罠の戦争

＜第１話＞

　休日をキャンプをしながら楽しく過ごす鷲津家。リビングには、家族で過ごした思い出の写真が飾ってある。亨は、次の休み、キャンプに行けなくなったが、また必ず行こうと泰生と約束をする。
　亨は、失言で話題になっている犬飼大臣の秘書。今夜は大臣就任後初のパーティーが行われていた。忙しく動き回る亨。パーティー会場の受付には、なにかありそうな青年が来ていた。亨が声をかけるが、その時、犬飼が会場に到着する。亨には、大臣以外にあちこち気を遣うところがある。あの青年が大臣に近づき、手にした卵をぶつける…と、青年は自分の行動を頭に思い浮かべていた。しかし、そのタイミングで他の青年が突如現れ、手に持っていたビールを大臣に浴びせかける・・・のを、亨が代わりに浴びた。わけありげな青年は、カバンからタオルを取り出し、亨に差し出す。その時、カバンから履歴書が落ちた。彼の名は、蛯沢。亨「仕事探してるの？今日は見学していくといい」。蛍原に蛯沢を任せ、慌ただしく次の対応へとその場を去った。蛯沢は、近くのテーブルに、持っていた卵をそっと置いた。亨は、その姿を見逃していなかった。
　その頃、泰生が事故に遭っていた。
　犬飼は、人付き合いの良さと土下座でここまで上り詰めた男。そして、一度会った関係者のことは絶対に忘れない・・・のは、亨。亨のフォローのおかげで、パーティー出席者とも歓談をすることが出来ていた。パーティー会場には、鶴巻幹事長がやってきた。民政党のNo.２。つまり、この国のNo.２。実際は、総理より力があるかも知れない。鶴巻幹事長は、犬飼に失言を注意する。その尻拭いを、犬飼は亨に頼み込んでいた。その時、可南子から連絡が。泰生が事故に遭い、意識がない。詳しい話も聞けず、総理が到着したため、対応に追われる。竜崎総理は、鶴巻幹事長に、犬飼が今回の内閣のアキレス腱にならないよう犬飼を指導して欲しいと頼む。
　亨は、合間をぬって病院に向かう。泰生は、頭を打って危険な状態。歩道橋から落ちたという。救急車を呼んでくれた人が「突き落とされた」と証言していた。可南子は、今日はそばにいて欲しいと懇願するが、どうしても仕事があり難しい。亨は「大丈夫だから」と繰り返し言いながら、可南子を抱きしめる。
　歩きながらも、電話であちこち連絡取る亨。事務所に入ると、的確に指示を出していく。虻川のパワハラの対応まで。そこへ、蛯沢がスーツ姿でやってきた。今日からこの事務所で働く。亨は「秘書の”秘”は、秘密の”秘”。仕事で見聞きしたことは、絶対に外部に漏らさないこと」と伝える。亨は、鷹野から犬飼がヤバいとこっそり教えてもらった。「バカ息子」の俊介が、地元の建設会社から不正な金を受け取っていると言う。失言の記事を書いた熊谷という記者が、続報で記事にしたいと伝えてきた。鷹野は、犬飼になぜそこまで仕えられるのかという。「本当に途方に暮れると、動けなくなるんだ」と亨。その状態になったとき、手を差し伸べてくれたのは犬飼だけだった。今の暮らしが出来ているのは犬飼のおかげ。そう思っている亨は、金の話はなんとかすると。犬飼にそのことを告げると、対処しているという。しかし、結局問題は全部「なんとかしてくれ」と、亨に丸投げ。
　蛍原は、蛯沢に亨のすごさを教える。議員のために頭を下げて、面倒くさいことは全てやっているのに、家族サービスも怠らない。亨だけは１日30時間あるんじゃないかと言うぐらい働く。亨に、可南子から「医者から大事な話がある」と連絡が来ているのに、犬飼はつまらないことで亨を足止めさせる。虻川も仕事を押しつける。朝は残業できないと宣言していたのに、結局夜遅くまで仕事をする羽目になった。病院に急いで向かうと、警察が来ていた。今は、事故と事件の両面で捜査している。通報者は「突き落とされた」と言っていたが、それは他の目撃者がそう言っていただけで、その人自体は見つかっていなかった。泰生の意識は戻っていない。障害が残るかも知れないと伝えられていた。泣きじゃくる可南子。
　突然、犬飼がお見舞いにやってきた。「出来ることは何でもする」と、フルーツのカゴと見舞金を渡す。そして、犬飼は、亨を中庭に連れ出し、「事故だ。泰生君が誤って落ちた。不幸な事故だった。そういうことにしてくれ」。亨「誰に頼まれたんですか」。伝言ゲームで自分のところに来たので、誰が頼んだのかは知らないとしらを切る。亨「いくら大臣の指示でも・・・」。すると、犬飼は「虻川聞いたぞ。金を着服してるって？」。地元の建設会社から金を受け取っているのは亨・・・そういうシナリオができあがっていた。パーティー会場で挨拶しているところを、虻川の指示で貝沼が写真に収めていた。それを、利用されてしまった。亨「俊介さんの疑惑を、私にかぶせようと」。犬飼は、いつまでもかばってやれない「お前次第だ。秘書の代わりはいくらでもいるんだよ」。そして、土下座をする。最高のドクターの治療を受けられるようにし、お金の援助もすると。亨は「わかりました」と言うが・・・。犬飼「これからも頼んだ。頼りにしてるぞ」。犬飼が虻川と車に乗り込む。虻川「鷲津なんて、ちょろいです」。そんな会話を、運転手が聞いていた。
　犬飼との会話を聞いていた可南子。亨の言動が許せなかった。可南子「事故じゃない。突き落とされた。今度だけは許せない・・・離婚して」。「離婚しよう」・・・最後の言葉に重なるように、亨も言った。亨「その方がオレも動きやすい。助けてもらった恩があるから、尽くしてきた。なのに、なめられたもんだよな。力のあるヤツはどんな要求も通るのか。弱いヤツはどんなことでも飲み込めというのか。ふざけるな！あいつらに思い知らせてやる。危ない橋を渡る。だから離婚してくれ」。亨の強い意思を理解した可南子は「あんなこと飲み込んじゃだめ。心が死んだら救えない。どんなリスクがあっても戦うの。2人で一緒に」。亨「犬飼を大臣から引きずりおろす。二度と政界に戻って来れないぐらいにズタズタにしてやる。犯人も見つけて、泰生以上の苦しみを味あわせてやる」。可南子「そのためなら私も何だってする」。亨「踏みつけられたらどれだけ痛いか、思い知らせてやる」。
　虻川は、あいかわらず蛍原に、セクハラ・パワハラをしている。抗議をしても、パワハラで返してくる。蛍原は、マスコミにリークしようと思ったが、つぶされるだけ。この仕事が好きだったが、辞め時かも知れないと言い始めた。それを聞いた亨は「早すぎるよ。諦めるの早いよ」。蛍原「何か変わります？永田町の人たちは変わらない」と諦めてしまっている。亨「秘書なんてただの駒だから。でもだからこそ、弱いヤツには弱いなりの戦い方がある」。亨は、熊谷と接触する。「おもしろい記事書けそうなチャンス興味あります？」と。秘書のセクハラ・パワハラでは、それほどの記事にはならない。しかし、女性大臣も絡んだら・・・。鴨井大臣は、絶対にセクハラ・パワハラを許さない。しかも、鶴巻幹事長のお気に入り。
　蛍原は、虻川を呼びだし、謝罪をしてほしいと言う。もちろん、そんなことは受け入れない虻川。蛍原につかみかかる。鴨井大臣が通りかかるが、その時はうまく逃れた。虻川は、わざと呼び出したんだろうと、さらにエスカレートする。亨と蛯沢も駆けつけるが、止まらない。そこへ、鴨井大臣が戻ってきた。実は、最初通り過ぎてから、亨と蛯沢が、鴨井大臣の近くで、聞こえるように、虻川がパワハラをしているので、様子を見に行くと話す。それで、鴨井大臣が現場に戻ってきたのだった。その様子を、熊谷が写真に収め、記事にする。
　鶴巻幹事長に謝る犬飼だったが「罠なんです」と。しかし、鶴巻幹事長は「釈明会見を開け」と命ずるだけ。亨は、可南子と泰生に向かって「まだまだこれからだ。ネタはいくらでもある。犯人見つけ出すからな」。釈明会見の原稿は、亨に任される。鶴巻幹事長が納得する内容にしろと。虻川は、蛍原が仕組んだことで、蛍原をすぐに首に、というが、亨はマスコミに知られたら大変だと。すると、犬飼は、辞めさせないし、待遇も改善すると約束した。
　亨・蛍原・蛯沢が集まり、相談している。亨は、悪いのは虻川だが、見過ごしてきた自分も同罪だと。しかし、蛍原はちゃんと守ってくれているを知っていた。亨「ようやくわかった。力のある連中は、何してもいいと思っている。そんな人間が永田町にはたくさんいる」。蛍原「何かあったんですか」。今回のことを打ち明けた。蛍原「あんなに尽くしているのに」。亨「そいつら全員つぶしたい。力を貸してくれないか」。蛍原は、自分はいいが、入ったばかりの蛯沢を巻き込むのはどうかと心配する。犬飼に告げ口したら・・・。すると、亨は「君は言わない」。取り出した卵を、蛯沢の額にぶつける。ゆで卵だった。あのパーティーの時の行動を見ていたのだった。亨「君も何かあるんだろ、犬飼大臣に」。
　釈明会見の前、亨は、一度犬飼に確認させた原稿を、一旦預かり、虻川に渡す。会見場で犬飼が読み始める・・・と、釈明どころか、ひどいセクハラ・パワハラの内容だった。何を言っても、火に油を注いでしまう。亨が、そっと原稿をすり替えていた。大勢の記者にもみくちゃにされている犬飼を、離れたところで見つめる亨だった。

＜第２話＞

　大勢の記者にもみくちゃにされている犬飼を、助け出す亨。原稿がすり替えられていた。亨が用意したものと違う。気づいたときには遅かった。そういう犬飼は、虻川がすり替えたんだろうと。最後に手渡したのは虻川だった。鶴巻幹事長は、犬飼を呼び出し「大臣にしたのが手違いだったかな？」と。鴨井は、亨に、次の選挙は危ないだろうと告げる。事務所では、苦情電話の対応に追われていた。虻川だけが、ふてくされた表情で何もしていない。虻川は、原稿のすり替えの犯人は蛍原だと思っている。ただし、蛍原１人ではムリ。裏で誰かが罠にはめようとしている、と考えていた。
　泰生の意識はまだ戻らない。このまま意識が戻らない状態が続く可能性もある。
　亨は、虻川に、蛯沢に仕事を教えて欲しいと頼む。早速、翌日地元に連れて行くという。その夜、亨・蛍原・蛯沢で相談。虻川は、亨のことを絶対疑う。そういうところは鋭い。虻川は、事務所の金庫番。大臣もよくわかっていない金の流れを把握している。表に出せないことも。だからクビにできない。全て、手描きの手帳に記録していた。亨はその手帳を探す。蛯沢には、虻川についているように指示する。亨「大臣をつぶすために、まずは虻川を排除する」。虻川の机の引き出しの鍵を、鍵屋に開けてもらうが、そこには手帳はなかった。
　翌日。地元に行くと、蛯沢に畑仕事の手伝いを任せ、虻川は車でどこかへ行ってしまう。蟹江によると、虻川は畑仕事の手伝いなどしたことはないという。蛯沢は、文句ひとつ言わず、汗を流しながら畑仕事を手伝った。亨は、事件のあった歩道橋をたずねていた。すぐそばの店に行き、話を聞いた。防犯カメラが設置されていたが、あの日の映像は警察に提出済み。有益な話も聞くことはできなかった。その姿を、虻川が見つめていた。亨はさらに、鷹野の元へ。つてを使って、捜査状況を探って欲しいと。虻川は、犬飼に亨の行動を報告。
　地元の事務所を探しても、手帳は見つからない。蛯沢は、亨と蛍原に兄の話をする。兄は、会社の経営のことで、犬飼に陳情した。なんとかしてくれると信じて、ムリに仕事をし、過労で倒れて亡くなってしまった。それなのに、兄宛に政治資金パーティーの招待状が届いた。それで、あの日会場に行ってみた。卵を投げつけてやろうと。少しは気分が晴れるんじゃないかと思った。そばにいれば、なにかするチャンスがあれば、と思って事務所に来た。亨について行けば、兄の弔いができそうだと。そして、蛯沢は、虻川が手帳を車で見ているのを見たと。
　地元の農協主催バーベキュー大会。犬飼は、亨に、事件のことを調べていることを責める。しかし亨は、通報してくれた人にお礼を言いたいがため、その人を探しているだけだと伝えた。亨の行動を、チェックしている虻川。会場には、猿岡建設の社長も来ていた。俊介と合流し、談笑している。亨は、２人の後をつけ、その姿を写真に収めた。そしてその姿を、虻川はしっかり見ていた。一方、犬飼は、個人の陳情はろくでもないのが多い。「善処します」と答えておけば、何もしなくても嘘をついたことにならない。そう言って笑っていた。怒りがこみ上げてくる蛯沢。蛍原は「怒り方間違えちゃダメ」と諭す。
　亨は、熊谷記者に連絡を取り、見せたい写真があると会う約束をする。虻川は、貝沼に、亨を見張るよう命令する。可南子は、家事をしながら、泰生との楽しい日々を思い浮かべていた。虻川に、貝沼から、亨が永田町に向かっていると連絡が入る。虻川は、蛯沢に運転をさせ、永田町に向かう。さらに、犬飼にも連絡を取る。貝沼は、亨と熊谷が会っているところを目撃する。虻川もやってきた。さらに、犬飼の姿も、蛯沢は、なんとか植物の話をして阻止しようとするが、うまくいかない。写真を渡すと、犬飼と虻川がやってくる。虻川「お前仕組んだな」。亨が熊谷に渡した写真は、野党第一党の女性党首のスキャンダル写真。犬飼がなんとかしろ、と命令したことだった。これでは記事にならないと、熊谷は拒否。しかし、熊谷は、虻川が編集長にネタを売り込んできたと。いざとなったら犬飼を潰せるネタがあると。犬飼は、虻川を呼び出す。亨「うまくいったな」。虻川に写真を撮っているところを目撃されてから、来るのはわかっていた。熊谷記者にも協力してもらい、虻川を罠にはめた。そして、亨は、蛯沢の機転は秘書に向いていると褒めた。亨「ありがとな。眞人」。蛯沢は、車の中に手帳はなかったと報告。
　亨が家に帰ると、可南子がベランダにいた。ここで、亨と泰生が、次のキャンプでは２人でご飯を作ると約束していた。可南子「私にもなにかさせて。ただ待っているだけはいや」。
　蛯沢が畑を手伝っていると、虻川が車で通り過ぎる。蛯沢「畑も手伝わないで、何しに来てるんですかね」。亨は、事務所で、虻川がネタを売ろうとしていたと、大きな声で噂話をしている。それを聞いた貝沼は、虻川に連絡をする。いつも通りに亨は仕事をこなすが、ひっきりなしに虻川から電話が入る。全て無視。焦り出す虻川は、亨を捜し回る。とうとう、マンションにまでやってきた。可南子が応対するが、亨がいるはずだと強引に中に入る。「大臣が事故っていったら事故なんだよ！」。しかし、そこにいたのは、熊谷記者。「不可解な転落事故と聞いてたけど、事件なんですか」。早速、記事にする熊谷記者。
　亨は、犬飼に、虻川が余計なことを言ってしまったが、犬飼が隠蔽に関わっていることは言っていないと。犬飼は、官邸に呼び出されたが、そこには竜崎首相と鶴巻幹事長が待ち構えていた。鶴巻幹事長は、辞任させると言うが、任命責任は竜崎首相にある。きちんと処理をしてほしいと。記者に囲まれた犬飼は、虻川のせいにする。虻川は、心身に問題を抱えており、今は休ませていると。事件のことは隠蔽していないと主張する。
　可南子は、ライブ配信で自分の気持ちを語った。「私は知りたい。目撃した方がいたら、教えてください」。この配信は、鴨井も鷹野も見ていた。廊下で鴨井は、亨に話しかける。鴨井「優秀な脳外科医を知ってます。必要なら紹介します。いつでも連絡して」。一方虻川は、夜の街で若者とケンカし、殴る蹴るの暴行を加えてしまう。通報され、警察のやっかいになる。その虻川を迎えに行ったのは亨。「もう面倒を見切れないと思いますよ、大臣も」。もし犯人を教えてくれたら、大臣に頼んでみると。虻川は「言うわけねぇだろ」と拒否。亨「今の質問は、あなたへのラストチャンスでした」。虻川は、全部亨が仕組んだことだとわかっている。全部犬飼に伝える。裏帳簿があるうちは、クビにならない。そう言い切った。亨は、つかみかかってきた虻川の腕を握りしめ、「従うと思った？オレなら怒らないって。いいなりにできるって。ふざけるな！泰生はもっとずっと痛い思いをしている。考えたこともないだろ。他人の痛みも、悔しさも。弱い者の痛み、せめて想像ぐらいしてみろよ」。そこへ、激怒した犬飼がやってきた。問題の裏帳簿は、亨が持っていた。実は、蛯沢が畑を手伝っていた蟹江が、小屋を貸していると教えてくれた。その小屋に行ってみると、その手帳が隠されていた。亨「あまり自分を賢いと思わない方がいいですよ」。手帳を見た犬飼「虻川、お前クビだ。よく見つけてくれたな、鷲津」。犬飼とともに、車に乗るのは、虻川ではなく、亨だった。１人置いて行かれる虻川。雨が降り出す。ずぶ濡れの虻川に、傘を差し出す蛍原。しかし、「あんたのせいで、眠れない夜がなんどあったか」と。虻川「オレが何したよ」。蛍原「わかんない？救いようがないよなぁ。自覚のないくずって」。そう言うと、虻川を置いて、さっさとその場を去る。
　鷹野によると、警察では事件として捜査していたが、上からの圧力で事故として扱うようになったという。事件の前、泰生は、バスの中でおばあさんを助けていた。席を譲らないパーカーの青年に、席を譲るように言う。舌打ちする青年。その後、泰生を追いかけるようにバスを降りていったと、おばあさんが証言してくれた。
　虻川が殴ったのは、蛯沢の地元の友だちだった。蛯沢「わかんなくなります。鷲津さん、急に表情が変わりますよね。やさしい人なのか、怖い人なのか」。蛍原「私にとっては、信じていい人かな」。病室に行った亨は「泰生が突き落とされたのは、オレのせいだ。絶対犯人見つけ出す。犬飼を徹底的に追い込んで、必ず全員に償わせるからな」。

＜第３話＞

　虻川が排除され、亨が政策秘書になった。大臣室にも顔を出すようになったが、政務秘書官の俊介は、ほとんど姿を見せないという。犬飼は「全て納得した上で、オレの元で働くと言うことでいいんだな」と念を押す。泰生のことも含めて。犯人捜しも認めない。亨は「大臣がさらに上に行けるよう、全力で働きます」と誠意を見せる。事務所では、貝沼が自分の立場を心配していた。「虻川派」と思われていないかと。「事務所一丸になって大臣を支えていこう」と亨。鴨井からは、脳外科医とリハビリ施設のリストが届けられた。社交辞令と思っていたが、ちゃんと届けてくれた。
　鶴巻幹事長の前には、民政党の幹部が集められていた。その中には鷹野の姿もある。鶴巻幹事長は、総選挙が早まりそうで、年内には選挙になるだろうと。鷹野は、亨を呼び出す。虻川の解雇を仕組んだのかと。何も言わない亨。総選挙が近いことを鷹野は伝えた。犬飼に変わる候補者はいないので、これ以上のスキャンダルは党としては困る。鷹野「何企んでる？」。何も答えない。病院に行った亨は、可南子に、犬飼のことを陥れるチャンスが来ると伝えた。選挙の前に、犬飼親子を暴く。力を奪って犯人を聞き出す。亨「お前の痛み、ちゃんとわからせてやるよ。あいつにも」と、泰生に約束する。
　亨たちは、虻川の手帳の内容を見直している。ちゃんとコピーを取っておいた。わかりにくく暗号っぽく書いてあるが、ヤバそうな情報ばかりとわかる。定期的に「示談」という文字が。なにかトラブルがあったのでは、と調べることに。さらに「猿岡」という文字も。大臣の車が大変なことになっているという知らせを受け、亨が駆けつけた。運転手の牛尾が、後部座席を掃除していた。一見して亨も状況を理解。犬飼がかんしゃくを起こして汚した。今回の原因は、親子ゲンカ。牛尾は、亨に泰生の容態を聞く。亨は「なぜ転落したのか」と、ずっと考えていると牛尾に言う。２人で食事。子どもの話。牛尾の息子は、薬学部へ進んだ。亨は、俊介の示談金の話を出してみる。牛尾によると、俊介は犬飼よりもカッとしやすく、問題を起こしている。亨は、示談が済んでない相手がいれば教えて欲しいと。それには答えず、仕事に向かう牛尾。
　亨は、熊谷記者と会った。写真と帳簿で記事が書けると言う熊谷だったが、亨はさらなる情報を伝える。猿岡建設が、２年前に、国立大学の改修工事に食い込んでいた。当時、犬飼は文科省の副大臣。犬飼が関係しているのではないか。亨「つぶすときは一気に徹底的にいかないと」。熊谷記者「気をつけてください。バレたら逆につぶされる。あなたは、大事な情報源なんですから」。蛍原と蛯沢は、一時期俊介が通っていた海岸へ行き、俊介の写真を手に聞き回る。その俊介は、事務所の金庫を開けようとしているが、どうやっても開かない。そこに亨が帰ってくる。100万円用意して欲しいという俊介に、用途を教えて欲しいと亨。俊介「虻さんならなんとかしてくれたのに」。
　蛍原と蛯沢は、海岸での事件を知っている人を見つけた。俊介のマナーが悪く、注意をしたら逆恨み。示談が成立しているので、被害者の証言は得られなかった。亨「似てるんだ。息子のケースと」。急に疑惑がわいてくる。あの日、俊介は、パーティーにかなり遅れてやってきた。亨「バスに乗るかな」。自分の息子が犯人なら、犬飼も必死にかばうのではないか。どんどん、俊介犯人説が３人の中で大きくなっていく。
　竜崎首相は、犬飼に「お願いした件は大丈夫なのか」とたずねる。この直前、犬飼が親子ゲンカを駐車場でしてしまい、車が動かせない。その時、竜崎首相の車が到着。首相のじゃまをする形になってしまった。そして、亨は牛尾から、俊介が先週、上野駅前で問題を起こしたと聞く。若い女性を突き飛ばし、ケガをさせた。亨「息子も逆恨みで突き落とされた。牛尾さん、なにか知ってますよね。俊介さんが犯人なんじゃ」。牛尾「知りません。私は何も」。首を横に振るだけの牛尾。
　蛍原と蛯沢は、上野駅前で、俊介の写真を手に聞き回る。亨は、まだ裏帳簿をチェックし続けていた。気になる部分がある。そこに鷹野がやってきた。鷹野を自分の家に連れて行く亨。政治家になる気はなかった鷹野が、政治家になったのは、好きな女の子が住む地域に道路を作ってあげたいと思ったことがきっかけ。それを聞いた可南子は、誰かの力になりたいと思うことが政治の始まりかも、と。ただ「難しいですよね。誰かの力になるって」。その時、可南子の中には、誰かがビルの屋上に立つ姿が浮かんでいた・・・。鷹野は、事務所を移ることを提案。きちんと勉強しているからもったいないと。しかし、亨は、失業して、病気の母の個室代を出してあげられなかったとき、犬飼がその分支払ってくれた。しかも亨のことを面倒見てくれると。そのおかげで、母の最期は安らかだった。亨「だから尽くしてきた。ずっとそうだと思っていた」。「過去形か。やっぱり犬飼さんを」と鷹野。それには答えない亨。
　鴨井にあった亨は、メモのお礼を言う。鴨井「社交辞令は嫌いだから」。DVや犯罪被害にあった女性の支援を行っている団体を支援している鴨井。亨は、可南子も似たような支援活動をしていたことがある。今回、事件と言っているのに事故として警察は処理しようとしている。被害者側の気持ちがよくわかったから、泰生が元気になったら支援する活動をしたいと言っている。そう伝える。鴨井は、その時には信頼できる団体を紹介すると約束した。可南子は、バス会社に出向き、事故の時の話を聞く。俊介の写真を見せるが、顔はわからないと。一方、上野駅での事件の被害者が見つかった。しかし、100万円もらえるから警察には行かないという。その俊介は、自分の車の洗車を、牛尾に押しつける。当たり前のことのように。
　その場に亨がやってくる。牛尾は「私にも運転手としてのプライドが・・・なんて。そんな安っぽいプライド、どうでもよくなった」と言い出す。犯人は俊介ではない。それだけは間違いない。あの事件の翌朝、犬飼は急に呼び出され、ホテルで話が終わった後、その後虻川に電話。「面倒なこと頼まれた。だが、でかい貸しになる」と言っていた。「かなわないよ、オレたちじゃ」。「試したことありますか？」と亨。「オレはありませんでした。だから、今、初めて試してる。弱い者なりの戦い方を」。どこのホテルに呼び出されたのか、牛尾にたずねる。苦しんだ結果、教えてくれた。そこに犬飼がやってくる。亨は、その場をごまかすが、疑いを持つ犬飼。
　亨の携帯に、なにか連絡が入った。一瞬、驚く亨。犬飼がやってきて、鶴巻幹事長の会合に付き合うことになった。入り口で待っているつもりだったが、中に入るよう促される。犬飼は、鶴巻幹事長他幹部の前で、亨を紹介する。鶴巻幹事長「いろいろ頼みますよ」。
　ここから、犬飼の反撃。長く面倒を見てきたのに、恩を仇で返す人間だと。実は、車の中で牛尾を脅して、何を話していたのか聞き出していた。その連絡が、先ほど亨の携帯に届いていたのだった。秘書のくせに、こそこそ嗅ぎまわって。「そんなに気に入らなかったか、オレの頼み事が。だったらクビだ。永田町から出て行け」。座っている亨の頭に、ワインを1本注いだ。微動だにしない亨。「こんな恩知らず、絶対に雇わないでください。いつ罠にかけられるかわかりませんから。鷲津、秘書として終わりだよ」と犬飼。鶴巻幹事長「野蛮だね。犬飼君は。鷲津君、頭を下げてやりなさい。代議士の顔を立ててやれ。それで全部水に流そう」。間に入るつもりだった鶴巻幹事長。何も言わない亨。鷹野が､亨を連れ出そうとするが、動かない亨。亨は語り出す。キャンプでゴミを捨てる人たちに、持ち帰るよう注意したことがあった。泰生が「お父さん、かっこいい」と言うと、間違っている人がいれば口に出せばいい。正しいと思うことすればいい。そんなことを言ったが、自分は大臣のために、間違ったことも見て見ぬふり。自分も手を汚してきた。それを守って、泰生は、逆恨みで突き落とされた。意識が戻らないかも知れないし、意識が戻っても歩けないかも。でもその程度の事件、もみ消すぐらい、なんとも思ってないヤツがいる。力があるから、特別だから、弱いヤツを黙らせるのも、踏みつけるのも特権だと思っても。取るに足らない秘書にも運転手にも、それぞれ大事なものがある。踏みつけられたら痛いし、怒りだってある。だから侮らない方がいい。なんでも、誰でも思い通りになると思い上がるのもいい加減にしろ！
　亨が叫んだところで、貝沼がやってきた。受託収賄の疑いがかかったと言う。亨が調べ上げた。それを熊谷記者が記事にした。さらに、俊介のところには上野駅前の事件で警察が来ていた。被害者が被害届を出し、事件となっていた。蛍原は、被害者に、罰を受けないと同じことを続ける人だと。そして蛯沢は「慰謝料、しっかり請求しましょう」。今回のことが、竜崎首相にも伝わった。犬飼は大臣を辞めさせられることに。鶴巻幹事長「責任とってもらうからな」。誰もいなくなった会場。犬飼「満足か」。亨は、新設にしたのは、犬飼家の会社で父が過労死したから、助けてくれたということをわかっていた。それでも感謝していた。犬飼「助けたんじゃない。利用できると思ったからだ。切り捨てられる駒を、差額ベッド代で手に入れた。その程度のものなんだよ。それぐらいでオレは終わらない。どんな捜査でも絶対に逃げ切っ・・・」。そこまで言うと、胸を押さえて苦しみ始めた。救急車で運ばれる犬飼。搬送されながら「知りたいか、犯人・・・オレもしらねぇんだよ。ばぁ～か」。
　犬飼は、心筋梗塞だった。一命は取り留めたものの、しばらく療養が必要。千葉15区には、他に候補者がいない。鶴巻幹事長は、早急に後がまを探さないと、と言うが、鷹野は1人心当たりがあると言う。それは、亨。鷹野「今のあいつは爆弾です」。表に出ると困ることもつつき出す。鶴巻幹事長「飼い慣らせるのか」。鷹野「幹事長の手のひらで転がしとく方が安全では」。
　亨は、泰生に謝る。自分が言ったことのせいだと。可南子は「犯人のせい。責める相手間違えないようにしよう」。病院を出た亨の元へ、鷹野がやってくる。「権力振りかざすヤツと戦うなら、お前も力を持て。永田町に不満があるなら、自分で変えてみろ。次の選挙、お前が立て」。

＜第４話＞

　鶴巻幹事長に呼ばれた亨。「腹は決まったかな」と。党の公認を約束すると言われた。しかし、亨には資金がない。鶴巻幹事長は、地元の有力者・鰐淵を味方につけろという。事務所では、犬飼の地盤を継ぐものが現れないと、犬飼が引退したら、事務所は解散になると心配している。病院でベッドに横たわったままの犬飼の元で、鰐淵が世話をしていた。俊介のことは、弁護士が動いていて、傷害事件ぐらいならなんとかなるだろうと話している。犬飼は、俊介に地盤を継がせたいから力を貸して欲しいと依頼する。
　可南子は、亨が立候補することに反対だった。亨は、犬飼も、泰生を突き落とした犯人が誰か知らないと伝える。隠蔽を依頼した犯人を捜すしかない。牛尾から聞き出した犬飼が呼び出されたホテルを、定宿にしている人物を知っている。その人物は、犬飼とも関係が深い・・・鰐淵。鰐淵は、犬飼に大きな借りがあった。隠蔽依頼をしたのかも知れない。だから亨は、選挙を口実に鰐淵に近づこうと考えていた。
　鰐淵水産へ挨拶に向かう。鰐淵は、筋を通さないヤツは大嫌いだと、亨のことを認めようとしない。事件のことは蒸し返すなと怒鳴りつける。もちろん、支持をしないと断言。亨は、鰐淵水産を後にすると、すぐに蛍原に鰐淵に関する資料を集めて欲しいと連絡する。その後、鰐淵の前に現れたのは俊介。俊介が、亨の悪口を吹き込んでいた。貝沼は、俊介から、亨が犬飼の地盤をねらっていると聞く。まだ、蛍原も蛯沢も、立候補の件は知らされていなかった。蛯沢は「権力が欲しいだけの人じゃないか」と心配する。そこへ、亨が戻ってきた。出馬の打診を受けたけれど、資金がなく、その意思もないと。弱みを握って真相を聞き出すため。２人は協力をすると。鰐淵がかばう人は誰なのか。この事務所が解散になった時を心配する２人に、もっといい事務所を責任を持って紹介すると安心させる。
　可南子が、鰐淵の家をたずねた。鰐淵の妻・美恵子に会うために。すると、家の中からなにか壊れる音が聞こえ、鰐淵の母・かよが家から出てきた。徘徊が日常になっているようだった。美恵子は必死に止めようとして、ケガもしている。かなり疲れ果ててる様子が見られた。亨が家に帰ると、美恵子が来ていた。１人での介護に疲れ、可南子が市の福祉につないだ。かよは、有料ホームに泊まっている。鰐淵が家に帰るとメモが残されていた。電話をかけても出ない。美恵子は、何も知らせてもらえてないと愚痴を言う。家に怖そうな人が来たことがあるが、それも自分には教えてくれなかった。車の中でこっそりお金を受け取っていたという。
　蛯沢が、鰐淵水産の近くで聞き込みをしていると、俊介が鰐淵水産に入っていくのを見た。どうやら、俊介があちこちに変なことを吹き込んでいるらしい。熊谷記者は、地元新聞のコラムに、亨を陥れる内容が書かれると教えてくれた。美恵子に相談すると、鰐淵に電話をかけてくれた。しかし、全く話を聞こうとしてくれない。美恵子は「棚の１番上の引き出し、見ておいてください」と電話を切った。鰐淵が引き出しを見ると、そこには署名済みの離婚届が入っていた。可南子は余計なことをしてしまったのではと心配する。亨は、チャンスと思っていたが、今回のことで美恵子を救い出せたのだからよかったんだと。今度は、デマ動画が流された。写真はパーティーの時のもの。関係者しか手に入らないはず。蛍原は、俊介の仕業だと考え、俊介に電話をかけた。蛍原と蛯沢は、鰐淵の動きを探っていたが、金融機関をはしごしていた。
　鷹野は、泰生の後を追いかけていた帽子の男が、監視カメラに映っており、その日のうちに警察はその人物を特定していたと亨に伝える。しかし、その翌日、どこからかストップがかかり、映像も消された。そして、亨になにやら耳打ちした。蛯沢は、蛍原を、倒産した兄の会社に連れて行った。そこは自分が住んでいた家でもあった。兄が過労死した途端、借金取りが押しかけてきた。全て抵当に入っていた。「雑草と野草の違いわかりますか？」。人の活動で、何らかの変化が生じたときに生えるのが雑草。人の手が入っていないところに生えるのが野草。蛯沢「秘書って、永田町の雑草みたいなもんですよね。踏みつけられてじゃまになったら引っこ抜かれる」。蛍原に俊介から連絡が来た。「２人きりならあってもいい」。蛯沢は止めたが、蛍原は誹謗中傷をやめさせるために会うときかない。
　鶴巻幹事長は、鴨井に亨のことを伝える。「どう思う？うまく使えるかね？」。亨と廊下で会った鴨井は、可南子が立候補に反対していることを知る。鴨井も同じことを経験し、夫とは別れた。しかし、選挙に勝つには妻の協力が不可欠。本気で出る気なら。蛍原は、俊介と会う。もちろん、動画のことを追求しても、話を聞こうとしない。強引に車に乗せようとする。必死に抵抗するが、逃げられない。そこに蛯沢が駆けつけ、俊介を押さえつける。俊介は「出馬するのはオレだ！」と車で走り去った。「役に立ちたかった」と蛍原。パワハラで悩んでいることに気づいてくれたのは、亨だけだった。亨は、パソコンの画面を見つめ、何やら考えていた。
　鰐淵は、勝手に母を連れ戻した。しかし、食事は買ってきた弁当。お茶の葉の場所もわからない。そして、母は自分の息子の鰐淵のことすら覚えていない様子。呆然とする鰐淵。そこに、亨がやってきた。鰐淵に、自分の弱みを全部隠して背負い込んでいくのかと。会社のことは美恵子にも教えない。実は会社の経営が厳しくなっていた。各金融機関で資金繰りに走り、車の中で受け取っていた金は、金を借りていただけ。常連だった居酒屋にすら行けなくなっていた。２人で話していると、いつの間にかかよが外に出て行ってしまっていた。亨も一緒に探し、また可南子や蛍原に電話をかけ、手伝ってもらう。美恵子によると、最近川の方へ行ってしまうことが多かったと。警察に連絡するように言うが、鰐淵は拒否。みんなで川の周辺を探していると、亨がかよを見つけた。すでに川に入ってしまっていた。亨が上手に導き、事なきを得た。思わず怒鳴りつけてしまう鰐淵。しかし美恵子から、怒らないで欲しいと伝言が。その時、忘れられていたと思っていたのに、かよが鰐淵の名前を呼んでくれた。鰐淵「お袋になにかあたら、オレは・・・」と泣き崩れる。母は抱きしめながら「大丈夫。お母さんがついてるよ」。蛍原と蛯沢が、念のためにかよを病院に連れて行った。
　「ありがとな」と鰐淵。亨は、弱みを見つけてやろうと思っていたと正直に話す。鰐淵は、本当に事件のことは知らないと。亨も「あなたは関係ない」。鷹野から、あのとき、永田町の人間らしいと耳打ちされていた。亨は、今まで怒らず過ごしてきた。怒るだけ損だと諦めていた。だから、踏みつけてもいい存在だと思われた。これ以上踏みつけられないよう、声を上げるし、怒りもする。そう決めた。相手が大きな力を持っているが、それでも諦めたくない。だから、相手の懐に飛び込みたい。「力が欲しい。オレも大きな権力に抗えるだけの力を。だから、手を貸してください」と頭を下げる。鰐淵は、昔、犬飼に儲けさせてもらったことがあり、恩を感じていた。「あの親子の言葉を信じて・・・悪かった」。可南子は、立候補には反対だったが、「今は諦めたくない。どんな相手でも」。鰐淵は、今は金はないが、人脈があると、協力を申し出てくれた。犬飼に仁義を通してくれると。「いいんだな。後戻りできないぞ」。亨「はい。よろしくお願いします」。
　鶴巻幹事長のパーティー会場。亨は、可南子を連れて参加していた。鴨井に可南子を紹介。鶴巻幹事長が到着した頃、俊介が駆け込んできた。亨がみんなをだまして、犬飼の地盤を横取りしようとしていると騒ぎ立てる。「とんだバカ息子を」と鶴巻幹事長。「こんな醜態をさらして、代議士にになれと思うのかね。つまみだせ」。床に押さえつけられる俊介。可南子が近寄り「やめましょう、俊介さん。これ以上自分で自分を落とすのは」。鶴巻幹事長が「やさしいね」と言うと、可南子は「いやなんです。自分たちが踏みつけられるのも。目の前で他の誰かが踏みつけられるのも」。俊介は、黙って去って行った。
　鶴巻幹事長が言うとおり、衆議院が解散。いよいよ総選挙が始まる。事務所では、蛍原が過去の資料を見ていた。そこに、蛯沢の兄が陳情に来たときの資料があった。担当は、亨だった。蛯沢の兄の話を聞いている亨。その時、虻川から犬飼が倒れたという連絡が届いていた。そちらが気になる亨。蛯沢の兄の言葉を上の空で聞いている。「善処します」と、その場を去る。資料には「議員に報告せず」と書いてあった。
　亨は「必ず勝つ。勝って真相あきらかにしてみせる。見ててくれな、泰生」と、可南子とともに泰生を見守っていた。

＜第５話＞

　泰生に、立候補のことを報告する亨。その時、鷹野に呼ばれた。病室を去る際、亨は「早く起きろよ、泰生」と呼びかけた。そのまま出て行ったため、泰生の指がかすかに動いたことには気づけなかった。幹事長室に行くと、千葉１５区から、フリージャーナリストの有馬保奈美が出馬すると聞かされた。有馬は、無所属だというが、竜崎首相と親しい。バックに竜崎首相がいるはずだと。竜崎首相のねらいはは、鶴巻幹事長の派閥の人数を削ること。鶴巻幹事長「竜崎始、ホントの敵はあの男だ」。
　鷹野と２人になると、亨「総理は、何が何でもオレを落としたいんじゃ」。息子の事件の隠蔽を頼んだのは、竜崎首相だとしたら、、永田町から排除したいのではないか。党の公認の儀式として、竜崎首相との写真撮影があった。その時、亨は有馬のことを聞いてみるが、とぼけるだけの竜崎首相「これが選挙だよ。誰が敵になるか、どんな罠が潜んでいるかわからない。気をつけてくださいね」。
　亨は可南子に、有馬のことや竜崎首相のことを話す。竜崎首相が犬養に、お願いしたことはどうなったかたずねている場面を見たと。それが泰生のことだったのかも。亨「でかすぎる敵だな」。可南子「奈良余計に、選挙に勝って、近づくしかない」。亨「もう引き返せない、たとえ総理でも、選挙に勝って罪を暴く」。
　蛍原は蛯沢に、兄の件は気が済んだのかとたずねた。蛯沢は、犬飼が失脚したことで気が済んだと。本人には言えなかったが、蛍原は知ってたんじゃないかと。兄の陳情を聞き、取り合わなかったのが亨だったと言う事を。
　亨は、政策秘書の資格を持っている貝沼に、当選後、政策秘書にすると伝える。俄然張り切り出す貝沼。後援会長の鰐淵も加わり、選挙戦の打ち合わせをする。県会議員にも、活動費として金を渡すと相談。蛯沢は「買収？」と不安になるが、正当の活動費として支部に提供をするだけ・・・と言う名目。合法ではある。着々と準備が進められていく。しかし、予定していたウグイス嬢が、有馬陣営に全員引き抜かれた。可南子は、大学の後輩に聞いてみると、積極的に協力している。熊谷記者がやってきた。千葉１５区がおもしろい選挙区になったと。有馬は、総理の件を否定しなかったそうだ。熊谷は公平に取材すると伝える。そして、亨を陥れるデマチラシを見せる。スタッフの中に、スパイがいるのではないかと。熊谷記者「ホントイヤな世界。これが選挙ですね」。
　公示日。鴨井の応援演説予定が、総理から急な公務支持があり、変更になった。有馬の陣営では、大物を呼んでいる。市長も味方につけてる。鶴巻幹事長は、竜崎首相が応援演説の日程を勝手に変更していると怒っている。亨「総理には、オレを議員にしたくない理由があるのかも」。選挙事務所では、ちょっとした騒ぎが起きていた。蛯沢が友だちにご飯をおごってしまったという。話の流れで、選挙のこともお願いしてしまった。親しい友人に数百円の牛丼・・・それでも、選挙違反になる。「わざと！？もしかしてスパイ！？」と貝沼。飛び出していく蛯沢。鰐淵は、蛯沢のことを切った方がいいんじゃないかと提案する。秘書になってから日も浅く、買収されている可能性もある。蛍原も、蛯沢のことを知っているようで、肝心なことは何も知らなかったのかも知れないと言い出す。それでも亨は「２人で話してみます」と言った。
　可南子は、蛍原の様子が気になり、２人きりで話した。まず、可南子は蛍原にお礼を言った。最初に味方になってくれたと。蛍原は、蛯沢の件を話す。「もしかしたら鷲津さんのことも恨んでいるかも」と。亨が、蛯沢に電話をかけるが、つながらない。夜遅くなっても、事務所に蛯沢は戻ってこなかった。ずっと待っている亨。蛍原たちには帰るように言うが、その時、蛯沢が駆け込んできた。友人たち全員に会い、牛丼代を全て回収してきた。「違反にならないですよね。スパイとか、絶対ないです。鷲津さんの力になりたいって本気で」。「オレは信じてる。身内が信じられなくて、どうやって勝てるって言うんだよ。強い敵に。力のない新人のオレが」と亨。
　竜崎首相は、千葉１５区の動きを気にしていた。鶴巻幹事長が、亨の応援に行くと知り、「相当焦ってるな」と竜崎首相。また、亨のことを陥れるデマチラシが。蛯沢の件がもう書かれている。
　亨は、泰生の前で弱音を吐く。すると、泰生の指がかすかに動いた。可南子「がんばれって言ってるんじゃない？」。亨「がんばるよ．総理にだって負けてらんないよな」。涙を流しながら喜ぶ２人。
　選挙事務所に、鶴巻幹事長がやってきた。亨に、５００万円を手渡す。市会議員に渡して、協力してもらえと。かなりグレーな金になる。今まで、犬飼もやってきたこと。表沙汰にならなければ問題ないと言う。亨は、貝沼にその役目を頼んだ。今まで自分がやってきたことだった。貝沼が、車の中で封筒を渡しているところに、千葉県警の刑事がやってきた。封筒の中身は・・・亨のチラシが入っていた。実は、これはスパイを見つけるための罠。
　亨は、総理秘書官の猫田に電話をかける。２人で直接会って話をした。有馬陣営が引き抜いたウグイス嬢は、昔から付き合いがあり、その人をスパイとして情報を得ていた。そして、亨の陣営に紛れ込んだスパイは・・・ただの、おしゃべり好きな選挙スタッフ。可南子が気づいていた。そのスタッフに、頻繁に電話がかかってきていることに。亨は、それを逆に利用したのだった。猫田「やるね、君」。亨「隠蔽を指示したのも総理ですか」。猫田「初耳です」。有馬のことは、猫田が個人的に友人を応援しただけだと。亨「必ず暴きます。息子を突き落とした犯人とかばってるヤツを」。
　選挙戦最終日。鴨井が応援に来ることになっていた。しかし、亨の車が事故渋滞に巻き込まれ、演説時間に間に合わない。亨は、車を降り、走り出した。蛍原と蛯沢も一緒に走り出す。鴨井は、演説でつないでいた。鴨井が話し始めると、ヤジが飛ぶ。たしなめる鴨井。そして、可南子を紹介し、女性支援のNPOで働いていたと。その話で、またビルの屋上に立つ女性のことを思い出す可南子。「人を救うって、難しいですよね・・・」。亨がなんとか間に合った。大勢の市民を前に、予定されていた演説ではなく、自分の言葉で話し始めた。
　「私は・・・私は、ずるい大人でした。秘書という仕事をする中で、正しいことばかりしてきたと、到底言えません。なのに、息子には、自分が正しいと思うことをしろなんて言って。そしたら、息子は・・・”お父さんかっこいいじゃん”・・・違うのに。ホントは、ずるくて、弱くて、かっこ悪い大人なのに。だからこそ、息子に誇れる人間になりたい。強いものにも向かっていける、正しい道を突き進もうとする代議士に私はなりたい。大きな力につぶされそうになっても、声をあげ、知恵で乗り切る、弱くても強い代議士に、私はなりたい。力をください。それを糧に、腐敗した権力と戦います。ここにいるひとりひとりの小さな暮らしを守る、必死に守る。そのために、私に力をください。息子が目を覚ましたときに、堂々と報告ができるように。”お父さんがんばったぞ”って。もう一度”かっこいいじゃん”って言ってもらえるように。どうかみなさん、鷲津亨に力をください。よろしくお願いします」。涙ながらに語った。
　投票が締め切られた。開票速報。前半では、まだ有馬が優勢。僅差で亨が追いかけていた。亨と可南子は泰生の病室にいた。主治医によると、２人の言葉は泰生に聞こえていることは否定できないと。可南子「意外だった。あなたの涙。あんな風に泣けるなんて」。亨「バレてたか。犬飼さんなら、こんな時、泣いて土下座をしてるなって。そしたら、涙流してた。危ない金、貝沼君に渡させた。自分がいやいややっていたこと、今度はやらせる側になっている。泰生、父さんさ、全然かっこよくないよ」。可南子「泰生のためでしょ。勝っても負けても、私たちは絶対諦めない」。亨「ああ。相手が総理でも」。可南子「十分かっこいい。でも、私にはウソつかないで。気づいちゃうと思うから」。自然に涙が流れる亨。２人で泰生の手を握りしめていた。
　貝沼から連絡があり、選挙事務所に戻る。そろそろ結果が出る頃だった。外にはパトカーがやってきた。落選すればガサ入れが、当選すれば見逃してもらえる…と言う都市伝説がある。その時、当選確実が出た。事務所内は大騒ぎ。パトカーは、走り去っていた。家に戻り、一段落。亨「ようやく近づける。永田町の敵に」。
　猫田は「幹事長、今頃高笑いしてるでしょうね」。竜崎首相「まだムリだったか。あの人の力をそぐのは。目の上のたんこぶ。じゃまだねぇ。でも、鷲津亨か。意外と使えるかも知れないよ」。一方の鶴巻幹事長は、竜崎首相の顔を見るのが楽しみだと。鷹野「性格悪いですよ、幹事長」。鶴巻幹事長「いいやつが政治家なんてできるか」。
　蛍原は、蛯沢の兄の件が書かれた書類を、ファイルから取り出し、自分の机の引き出しにしまい、カギをかけた。亨は、警察署長の元へ。「代議士としてきてます」と。捜査を中止するように言ってきたのは、竜崎首相かと。署長は「何も分かってないんだな。ホントに怖いのは誰なのか。敵に回したくないでしょ？幹事長だけは」。亨「幹事長？」。

＜第６話＞

　「何も分かってないんだな。ホントに怖いのは誰なのか。敵に回したくないでしょ？幹事長だけは」と署長に言われた亨。そのことを可南子に報告する。鶴巻幹事長は民政党のドン。一筋縄ではいかない。慎重に弱点を探さないといけない。
　事務所内での整理が始まっていた。犬飼事務所から鷲津事務所へ。蛯沢は、たくさんのファイルの中に、陳情記録ファイルを見つけた。兄が陳情に来た頃のファイルを見てみるが、記録は残されていなかった。犬飼らしいと、気にする様子は見られない。亨は、蛍原と蛯沢にも、隠蔽を指示したのが鶴巻幹事長だと伝える。鶴巻幹事長の家族には、犯人に該当する人物はいない。誰かに頼まれたのかもしれない。鶴巻幹事長本人から言わせるために、秘密を突き止める。鶴巻幹事長は、第２・４月曜の夜は、絶対に予定を入れない。６時ぴったりに党本部を出て行く。何をしているのか、身内しか知らない。行き先を突き止めれば、弱みになるかも知れない。次の月曜がその日。２人に協力を頼んだ。
　次に、鴨井に、可南子が女性支援の活動に復帰したいと言っていたと伝える。これも作戦のひとつだった。鴨井は、鶴巻幹事長と親しい人物。なにか知っているかも知れない。可南子が鴨井に近づいて、なにかが分かればと言う事だった。鴨井はNPO法人を紹介すると約束してくれた。さらに、鷹野にはストレートに鶴巻幹事長の行き先を知っているかたずねる。亨「知りたいんだ。幹事長の秘密」。隠蔽を指示したのが幹事長だと、鷹野にも伝えた。鷹野「やめとけ。下手に手を出したら簡単につぶされる」。亨「たとえ相手が幹事長でも、引くつもりはない」。強い意思でそう語った。
　事務所に戻ると、政策担当秘書になった貝沼から、地元の葬式に出手欲しいと。全く知らない人の葬式。しかし、顔を出すことで党員を集めることが出来るかもしれない。犬飼は「葬式チャンス」と呼んでいた。蛯沢は、そのことに納得できてない様子だった。そんな蛯沢を呼び出した亨は「ホントはイヤなんだろ。この先どうしたい？」とたずねた。犬飼のへの復讐が済んだ今、秘書を続けるのか研究に戻りたいのか。もし戻りたいなら考えると。
　問題の月曜日。亨・蛍原・蛯沢の３人で、鶴巻幹事長を尾行するはずだった。しかし、それを察した鷹野が会合に呼び出す。挨拶だけで帰ろうと思ったが、鷹野に引き止められる。熊谷も、幹事長の記事は書きにくいと言う。編集長が嫌がるから。仕方なく残る亨。蛍原と蛯沢２人で尾行。尾行中、蛯沢は、蛍原に秘書を続けていくのかとたずねた。亨に言われたことで、蛯沢自身迷っていた。蛍原「キレイな世界じゃないからね。やめるのもありかも」。亨は、会合に出席しながらも、携帯が気になる。その都度蛍原から連絡が入っていた。鶴巻幹事長の車は、自宅に戻った。しかし、鶴巻幹事長が下りてくることはなかった。途中、見つからないよう別ルートを通ったときに逃げられてしまった。尾行はバレていて、写真まで撮られてしまっていた。
　亨は、忙しく渡された資料を見ている。蛍原が話しかけていたが、全く耳に入っていなかった。「あのときも忙しかったんですよね」と蛍原。陳情の記録を見た亨は、初めて自分が担当だったと知る。蛯沢の兄が陳情に来た日。その日は、犬飼の体調不良のため、スケジュール調整で大忙しだった。そう言われても、亨は思い出せなかった。亨「聞いてよかった」。蛍原は、蛯沢に伝えるかどうかは任せると。その時、鶴巻幹事長から呼び出され、慌ただしく出て行く。
　鴨井の紹介で、可南子はNPOの施設を案内してもらっていた。女性の緊急保護施設。可南子は、鶴巻幹事長も女性支援に利害があるのかとたずねる。鴨井は、鶴巻幹事長は弱いものには興味がないと。プライベートの話も嫌っていると言う。その頃、鶴巻幹事長は、亨に尾行中の写真を見せつけていた。亨「事件を隠蔽させたのは、あなただったんですね」。鶴巻幹事長は、署長にはどうせバレるから話してもいいと言っていたという。亨が追求をするが、もちろん教えてはくれない。それどころか、選挙の際に、市議会議員に５００万円を渡したことをネタに、脅しをかけてくる。鶴巻幹事長「忠告だよ」。選挙のために、２０００万円の借金もしている。「こんなに早くつぶしたくないんだよ。今回は見逃してやる。二度と私を調べようと思わないことだ」と鶴巻幹事長。
　可南子が訪れていたNPOの施設に、ナイフを持った男がやってきた。鴨井が対応し、「厚生労働大臣」と名乗ると、男は逃げ去っていく。鴨井「女を下に見るやつほど、肩書きで態度が一変する。腕力じゃ権力に勝てない」。男社会のパワーゲームで生きているものほど、それを分かっている。政治の世界が１番の男社会。悔しいから、トップに立ってやろうと決めた。総理になって、女性が当たり前に活躍する世界を作る。可南子「私は、支援活動ですら、力が足りなくて。悔しくて、NPOを離れたんです」。鴨井大臣「弱さを認めて、そこから一歩進めた人は強い」。そして、ここの活動を可南子に手伝って欲しいと。
　亨の前に、１人の工務店の男が陳情にやってきた。融資先を見つける手助けをしてほしいと。最初は断ろうとしたが、相手の姿を見ているうちに、蛯沢の兄のことを思い出した。すると、名刺を１枚渡し、古くからの知り合いの銀行を紹介した。体のことも気遣った。その姿を見た蛯沢は「アニキも、鷲津さんに会えてたら、死なずに済んだのかな」。隣で複雑な表情をしている蛍原。
　可南子は、亨に、NPOで働くことを伝える。鶴巻幹事長の事もあるが、「外に出る気になってくれてうれしい」と亨。泰生のことがあってから、閉じこもりがち可南子だった。鴨井にも感謝しないと。この日は泰生の誕生日。病室で、小さなケーキでお祝いをする。幹事長は手強いが、必ず犯人を聞き出すと約束する。そして「早く目を覚ませよ、泰生」と亨。
　民政党チャンネルでは、１年生議員を集めての番組を放送した。指導係の鷹野が話を進める。その中で、亨のことが取り上げられた。泰生の事件を隠蔽されたことから、被害者の気持ちが分かった。必ず真相をあきらかにして、国民のみなさんにもお伝えしたい。政治家生命が絶たれても、私は何も恐れません・・・そう訴える亨。鷹野「ネットの反応も上々だ」。亨「よかったのか。幹事長怒るだろ」。鷹野「注目されれば、お前を簡単に切れなくなる。どうせ諦めないだろ」。
　また問題の月曜日がやってきた。蛍原と蛯沢にはおとりになってもらう。わかりやすく尾行をし、途中から亨が追う。そういう作戦だった。案の定、すぐに尾行をまこうとする鶴巻幹事長の車。途中から亨が追いかけるが、検問に引っかかってしまう。鶴巻幹事長の車はすんなり通してもらっていたが、亨は止められてしまう。どんどん鶴巻幹事長の車は行ってしまう。亨の車の脇を、１台のバイクが通り過ぎていった。鶴巻幹事長の車は、とある屋敷の前で止まった。その中に１人で入っていく鶴巻幹事長。そこに、先ほどのバイクもやってきた。ヘルメットを取ると、熊谷記者だった。実は、亨と２人で話をしていた。熊谷記者は、新聞記者だった時期があった。国土交通大臣とゼネコンの癒着を記事にしようとしたところ、資料室への異動を命じられ、辞めた。その時の国土交通大臣が鶴巻。「覚悟があるなら協力する」と、今回協力してくれることになった。亨がやってくると、この屋敷の持ち主を調べたと、スマホの画面を見せる。
　また鶴巻幹事長に呼び出された亨。あの屋敷の持ち主は、虎川医師。定期的にかくれて、医師に会っていると言うことは、体調に不安があるのではないかと。議員にとって、それはウイークポイントになる。そこをついて、竜崎首相が潰しにかかってくるのではないか。亨「息子を突き落としたのは、誰ですか。誰に頼まれたんですか」。鶴巻幹事長「その程度のカードで、私を脅せると思ったわけだ」。医師はただの友人。定期的にチェスを打つ仲間。仕事を忘れることができる貴重な時間だと。そう言い切る。そして、ある人物を部屋に呼び入れる。あの、５００万円を渡した馬場だった。あのことが明るみ出れば、選挙違反。実刑もあり得る。亨「いいですよ。逮捕させるならすればいい。でもその前に、知っていることを話します。ネットを使って、隠蔽だとぶちまける。その直後に私が逮捕されたら、世間はどう思うでしょうね。つぶしたいなら、つぶせばいい。いつでも議員なんてクビになる覚悟です。なくして困るのは家族だけ。それ以外に私に惜しいものはないんですよ」。一歩も引かない。鶴巻幹事長「まだ分かってない。権力というものが。期待しているんだよ。刃向かってくるぐらいの方が好きだ。だが、境界線を越えたら、その時は容赦しない」。
　幹事長室を出ると、猫田が待っていた、竜崎首相と会う。隠蔽のことを知った竜崎首相は「とんでもない行為だ」。そして、事件があった日、パーティーの後の予定を、鶴巻幹事長は変更していたという。早朝まで幹事長室に閉じこもっていた。竜崎首相「誰と密談してたんだろうねぇ」。
　幹事長室の前には、監視カメラがある。亨は総務局に行き、その映像を見せて欲しいと依頼。断られるが、「総理の指示でも？」と一言添えると、相手の態度が変わった。蛯沢が、陳情に来ていた工務店の男・猪原が、融資が受けられたと報告。亨の名刺が力になった。うれしそうな蛯沢は「オレ、鷲津さんについて行きます！これからも猪原さんのような人を救ってください。オレのアニキみたいなことが、もう起きないように」。亨は、本当のことを言いかけてやめた。
　亨は、可南子に、名刺１枚で救われる人もいると話す。総理の名前を出すだけで、態度が変わる相手もいる。「権力ってヤツか」。可南子「私も力が欲しい。鴨井大臣のような強さが。他人を引きずり落とすためじゃなくて、誰かをすくい上げる力」。
　翌日、許可が出て、カメラの映像を見る。あの日の夜の映像。亨はそこに、ある人物の姿を見つけた・・・。
　亨は鴨井のところへ。亨「あなただったんですね。幹事長がかばっていたのは。泰生を突き落としたのは誰ですか。誰なんだよ！！」。その言葉の先にいるのは鴨井・・・。

＜第７話＞

　亨「あなただったんですね。幹事長がかばっていたのは。泰生を突き落としたのは誰ですか。誰なんだよ！！」。カメラの映像に映っていたのは鴨井。亨「あなたと幹事長が決めたことですよね・・・鴨井大臣、息子さんがいますよね」。目撃された犯人と、年齢が合う。しかし、鴨井は７年もあっておらず、何をしているのかも知らない。鴨井「かばうも何も・・・」。あの日は、予算の調整でもめていたので、相談していたと。「息子さんの話をしたら、急に饒舌になった」と亨。鴨井は、憶測で変な疑いをかけられたくないからだという。亨「ようやく暴けそうだ。犯人にも、それをかばった連中にも、やったことの報いは受けていただきます」。
　事務所に戻ると、会合に出る予定があると言われるが、きっぱり断る亨。しかし、陳情は何でも受け入れるという。自分が会えない分は、記録を全部読むと。そして、熊谷記者と連絡を取る。鴨井の息子について調べて欲しいと。亨「たぶん、彼です。泰生を突き落とした帽子の男は。間違いであって欲しかったんですけど」。鴨井に紹介されたNPOの仕事を始めた可南子は、鴨井のおかげだと喜んでいる。鴨井は、鶴巻幹事長に迫られていた。息子を取るか女性総理の座を取るか・・・。亨は、可南子には鴨井のことを言い出せないでいた。その時、熊谷記者から連絡が来た。鴨井の息子については「文哉」という名前だけしか情報がなかった。
　鷹野と廊下で会う。その時の蛯沢の態度が、秘書らしくなっていた。亨について行くと決めたからと。亨は、鷹野に鴨井の息子のことをたずねてみる。鷹野は知らないと答えた。その後、蛍原と蛯沢は、廊下でよく聞こえるように、鴨井の息子の話をしている。隠蔽に関わっていたのが鴨井大臣。息子の居場所が分かったから、亨が会いに行くつもりだと。その話を、偶然、鴨井の秘書・小鳩が聞いていた。慌てて動き出す小鳩。向かった先は、普通のアパート。その１室をたずねた。その様子を、蛍原と蛯沢がかくれてみていた。その部屋にいたのが”文哉”。小鳩は、鷲津とは会わないように伝えた。かくれてみていた蛍原と蛯沢には、部屋の住人の顔は見えなかった。名前も聞こえず、表札ももちろんない。その報告を受けた亨は、陳情の記録に全て目を通していた。そのためまだ事務所に残っていた。「約束したから、眞人に」と亨。鶴巻幹事長に目をつけられているので、すぐにつぶされてしまうだろう。議員でいる間に、その名前を使ってできることをやりたい。納得するまでやったら、蛯沢に伝えて謝ると。蛍原は、蛯沢に最後の部分以外伝えた。すると、急に動き出す蛯沢。郵便受けをのぞいたり、ゴミをあさったり。とうとう、部屋の前の荷物までチェックし始める。他の住人に見つかり、「泥棒！」と怒鳴られてしまう。慌てて逃げ出す２人。しかし、その荷物の中に「鴨井文哉」の名前を見つけた。
　さらに飲食チェーン店の制服があり、その店に行ってみた。しかし、すでに辞めているという。文哉について聞いてみると、”無口でやさしく穏やかだと言う。熊谷記者は、文哉の高校の卒業アルバムを手に入れていた。高校時代は、やはり”無口で穏やか”。しかし、別の一面もあった。７年前、キレて暴力沙汰を起こしたという。同級生を、追いかけてケガをさせていた。警察に通報されたが、うやむやになっていた。その警察は、泰生の事件と同じ管轄だった。鴨井は、引き出しにしまってあった、幼い頃の文哉と自分の写真を見つめていた。
　蛯沢が１人で文哉の部屋をたずねた。電話で留守のようだからと、亨の名刺をおいていくと伝える。蛯沢が立ち去ると、名刺が部屋の中から引き抜かれた。ドアがそっと開き、周りに人の姿が見えないと、買い物に出かけた文哉。途中で亨が声をかける。亨が「殺してやろうと思った？」と言うと、「違う」と文哉。そこに、警察官がやってきた。不審者の通報があったと。文哉のことは、小鳩が連れ去っていった。そして、鴨井の元へ。久しぶりの親子の対面だったが・・・。
　亨「あいつあとちょっとで、しゃべりそうだったのに」。熊谷記者「もうちょっと揺さぶってみます？」。事故を通報した人を見つけていた。その人によると、OL風の女性が、「帽子の男が押した」と何度も叫んでいたと。熊谷記者は、具体的なことは書けないが、以前の記事の続報という形で記事にすることは可能だと言う。早速、雑誌に載った。鶴巻幹事長もその記事を読む。可南子は、雑誌を読んで初めて知った。可南子は亨に「帽子の男が分かったみたいに書いてあるけど、わかったの？」とたずねた・・・。記事のことが話題になっている。花を届けに来た小鹿までが、真相を知りたがる。蛯沢は、ごまかすためにいつもの植物の情報を。複数の葉に見えて１枚の葉・・・政治家も、別々に見えてもみんなつながった１枚の葉っぱなのかも、と言い出す。「オレも？」と亨。
　目撃者から電話がかかってきた。目撃者の女性がたずねてくる。仕事があって、男の人に伝えてその場を去ったと。記事を読むまで、事件のことも忘れていたが、男の顔は覚えているという。そこで、卒業アルバムを見せ、その中に犯人がいないかたずねてみる。その女性は、答える前に、「いくらいただけます？」と謝礼を要求。その目撃者の女性は、次に鴨井と会った。手には黒い帽子が。事件現場に落ちていた帽子だと。ごまかしているが、慌てる鴨井。しかも、帽子を買い取って欲しいと言い出す。亨には、お金は出さないと言われたから、こっちにお願いに来た様子。DNA鑑定すれば、誰のものか分かってしまう。鴨井が買い取ると答えると、亨が姿を見せた。
　蛍原と蛯沢が事務所から帰ろうとしていると、亨が鴨井を連れてきた。あの黒い帽子は・・・「役だった」と蛯沢に返す。蛯沢の帽子だった。鴨井は、息子とは疎遠で、帽子が息子のものかどうかも分からなかった。そして語り出す。あの日。幹事長に呼び出された。警察から連絡があり、文哉が事件を起こし、逮捕したいと言っている。監視カメラに顔が映っていたのだった。「どうするかね」と鶴巻幹事長。傷害ぐらいなら、すでに成人しているので、自分とは別人格と開き直ることもできる。鴨井「言えません。そんな、息子を切り捨てるようなことを」。実は、すでに捜査をストップさせていた。「あとは全て私に任せなさい」と鶴巻幹事長。
　亨「答えてください」。鴨井は、息子がケガをさせたことは知っていたけれど、その相手も容態も知らなかった。可南子の告白動画で初めて知った。だから、優秀な脳外科医を紹介すると言い出したのだった。亨「すっかりだまされて、感謝しちゃいましたよ」。可南子に近づいたのも、状況を探るためじゃないかと追求すると、贖罪のつもりだと、鴨井は深く頭を下げた。息子を守りたい一心だった。治療費も慰謝料も払う。鴨井「どうか・・・」。「どうか事件をうやむやにしてほしい」と亨。亨が、可南子に伝えたのは、あの記事を読んだときだった。可南子「全部嘘だって事？私に言ってくれたことも」。そう言って涙していた。鴨井は「違う」と言うが、亨「なんで可南子にまで近づいたんだよ。可南子は、あなたを心から信頼して、慕って・・・贖罪？そんなの嘘だ。息子を守りたい？それも嘘。あなたが守りたいのは、総理を目指す自分だけ。自分が１番かわいい。だから傷１つつけたくない。だから息子の罪を隠した。結局、あなたも幹事長と変わらない。平気で他人を踏みつける。自分の息子も」。鴨井が文哉とあったあの日、近づくと文哉は顔を背けた・・・。
　亨「全部、自分の思い通りにしたいだけなのに、何が贖罪だ！ふざけるな！」。鴨井「あなたの言うとおりだわ。自分が１番かわいい。傷１つつけたくない。だって、他に女性総理になれる人間いる？社会から取りこぼされる女性や弱い人たちのために政治を動かす人間がトップに立たなきゃ」。亨「弱い者を守るために、踏みつけてもしょうがない・・・そんな理屈・・・」。鴨井「狂ってるわね。でも、総理になるってそういうことじゃない？告発したければすればどうぞ。彼ももう立派な大人。私とは別の人格ですから。こんなことぐらいで、私はつぶれない」。
　亨は、可南子に、あれが鴨井の本性だと伝える。上を目指すためなら何をしてもいいと思っている。女性支援の団体も別を探した方がいいだろうと。熊谷記者が、鴨井の息子が犯人だという記事を持ってきた。それを読んで可南子もOKを出す。しかし、実際に雑誌に載ったのは、全く別の記事。差し替えられてしまった。鶴巻幹事長が上の人間に手を回した。鶴巻幹事長に呼ばれた亨。鷹野は亨をなだめるが、「お前も同じか。終わらせるわけいかないよ」と亨。鶴巻幹事長は「警告は前にもしたよね。もう手加減しないよ」。亨が出て行くと、鶴巻幹事長は「切りますか。もっと弱み握った上で、永田町から追い出したいね。君ならできるでしょ。鷲津亨をつぶせ」。「分かりました」と答える鷹野。

＜第８話＞

　可南子が病室で泰生に話しかけていると・・・。事務所には、陳情の結果、いい方向に行っているという報告が届く。蛯沢は「正しく使えばいいんですよ。国会議員の力を」とうれしそう。その時、亨のスマホに可南子から連絡が。亨「目を覚ましたって。泰生が、意識が戻った」。一方、亨をつぶすよう命じられた鷹野は、亨が事件の目撃者に金を払ったと、鶴巻幹事長に報告。まだ他にもネタはありそうだと。そこに、デジタルアンツの蟻田会長がやってくると。鷹野も挨拶をする。鴨井は、文哉と、人に見られないように会う。封筒に入った金を差し出す。当面の生活費。鴨井は、文哉に、いい母親でなかったことは認めるという。文哉は何も語らず、金を受け取って去って行った。
　亨は、泰生の病室に駆け込んだ。亨が呼びかけると、「お父さん」と応えてくれる。うれしくて、うれしくて、何度も言わせる。事務所に戻ると、うれしそうに報告する。長い間寝たきりだったので、リハビリは必要だったが、まひや後遺症はないということだった。しかし、事件を表に出すのは難しい。鶴巻幹事長が本気で潰しに来る。その前に、その鶴巻幹事長の力を奪うようなネタを手に入れないといけない。そこに、今度は＜デジタルアンツの蟻田＞という連絡が入る。亨は、蛍原に調べてくれと頼む。その画面を見て、驚く蛯沢。
　週刊誌には、女性総理誕生の声高まる、という鴨井を持ち上げた記事が。それを読んだ竜崎首相は、「幹事長だな、これ」と。自分は短期政権で終わるつもりはない。猫田に、泰生の事件の件がどうなっているのかたずねた。亨は、選挙の際、金を渡した馬場と会う。馬場は、この間は鶴巻幹事長の手前、ああいう態度を取ったが、実際はしゃべる気はないという。亨は、馬場に、叙勲の対象になっていると伝える。「つまらないことで、ケチつけないでくださいね」と亨。竜崎首相は、記者たちに、泰生の意識が戻ったことをあえて伝えた。亨のことを、秘書の頃から注目していたとまで。そして、政治が警察の捜査に口を出すなんてあってはならない。万が一あったとしたら、総理としてきちんとたださないといけない。「記事にしといて。疑惑は晴らさないといけない。総理として、力になりたい。全ての日本国民のためにね」とまで。
　蛍原と蛯沢は、蟻田のことを調べる。蟻田は、政治家にも強い影響力がある。蛯沢は、デジタルアンツを調べろと連絡してきたのが、鷹野だったと蛍原に伝える。蛯沢「信用していいんですかね」。鷹野は、鶴巻幹事長についている。しかもタイミングが良すぎる。鶴巻幹事長に頼まれて、やっているのかも知れない。竜崎首相が書かせた記事を、鶴巻幹事長が読む。亨は、鷹野に報告。馬場のこと、デジタルアンツのこと。それを聞いて、なにか企んでいるような鷹野だった。
　熊谷は、竜崎首相の発言は大きいと。改めて記事を出したいと言ってきた。今度は、可南子に焦点を当てる。被害者の母親の声として。もし、ここでやめたら、同じようなことがまた起きてしまう。可南子の動画撮影が始まった。あの日起きたことが少しずつ分かってきた。警察が動かない理由が知りたい。そう訴えた。その動画は、鴨井も見ていた。可南子は、記者に囲まれ、警察に言いたいことをたずねられると、「もし捜査に間違いがあったのなら、過ちを認めてやり直して欲しい」と答えた。その様子を影から見ていたのは文哉。このことが、一般ニュースにもなった。
　事務所に鷹野がたずねてきた。蛍原も、鷹野のことを疑い始めていた。亨は、２人の心配をよそに、鷹野を招き入れる。鷹野は、鶴巻幹事長に、鷹野に亨をつぶせと言われたことを正直に話す。鷹野「なにかまたネタない？」。亨は、蛯沢の不法侵入のことを伝える。実は、鷹野は時間稼ぎをしてくれていた。鶴巻幹事長は、亨のことを、国会が終わったあと、選挙違反で逮捕させるつもりでいる。それを教えてくれた。鷹野は、元々、派閥政治をなくすために政治家になった。そのためには、鶴巻幹事長を党の中枢から外さなければいけない。亨「意外だろ」。蛍原と蛯沢は驚く。亨が当選した際、党の広報動画で事件のことを発言させたことが、鶴巻幹事長は気に入らず、鷹野に無理難題を押しつけた。亨に協力することは、自分の政治家としての信条を守るためでもある。亨「１人じゃ、大きな力に立ち向かうことはできない。手を組んで仕掛けるんだ。幹事長に罠を」。
　ゴルフ場で、蟻田のことを監視している蛍原と蛯沢。蟻田は「政治家は任せろ」と言っている。鶴巻幹事長の次男がそこにやってきて、仲良くゴルフを始める。今回の法改正は、IT企業に有利に働く。鶴巻幹事長が党に圧力をかけ、蟻田が金を受け取っているかも知れない。そこを追求する。
　休日も地元に顔を出さなければいけない亨。それを聞いた泰生は「すげーよね。いきなり秘書から政治家。お母さんも仕事始めてるし。何が起きてんのって感じ」。亨は、泰生にあの日のことは覚えているのかたずねた。「覚えてる、全部」と泰生。相手の顔もはっきり覚えていた。そう話す病室の前には文哉の姿が。
　蟻田は、社員を半分切ってもいいと、リストラを進めている。それをしった蛍原と蛯沢は、亨に伝える。鷹野は、鶴巻幹事長に、蛯沢の不法侵入の件を伝える。病室には、鴨井がやってきた。泰生が全部知っていることを知る。そして、「文哉とは縁を切った」。昔から、文哉のことを犠牲にしてきた。怒りの感情をセーブできないのはそのせい。かわいそうに思い、高校の時の事件も隠蔽した。泰生のことも、文哉を守りたい一心で。でも、亨に言われて気づいた。守りたいのは自分自身。文哉もそれを知っていて憎んでいる。でも、可南子に支援の仕事をすすめたことに嘘はない。「また嘘を」と可南子。息子を切り捨てて総理を目指すと言う発言は、自分を鼓舞するため。鴨井は、総理か母親か、どっちもというのはムリだと。そんな甘い世界ではない。可南子「分かってるんですか、文哉さんの本音」。可南子の視線の先には、文哉がいた。
　文哉が病室の前にいるのを可南子が見つけた。文哉は、きちんと謝罪をしたかったのだった。泰生にきちんと謝り、頭を下げた。泰生は「なんであんなことを」とたずねる。あの日、文哉は、夜勤のあと、休みのバイトの代わりに仕事を続けて行った。客からのしつこいクレームもあった。疲れ果てて乗ったバスで、ようやく座ることができた。やっと休める。そう思ったときに、泰生が席を譲った方がいいんじゃないか、と声をかけた。「知らないくせに。ずっと立ち続けてたことを」。そう思ったら、腹が立ってきて、思わず突き落としてしまった。とんでもないことをしてしまった。カウンセリング受けて治ったつもりだったのに、結局自分をコントロールできなかった。顔を見られたし、すぐに警察に捕まると思ったけれど、いくら待っても警察が来ない。「またもみ消したんだな」。そう思った。そうなると、今度は自分から警察に行くこともできない。何度も警察に行こうと思った。その方が楽になる。でもできない・・・。文哉「守りたかったから。鴨井ゆう子を。母さんを。ずっと見てきた、子どもの頃から。人に頭下げて。つらくても笑って。悔しい顔も、かくれて泣いてるところも。守りたいのに、また迷惑かけちゃって。誰よりも知ってる。母さんが大変だったこと。だから守りたいって。総理の夢叶えて欲しいって」。泣き崩れる鴨井。
　蛯沢は、デジタルアンツの前で、社員に声をかける。「議員の秘書」というと、すぐに話をしてくれる人が見つかった。亨が話を聞く。デジタルアンツは、典型的なワンマン経営。不正が見つかれば、会社を変えることができるかもしれない。帳簿を調べられないかと依頼した。
　市議に金を渡したことを、蛍原もなんとなく知っていた。貝沼は、渡した本人でもちろん分かっている。知らなかったのは蛯沢だけ。蛯沢はそのことを気にしていた。自分にも全部教えて欲しいと。良くないことも。
　亨は、鷹野に電話をする。帳簿が手に入った。鶴巻幹事長の次男の会社に、蟻田から多額の金が渡っている・・・。鷹野「このままじゃ、オヤジを来られない。知ってんだろ。二世議員のコンプレックス」と、亨と一緒に幹事長室へ。鷹野は、鶴巻幹事長に、幹事長の任期のルールにはずれているから、次からははずれてもらうと伝える。鶴巻幹事長「イヤだと言ったら？」。亨は、デジタルアンツの帳簿を見せる。鶴巻幹事長「鷹野君は、やっぱりおぼっちゃまだねぇ。キレイに引っかかってくれるとは」。その帳簿は全部嘘。蟻田に、亨の関係者が来たら偽の帳簿を渡すように伝えていたという。「私に手を出せると思うとは。これだから、苦労知らずのボンボンは」。しかし、亨から、別の切り札が。１枚ずつ写真を見せる。どの写真も、鶴巻幹事長が移動の際、よろけて、人に支えられないと歩けない様子が映し出されている。最近は、外出も少なく、幹事長室にこもりっきり。体調が悪いんじゃないかと。鶴巻幹事長「なかなかしつこいねぇ、鷲津君」。すると、目の前で馬場に電話をかける。馬場は、金を返して警察に行くと言う。幹事長に借りができてしまったのだと。実は、未成年と不倫をしていたのだった。鶴巻幹事長は、今すぐに警察に出頭するようにと伝える。鶴巻幹事長「これで君は終わりだ。残念だったね」。
　そこに、鴨井が緊急記者会見を開くという情報が届けられた。重大な発表をするという。慌てて駆けつける亨。鴨井は、自分の息子が、亨の息子を歩道橋から突き落とした犯人で、今警察に出頭しているところだと。自分の力では、警察へ圧力をかけることはできない。近しい人に相談をした。その方から、誰かに頼んでくれた可能性は否定できない。大臣を辞任するだけじゃなく、議員の職も辞めると。みなが呆然としている。鴨井だけが、国民の信頼を裏切ることをしたので当然だと、毅然とした態度で頭を下げた。

＜第９話＞

　泰生の事件を隠蔽した、東都警察の署長・辰吉が休職し、新しい署長・未山が挨拶に来た。事件の報告と謝罪だという。隠蔽に関しては、どこからも圧力はなかったと判断。単なる初動捜査のミスだという。もちろん、納得できない亨と可南子。辰吉は、今どこにいるのか分からない。口封じのために辞めさせられたのだろう。鴨井の会見のおかげで、亨は救われた。しかし落ち着いたら、鶴巻幹事長は、必ず潰しに来る。その幹事長室は、対応に追われている。今なら隙だらけ。亨「あの人の罪を暴くなら、今しかない」。亨が留守の間、事務所で、小鹿がタブレットの修理のため、亨の机を確認している。その時、蛯沢が引き出しの中になにかを見つけた。
　亨は、鷹野のところへ。辰吉のことを見つけ出して欲しいと依頼する。鷹野「このままじゃ、オレまで干される」と協力体制を見せながらも、なにか考えている様子。亨は、熊谷記者にも連絡を取った。もちろん、協力してくれると。その頃、竜崎総理が会見を開いていた。疑惑は徹底的に調査することを約束した。そのニュース映像を途中まで見て、テレビを切る鶴巻幹事長。竜崎総理は、亨の味方なのか・・・。亨「このままじゃ終わらせない。幹事長をやめてもらう。あの人の力を奪う、こんなチャンスは二度とない」。
　鷹野から、辰吉の情報が。今は警察を辞め、再就職先も決まっている。引っ越しもし、しばらく身を隠している。実家の方にいるのかも知れない。可南子は、鷹野の立場を心配する。蛍原は、蛯沢の様子が気になったが、それほど問題はないと感じた。鶴巻幹事長のもとには、未山が来ていた。辰吉は、新しい職場の待遇は魅力的で、何も言わないだろうと。未山は、鶴巻幹事長の言いなりだった。
　蛍原が、辰吉の実家を調べに行くと、実家には戻っていない様子。蛯沢は、辰吉の妻の実家に行ってみるが、こちらにいた様子。亨が辰吉に会いに行く。亨は、辰吉がひどい扱いをされていると。今まで築き上げたキャリアを全てつぶされ、同僚から無能扱いされている。「結局、あなたの１人負けだ」。そして、署長まで出世できたのは、鶴巻幹事長のおかげなんだろうと。プライドを傷つけられた辰吉は、自分の実力で出世できたんだと反論。その流れで、思わず、自分の厚意で文哉を守ったと口を滑らせる。その言葉を聞くと、熊谷記者がレコーダーを持って姿を現す。亨は、辰吉が苦労をして署長になったことを知っていると。「いいんですか。これで。全部あなた１人のミスにされて、悔しくないんですか」と亨。
　辰吉が語りはじめた。文哉の７年前の事件を、上に言われ不起訴にした。すると、鶴巻幹事長が「世話になった」と電話をかけてきた。今回のことも、自分から鶴巻幹事長に連絡を取った。このことが、雑誌に載る。動画も撮影され、配信された。鶴巻幹事長の秘書から連絡を受け、依頼を受けたと。鷹野の秘書が「終わりですね。幹事長」と言うが、「どうかな」と鷹野。蛯沢は、亨に「この先どうしたいですか」とたずねた。鶴巻は失脚するだろう。復讐は済んだはず。以前、自分に同じ事を亨がたずねていた。亨は、自分と同じような思いをした人がいる。弱い側の立場で、議員としての力を使っていきたいという。それを聞いて、蛯沢は秘書を続けることを伝えた。
　亨に取材が殺到。猫田「いきなりヒーロー扱いですね」。竜崎総理「いいんじゃない？どんどん書いてもらうといいよ」。可南子だけでなく、いじめから不登校になった子どもを持つ親・朱雀もインタビューを受けていた。可南子には、公演の依頼も来ていた。泰生は「全部終わるし。復讐的なこと。オレが退院できたら、ハッピーエンド」と。今度こそ家族でキャンプに行こうと。
　鶴巻幹事長が会見を開いた。事件のことは、警察側から連絡を受けた。そのあとのことは、自分は何も聞いてない。筆頭秘書の一存で行われたこと。自分は全て知らないこと。体調も問題ない・・・そう言い切ると、質疑応答もなく席を立っていった。その鶴巻幹事長を、猫田が迎えに来た。竜崎総理のもとへ。そこに亨も呼び出された。竜崎総理の提案として、秘書の一存とは言え責任をとって、鶴巻には幹事長を辞めてもらうと。鶴巻幹事長「提案？指示ではなく？提案は提案として、聞いておこう。従うつもりはないけどね。彼には？」。竜崎総理「もう十分だろ。これ以上誰かを追い詰めたり、マスコミをあおる行動は慎んで欲しい」。そうすれば、選挙違反のことは世間に出ることはないと。「わかりました」と亨。竜崎総理「これで手打ちだ」と、２人を握手させる。
　入り口にはマスコミが殺到している。亨は、自分が気を引くから、鶴巻には地下駐車場へ行くよう促した。亨は、マスコミの取材を受ける。亨「納得？できるわけないでしょ。意識戻らなかった可能性も、命が奪われた可能性もある。なのに、秘書の電話１つで、事故にされる。私や妻がどんな思いでここまで来たのか。分かるはずない。家族を奪われそうになる恐怖も不安も分かるはずありません。ですが、今、総理の前で、幹事長から直接謝罪を受けました。これ以上、誰かを追求するつもりはありません」。思わず、総理が、幹事長を辞することを提案したと口を滑らせ・・・たふりをし、鶴巻が地下駐車場に行ったことも伝えてしまう。マスコミに囲まれた鶴巻「黙れ！」。そう叫んだ瞬間、倒れてしまう。
　そのニュースを、真っ暗なリビングで見ている亨。可南子が「これで終わりだね」と声をかけるが返事がない。亨の顔を見ると・・・不気味な笑みを浮かべていた。
　鶴巻は、幹事長を辞任。泰生は、リハビリを続け、少しずつ歩けるように。亨は、内閣総理補佐官を任命された。とんでもない出世。泰生は、１人で歩けるようになり、退院することになった。家に帰ると、亨が待っていた。３人で、家での久しぶりの食事を楽しんでいると、電話が鳴る。亨は呼び出されて行く。内閣総理補佐官に任命された会見を、総理とともに開いた。その様子を見て、鷹野は「総理よほどうれしかったんだな。幹事長交代できて」。しかし、秘書は、鷹野も手を貸したのに、全て亨の手柄になってしまったと。鷹野「いいんじゃないの。どんどん出世してもらおうよ」と言う。
　鴨井が、可南子の勤めるNPO法人に顔を出した。今は、地元で支援活動を行っているという。一からやり直し、そしていつか国政へ戻ると。大勢を助けるためには、力が必要。文哉も、今度こそやり直すと言っていたと話す。可南子は、亨の変化を心配していた。鶴巻が倒れたニュースを見ているときの顔。今まで可南子が知らない顔だった。「初めてでした。あんなに怖い顔」。今は、忙しくなり、家族と話す時間もない。何を考えているのかわからない・・・。
　亨は、熊谷記者を呼び出した。朱雀から相談を受けたという。職場でパワハラで訴えられ、雑誌に載りそうだから、記事を差し替えて欲しいと。その代わりになるネタも提供した。熊谷記者は、その記事は来週でると。「編集長のお考えは別でしたよ」と亨。熊谷記者「先に手を回したの？こんな形で記事つぶすなんて、最低！」と出て行く。心配する蛯沢だったが、亨は、週刊誌の記者ととずっといい関係でいられるわけではないと。鷹野は、１人飲んでいる熊谷記者に声をかける。鷹野は、亨は舞い上がっているんだろうと話す。熊谷記者は、そのうち鷹野のことも裏切るんじゃないかと言うが、「でしょうね。それなりの対応はしますよ」と鷹野は笑っている。
　亨の政治資金規正法違反疑いという記事が雑誌に載る。鶴巻の仕業。亨は、貝沼１人を呼び込む。部屋から出てきた貝沼の様子がおかしい。貝沼「記載ミスで申告し治せば大丈夫。ダメだったら、オレのやったことにする」と平気なふりをする。とうとう、亨は家に帰らなくなっていった。
　亨が、蛭谷新幹事長の元に行くと、鶴巻が復活していた。蛭谷は鶴巻のいいなり。さらに、虻川もやってきた。記事に載った情報は、虻川が流していた。以前、犬飼がやっていたことで、まだやっているだろうと思い、探ったらその通りだったと。虻川は、鶴巻に拾って貰い、私設秘書になっていた。さらに「鷲津亨は偽善者・・・破滅さる」という怪文書も、あちこちに届けられた。鶴巻「君を恨んでる人、他にもいるみたいだね。どう？恨まれる側になった気分は。ねらわれる側にまわった気分は」。

＜第１０話＞

　鶴巻「どう？恨まれる側になった気分は。ねらわれる側にまわった気分は」。
　怪文書が、またあちこちに届けられた。パワハラの記事を握りつぶしたという内容。竜崎総理「困るんだよね」。これが続くと、党内での印象が悪くなる。亨は、犯人は分かっていると。あの虻川が戻ってきている。虻川を使って、鶴巻がやらせているんだろうと考えていた。鶴巻は、怪文書を見ると「鷲津君もずいぶん恨み買ってるんだね。次はどんな問題が出てくるのかな」と。亨は、鶴巻を追い落とせるネタを手に入れると。鶴巻に、竜崎総理もえらそうな顔をされていたくないだろうと。すると、竜崎総理は、厚労省の副大臣のポストをちらつかせる。
　亨は、熊谷記者の元へ。とりあえず、記事を握りつぶしたことを謝罪するが、鶴巻のネタを教えて欲しいというのがねらい。以前、新聞社に勤めていたときにつかんだという大きいネタ。代わりにネタを提供すると提案。それに応えない熊谷記者。亨「今を逃したら、鶴巻は以前の力を取り戻す。そしてそのまま居座り続けるんです。事実上の、党の最高幹部として」。一瞬足を止めた熊谷記者だったが、そのまま去って行った。
　怪文書は、家にも届いている。可南子には、記事を握りつぶしたことはない、嘘だと。鶴巻の嫌がらせ。しかし、完全には信じられない可南子。事務所でも、誰が犯人なのかが話題。しょっちゅうやってくる小鹿まで疑いの目が？そんなとき、熊谷記者がやってきた。亨は不在だったが、蛍原に話があると。亨に頼まれたネタ、鶴巻とゼネコンの癒着の資料を渡す。熊谷記者は、亨のことは信用していないが、虻川や鶴巻の方がもっと嫌い。永田町から消えて欲しい。自分のところの雑誌では記事にできないぐらいヤバいネタ。「無駄にしないで」。事務所を去った熊谷記者は、鷹野に報告。実は、鷹野に頼まれてやったことだった。熊谷記者は、鶴巻を追い込んだら、亨が一気に出世してしまうのに、それでもいいのかと。鷹野「そんなに単純じゃないけどね」。
　鶴巻の不正について、亨・蛍原・蛯沢で調べはじめる。もし不正が暴けたら、補佐官以上のポストも夢じゃない。竜崎総理がそういった。亨は、そうなれば、もっと大勢の人の力になれる。「必ず結果を出して、もっと上に行く」。地元の活動や大事にしていたはずの陳情の対応まで、すべてを貝沼に任せてしまっている。
　可南子の勤めるNPOに、１人の女性が来ていた。助けてほしいと言いながら、何も話さず帰ってしまう。可南子が追いかけ、話を聞いた。しかし「もう大丈夫」と話そうとしない。可南子は、自分の思い出を話す。大事な友だちが「もう大丈夫」と言って、久しぶりに笑顔を見せた。それで信じてしまったが、全然大丈夫ではなかった。ビルの屋上から身を投げる・・・。「心が死んだら救えない。よく似てるの、あなた。何でもいいから、話聞かせてくれない？」。その女性は、少しずつ話し始めた。亨は、鶴巻の件に夢中。家に帰り、可南子が女性の話をしようとすると、専門外だと、全く話を聞こうとしない。
　鶴巻幹事長の次男の不正が少しずつ明らかになってきた。４年間で５億の金が、鶴巻幹事長の次男の会社に。不正な金は、現金でプールしているはずだと。亨は、どこかに出かけていく。その後をつけているのは虻川。亨は、国税局の友人と会った。手にしたメモとは、違う話をしている。虻川には、声しか届かない。虻川は、新しいネタをつかんだと鶴巻に報告。一方、国税局の友人は、鶴巻幹事長の次男の会社に税務調査に行くと連絡する。それを聞いた鶴巻は、亨が仕掛けてきたと思い、「金を動かせ」と電話で命じた。慌ててスーツケースに５億円を詰め込み、運び出す。途中で、蛯沢がぶつかり、スーツケースが開き、大量の金があらわになる。それを蛍原が撮影してた。
　亨は、その写真を竜崎総理に見せ、鶴巻の不正について報告する。、亨は「私に力をいただけませんか」と、副大臣から大臣へのポストを要求。今のポストでは、権限が少なく、救える相手が限られてしまっている。約束してもらえれば、このネタをリークすると。そうなれば、鶴巻派が分裂するだろう。最大派閥の竜崎派ができるかも。竜崎総理「変わったね、君。こんな駆け引き、提案するとはとても」。亨「議員として、生きるか死ぬかの毎日ですから」。竜崎総理「一晩預からせてくれ」。朝、亨は、ポストが上がればこの前のことも対応できると可南子に。しかし可南子は「家族として話を聞いてほしかっただけ」と。
　事務所では、蛯沢が経営に困ってる人からの陳情書を見せるが、雑に扱ってしまう。鶴巻をつぶすことしか頭にないよう。机の上には、地元のの人からもらった竹細工が。それを見て、蛯沢は竹の話をする。竹は、数十年～１００年に一度だけ花を咲かせる。亨が竹に似ていると。亨「なかなか花が咲かない」。蛯沢「立派に花が咲いてるじゃないですか」。亨「もっとでかい花を咲かせるよ」。
　その時鶴巻政界引退のニュースが流れる。慌てて臨時総会の会場へ向かう。鶴巻は、体調悪化のため治療に専念すると。拍手で見送られる鶴巻。これで、表に出ていなくても、影響力は残った。
　鶴巻に呼ばれた亨。ポストを要求したことを知っていた。竜崎総理が話をつけに来ていた。竜崎総理は、亨が調子に乗りすぎていると。鶴巻と竜崎総理で話しがついていた。今回の不正のネタを表に出すことは、総理も党も敵に回すことになる。「残念だったねぇ」。鶴巻は「私ほど、税自を守ってきた人間はいないよ」。この国の人間は、気分でしか政治を考えない。不満を言うだけ。あとは国がなんとかしてくれる。ガス抜きが必要になったら、総理を変える。それで意見が通ったと考える。だから、決してトップには立たない。次にすげ替える首を用意。そうやって秩序を守ってきた。このまま働いていたら年内に死ぬと言われていたから、ちょうどいい機会だった、とまで言う。地盤は息子に継がせる。亨「いつも権力にしがみついて」。鶴巻「同じだろ？君だって。気持ちいいだろ。力を使って、誰かを救うのって。いくつかの善を重ねる内に、それが悪と呼ばれるようになる。すっかりとらわれてしまったじゃないか。権力という魔物に」。
　亨は、竜崎総理の下へ。しかし、官邸へ出入りをしばらく控えるようにと言われる。鶴巻が引退することで、虻川派また失業。虻川「お前も時間の問題だけどな」。怪文書は、自分じゃないという。「鷲津亨を狙っているのは、オレや鶴巻さんだけじゃない。そのうち分かるよ」。
　新たな怪文書が届く。今度の内容は、選挙違反疑惑。亨は、竜崎総理に呼び出される。怪文書の件。そして、なぜ完全に鶴巻をつぶさなかったのか、その理由を教えてくれるという。鶴巻は目障りだが、今回のことで、最大の弱点をつかめた。それでやっと対等に。いつかは逆転を狙う。そのためには、鶴巻の影響力を残しておいた方がやりやすい。鶴巻には、秩序を保つ力がある。亨は期待以上のことをしてくれたが、「交換条件はやりすぎだったかな」。副大臣のポストは、鷹野に譲られた。「彼はなかなかの策士でね。君も気をつけた方がいいかもしれないな。１日も早く犯人を見つだせ。この程度処理できないなら、ポストになんてとても」。
　事務所に戻った亨は、今やっている仕事を全て止めて、犯人捜しを優先しろと命ずる。蛍原が「犯人捜しよりやることがいっぱい」と訴えると、蛍原のことを疑ってしまう。「どうかしてるな」と亨。焦りが見られる。鷹野が正式に副大臣に任命された。鷹野は、蛍原に声をかける。亨のことを心配しているよう。議員は大変だから、おかしくなると。蛍原「私たちが支えなきゃですね」。鷹野が心配していたことを聞き、なにかを考える亨。
　亨は、鷹野に連絡を取り、自宅で話をすることにした。亨が帰る前に、可南子は鷹野に相談をする。法律は女性に優しくない。法律の壁を感じていると。亨が帰ってきた。熊谷記者から、亨が記事をつぶしたことを聞いたことを確認。「総理が褒めてたぞ。なかなかの策士だって。どんな手を使った？副大臣になるために・・・怪文書で脅されるオレを見て楽しかったか。嫉妬してたのか」。亨は、怪文書の犯人が鷹野だと思い込んでいた。亨「お前には分からないよな。最初から政治家の道を用意されていたお前に。苦労知らずの二世議員にわかってたまるかよ」。鷹野「いいかげんにしろ！」。そのままケンカ別れ。可南子「どうしちゃったの」。亨「当たり前のことをしてるだけだ。足の引っ張り合いの世界で、生き残ろうとしているだけ。可南子は分かってない」。可南子「分かりたくもないよ」。２人の言い争いに、部屋を出てきた泰生は「かっこ悪いよ、今のお父さん。最低」。
　亨が朝早く事務所に来ると、ドアのところにまた怪文書が。読んですぐ気づいた。「読んだよ。お前の書いた怪文書。今から来れるか」と電話をかけた。「お前だったんだな」。怪文書には、「竹に似て・・・」と書いてあった。亨の前に立っているのは、蛯沢。「他の人が疑われるの、気の毒だなと思って」。竹は、花を咲かせると枯れてしまう。それを揶揄していた。蛯沢は、兄の件を知っていた。小鹿が机の引き出しを開けたとき、見てしまった。兄の件の真実が分かってしまった。許せないと思っていた。でも、亨が必死に陳情に応えようと仕事をしている間は、がんばって支えようと思っていた。その方が兄も喜ぶと思った。しかし、半年で亨が変わってしまった。上へ、上へばかり。亨「それは力が必要だから」。蛯沢「力？誰のための？そんなの口実だろ。犬飼や鶴巻と同じじゃねぇかよ。このままじゃ、アニキが浮かばれない。だから決めた。鷲津亨を許さない。絶対に許せないって」。
　

＜第１１話＞

　蛯沢「だから決めた。鷲津亨を許さない。絶対に許せないって」。亨「で、どうするんだ」。何も答えられない蛯沢。蛍原がやってきた。亨は怪文書の犯人が蛯沢だと伝える。そして、蛯沢に「クビだ」。もし、同じことをしたら法的処置をとると。蛯沢は飛び出していき、蛍原が追いかける。蛍原は、当時の大変さを伝えた。しかし、蛍原も知っていたことを知り、蛯沢は「もう誰も信じられない」。そして、必死にフォローする蛍原に「鷲津さんのこと好き何じゃないですか」と言ってしまう。蛍原「言っていいことと悪いことがある」と、蛯沢をおいて戻っていく。亨は、猫田に犯人がわかったと報告。鷹野は、竜崎総理の元へ。「例の件で」。家では、可南子が「話したいことがある」というが、「忙しい」と相手にしない亨。
　竜崎総理に呼ばれた亨は、鷹野のスキャンダルをつかめと命じられる。竜崎総理は、鷹野が目障りになってきた。鷹野が、竜崎総理のあら探しをしていると言う。蛯沢は、千葉県警へ。選挙違反のことを告発するが、詳しいことがわからない。捜査担当者・鮎川は、亨に連絡してきた。逆恨みだろうと言いながらも、一応話を聞きに来ると。亨は、資料の用意を蛍原に頼んだあと、さらに鷹野のスキャンダルを探るよう命じる。捜査をストップさせるためには、総理の力が必要。そのためには、鷹野を切るしか、議員として生き残る道はない。
　鮎川たちには、資料を渡す。冷静に対応していた亨だったが、焦りを感じていた・蛍原に鷹野のスキャンダル探しを急がせる。納得がいかない蛍原は、可南子に相談した。可南子「変わっちゃったよね、あの人。もう遠くに行っちゃったのかもしれない」。
　亨は、猫田に相談。県警には釘を差してくれるというが、代わりに鷹野の件を改めて頼まれる。亨が、蛍原に鷹野の件をたずねるが、蛍原は「調べてません。やるべき仕事ではないと思うので」。今までは、亨のことを支えていこうと思っていた。しかし、「もう支えたかった鷲津さんはいません」。その言葉に、亨は「退職願を書いといて」。ただし、今月いっぱいは働いてもらうと。続いて、亨は熊谷記者のもとへ。鷹野のことを探ろうとする。鷹野が大臣の座をほしがっていると言うと、熊谷記者「わかってないんですね。総理を脅してるんじゃなくて、不正を追ってるだけ」。
　熊谷記者に蛯沢からメールが届く。選挙違反について、蛯沢は具体的に知らなかったが、いくつかのキーワードで、熊谷記者は、馬場に辿り着いた。そして、亨の選挙違反疑惑の記事が載る。「困るねぇ」と竜崎総理。亨に、総理補佐官を辞任するよう命じる。会見を開いて説明すると、スケジュールまで管理。その代わり、選挙違反の方は対処すると。代わりに、鷹野のこと改めて念を押される。
　家に帰ると、可南子が荷物をまとめていた。可南子「鷹野さんのこと、裏切ろうとしてる？」。亨は、ただケンカしただけだという。可南子は「私には嘘つかないで」と言い、亨に書類を手渡す。離婚届。可南子は、大事な友だちのことを話す。NPOの仕事を始めたが、自分の無力さを感じているところに、亨と出会い結婚。それを口実に、人を救うことから逃げた。しかし、今回の事件で思い出した。もう二度と逃げないと決心した。突然のことで驚く亨だが、可南子は「話したいって、何度も言ったよ」。忙しいと逃げていたのは亨だった。可南子「私たち、前は同じ方向を見れていたよね。今は、あなただけ別の方。だから気づかなかったんだよね。私や泰生の気持ちに」。鷹野とケンカしたあと、泰生が「オレのせいだよね。お父さん変わっちゃったの」と言っていた。亨は、自分のように、２人には惨めな思いをさせたくなかったからだと。可南子「わかってる。でも決めたの」。そう言って出ていった。
　亨は、下校途中の泰生を離れたところで見ていた。泰生の目の前で、いじめられてる子がいた。泰生は、いじめを止めに入った。いじめられていた子に「すごいね」と言われると、「普通でしょ」と泰生。あのキャンプ場で、亨が言った一言だった。そんな泰生の姿を見て、涙を流す亨。
　鷹野が２人で話がしたいと言ってきた。鷹野「正直に言う。たしかに嫉妬した」。しかし、それは役職のことではなく、鶴巻のこと。力を少し削れればいいぐらいに考えていた。しかし、亨は引退までに追い込んだ。それで、負けてられないと思った。やれることをやろうと決心した。竜崎総理は、過去のスキャンダルの仲裁に暴力団を利用し、今でも付き合いがある。亨は「総理に手を出すな。総理を暴くなら、オレがお前をつぶすしかない」。鷹野「お前、騙されてるだけだ」。亨「古い話でも、まずいネタ、聞いてるからな」。古い付き合い。いろいろ知っていた。亨「話は終わりだ」。
　そのころ、貝沼は事情聴取を受けていた。県警は、なかなか引き下がらない。亨は、竜崎総理のこともとへ。古いネタだが、鷹野のネタの裏が取れたと。その代わりに条件を出す。会見を開いて、先日の報道が誹謗中傷だと説明をしたい。それを生中継する。その最後に、鷹野のスキャンダルをバラすと。竜崎総理は、猫田に視線を送る。実は、鷹野と２人で話しているところを、猫田に見られていた。大丈夫というようにに頷く猫田。竜崎総理は、亨の提案を受けた。亨が出ていくと、「鷲津君も用済みだな」と竜崎総理。蛍原から、会見の連絡を受けた蛯沢「なんすか、それ」。
　亨は、可南子に離婚届を出したと報告。家は、可南子と泰生が使えばいいと。目指したい道の勉強をはじめるという可南子。支援活動をしていて気づいたのは、法律の壁。その法律を変える力が欲しい。それができるのは政治だけ。誰かが変えてくれるのを待ってるだけでは変わらない。後援会の鰐淵が応援してくれるという。まずは市議から始めて、最終的に国政へ。
　会見の日。亨は、猫田と打ち合わせ。中継スタッフも記者も、総理に近い人間を集めてある。原稿も用意されている。亨が自由に発言できるのは、鷹野のスキャンダルだけ。会見が始まる。予定通り、原稿を読み上げる亨。満足そうな竜崎総理。亨「と、これが与えられた原稿です」と、その場で破り捨てる。亨「全部嘘です！私は、罪を犯しました」。真実を告発しようとしたところで、会見の中継は切られ、取り押さえられそうになる。亨は逃げながら蛍原に「事務所に戻る！急いで！」。事務所では小鹿がカメラの設置をしていた。部屋には、熊谷記者も待っている。ここからが、会見の本編。蛍原には時間稼ぎを依頼。以前の亨の顔に戻っていた。蛍原は、うれしそうに返事をする。蛯沢には、熊谷記者から連絡が届く。「拡散よろしく」と。
　亨「本当のことを話します。私には、力がありませんでした。でも議員になれたことで力を得て、隠されていた多くの情報を得た」。鷹野と話した後。鷹野と熊谷記者と相談していた。あのときは猫田に話を聞かれていたので、ああいうしかなかった。亨「最後にでかい罠仕掛けるぞ」。亨は生中継で、鶴巻幹事長不正を暴く。さらに、それを暴こうとすると、竜崎総理に潰されたこと。猫田たちが、事務所の前で中に入ろうとしている。蛍原が必死にそれを止めている。さらに、亨の告発が続く。竜崎総理が暴力団とつながりがあること。それを見つけた議員を潰せと命じたこと。その代わりに、選挙違反のことはもみ消すと言ったこと。ドアが開けられ、蛍原が、押さえられず・・・。必死の形相で、亨の部屋のドアを開けようとする。その姿も、しっかり生中継されている。「つい最近まで、似たような顔をしていた」という亨の顔は、以前の顔に戻っていた。亨「今まで踏みつけられても、がまんするしかなかったのが、急に力を得て、みんなが頭を下げてくるようになった。無理が通る。人を救える。困ってる人の力になれる。それは本当に・・・」。鶴巻が言った「気持ちいいんだ」が頭に浮かぶ。亨「ホントに気持ちいいもので。もっと力になりたいって。そのためなら、多少強引なことも仕方ないって。力によって、善人になってるつもりが取り憑かれてただけだ。力に、権力に。都合の悪い記事は握り潰し。まずいことは秘書のせいにしようとした」。猫田たちが入ってきた。猫田「君は何をやってるのか分かってるのか」。亨「秩序が壊れる？国が乱れる？ガス抜きのために、また総理を変えなければならない。何が秩序だ！この程度で壊れるものなら、壊れればいい！古い物なくなったら、新しい芽が出る。オレたちが見たことのないような、新しい何かが。不正を隠蔽してまで、守らなければならない？そんな政治なんて、壊れちまえばいいんだよ！」。数々のスキャンダル写真をばらまく。慌てて拾おうとする猫田たち。全てが生中継されている。多くの人が視聴していた。鷹野は、うれしそうに微笑む。蛯沢は、走り出す。
　可南子と話し合った日。亨「ホント、オレは何もわかってなかったな」。そう言うと、可南子を抱きしめ、「がんばれ」。
　亨のもとへ、蛯沢がやってきた。亨「調べちゃったよ。花が咲いて竹が全部枯れたあとどうなるか。古い竹藪がなくなって日当たりがよくなったその土地に、新しい竹が芽を出して再生していく。より強くあたらしいものに。そうなるといいな・・・お兄さんのこと、ごめん。力になれなくて」。蛯沢「オレの方こそ」と、涙でくしゃくしゃの顔。亨「出頭してくる」。亨は千葉県警へ。鮎川が玄関で待っていた。
　鴨井が、可南子を訪れた。亨は立件されない可能性があると。金を受け取った馬場は、金を独り占めしていた。そんな証言では、信用性に欠ける。証拠不十分になる可能性がある。鴨井「国政目指したらどう？あなたならその力がある。近々、補欠選挙あるじゃない。千葉１５区。本気で誰か救いたいなら。迷ってる暇ない」。鴨井が協力してくれる。
　竜崎総理は辞任。代わりに総理になったのは、蛭谷。もちろん、彼の側には鶴巻がいる。補欠選挙が行われ、雛田性に戻った可南子が当選。それを報じる新聞を、農作業中の男が見て呟く。「わ、し、づ」。以前と違い、優しい「鷲津」だった。貝沼は、鷹野の秘書になっていた。蛍原は、可南子の秘書に。しかし、まだ１人。鷹野「できるだけ早く、優秀なベテランを雇うといい」。亨のことをよく思ってない連中が、嫌がらせをしてくるかも知れない。蛯沢が、秘書採用の面接に来た。「もう一度、一からやり直しさせてください」。新人で、女性で、さらに元鷲津の妻ということで、可南子は他の議員からいじめられてる。そこへ１人の男がやってきた。「面接に来ました。募集してると聞いたんで」と、亨。「政策秘書、まだだろ。配偶者は。公設秘書なれない。でも、オレは違う。人脈も経験も豊富。最高の秘書だと思うんだよな」。「採用です」と可南子。亨「やった」。可南子「お帰りなさい。鷲津さん」。２人は、議員と秘書として、歩いていく。

第１話	弱き者の復讐劇が幕を開ける！愛する家族を守れ	第２話	逆襲の時！パワハラ秘書排除だ
第３話	ついに激突！憎き大臣の弱みを暴け	第４話	新たな敵で深まる謎．．．永田町の闇に飛び込め
第５話	総選挙が開幕！下克上で真相を暴く	第６話	政治家に転身！敵は幹事長だ
第７話	真犯人が判明！政界が隠す事件の事実	第８話	宿敵との攻防戦！罪には罰を
第９回	政界が激震！復讐果たす大逆転劇	第１０回	復讐される側へ・・・正体現す裏切り者
第１１回	権力の闇に射す光は…衝撃の結末へ