どうしてそんなに強くいられるの」。宅間「そうそう。オレがね，刑務所で一緒だった２４４番の話なんだけど・・・」。２４４番は，殺人未遂で服役していたけれど，実は冤罪だった。家族とも引き裂かれ，当然，そんな理不尽受け入れられなかった。最初は泣いて叫んで，怒って，手が付けられなかった。でもやがて，あることに気づいた。泣いて傷ついて自暴自棄になって，それこそ廃人みたいになったら，やつらの思うつぼだってことに。それ以来，244番は決して自分の感情をストレートに表に出さなくなった。宅間「これはオレと，”我々”の戦いなんだ・・・安心して。泣くよ。犯人見つけて，片づけたら。涙がかれるまで泣いてやる」。そういって去っていく宅間。姉小路「私は信じてる。宅間には刑事しかないんだから」。 宅間は，招待状に書かれていた会場へ向かう。受付の仮面の男は，今日は貸し切りだという。しかし，招待状を見せると，中に入れてくれた。そこには不思議な空間が広がっていた。全てが真っ白な部屋。マネキンの集団。モニターの山。宅間「案外オレの好みかも」。すると「お悔やみ申し上げます」という佐神の声。モニターの山に佐神が映っている。宅間「あんたが書いたシナリオのせいで，美也子は殺されそうになったんだ」。佐神「なにか誤解があるようですね。たしかに今回の事件は私が書いたシナリオです。ですが，あれは危険すぎてボツにしたシナリオなんです・・・盗まれたんです。あなたが探し求めているもの，”我々”に」。宅間「そろそろ出てくれば」。マネキンの集団の中に，佐神の姿を見つける。宅間「”我々”のこと，教えてくれるんだよね」。佐神が語り始める。ことの始まりは，１５年前に集められた勉強会。凶悪かつ複雑化する犯罪や国内に忍び寄るテロの脅威に対抗するために，複数の公的な機関の人間を横断的に集めた勉強会だった。メンバーは，全国の警察，警察庁，裁判所，公安調査庁，内閣情報調査室などの諜報機関，さらには法務省の官僚や政治家など多岐にわたった。非公式な存在で正式な呼び名はなく，参加者が「我々」とよく口にしていたので，それがそのまま通称になった。安西も語る。最初は，犯罪者との付き合い方を話し合っていた。しかし途中から，生まれながらに犯罪が好きで好きで仕方がない連中を集め始めた。宅間の冤罪の事件に関係した武藤も，安西と同じスカウトされた犯罪者の1人。しかし，佐神は別格。アドバイザー的存在だった。宅間「もしかして。犯罪者を使えば犯罪を制することができるって教えたわけ？」。一部の犯罪者は更生を図るよりも，有効利用をした方がよいと提案。最終的に目指したのは，犯罪者の有効利用。 異様なまでに入り込む我妻。どうしても公昭のことが気になって調べている。堀川と松原が須賀と小池の写真が手に入ったと戻ってきた。その時，パソコン画面に宅間の姿が映し出される。宅間も，映像が送られていることには気づいている。佐神は，宅間の仲間にも聞いてもらいたいという。犯罪者の有効利用とは，犯罪の情報提供，潜入捜査，実際に起こった犯罪に対するプロファイリングもどき，まだ見ぬ犯罪手口，情報取集・・・。宅間「犯罪者を猟犬のように使う。あるいは，犯罪者の視点で事件を解かせる」。佐神「今思えば，宅間さんを人工的に作ろうという試み・・・だったのかもしれません」。宅間「オレは犯罪者じゃないから」。佐神「あなたも別格でしたね」。宅間「そんなふざけた試み，当然失敗したんだよね」。集められた犯罪者は，ある日一斉に逃走。一緒にあらゆるデータをすべて持ち去って。”我々”は数年で空中分解し，最悪の結末を迎えた。”我々”の存在を知るものや，調べようとするものを全て抹消しようとする人間が現れた。高倉も”我々”の参加者。しかし，まじめな彼は，時期が来れば”我々”の存在を公にしてもやむなしと考えていた。それで消された。そして宅間の冤罪も，”我々”にかかわった人間を消すため。佐神「そろそろ思いだしましたか」。宅間「広報誌にあるコラムを書いたんだ」。それは「面白い小説を読んだ」という書き出し。警察と犯罪者のかかわりについての話。更生を期待できない犯罪者は，残念ながら存在する。そういう犯罪者も利用方法次第では，犯罪の防止や抑制に役立つ・・・”我々”の基本理念がまさにそのコラムの中に書いてあった。宅間「ふざけるな。それはたんなる穴埋めのコラムじゃないか」。佐神「だとしても，あなたが言いだしたことに変わりはありません」。正確に言えば，美也子が同人誌に書いていた小説が振り出し。宅間は，コラムの内容に困っているときに，美也子の小説を見つけて引用しただけ。問題は，それが公表され，”我々”の基本理念になった・・・その事実だけ。ただの思い付きのフィクションでも。”我々”が集めた犯罪者が管理不能になったように，”我々”にかかわるものすべてを抹消する…と言う目的だけが独り歩きしている。佐神のシナリオを盗んだのは，”我々”の主要メンバーの誰か。高倉，白河，公昭・・・。 例の裏サイトがまた更新された。中央のクイーンがまたキングに変わる。宅間が消えてなくならない限り，このシナリオにエンドマークはつかない。まだ管理者Ｘは宅間を狙っている。佐神「コスプレをしたり，身分を変えたり，ギミックが好きなやつです。気をつけてください」。宅間「あんたは何をしたいんだ。オレの敵なのか？見方なのか？」。佐神「しいて言うなら，私はあなたのメガ。どんなに近づこうとも，壁1つを隔てて，決して交わることはない・・・あなたとはもう一度勝負しなければならない。それまでは，死なれては困るんです」。宅間が，手にしていたチェスの駒を投げつけると，跳ね返ってしまう。そして，佐神の周りにはひびが入り・・・。佐神の姿は，映されたものだった。そこに佐神はいない。姉小路たちは，急いで現場に向かう。宅間が建物の外に佐神を探しに出ると，銃声が聞こえ，腕を撃たれてしまう。銃を向ける人間の姿はとらえたが，顔はわからない。現場に向かう車の中，宅間の安否，そして美也子の復讐を図るのではということが心配されていた。宅間は，犯人を追って，階段を昇っていく。犯人に迫りながら考える。宅間「そういうことか」。また階段を上り始める。そのころ，姉小路が須賀と小池の写真のことを思い出した。須賀と小池の写真を見てみる。写真を提供してくれた保護司によると，小池として保護され殺されてしまった男が須賀だという。 宅間が銃を向けている男と対峙する。宅間は，カバンを投げ，男の気をそらし，消火器で応戦する。男が銃を手放したすきに，銃を奪う。その男は，仮面をした受付の男。仮面をとった姿は・・・小池智英。小池は屋上まで逃げていく。追いかける宅間。宅間は話がしたいと。小池は，”我々”が集めた犯罪者の１人。小池は，”我々”のあるメンバーが雇い主となり，その指示で動いていた。東京に来た宅間をずっと監視するように言われていた。あるとき，あのシナリオが送られてきて，実行に移すことに。自分が自由に動くために，須賀を利用した。ホームレスを殺して，須賀の死体に仕立て上げ，死んだことにする。須賀自体は小池として警察に保護される。そうすれば，須賀も小池も怪しまれない。小池は自由に動ける。警察に写真が残っていなかったからできたトリック。岸田を殺したのは，写真で確認されることがないようにという口封じのためと拳銃を手に入れるため。「言い出しっぺ」が美也子というのは，雇い主が教えてくれた。だから急いでボーイの服を盗んでで殺そうとした。しかし，雇い主は名前もわからないという。連絡はいつもネットを介して。犯罪捜査にかなりのハイスペックの持ち主だったので，警察か公安関係者だろうと。 姉小路たちがやってくる。血痕を見つけ，手分けして宅間を探す。小池「うまくいくと思ったんだけどなぁ。ここであんたを殺して姿を消せば，小池智英ってやつは法律上死んだことになってるんだから，絶対捕まえられないし」。宅間「”我々”の呪縛からも逃げられる・・・それも狙いだろ」。小池「いいとこつくね。それに死んだ人間のままなら犯罪を起こしても，新たに訴追されることもないし」。宅間「でも肝心なこと忘れてるよ・・・一度死んだ人間なら，殺しても罪にはならないよね」と銃を向ける。小池「オレを殺す気？」。宅間「殺したい・・・」。我妻が屋上に宅間たちの姿を見つける。小池をぎりぎりまで追い詰める宅間。姉小路やほかのメンバーの目に，宅間が小池に迫り，小池が屋上から落下する姿が映る。宅間はその場に座り込み，叫び声を上げる。みんなが宅間のそばへ。下を見ると地面にたたきつけられた小池は絶命しているよう。姉小路「宅間・・・まさか・・・」。宅間は何も言わない。姉小路の手からあのコインが落ちる・・・。 |
| 最終話 小池が転落死し，現場では警察による検証が行われていた。死因は転落による脳挫傷の可能性が高いと考えられた。小池のジャケットのポケットには，美也子の時と同じような毒が入った小瓶が入っていた。一連の殺人トーナメントの首謀者は小池と判断。しかし，宅間が小池に銃を向けていたのを我妻が目撃しており，その行為で小池を追い詰め転落させたということになったら，過剰防衛を通り越し殺人罪がになる。その宅間は，車の中で我妻に傷の手当てをしてもらっていた。宅間「誰かいたんだ。オレと小池の他に。雇い主いるんだ。今も監視しているみたいだね」。そっと窓からスマホを出し撮影。後ろの車に乗っていたのは，公昭。我妻が急いで車を降り，そちらに向かうと，公昭は車を急発進させ逃げてしまった。我妻が車に戻ると，宅間の姿も消えていた。 白河と滝道。宅間はまだ見つかっていない。白河「まさかとは思うが，小池という被疑者の死亡に彼が？」。滝道曰く，警察では「逃げたら犯人」と言われている。白河は，総合事犯対応係のメンバーの様子を滝道に聞くが，滝道は我妻の様子が知りたいのだろうと。我妻は，公昭が生きていたことでかなり動揺していると伝える。公昭が生きていたことを伝えても，白河は全く動じなかった。白河は知っていたのか。 総合事犯対応係では，捜査一課が宅間の荷物をすべて運び出していた。姉小路が，宅間の捜索に加えてほしいと頼むが，この場所から出ることも禁じられた。そのころ宅間は，姿を隠すようにフードをかぶり，何やら必要な物品を購入していた。総合事犯対応係に滝道が顔を出した。滝道「お仕事しようよ。宅間が本当に突き落としたと思ってるわけ？」。宅間は，こんな犯罪IQの低いことはやらないと断言する。宅間はただ逃げているだけじゃなく，目的を持って動いているはずだと。確かに，宅間は，インターネットカフェで，パソコンを操作している。野方が宅間のサイトがインターネット上にアップされたと知らせに来た。そのサイトは＜容疑者宅間善人を探せ＞というもの。ポイントがかかれた都内の地図と宅間の写真が掲載されている。さらに，宅間の「容疑」内容も。宅間は，ポイントのどこかに現れ，30分ごとに移動。移動には決められたバス・タクシー・電車のチケットのみが使われる。4回移動するごとに，その直前までどこにいたのか秋からにする。時間内に見つけだし確保たものには1億円の賞金が与えられるという。そして宅間が逃げ切れたら，すべてを公表する・・・そういう内容だった。そして，宅間がスタートボタンを押した。サイトが動き出した。ネットにアップされた以上，警察以外でも誰でも参加できる。捜査一課も必死に探し始めた。滝道「宅間という男の行動には，常になにか意味があるよね」。姉小路「このゲーム自体，私たちにメッセージを伝えているのかも」。地図のポイントは，殺人トーナメントの現場と同じところもあれば，関係がないところもある。地図はポイントにならないようだった。滝道は「空間でないとしたら時間」とアドバイス。ゲームをスタート時間が，中途半端な18時23分。ゴールの時間が17時23分。小池が転落死した時間と同じだった。今までの宅間のことを考えると，今回の件は1日の有用が必要なのではないか。24時間といえば，防犯カメラは24時間で上書きされるものがある。姉小路は，小池が転落死したギャラリー周辺の防犯カメラの映像をチェックするよう指示する。 １２時２３分。宅間４回目の移動終了。サイトには写真がアップされる。渋谷にいるよう。総合事犯対応係のメンバーは，防犯カメラの映像をチェックし始める。宅間が地下鉄の駅を出てくると，すでにサイトの情報が拡散しており，大勢の人間が宅間を探しているようだった。団体の中に紛れ，逃げる宅間。姉小路は，映像の中から，ギャラリーの前に車を発見。ナンバーから調べてみると，警察車両だった。我妻は，滝道に「”我々”の存在，ご存知だったんですね」と問う。滝道は何も応えない。我妻「知ってることがあるなら，話してください」。姉小路は，宅間と佐神の影像を見せる。この部署は，白河の肝いりで作られた部署。関係があるはずだと，我妻。滝道は，仕方なく話し始める。”我々”解体後，メンバーは２つに分かれた。この計画の失敗を公表し，責任を取るべきだという一派。そして，自分たちの黒歴史をすべてを封印しようとする一派。高倉は，公表派だった。そして白河は高倉の遺志を継ぐつもりだろうと。”我々”の存在を抹消しようとする存在から，宅間を守るためにこの部署は作られた。公昭は，自分たちが作った”我々”とどうけりをつけるかということにとらわれすぎていたという。あの時点で本物の犯罪者に触れすぎていた。滝道「ある種の犯罪者に接触し続けると，どれだけ危険なことか，宅間を見てきた君らならわかるはずだ」。”我々”の存在を公表することを拒まれた公昭は，”我々”に関連するすべてを抹消することを狙った。ということは，小池を操って殺人トーナメントを実行したのは公昭なのか。宅間がそれを知っていたとしたら，自分をおとりにして，公昭をおびき寄せるためにこのゲームを始めたのではないか。姉小路「だったら急いで宅間を見つけないと」。滝道「この捜査から外れてもいいぞ」と我妻に。我妻は「刑事として１番大事なことを宅間さんから教わりました」。＜犯罪を犯した人間が，捕まらずにのうのうと生き延びてるなんて，オレ絶対許にせない＞。宅間はそういっていた。我妻「もし父が犯罪に加担しているなら，絶対に許せませんし，私の手で捕まえたいと思っています」。15時18分。宅間はタクシーで移動していた。撃たれた傷が痛む。タクシーも使いすぎている。後ろを見ると・・・宅間「我妻さんのパパ，やっぱり現れちゃうんだ」。宅間の手には，美也子の青い蝶のネックレスが握られていた。 １６時２３分。野方は，捜査一課のメンバーと一緒に宅間を追っていた。野方の予想で六本木にやってきたが，サイト情報では両国に宅間はいた。ほかのメンバーがそちらに向かうが，野方だけはサイトを確認。サイトによると，残りのチケットはバスのみ。そこから推理し，野方はみんなとは違う方向へ向かっていった。総合事犯対応係にメールが届いた。宅間が鑑識の結果をこちらに届けるように指示したようだ。小池が所持していた毒薬の瓶から火薬反応が出て来た。しかし，小池が持っていた銃には発砲の痕跡はない。小池の死因は，毒による心不全。胃の中にカプセルも残っていた。小池には呼吸器系の持病があり，薬を服用していた。つまり，転落が原因ではなかったということだ。姉小路が映像の中で見つけた車両の資料を見ると，使用者情報だけが消されていた。しかも，小池が転落死する30分近く前。あの日，宅間があの場所で佐神に会うことを知っていたのは姉小路だけのはず。それなのに小池が現れたということは，情報が漏れていたということ。しかも，姉小路たちが現場に到着する前に，警察車両があそこに来ていたということは，警視庁の中にも”我々”の息がかかった人間がいるということだ。宅間は，そのことに気づいていたのかもしれない。宅間が逃亡し，このゲームを始めたのは，捜査一課の目を自分に向けさせ，この事実に総合事犯対応係が気づくようにしむけた。だったら，先に宅間を見つけなければならない。そのころ，宅間はコインロッカーから，三脚などをカバンに詰め込み，どこかに向かった。サイトを確認すると，最後に現れたのが両国。残りの移動回数は２回。しかも手段はバスのチケットが２枚。そこから推理すると，次に宅間が向かうと思われるのは，湾岸スクエア。みんなでそこに向かった。 白河と滝道。滝道は白河に報告。白河「真里亜は公昭君のことを・・・」。滝道は，これ以上隠しておくことはないだろうと判断したと伝える。白河は，宅間が作ったサイトは，彼が携わってきた事件と似ているという。犯罪の原動力となったのは，匿名の悪意。名もない人間が犯罪を起こしたり，興味本位で犯罪に出資したり。今回も，匿名の悪意を駆り立てるように作られている。＜殺人を起こした人間なら殺してもいい＞。殺人トーナメントと同じ理屈で，その悪意が宅間に向かうとしたら・・・。湾岸スクエアにはすでに大勢の人間が集まってきていた。プラカードを持ったり，宅間と同じような服装をしたりとまるでお祭り騒ぎ。姉小路たちもやってきている。白河「あるいは，宅間自身，騒がれることを望んでいるのかも。宅間の周りには，これまで多くの血が流れ，命が失われてきた」。宅間本人は，トイレの中で傷の手当てをしていた。白河「彼の本当の狙いは，贖罪かもしれないな」。湾岸スクエアには捜査一課のメンバーもやってきた。 １７時２３分。かなりの人でごった返している。そんな中に宅間の姿が。宅間「だーれも気づかないし。オレって，地味な顔なのかな」。ところが，一人の男が近づいてきた。宅間「見つかっちった」。男が宅間に近づいたかと思うと，銃声が鳴り，男が倒れた。宅間の手には銃。そして倒れた男は，野方だった。総合事犯対応係のメンバーもそれを目撃した。捜査一課に囲まれる宅間。逃げ惑う一般の人びと。手をあげ無抵抗の宅間だったが，フードをはずすと「ビデオセットしてて正解だったかも」。壁の大きなスクリーンに，先ほどの場面が映し出される。野方が近づき，宅間に銃を握らせ，自分で引き金を引く。宅間は，このゲームは＜真犯人を探せゲーム＞だったという。野方は防弾チョッキを着ていたので無傷。野方をおびき寄せるためのゲーム。警視庁内だったらどう隠蔽されるかわからないし，ここなら目撃者を大勢集められるから。堀川「どうして野方だってわかったんだ」。宅間「最初からおかしいと思ってたんだ」。連続殺人事件を，わざわざ総合事犯対応係に持って来たこと。小池として保護した須賀の聴取も野方が担当。簡単に逃げられたのもうなづける。ギャラリーで宅間を撃ったのは野方。宅間は，小池の銃を手にしたとき熱を持っていなかったことに気づいていた。自分を狙っているのはもう一人いる，そう推理した。ギャラリーの前に警察車両も止まっていた。宅間「あんたが小池を連れて来たんだ」。小池には，宅間に追ってこられたら屋上に逃げるように指示。ギリギリのところまで来れば，野方が上から狙うと約束した。あの時の宅間は「殺したい。本当は殺したい。だってあんたのせいで，美也子は今も死線をさまよっているんだから。だけど殺さない」と銃を下していた。そして，宅間が逮捕しようとしたとき，小池が突然苦しみ出した。そして転落。転落した小池のポケットに，野方がそっと毒の小瓶を忍ばせていた。宅間「すべてがあんたの仕業だったんだ。殺人トーナメントの黒幕で，なおかつ小池智英の雇い主」。連行される野方「自分がもったいないことをしてんのわかんないのか。あんたほどの犯罪の知識や能力があるのに，なんであんたが犯罪者じゃないんだよ！」。 宅間は，姉小路にうなづき，「先いって」。これで一件落着かと思われたが，宅間は我妻に手錠をかける。宅間「もう少しオレ容疑者じゃないとならないんだ」。姉小路たちが総合事犯対応係に戻ると，宅間のサイトが更新される。そこには，宅間と手錠をつけられた我妻の姿があった。宅間は，我妻を誘拐したという。公昭に出てきてもらうため。我妻は「お父さん，これを見たら８歳の誕生日に連れてきてくれた場所に午前０時までに来て」という。スマホを手にウィンクをする宅間。その映像を見た姉小路は「最後のけりをつけようとしているのかも」。 指定の時間，指定の場所に公昭がやってきた。我妻「どうして死んだふりをして，１０年も姿消してたの」。公昭「こうするしかなかったんだ」。公昭は”我々”が解体した後，野に放たれてしまった犯罪者の追跡調査をしていた。そして，さらに恐ろしいことが判明した。メンバーの一部が，自分たちの組織防衛のためにその犯罪者を利用していたのだった。宅間「マジで有効利用しちゃったんだ」。白河に公表を迫ったが，「今公表すると君の家族の命も危うくなる」と言われてしまった。”我々”にかかわり，犯罪者を利用しようとする人間は，各組織の中枢を担うようになっていた。彼らは自分たちのヒミツを隠ぺいするためには手段を択ばない。宅間「そのために役に立つ犯罪者，たくさん作っちゃったもんね」。”我々”の残党の監視をしたことで，誰が”我々”の生んだ犯罪者を利用しているのかを突き止めた。それは同時に我妻がもっと危険な人質になってしまったことを意味する。宅間「そうだよね？そこに隠れている人。出てきてみちゃったりしてくれるかな」。出て来たのは滝道。滝道「わかりすぎちゃってるのって，かわいくないよねぇ」。滝道は，白河の懐刀で，勉強会時代から”我々”の全ての情報を見ることができる立場だった。宅間「そのくせ，白河長官の目を欺いて，”我々”の犯罪者，そっくりいただいちゃったわけ」。滝道「犯罪者の有効利用。こんな面白いおもちゃ使わない手はないよね」。宅間が滝道のことに気づいたのは，裏サイトのターゲットが美也子に変わったとき。”我々”の基本理念が，美也子の小説が元だったとわかった人間だけが，美也子をターゲットに変えることができた。あの同人誌を見ることができた人物。つまり，あの部屋，総合事犯対応係の誰もが知らない保管庫を知っている人物。宅間「総事係の生みの親で，ずっとオレを監視していたあんただけだ」。京都府警から宅間たちを連れて来たのも，我妻を加えたのも，「危機管理だよ」と滝道。何かあったときに，まとめて処分できるように。滝道が銃を向ける。滝道「助かる道がないわけじゃない」。宅間「どうせ，仲間になれとかいうんだろう」。滝道「野方君が言うようにもったいないんだよ，宅間は。その才能で，ひと肌脱いでみてくれちゃったりしてみてくれない？”我々”のために」。 宅間「そうそう。オレがね，出所してからずーっと一緒にいる人の話なんだけど・・・その人，刑事のくせに全然優秀じゃないんだよね。尾行は下手だし，思い込み強いし，おまけにやかましくていっつも一言余計だし。旦那さん殺した犯人見つけたときだって，簡単に相手の挑発に乗っちゃって，今にも引き金引きそうで，ひやひやだったんだ。だけどね。撃たなかった。だって，刑事だから。こうしてる今だって，その人この画がオレの頭の中で響いている・・・”宅間は絶対に犯罪者なんかにならない。宅間には刑事しかないんだから”って・・・だからそっち側に行かないよ」。首を傾げた滝道は，いきなり宅間を撃った。銃弾を腹にうけ，倒れる宅間。姉小路が駆け寄ってくる。滝道は，堀川に取り押さえられる。姉小路が涙ぐみながら宅間に声をかける。宅間は・・・防弾チョッキを着ていたので無事。宅間「意外といってぇな，これ」。姉小路「長々と演説なんかしてるからでしょ」。公昭「真里亜，すまなかった」。我妻「ううん」。そんな２人の姿を見つめる宅間と姉小路。宅間「いっけね。スマホのGPS切るの忘れてたしね」。姉小路「しらじらしい。あんな気味悪いウインクされたら誰だって気づくわよ」。宅間「気味悪いとか一言余計だし」。姉小路「そっちの方こそ無茶しすぎ。私達が気づかなかったらどうするつもりだったの」。宅間「わかるんですよ，オレ。だって，２年１０か月一緒にいたんですから」。突然，滝道が苦しみ出した。「想像以上にマズい」。手には小瓶が。 新聞には事件のことは何も触れられていなかった。白河と我妻。白河「野方巡査部長は，何か供述したのか」。我妻「具体的には何も」。自分の雇い主が，滝道だったことも知らなかったよう。白河「所詮，トカゲのしっぽだったか」。我妻「長官はまだ，”我々”の残党が残っているとでも？」。白河「”我々”は，すでに組織ですらない。もはや理念なんだ。その理念が世に放たれた以上，とりつかれた人間が，新たな”我々”を作らないとも言い切れないんだ」。 総合事犯対応係。堀川と松原。２人は荷物を片付けている。自分たちの今後についてまったくわからない状態。京都に戻るのか，このまま警視庁に残るのか。堀川「いずれにしろ，刑事はできるさ。オレとお前なら」。松原「え？・・・今のなに？腐れ縁，まだ続けさせる気？」。堀川「別に」。松原「だとしても，私はやっぱり，あいつが一緒じゃなきゃいやだけどね」。松原の視線の先には，空っぽのソファが。 静かな浜辺。宅間が１人，海を見つめて座っている。あの日，美也子に話したように，静かな浜辺で。ただ，３人ではなくたった１人で。静かに泣いている宅間。 姉小路は，美也子を見舞っていた。まだ，変化が見られない。姉小路は宅間の言葉を思い出していた。＜泣くよ。犯人見つけて，片づけたら。涙がかれるまで泣いてやる＞。しばらく様子を見て，その場を去ろうとすると・・・。 浜辺で鳴き続ける宅間。そんな宅間の肩に，青い蝶が止まる。宅間が蝶を見つめていると，姉小路が走ってくる。姉小路「宅間！」。宅間は怪訝そうに見ていたが，姉小路が笑顔でガッツポーズをしながら近づいていくる。その姿を見て，やっと微笑む宅間。 |
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