＜第９話＞ 　病院。興三が退院する。車いすを七尾に押してもらい，隆の妻と孫に付き添われ。楓も隆も仕事で来れないという。そこに浩一が姿を現した。興三「２人にしてくれんか。彼と話がしたい」。２人きりで話をする。興三「何が望みだ」。浩一「まず謝罪会見でも開いてもらおうかな。30年前の嘘を公表して謝れ。家族殺しと言われた親父に，おふくろに，弟に。話はそっからだ」。興三「何の意味がある」。浩一「嫌ならあの録音をネットに流す。あの音声が表に出たら，二科家にとっては大きな打撃だ。それとは別にもう１つ，でっかい秘密も握っている。それが公表されればニシナコーポレーションは完全に終わっちゃうな」。興三「はったりだな」。浩一「信じるか信じないかはご自由に。まずはゆっくり休んでください。近いうちに連絡するんで」と言うと去っていく。 　結婚式場。１組のカップルが式の打ち合わせをしているのを，浩一が見ている。カップルの女性は，守の弱点，娘の由美子だった。ハルカ「守さん，ハメるつもり？」。浩一「もちろん」。婚約者・山木の家は，官僚一家。大学も出ていない由美子との結婚は反対されたけれど，山木は押し切った。浩一「何年もあってない父親のせいで，縁談がぶち壊しになったら，娘は父親のこと恨むよなぁ」。ハルカ「本気？・・・じゃ，１人でやって。今回だけは協力できない」。浩一「あ，そう」。 　ニシナコーポレーション。隆は，興三から浩一と話をしたことを聞く。録音テープ以外に大きな秘密を握っているということも。七尾「粉飾決済のことでは」。隆は晃に話したことを思い出す。興三「晃か」。隆「漏れたとしたらそこからとしか。でも録音の方は何とかできるかもしれません。何とかします。私が必ず」。バー８００。隆がやってくる。隆「先日の件，すぐ実行できるか」。カズキ「どういうこと？」。百田「ビジネスの話」。隆「今度はこちらがハメる，一ノ瀬を」。 　七瀬不動産。由美子の職場。浩一は，弁護士の一宮と称して接近した。由美子が「父とは何年も会ってないんですが」と言うと，それが振り込め詐欺に引っかかった原因の１つだろうという。守が振り込め詐欺に引っかかり，自分を責め続けている。”一宮”「自分を責めた挙句，自ら死を選んでしまう被害者も少なくない。電話１本でいい。かけてやっていただけませんか。詐欺のことは一切触れず，ちょっとした話をすればいい。それが何よりも薬になるんです」。バー８００。カズキは，百田と浩一のやり取りを気にしている。百田「どうなってるんだよ。会長の方は」。浩一「謝罪させますよ。でもその前にやることあるんで。大丈夫です，１人でやれるんで」。そういうと出て行った。カズキ「本気でやるの？」。百田「詐欺師は裏切ったり，裏切られたり当たり前。昔，浩一のカモを横取りしたことあるんだよ。ばれてないと思ったけど，1か月後，オレの１番のカモが誰かに横取りされた。その直後浩一はタイに飛んだ。たぶん浩一だ。お互い信用できないって最初からわかってんだよ。オレらみんな嘘つきだもん。済んでしまえば恨みっこなし。詐欺師になりたいんだろ？ならズルくなれよ，もっと」。 　河原で少年野球をぼーっとしながら見ている晃。隆がやってくる。隆「粉飾決済のこと誰かにしゃべったか」。晃「まさか・・」。そういうと手にしている酒の瓶を見る。晃「どうかな。最近こればっかで，あんま覚えてない。またオレやらかした？」。隆「いや・・・」。晃「なんで黙ってた。３０年前のこと」。隆「兄貴はあんな秘密隠しておけないだろ」。晃「ようやくわかったよ。社長になった途端，お前が変わった理由。オレの代わりに，オレと親父の罪を背負ってくれてたんだな。なのに，オレは何も知らずに・・・。悪かったな」と頭を下げる。隆「だったら助けてくれないか。オレを助けてくれ，兄さん。一ノ瀬を警察に突き出したい。2000万だまし取られた詐欺を立証するには兄さんの証言が必要だ。オレたちの手で，あの詐欺師を刑務所ににぶち込もう」。 　宮森わかばの家。守に由美子から電話がかかってきた。その夜，守は懐かしい家族のアルバムを見ていた。そこに浩一がやってきた。守「由美子がね，電話くれたんだよ。結婚するんだって。いろいろ思い出しちゃってさ」。浩一「見せてください」。そこには，浩一と父・弟も一緒に映っている写真が。由美子は弟と4か月違いの同い年だった。浩一の父と守の若いころの写真も。守「ホントは許せないよね。僕のこと。僕も自分のこと許せないでいる。この３０年ずっと・・・」。浩一「そんな昔の話より，結婚式はいつなんですか」。知らないという守。父親失格の自分は出席できないと。 　レストラン。隆と晃は弁護士を交えて，浩一の詐欺を立証する証拠を確認していた。あとは晃の証言のみ。晃「一ノ瀬は逮捕されて罪を償う。でもオレは。オレの30年前の罪は，どう償ったらいいんだろうな・・・」。亡くなったOLの両親はすでに亡くなっており，兄妹もいない。謝罪する家族がいない。晃「謝ることもできないか・・・」。隆「過去のことよりまずは今だ。一ノ瀬を逮捕できるかは，兄さんにかかっているんだ」。晃「わかってる。一ノ瀬は，オレが必ず何とかする」。六車が興三のところにやってきた。ケガをした足はまだ包帯がされたまま。興三は，録音自体は隆が何とかするという。興三「一ノ瀬の逮捕も近い」。六車「このまま警察に任せるんですか」。興三「いや。そうもいかんだろうな。いずれ指示を出す。それまで完全に治しておけ」。六車「あの男，危険ですから」。病院。楓のところに晃が来る。楓「心配しないで私傷ついてないから。ホントに好きだったわけじゃない。結婚だって本気で考えてたわけじゃないから」。晃「お前，嘘下手だよな。警察に突き出す，一ノ瀬のこと。隆がな，詐欺の証拠集めてくれて。あとはオレの証言があれば逮捕できるって。オレな，許せないんだよ。お前にこんなつらい思いさせて。あいつとは，オレがちゃんとかたをつける。元はオレが原因だからな。だからお前も，あいつのことは忘れてくれ，全部。きっぱり」。 　結婚式場での打ち合わせを終えた由美子と山木。そこに”一宮”がやってくる。実は自分の結婚式も近いのだという。３人で話す。振り込め詐欺の話を山木も知った。由美子は，守が自分たちを捨てた，物心ついたころから守は家にはいなかったという。誕生日もクリスマスもお正月も。だから守とは会いたがらない。山木「ホントに捨てたなら，振り込め詐欺なんかに引っかかるかな」。”一宮”「私もそう思います」。山木が由美子を説得する。宮森わかばの家。守は，浩一に由美子と会うことになったと嬉しそうに伝える。婚約者とその両親と一緒に会う。守「どんな格好をしていったらいいのかな」と相談してくる。２人でお店へ。いろいろなスーツを試着。それを次々と写真に収めた。そのあと浩一はバー８００に行き，カズキに合成写真を作るように依頼する。以前，五十嵐を陥れるときに使った売春ツアーの写真。五十嵐の顔を「この男の顔に」と，さっき撮った守の写真を収めたスマホをテーブルへ。写真を自分のパソコンに入れるようにと，パソコンもその場で開く。すると，百田が浩一にイスを直すのを手伝ってくれといいだす。浩一が応じると，百田はカズキに目配せ。何かをたくらんでいるよう。合成写真が出来上がる。よく見ればすぐばれるものだが，「第一印象が大事だから」と浩一。 　病院。ベンチに１人座っている楓のところに、ハルカがやってきた。ハルカ「してないんだ。指輪のペンダント」。楓「捨てました。あなたも彼の詐欺仲間なんでしょ」。ハルカ「まあね。だから元カノも嘘だったの。ただの相棒・・・嫌いなんだよね，今の浩一。日本に戻ってきたのは，過去を清算するためだと思ってた。だから手伝った。だけど浩一は，復讐するたびに過去にとらわれている感じ。お世話になった人のことまでもハメようとしていて」。楓「それでどうして私に会いに？」。ハルカ「説得してもらえないかな。もうやめろって・・・わかってる。変なこと頼んでるのは。でもしょうがないじゃん。今の浩一のことどうにかできそうな人，他にいないんだもん」。家に帰った楓。実はあの指輪のペンダントはまだ家に置いてあった。夜の河原。楓は浩一を呼び出した。楓「答えがわかったから，伝えとこうと思って」。病院のまで雨に打たれ，熱を出した時に，浩一はうなされながら「どうすればよかった。嘘をつく以外」と言っていた。その答え。楓「五十嵐先生に会ったの。先生言ってた。３０年前，あなたが嘘つかなかったら，あなたも殺されてたろうって。許せないんでしょ，あの時の自分を。大人たちに負けて嘘をついてしまった自分を。許してあげて。あの時のあなたは正しいことをして。父や兄を許してほしいなんて言わない。でも，自分のことは許してあげて。9歳の千葉陽一君のことだけを。あの嘘があなたを救ったんだから。それに，私も一瞬だけ，あなたの嘘に救われた・・・どうせなら，一生騙してほしかった」。浩一「晃さん，どうしてんの」。楓「さあ。会ってないから」。浩一「ああそう。下手だね，嘘」と言って去っていく。バー８００の前。晃が見張っている。浩一は，事務所でカズキが合成した写真を見ていた。A４サイズにプリントアウトされている。それを封筒にしまった。 　宮森わかばの家。守がスーツを着て出かけようとしている。浩一は，緊張している守を励まし，送り出す。そのあと，あのアルバムを見ていた。浩一・父親・弟と由美子が一緒に映っている写真。その裏を見たときに，浩一の表情が変わった。あの写真が入った封筒を手に，浩一はホテルに向かっていた。そこのホテルのラウンジで，守は久しぶりに由美子と会う。そして婚約者の両親と対面する。その様子を離れた所から見ている浩一。そのころ，浩一の事務所に何者かが忍び込み，何かを探していた。守たちの話を見守っていた浩一は，意を決して席を立つ。守たちのところへ行くと，封筒から写真を取り出しばらまく。騒然とする面々・・・というこはできなかった。守たちは楽しそうに話をしている。黙ってその場を去っていこうとする。守はその後姿を見つけ，後を追った。守に呼び止められ，浩一は足を止める。守「どうしてここに」。浩一は写真を見せ，「これをばらまいてやろうと思ってた。縁談ぶち壊して，二度と娘に会えなくしてやろうと思ってた」。守「なぜやめたの。僕は君のお父さんの信用裏切った。君には３０年嘘をつき続けた。許されなくて当たり前だよ。娘を守りたかったなんて言い訳だよ。ホントは怖かった。僕も殺されるんじゃないかって」。浩一「でもいてくれた。誕生日にオレのそばに。クリスマスも，正月も」。守「だって知ってたから，僕は。君が嘘つきなんかじゃないって。僕だけは知ってたのに・・・」。由美子もやってきた。浩一「あなたのお父さん，ずっと僕に嘘をついてた。ホントは帰りたい家があったのに，そんなこと一度も言わなかった。さっき知ったんだけど，僕と由美子さん，誕生日が同じなんです」。あの写真の裏側には，由美子の誕生日がかかれていたのだった。浩一「僕も３月１５日生まれ・・・家族全員亡くして。ひとりぼっちで。養護施設で誰ともなじめなかった僕の誕生日を守さんが祝ってくれた・・・ホントは由美子さんのところに帰りたかったはずなのに。僕の父の友人だからって。それだけの理由で。でも，守さんの嘘にオレは救われた」。由美子は守に「なんで言ってくれなかったの」と尋ねる。浩一「あなたたちを巻き込みたくなかったんだと思います。オレの家族，殺されたんで。長い間，お父さんを借りてすみませんでした」と頭を下げた。守「浩一君・・・」。浩一「もうオレ大丈夫なんで」と，涙をこらえながら笑顔を作る。そして背中を向けて歩き出す。由美子「戻ろう，お父さん」。守「ありがとう，由美子」。2人が歩きだす。浩一は振り返り，二人の背中を見送る。ハルカが「お疲れ」と声をかける。浩一「見てたのかよ・・・終わりにする。これ終わったら，またタイへ帰るか？全然別な国行って新しい詐欺考えるのも面白いけどな」。ハルカ「いいね」。浩一「全部終わりだ。二科興三，あいつで終わり」。 　ニシナコーポレーション。手術支援ロボットの開発もめどがつく。隆「情報流出だけは気をつけてくれ」。そこへ浩一がやってきた。２人きりで話をする。浩一「１２時間以内だ。謝罪会見を12時間以内に開かせろ」。隆「応じなければ」。浩一「世界中にぶちまけるよ。３０年前の会長の罪を。じゃあ，会長によろしく」。事務所に戻った浩一。録音ファイルを確認。浩一「12時間以内にこれを流す」。ハルカ「向こうが会見したら？」。浩一「できるわけがない。謝罪なんてするわけがない。二科はそういう男だ。これと一緒に粉飾決済のことも書きたてる。これで終わりだ，ニシナコーポレーションは」。そのニシナコーポレーションでは，興三と隆が相談していた。隆は，録音は消せるし，粉飾決済のことははったりだろうと。隆「会見は必要ありません」。興三「いや，開こう。会見しよう。あいつの望み通り」。そういいながら笑みを浮かべている。そして警察署の前に，晃がいる。 　浩一は，１人で事務所にいた。30年前のことを思い出していた。自分の誕生日，あの夜のこと・・・。そこへハルカが飛び込んできた。「開くって！会見！」。ネットで生中継。テレビカメラも入っている。パソコンを開くと，会見場が映し出されていた。２人で画面を凝視している。隆も，楓も，それぞれの場所で見守っていた。車いすに乗ったままの興三が会見場に入ってくる。いよいよ会見が開かれる。興三「今日集まっていただいたのは，どうしても直接，私の口から謝罪したいことがありまして。私は，私の罪を，心から悔いています。その罪とは，私がまだ社長だったころのこと。海外の医療機器メーカーに押され，ニシナコーポレーションは，赤字経営に陥った。そして私は嘘をついた。銀行からの融資がストップするのを恐れ，経常損益を操作させた。粉飾決済を指示を出したんです・・・これは当時，指示を出した私だけの罪であって，現社長には全く責任はない。なぜこの事実を今公表したか。それはこの件で，ある人物から脅迫を受けてるからです。相手は自称経営コンサルタントの男。脅迫だけではない。彼は，系列会社の二科カテーテルから2000万をだまし取った」。そのころ晃は，警察署で証言をしている。警察が動き出す。興三「この件は，警察に任せました。逮捕も近いでしょう」。ハルカ「浩一・・・」。興三「私は，今日ここに己の罪を告白し，責任をとって会長職を辞するとともに，現社長の新プロジェクトが始動したことをご報告します」。 　浩一「そっちがその気なら」と，音声ファイルを送信しようとしたが，目の前でファイルが消去される。浩一「遠隔操作されてる」。クラウドに保存したものも消えていた。浩一「こんなことができるのは」。浩一の頭に浮かんだのはカズキの顔。百田とカズキは，ニシナコーポレーションの社長室に。隆「ホントに全部消去したんだろうな」。ハルカ「カズキが・・・」。浩一が自分のスマホも見てみると，そこにあったはずのファイルがやはりない。浩一「あの時か」。あのイスを直した時。マスターテープを隠していた場所を見てみると，そのテープ自体もない。百田が忍び込んで見つけ出していたのだった。百田は隆に，もし音声データが残っていれば，すぐに浩一はネットにアップするだろうと。１時間待って何起きなければ，隆はお金を払うと約束する。百田は，カズキを先に返す。カズキは，トイレに行くふりをして，開発研究室へ。以前，ハルカがゲットした晃のIDカードで入室。そのころ，浩一はバー８００へ。誰もいない。外にパトカーがやってくる。警察はまず浩一の事務所へ。誰もいないとわかると，店へ。そこにはハルカだけしかいない。店内をくまなく探す。倉庫ものぞかれるが，気づかずに扉が閉められた。実は，倉庫の物陰に浩一が隠れていた。警察が扉を閉め安心したのか，体が動き，スプーンが落ちる。その音に気づかれてしまった。慌てて逃げだす浩一。次々と警察の人間をかわし外に出て行った。追いかけてくる警察。そしてその後ろには六車の車も。

＜第３話＞ 　キスをした浩一と楓。どうふるまったらいいか困っているような楓。その時，病院からの呼び出しが。ぎこちない感じのまま別れる２人。興三と隆が話し合っている。五十嵐・六反田と次々と問題が起こる。隆「おかしいと思いませんか」。興三「千葉陽一が現れたのか」。隆「千葉？」。興三「30年前生き残った少年だ」。七尾が，千葉陽一はオーストラリアで生活していると，例のブログを見せる。隆「もう一度調べてみます」。まだ千葉陽一と一ノ瀬浩一が同一人物とはわかっていない。もし，３０年前の事件が明るみになったら，今のニシナコーポレーションには耐える力がないという。 　公園に座る浩一。そのそばの広場では，刑事の三輪が子供たちに空手を教えていた。浩一のそばを一台の自転車が通り過ぎる。三輪の耳に「忘れものですよ」という声が聞こえてきた。自転車に乗った男が，ベンチにカバンを置いていってしまった。三輪は中を確認する。そこには爆弾のような物が。時限装置が残り30秒を告げている。近くにいる人たちを慌てて避難させる。そして，カバンを持ち，噴水のところまで走る。時間ギリギリ，カバンを噴水の中に放り投げた。水の中で爆発。三輪の活躍で，被害者は１人も出なかった。周りにいた人たちは，一斉に三輪を称賛する。写真や動画をとる人たちもいた。バー８００。三輪が爆発物を適切に処理し，被害者が出なかったという動画がネットに上がっていると話している。テレビのニュースにもなっている。世間は三輪をヒーロー扱い。浩一「一度ヒーロー扱いされればされるほど，不祥事が出たときにたたかれる。人はほめた後にたたくの好きだから」。同じニュースを隆も見ていた。 　浩一とハルカは，三輪が昔住んでいた地域で聞き込みをする。しかし，三輪の評判は良く，まったく不正は見られない。浩一「傷のない人生なんてあり得ない。心の隙間さえ見つければ，あとはそこに入りこむだけだ」。ハルカは，楓とのことが気になっている。浩一は，あえて楓とは連絡を絶っているという。向こうから連絡をしてくるのを待つ。そうすれば一歩前進。ふと立ち止まる浩一「昔，住んでいた。オレも，この街に」。弟と一緒に遊んだ思い出の公園に足を踏み入れる。思い出が鮮明によみがえる。そして嘘の証言をさせられたことも。浩一「１番にくいかもな。９歳のオレに，嘘の証言をさせた。父親が犯人だと言わせた。あいつだけはこの手で直接破滅させたい。みじめに泣き叫ぶ姿をこの目で見たい」。清廉潔白なわけはない。絶対に付け入る隙はあるはずだと。とある墓地に２人は向かう。墓場には一族の歴史が刻まれており，意外な情報が含まれている。三輪家のお墓を見つける。そこには昭和６３年に１歳で亡くなった「沙織」という名前が刻まれていた。浩一「使えるな，これ。今度はあんたが地獄を見る番だ。刑事さん」。 　三輪がバス停でバスを待っていると，近くで夫婦らしい男女が争っている。その男女は，浩一とハルカ。２人は娘の「さおり」をどちらが引き取るかということで争っている。「さおり」という名前に敏感に反応した三輪。仲裁に入る。三輪は，浩一を取り押さえ，ハルカは逃げてしまう。三輪は，２人きりになると浩一の話を聞く。２人で居酒屋へ。浩一は，三輪の前では＜一色祐一＞と名乗った。１歳になる娘の「さおり」がかわいいという浩一。三輪は，同じ名前の娘がいると。浩一は，スマホで写真を見せ，娘の漢字を教える。三輪は，偶然にも自分の娘と字も同じだと。浩一「今幾つなんですか」。三輪「１歳の時に亡くなった。病気でな。３０年前の話だ」。意気投合し，酔っぱらった２人。浩一は，家に帰っても１人だからと道端で寝ると騒ぐ。三輪は，浩一を家に連れていく。朝，浩一が目覚めると，三輪とその妻が優しく迎えてくれていた。三輪は，ケータイをなくしたと，ずっとカバンの中を探している。バー８００。カズキが，三輪のケータイを持っており「高く売れるだろうな」と。実は，居酒屋で後ろの席にいて，そっとケータイを盗んでいた。百田は「浩一に頼まれたとおりにしろよ」と注意。 　三輪は上司に呼び出される。なくしたケータイがそこにあった。拾い主が，新聞社に送った。中の写真を見て，ネットに拡散し，さらにマスコミにも伝えたと。そこに入っていたのは，少年たちの着替えの様子を隠し撮りした写真。三輪には全く身に覚えがなかった。三輪の自宅の前も，マスコミが大量に押しかけ大騒ぎになっていた。爆弾事件も自作自演じゃないかとまで言われている。ヒーローが一瞬で悪者に。ニュースを見ていた隆「次の標的か」。三輪が家に帰ると，浩一がいた。妻によると，浩一は心配してきてくれたと。マスコミも追っ払ってくれたという。三輪「何が起きているのかわからない」という。ケータイは確かに自分のものだけれど，写真は知らない。仕事がら恨まれることは多い。浩一は，ケータイやデータに詳しい人物が犯人ではないかと。去年捕まえたストーカーが該当する。浩一「探しましょう，犯人。僕も手伝います。手伝わせてください」。すると玄関のチャイムが鳴る。あの隆がやってきていた。警戒する浩一。隆は，３０年前のことで話がしたいというが，三輪は「帰ってくれ！二科家とは二度とか変わりたくないんだ」。隆は，玄関に男物の靴を見つける。隆「お客さんでしたか」と帰っていく。四谷が待っている。隆「一ノ瀬が来ているのかと思った。汚れた安物の靴はく男じゃない。人違いかな」。 　晃と楓がカフェで待ち合わせしていた。楓が，晃に相談があると。楓「どう思う？一ノ瀬さんのこと」。その夜。浩一がレストランに行くと楓が待っていた。楓から呼び出し。そこには晃の姿もあった。楓が相談したらついてきてしまったと。晃「どう思ってる？妹のこと」。仕事ばかりで男の話をしたことがない楓なので，浩一のことで相談してきたことは珍しいと。浩一「オレも相談したかったんです，楓先生のこと。オレじゃ釣り合い取れないし。財産目当てだと思われるの嫌だけど・・・気持ちはごまかせなくて」。晃「好きになった？」。浩一「はい。本気で」。刺された後，病室で目が覚め，最初に楓の顔を見たときにそう思った。理由なんかない。楓が「私のことなんか何にも・・・」というと，浩一は「何も知らないから一生かけて知りたい。結婚までちゃんと考えてつき合いたい」。真剣に言うその言葉を聞いて晃は「やっぱり信頼できる男だ」と嬉しそう。 　バー８００。ハルカが寂しそうにお酒を飲んでいる。浩一は，楓とデート中と。百田「このまま二科家の身内になっちゃったりして」。その言葉にいらだつハルカ。百田「もしかして浩一のこと好きなの？」というが，速攻で否定。ハルカは，浩一との関係を語りだす。最初は，ハルカは浩一に騙されていた。不動産詐欺。日本を捨ててタイにやってきたハルカ。バンコク中のホテルを探し回り，浩一を見つけた。ハルカは，浩一にプロの騙し方を教えてほしいという。父は投資話に騙され，母は男に騙された。ハルカ「いやなの。騙される人生なんか。そっちに連れてって。だます側の人生に」。浩一は，ハルカにとって，元師匠で今は相棒。ハルカ「この関係がベストだから，変えるつもりはない。今以上にも以下にもね」。 　三輪家。保護者が押し寄せ，空手教室をやめると。疑いが晴れるまでは子供たちを任せられない。警察署内でも，周りの人間は白い目で見ている。警察署を出ると，そこには浩一の姿が。２人で夜の街へ。以前三輪は，別れた女をストーカーして重傷を負わせた男を逮捕した。その男が１か月前に出所していた。浩一「今日は朝までねばりましょう。早く潔白を証明しないと」。２人でその人物のアパートをはる。浩一＜人から判断力を奪う一番の方法は眠らせないこと＞。一方，隆は四谷に三輪のことを調べさせたが，毎晩知人と出かけているということのみわかった。相手はわからない。四谷は，別件として，写真を差し出す。そこに映っているのは，楓が浩一と一緒に楽しそうに過ごしている姿。 　連日の張り込み。あきらめかける三輪。浩一は「ダメですよ，あきらめちゃ。報いを受けさせないと・・・オレ，子供の頃ひどい嘘をついたことがあるんです。絶対ついちゃいけない嘘だったのに」。今妻子に逃げられたのは，あの時の報いなのかもと。三輪「報いか・・・」。浩一＜判断力も体力もなくなった極限状態を狙う＞。浩一と三輪が夜道を歩いていると，２人連れが後をつけてきた。三輪は２人組に襲い掛かった。２人組は写真を撮ろうとする。それも阻止しようとする三輪。実はその２人組は，週刊誌の記者だった。さらに立場が悪くなる。浩一は，三輪を自宅に連れて帰る。妻にも暴行の件を伝える。妻が対応を考えても相手にしない三輪。浩一「疲れてるんですよ」。今まで怒鳴ったこともないのに、怒ってばかり。浩一「２～３日１人にした方がいいかもしれません」。妻には実家で休むように伝えたと，浩一は三輪に話す。これから大変になるだろうから。 　三輪の告白。「私も昔，罪を犯したことがある。ある捜査を妨害して，証拠を隠ぺいした。これがその報いなのかもしれないな」。やっと３０年前のことを本人から聞き出せた。仕事に行くという三輪に，「今日ぐらい休めばいいのに」といいながらほくそ笑む浩一。浩一と三輪が街に出ていく。すでに疲れ切った三輪は，もうろうとしていた。浩一は，休憩を勧め，２階においしいコーヒーの店があるから先にいっていてくれと言う。エスカレーターで２階に上がる三輪。その前にはハルカの姿。そして，カズキが隣を通り過ぎる。その時カバンにケータイを忍ばせて行った。ハルカは，２階に行くと警備員に盗撮されたと訴える。盗撮した犯人は三輪だと。三輪のカバンから出てきたケータイにしっかり写真が写っていた。三輪は「なぜだ。なぜ君がこんなことを・・・君は一色君の奥さんだろ？」。もうろうとしながらも，三輪はハルカの顔を覚えていた。髪型も服装も全く違っていたのに。それでも，ハルカは訴え続けた。三輪「一色君はどこだ・・・私は盗撮なんかやってない」。警備員は三輪に「嘘をついちゃいけないよ，あんた」。その言葉に，はっと気づく。浩一を必死に探す。好奇の目にさらされながら。多くの人の中から浩一の姿を見つける。お互いの目が合う。その時.全てが結びついた三輪。三輪「あの時の」。警察官がやってきて，三輪は逃げ出していく。浩一の目からは一筋の涙が。３０年前とと同じように。 　線路上の橋にやってきた三輪。しばらく下を眺めていたが，欄干を超えようとする。三輪を止めたのは隆。隆「自殺なんて相手の思うつぼだ。あなたを救えるかもしれません」と連れていく。隆は，３０年前の事件の関係者が相次いで狙われていることを教える。たぶん，三輪の件もそうだろうと。隆は，社長を引き継ぐ際に，３０年前のことをすべて聞いていた。三輪「許せるのか，会長たちを」。隆「人には背負わなければならない業がある」。父の罪を引き継いだと。隆「一ノ瀬浩一という男をご存知ですか」。三輪「いや」。隆は三輪に浩一の写真を見せた。 　ニシナコーポレーション。浩一が隆に呼び出されてやってきた。楓の姿もあった。隆「君が現れてから次々とおかしなことが起きた・・・兄や楓に近づいたのも，何か裏があるんじゃないか」。浩一「裏？なぜ僕がそんなことを」。隆「わからない。だから今から聞かせてもらおう」。その場に三輪がやってきた。嘘の名前で浩一が三輪に近づいただろうという隆。三輪は「長年，刑事の仕事をしてきた。人の顔は忘れない。たとえ服装を変え，名を変えようとも・・・この人には会ったこともない。今初めて会った」。隆「なぜそんな。あなたがこの騒動に巻き込まれたのは，全てこの男の嘘のせいじゃないですか」。三輪「いやこの騒動は，私自身が招いたことだ・・・報いだよ。過去に犯した罪の」。３０年前。娘にはうまれながらに心臓疾患があり，心臓移植しか生きる道はなかった。アメリカで手術を受けられるよう手配をしてくれるという人物が現れ，娘を救うために，罪を犯した。結局手術は間に合わず，娘は亡くなってしまった。浩一に語りかけるように話す三輪。「私は大きな罪を犯した。取返しがつかない罪を。だからこれは報いなんだよ。悪かったね。人違いで呼び出されて」。浩一「いいえ」。三輪「本当に申し訳なかった」と頭を深々と下げる。浩一「誤解が解けて良かったです。オレ，嘘つきって呼ばれるのが大っ嫌いだから」。浩一はその場を去っていく。隆「これで終わりだと思うな」。あとを追いかけるように出ていく楓。 　浩一に追いついた楓「ごめんね。兄が失礼なことを。もう家族の縁なんか切りたい」。浩一「縁を切る？簡単に言うなよ！会いたくても二度と家族に会えない。ずっと１人でだれにも頼れない。それがどういうことかわかるか。縁を切るなんて簡単に言うな！・・・ごめん。つい妹のこと思いだしちゃって」。５歳で亡くなったのが妹ということに。浩一「だからわかる気がするんだ。隆さんの気持ち。大事な妹を，突然現れた素性のわからない男に渡したくないって。隆さんのこと，あんまり悪く言わないでほしい。経営者は孤独だ。虚勢もはらなきゃ。でも悪い人じゃない。そう思う。大丈夫。時間をかけて信頼を得て見せるから」。楓「ありがとう」。浩一「まだ時間ある？」。２人で見晴らしのいい公園へ。寒いからと浩一はコートを楓にかける。楓は自分のマフラーを浩一と一緒にかける。偽物の幸せ。そのころ，隆は「一ノ瀬。千葉陽一とどんな関係がある」。まだ同一人物と気づかない。興三は，七尾から，三輪も陥れられたと報告を受ける。興三「何かあったら，隆に汚れ仕事を押し付けるわけにはいかん。３０年前の事件は私が終わらせんとな」と覚悟を決める。宮森わかば園。ハルカが，百田が「これで終わりか」と言っていたと浩一に告げる。浩一のケータイが鳴る。浩一「終わりじゃないようやく始まったところだ」。電話の言相手は楓。すでに呼び捨ての関係に。隆は，五十嵐の病室を訪れる。「この男があなたの前に現れませんでしたか」と浩一の写真を見せる。隆「知りたいです。この男の正体を」。