| 第1話 橋の下で黙々とカードを削る男・・・。 華やかなパーティー会場。富男が数字の記憶力の良さを披露している。富男は抜群の数字の記憶力を持ち、しかも気が利く男だった。今日は、富男と梢の婚約披露パーティー。皆が晴れやかな衣装に身を包む中、１人場違いな服装の男が富男に近づいてきた。富男は適当にあしらう。どうやら覚えていない様子。その男は富男の様子に怒りを感じながら去って行った。梢の祖母・早和子もやって来る。まだ孫の相手としてふさわしいとは認めていない。富男の今の地位は、大企業の看板を背負っているからこそ。富男本人が偉いのではないと。富男は、一切反論しない。冷静に対応した。早和子は、それだけ言うと帰ってしまう。梢は、富男の大人の対応に満足していた。反論すれば、祖母の思い通りになってしまう。今度は、富男の携帯がなる。実家からだった。父・孝夫が行方不明だと、混乱状態の母・三保子。借金がどうしようもなくなり、死んでしまうかも知れないと言う。 未央は、案内係が人員整理されると聞き、派遣の契約が切られるのではないかと不安になっていた。 富男が急いで実家に駆けつけると、工場の前には、入金を催促する人が集まっていた。5年前、設備投資のため銀行からお金を借りた。それから借金が増え続けた。富男が話を聞いている間もファックスや電話がなりやまない。全て金貸しから。ヤミ金にまで手をつけてしまっていたのだった。しかも、誰も正確な借金の額を把握してなかった。「なんでここまで黙ってたんだよ！」と、怒鳴る富男に、富男には心配かけたくなかったからだろうと。実は、富男は連帯保証人になっていた。富男は、銀行等で借金の額を確認にまわる。父親名義や会社名義、かなりの額になっていた。呆然とする富男。先月分の給料も未払いで、仕入れ先への未払い分もある。富男は、社員には、工場が維持できるよう、父親が戻って来たら相談していくと伝える。富男は、会社で上司にさりげなくお金が借りられないか探る。外資の証券会社、金銭トラブルはご法度だった。そんな時、会社にも電話がかかってきてしまう。 とある高校の前。赤松たちが、紺野を待ちかまえていた。義理の妹夫婦が借金を作り、返済できない状況になっていた。連帯保証人になっている紺野だったが、返済できるほどの貯蓄はない。しかも、すでに義理の妹夫婦にはお金を貸していて、その分も返してもらっていない。このままだと、やくざが乗り込んで来るようになると脅かされる。困惑する紺野に、赤松がある提案をする。赤松から紺野が500万借金をして、それを義理の妹夫婦に貸して返済に当てさせる。紺野が借金を返済しながら、義理の妹夫婦からお金を返してもらう。冷静に考えれば、借金が増えていくだけだが、言葉たくみに操られ、提案通りに借金してしまう。 富男は、警察に捜索願いを提出した。警察によると、孝夫は大量の携帯電話を購入してから、姿を消している。悪質な業者からも借金しているかもしれない。富男のマンションに、梢がやって来た。梢は、早和子とやっている新しい仕事は順調だと言う。一方、富男の抱えた借金は、貯金や保険を解約しても返しきれない。家も工場も手放すことになる。梢は「うちから借りたら」と提案するが、富男は「それで、やっぱり財産目当ての男だったと思われるんだ・・・自分の力でなんとかしてみせる。大丈夫。たかが数千万の金なんてなんとかなる」と。 三保子は日課の神社へお参りに。富男は、給料や一分借金の返済を自分の貯蓄から出す。通帳には75円しか残っていない。実家に行くと、朝から嫌がらせの出前が次々と届いていた。ひたすら謝り疲れきっている三保子。それでも、神社からもらってきたお札を拝み、毎日まじめに生きてれば、きっと守ってくれると信じ切っている。富男は、母に家も工場も手放すことになることを伝える。工場だけでも守りたい母。彼女に頼めないかと懇願する。そこにまた出前が届く。謝りに行こうと立ち上がっ母だったが、倒れてしまった。脳出血だった。病院に駆けつけた光太郎にも、家も工場も手放すことになることを伝える。この状況を全く知らなかった富男に、光太郎は「普通気づかない？！」と責める。 紺野は娘の未央に、借金のことを伝えようとする。しかし未央は節約しなきゃと、１人しゃべっている。おじさんたちに会ったというと、借金を返してくれたのかと。言い出せなくなった紺野は、結局話をごまかし、伝えられなかった。 橋の下にはひたすらカードを削る男・・・孝夫の姿が。 富男の会社にも朝から電話がかかってきてしまうようになった。富男は、上司に呼ばれ、覚悟をするが、金銭トラブルはいいという。ただ、あと2日で3億円売りさばけと言う、無茶なノルマを与える。 未央は、仕事困ってる時に、銀座にも出店しているフレンチレストラン社長・植草に助けてもらった。 いろいろな顧客に会いに行き、必死にノルマをこなそうとする富生。電話連絡をしながらも、母の病状を光太郎と一緒に医師から説明を受ける。手術も難しく、かなり深刻な状態。今度は警察から連絡がくる。父が見つかった。カードを尖らせ、首を切って亡くなっていた。遺書には「すまない 借金はするな」とだけあった。富生「なにやってんだ、親父。こんなところでなにやってんだよ」。赤松のところにも、父が亡くなったという連絡が届いた。そこには、父が大量購入した携帯電話があった。これで、赤松は損をすることがなかった。富生が会社に戻ると、他の社員が噂をしていた。富生を辞めさせるため、わざと無理なノルマをあたえたんだろうと。仕事ができる富生をかわいがっていたのに、問題が起こると手のひらを返すように切り捨てる。富生が席につくと、すぐ上司に呼ばれた。上司は、プライベートが忙しく、ノルマは達成できなかったろうから、会社のマンションは１週間以内に出ていくようにと。そんな上司に、富生は書類の束を突き付け、「ノルマは達成しました。どっちみち、切り捨てるつもりでしょ」。トラブルが上にわかってしまえば、上司も切られる。その前に富生を切り捨てようとした。富生「平凡な上司のもとで働くのも飽きてきたところですし」とその場を去る。 母のもとへ行く富生。話かけても、何も答えない母だったが、父が亡くなったことを告げる。その後、母が毎日通っていた神社へ。富生「なに見てんだよ、神様ってやつは」。閉門の時間だと言われても、気持ちが収まらない富生。毎日、5円のお賽銭、毎年の初詣のお賽銭、全て返してくれと暴れだす。光太郎が警察まで迎えに来た。２人で帰る。光太郎に、富生は「偉そうなこと言うんだったら金出せ！」とつかみかかってしまう。光太郎の表情を見て、慌てて手を離す。光太郎は先に行ってしまう。１人取り残された富生。その場で座り込む。その時、500円玉が転がってきた。思わず靴で隠してしまう。未央が500円玉を探しに来るが、知らないととぼける。怪しむ未央だったが、がんとしてきかない富生にあきれて帰っていく。富生は梢に電話をするも、頼らない。梢は祖母に頼み込むが、祖母は富生が惨めになるだけだと断る。 父の保険はすでに解約済みで、残ったのは借金だけ。借金のため、頭を下げ続ける富生。学生時代の友達にまで。そして、あのパーティーに来ていた男のところにも。彼は後輩の灰谷。ゲーム関連で成功していた。昔は偉そうにしてたのに、と門前払い。レストランで女性と食事していたが、富生はずっと外で待っていた。なかなか出てこなかったが、寒い中ひたすら待った。やっと酔っぱらった灰谷が女を連れて出てきた。富生は、お金を貸してくれるならなんでもすると言う。灰谷「オレのことバカにしてたでしょ。1千万円の小切手切ってもいい。これ食えたら」と、たった今自分がはいたばかりのものを指さす。しばらくその場にしゃがみこみ、逡順する富生。それを手にして…やっぱり口にすることはできなかった。灰谷「ホントに食ったらちょっと尊敬いたんだけど」。 未央のところへ、植草が誘いに来る。未央よりも友達の桃子ほうが盛り上がっている。困惑しながらも承諾する未央。 富生は、早和子に呼び出された。梢と別れてほしいと、富生の前に現金の山を出す。このお金を貸してくれると言う。返済義務はなし。ただし、梢とは今後一切会わないと言う条件で。富生は「お断りします。飛びつきたいほどこの金が欲しい。でも、梢さんとは別れません。自分の力で家族を立て直し、梢さんと幸せになってみせます」と出ていった。梢は別室で今のやり取りを聞いていた。祖母は「骨のある男ね」。梢「無利子で貸してくれますね」と約束させる。 光太郎から、北海道の医者なら母の手術ができると言う話を聞いた富生は、また梢の祖母のもとに戻って行った。理由は言わず、梢と会わないと言う誓約書にサインして、お金を手にして出ていった。また別室で聞いていた梢は、その誓約書を破り捨てた。富生は、外に出るといきなり債権者のやくざに襲われ拉致された。人気のないところで車からおろされ、暴行を受ける。必死に守っていた現金の封筒も取られてしまった。富生「金を持ってくなら殺せ！」。しかし、殺す価値もないと、男たちは去っていった。その場に寝転んだまま動かない富生。梢が何度も電話をかけたが出ない。紺野が仕事帰り、携帯の呼び出し音に気づき、音の方に行くと、富生を発見した。富生は紺野の元教え子だった。紺野は富生を自宅に連れてきた。未央が傷の手当てをしてくれ、その日は泊めてくれることになった。紺野は、富生のボロボロになったスーツを見ると、そっとポケットになけなしの1万円を入れた。翌日紺野家を出たとき、その1万円に気づいた。黙って家に向かって頭を下げていった。 白石家の前に梢が待っていた。光太郎から事情を聞いたと。梢も封筒に入った現金を差し出す。富生「優しいよな。金を持ってるこその余裕だ・・・余計惨めにするんだ」と冷たくいい放つ。梢が去ろうとすると、富生「金はおいてけよ。気持ちなんていらないから」。梢は、富生にお金を叩きつけた。富生「助かるよ。親父の葬式代ができた」とお金を拾う。泣きながら去っていく梢。工場で子供の頃を思い出す富生。活気溢れる工場で、富生は父のあとを次ぐと宣言していた。そこへ専務がやって来た。なぜ孝夫はこんな工場にこだわるのかと。専務は、三保子と一から一緒に作り上げてきたからだと。父は「若い子達が倒産したら困る」と言っていたそうだ。富生「がっかりしたでしょうね、オレがあとをつがなくて」。専務「富に包まれて生きる。オレの息子はすごい金を動かしてるんだって。名前は伊達じゃないって。がんばろう」。 赤松は、父に関する資料の束を金庫の中にしまう。 父の葬儀。紺野も姿を見せる。列席者に混じって、借金の回収も来ていた。その様子を見ていた光太郎。バイトで貯めたお金を富生に差し出す。光太郎「どいつもこいつも金の話ばかりだ」。富生「一番図々しいやつは、借金残して死んでいくやつ。バカな親父が一番悪い」。会社の上司もやって来た。葬儀に出ることよりも、富生の顧客データが目的だった。持ち出したことを責める上司。パソコンの中には何も残っていなかった。しかし、富生は「全部この中なんで」と頭を指す。信じられない上司。富生「数字覚えるの得意って知ってますよね。一度聞いた数字は忘れないんです」。上司の誕生日等の情報を次々と言い当てる。言い返せない上司は、鬱憤を別の形で晴らす。上司「これだけか？あのときの友達はどうした？金がなくなったら、いなくなったか？」。富生の婚約パーティーのことを、会場でぶちまける。列席者はそんなことを知らない。そんなお金があるなら、借金を返して欲しい、従業員も給料を払って欲しいと騒ぎ出す。誰も父の死を悼むものはいなかった。その様子を呆然と見ている紺野。すると富生が爆発した。富生「なんなんだよ！確かに親父はバカだ。でも、ここまで手のひらを返されるような悪い人間だったのか？！オレが全部返してやるよ！」。光太郎が「親父の葬式なんだよ」と止めに入る。富生「それがなんだ！オレは、オレの人生と親父の人生、金でなくしたもの、全て金で取り戻す！」。そういうと、祭壇に向かって灰を投げつけた。 |
| 第２話 夢に父が出て来た。何か言いたげな様子。そこで目が覚めた・・・。 梢が白石家を訪ねると、光太郎が友達の家に引っ越す準備をしているところだった。三保子はまだ意識が戻らない。光太郎は、富生のことは知らないという。光太郎「顔も見たくない。葬式めちゃくちゃにして。金のことしか考えてない。結婚しなくて正解でした」。 富生は職探しをしていた。住所不定なのがネックになる。そこで、実家の住所をそのまま残し、借金トラブルのことは隠して、自分の実績で雇ってもらおうとした。手応えはあった。富生はビジネスホテルで生活していた。さらに１週間延長しようとすると、持っているカードすべてが使えなくなってしまった。手持ちの現金も残りわずか。これではホテルにも宿泊できない。あちこち電話を掛けるが、泊めてくれる友達もいない。仕方なく、紺野の家に行く。荷物を預かってほしいと。荷物もスーツケース２つ分だけ。紺野は「１人じゃ気まずいところだったんだ」と富生を歓迎する。借金のことが未央にもばれてしまっていた。文句を言う未央。その話を聞いていた富生は、思わず自分の愚痴を言いだしてしまう。「思い詰めて死んだら困る」等々。それを紺野への言葉だと勘違いした未央に激怒されてしまった。未央は富生の今の状況を全く知らなかった。紺野は富生のことを心配する。富生は「大丈夫です。仕事も見つかりそうですし。先生は大丈夫ですか」。紺野「なるようになるさ。金は天下の回り物っていうからね」。翌日、富生は紺野家を出て行った。今度は携帯も止められてしまう。面接の結果もこれでは受け取れない。慌てて公衆電話で相手先に連絡を取る。携帯もつながらず、実家の電話のつながらない。そんな状況では、採用されるはずはなかった。 川辺のホームレス街。誰かが勝手にテントに寝ていると騒いでいる。富生だった。ホームレスたちに袋叩きにされる。そこへ一人の老人がやってきて、止めに入った。その老人は「ここにもルールがあるんだ。相談に乗るよ」とやさしくいってくれるが、富生「ホームレスに相談なんかできるか」と、老人の手を払いのける。すると、持っていた紙袋から大量のお札が舞い散った。富生だけではなく、ホームレス総動員で、川に散ったお金をかき集める。お金を元に戻り、老人は去っていく。後を追う富生。どこに行っても、感謝されている様子の老人。１人のホームレスから情報を得る。あの老人は、金貸しの紅谷。ホームレスから３００億扱うようになった伝説の人。富生は、紅谷に接触し、お金を貸してほしいと依頼する。自分は、「ここにいる連中と違う」と。紅谷は、ここにいる人はみんなそう思っているという。 早和子は梢にホームレスとして生活している富生の写真を見せる。 １人になり、何やら考えている富生。改めて紅谷のところへ話に行く。お金を貸してほしいという富生は「増やします。それを元手に。オレも金貸しを」。紅谷「消えな」と相手にしない。 赤松は、紺野が最初から支払いが遅れていると文句を言う。それを聞いた桜田が「自分が行ってきます」とどこかに向かった。未央が家に帰ると、塀に大きく＜紺野先生 金返せ＞のいたずら書き。１人でいたずらを消す未央。そこへ紺野も戻ってくる。娘の姿を見て、慌てる。紺野も一緒に消し始める。 富生は、紅谷にしつこくくっついて歩く。「先生」「先生」と。しかし、紅谷は、金貸しは引退し、今はわずかなお金を知り合いに貸しているだけだという。紅谷「金貸しなんてやめとけ」。一緒に食事をしていたが、さっと紅谷に逃げられ、残された富生はお金がない。店主をごまかし、トイレの窓から逃げ出した。ホームレス街に梢えが訪ねてきた。富生の姿を見つけてしまう。梢は「恥ずかしくないの」というが、富生は「気楽でいいよ。金のかかる婚約者いないし」。梢「私、悪いことした？」。富生「オレが恨んでいるのは金だけ。信用するのも金だけだ・・・ホームレスと話しているところ見られたら恥ずかしいだろ」。梢「恥ずかしい。自分の男を見る目がこんなになかったんだって」。富生は、眠いからとテントに隠れてしまう。そして、孝夫の姿を思い出していた。 未央は，植草と食事。服装にも一言いう植草。メニューも勝手に決めそうになるが，別れた妻にそこがいけないところだといわれたんだと，一緒にメニューを見る。 富生は，まだ紅谷を追いかけている。３０００万円の借金が残っていると。紅谷は自己破産を勧めるが，富生は「まだまだ大きい仕事をするから」と自己破産をしようとしない。すると，紅谷はテストをするという。それは借金の取り立て。言われた場所に向かうと，前日食い逃げをしたササキ食堂だった。言葉遣いは丁寧な富生。結局相手にされず，最後は水を浴びせられ逃げ出す。紅谷「降参？」。富生「一時撤退するだけです」。 未央は桃子に，植草との食事について聞かれる。普通に食事をして送ってもらっただけだと。植草とは会話が続かず，母親の話ばかりしていると。桃子は，契約を切られる心配しているのだったら，マザコン社長に夢を託す方がいいんじゃないかと。 富生は，夜にまたササキ食堂を訪ねる。食い逃げした分は払えないので，働いて返すと。 梢は，スマホの中に保存されている富生との思い出を見ていた。今の富生からは想像もできない，華やかな世界。梢は，削除しようとするができない。 佐々木が帳簿をつけているが，計算が合わないとイラついている。富生は「パソコンでやればいいじゃないですか」というが，佐々木はパソコンが扱えない。翌日も富生は食堂に顔を出した。パソコンの入力の仕方を，メモに書いて佐々木に渡す。１日食堂で働く富生。夜になり，メモを見ながら佐々木は一生懸命入力していた。富生は，先月まできちんと入力していたのに，なぜできないのかと尋ねる。実は，佐々木の妻が先月まではパソコンに入力していた。しかし，先月事故で亡くなってしまった。富生は，数字の入力に人柄が出ていて，佐々木の妻は誠実な人だと。泣きながら入力を続ける佐々木。そのそばで静かに掃除を続ける富生。翌日，佐々木は利息と元金をまとめて返すと差し出してくる。妻の保険金があるからと。少し考えた富生は「これ，受け取れません」と。そして，紅谷のもとへ。利息しか受け取らなかったと伝える。紅谷「利息しか受け取らなかったの？」。富生「芝居やめてくださいよ」。富生は，紅谷の手帳を覗き込んだとき，高額な貸金はなかった。しかも利息しか回収していない。最初はやさしさだとばかり思っていたが，そうではなかった。わざと利息だけ回収し，元金を減らさない。長く貸すことで，利息で得を得る。その言葉を聞いた紅谷は「明日，朝７時，ここにいけ」。富生「はい。師匠」。紅谷は佐々木に電話を掛ける。このテストで正解を出したのは２人目だった。 富生は，紅谷にくっついて歩き，人の観察を続ける。紅谷「人を見る目を磨くんだ。どれだけ貸せるか，見極めるんだ。金を生み続けてくれるか。それが本物の鐘か知ってもんだ」。夜になり，紅谷は１万円を差し出す。紅谷「やめるなら今だ。なぜ返す？逃げてれば時効になる」。富生は，孝夫が自殺に使ったカードをポケットからだし，「気のいい善人でした。でも借金残して死んだとたん，悪人扱いだ。でっかい金作って，あいつら見返してやる。会いに来たんです。親父。失踪する１週間ぐらい前に」。会社の前で，富生が出てくるのを待っていた。何か言いたげだが，なかなか言い出せない。富生は上司との付き合いがあり，仕方なく父親の話を聞かず，電話するからと行ってしまった。富生「今でも，返済できない金を借りた親父はバカだと思ってます。でも，あの夜，親父と酒でも飲んでたら。話を聞いてたら。次の日でおよかった。電話ぐらいしていたら・・・親父はバカだ。ホントにバカだ。でも，なんでオレは電話を兼ねかかった。仕事の電話はかけるのに。たった１本でよかったかもしれないのに」。その話を聞いて，紅谷は黙ってお札を追加した。紅は「１０万。無期限。倍にして返せ」。そして，減益に眞鍋と，赤松を紹介する。紅谷「金が好きな悪だ。根っからの金貸しだ・・・金のとりこにはなるなよ」。 赤松が街を歩いていると，一万円札が降ってくる。大喜びでかき集める赤松。すると頭上から，「ありがとうございます」と富生の声。全部拾ったという赤松だったが，富生は１枚足りないという。絶対認めない赤松。富生は，番号を覚えていると。戻った一万円札を確認し，足りない分の番号を言う。その番号のお札が赤松のもとに。富生「金貸しの仕事むいてると思うんです。決めたんです。オレの人生金で買い戻す」。赤松「面白いじゃん」。富生を事務所に連れていく赤松。そして，早速借金の回収をやるようにと書類を渡すが，そこには紺野の名前が。そして未央は，契約を切られてしまった・・・。 |
| 第３話 紺野家の前。借用書を手にしてたたずむ富生。桜田も一緒に来ていた。桜谷は外で待っていてもらいたいという富生。赤松も，チンピラやくざとは違うからきちんと対応しろと言われている。だから複数で押しかけるのではなく１人で対応したいと。富生「金貸しの世界で成り上がる最初の一歩ですから」。紺野と未央に，いつもとは違うよそよそしい挨拶をする富生は「赤松金融の白石です」と。知り合いとしてではなく，あくまでビジネスとして訪れている。そして利息のみ今すぐ支払してほしいと告げる。呆然とする紺野は「ほかになかったの。君が生きていく道は」。富生は「これがベストです」紺野「今手元にない」というと，富生は「作りましょう」と家の中へ。紺野の蔵書を古本屋に売るという。未央は怒っているが，紺野は「借用書にサインをしたのは私だ。返すものは返さないと」と冷静に対応する。蔵書を売っても７万円にしかならなかった。すると富生は，財布の中から２万円を出し，「荷物置かせてもらっている場所代」と渡す。これで利息分を払うことができた。未央「恩師によくこんなことできますね」。富生「仕事ですから」。 事務所に戻る。赤松は「何の問題もなかった？」と桜田に尋ねるが，桜田「別に」。テストに合格。そこに，約束していた客がやってくる。富生も同席する。花屋の娘で，母親が倒れてしまっていた。母のために花屋をつぶすことはできない。しかし，もうどこもお金を貸してくれるところはなかった。法律上定められた金額以上借りていたからだった。しかし，赤松はさらに１００万円貸すことを承諾する。赤松は「がんばって」と娘を見送る。実際に渡した現金は７０万円。借用書には１００万円と記載している。富生がそのことを尋ねると，赤松は「コンサルタント料だ」と。富生「法律的にアウトですよ」。赤松「警察に行くような奴には貸さない」。あの娘は真っ先に個々の分を返済してくれる。困ったときに借りに来れるからから。赤松「人助けだよ」。続いて紺野がやってきた。２人で話をしたいと，富生は席を外す。その間，富生はアカネから細かいことの説明を受けていた。この事務所は元レストランだという。紺野の話は，法律上利率が多いので，法律分まで利率を下げてほしいということだった。赤松「誰だ，入れ知恵をしたのは。まさか？」。富生「オレ？まさか」。桜田と一緒に出掛ける富生。桜田「見かけによらず腹黒いな」。入れ知恵したのは富生だと見抜いていた。富生が紺野家に１人で行っている間，こっそり外から覗いていて，何やら話しているのを見てしまっていた。桜田「社長には黙ってる。１つ貸しね」。２人で取り立てに向かう。借金だらけの町工場。富生「こんな向上やめればいいのに」とつぶやく。 未央は，受付の派遣がきれてしまった。次の派遣先も決まっていない。桃子に誘われるがこの日は，植草と食事の約束があった。 富生は，赤松にあるパーティーに連れていかれる。金持ちを集めた会合だという。実は，青池ファイナンス主催のパーティーだった。受付では招待者だけだと入れてくれない。そこに梢がやってきた。顔を隠そうとした富生だったが，ばれてしまう。「初めまして」とあいさつをする。赤松は，梢のことは知っており，何とか入れてもらおうとしている。梢は，「知っている人だから大丈夫」とパーティー会場に入れてくれた。青池ファイナンスでは，定期的にパーティーを開き，新しい事業の出資を募っていた。早和子は，富生の存在に気付く。赤松に話しかけられた早和子は，富生のことを尋ねる。「うちの見習い」と答える赤松。一人外で飲んでいた富生。梢がやってきた。梢「あんなところで働くなんて」。富生「赤松社長のこと知ってるの？」。梢「悪い評判は広がるから」。富生「どういう関係？」。梢「さあ。時々本社に出入りしているみたいだけど」。このパーティーは，出資者の中でもVIP中のVIPが集まっている。赤松が近づけるようなランクではない。富生「オレをランクで言うと？言うまでもない。最低だよ・・・やだな。金がない奴はひがみっぽくて」。そういうと梢の前から去っていく。 未央は，植草と食事をしていた。植草「経済的に苦しい状況なんでしょ」と言い出す。未央について調べさせていた。そして，植草「結婚してくれない？」。結納金として借金の肩代わりをしてくれるという。初めて会った時から理想の人だと思ったと。 パーティーでは，皆が出身大学を言い合っている。話に入れない赤松。答えずにいると，早和子が高校中退だとばらしてしまう。早和子は，今この場で話題になっているのは「グスタフ・クリムト」だと。そんな会話に入れない人間が来るべきところではないと。早和子「教養も，資産も，持っているものが違いすぎる。恥をかくだけ。身の程を知りなさい」と冷たく言い放つ。そして，赤松が配った名刺を破り捨てる。必死にこらえていた赤松。近くにあったシャンパンボトルに手をかけるが，富生がそれに気づき，止める。そして富生がそのシャンパンボトルを取り上げ，テーブルに乗りあがると，「クリムト」について数字を交えながら朗々と語る。シャンパンをボトルからラッパ飲みしながら。しまいには「汚い金を稼ぎましょう！オレたちみたいなバカで無力な貧乏人からどんどん稼げ！稼げ稼げ！どんどん稼げ！稼げ！稼げ！どんどん稼げ！」とシャンパンを会場にふりまく。警備員に取り押さえられながら，富生「身の程？この世は稼いだもん勝ちだろ！」。赤松は満足していた。会場を出て，赤松は富生が東大出ということと，その教養にびっくりするが、富生はたまたま見たニュースに出ていた数字を覚えていただけ。クリムト自体は全く知らなかった。そんな富生を赤松は大いに気に入った。 未央は桃子に電話でプロポーズされたことを話す。不安がる未央だったが，桃子は，仕事を探す必要がなくて済むのがうらやましいと言う。自宅に戻ると，紺野が空っぽになった本棚の前で呆然と立ちすくんでいた。未央は紺野にも結婚の話をする。紺野は喜びいろいろ尋ねるが，年齢などを尋ねても，未央は答えられない。それほど植草のことは知らなかった。それなのに，植草は紺野の借金の額まで知っている。紺野「本当に好きなのか？」。未央「逢ったばかりだしわからない」。紺野「借金を肩代わりしてもらうために？ダメだ。許さない」。２人は口論になってしまう。未央が玄関先に出ていくと，富生が着替えを取りにやってきた。そのまま富生は家の中へ。未央は１人公園で時間をつぶしていた。そこへ富生がやってきた。未央は富生に事情を話す。未央「会話も弾まないし，まだ好きになってない。そんな人と結婚していいのかな」。富生「５００万返すならベストだと思うよ」。今の未央はマイナス状態だと。アラサーで，手に職なく，親の借金。連日のストップ安。プラスの人生のやつは理想の恋愛結婚を夢見る余裕もある。でも，自分はそれ以上のマイナス状態。何も知らない未央に，富生は自分に起こったことを話す。涙を流す未央。笑っている富生。未央「なんで笑ってんの」。富生「どん底からやり直すには，泣いてる暇なんてないんだ。目の前にあるもの必死でつかむ。オレはそう決めたんだ。そしていつかオレを笑った連中見返してやる。いいんじゃない？金のための結婚。オレなら喜んでするけど」。未央「いい人なのか，怖い人なのかわからないね」。楽しそうに話す２人の様子を，車の中から見てしまった梢。 エステサロンに赤松と富生。店の状況から借金の回収を早めようと。富生は数字の記憶力を生かし，店の最新機器の型番を把握。いくらで売れるか調べてみると。赤松は，富生の発言を喜んで聞いている。 未央に電話がかかってきた。紺野の昔の同僚。未央がその家に駆けつけると，今野が借金を依頼するため土下座をしていた。困った相手が未央に連絡をしてきたのだった。紺野は，職場で禁止されているバイトもすると言い出す。未央は目の前で植草に電話をし，結婚を承諾する。反対する紺野に，未央「愛よりお金だよ」。話はとんとん拍子に進み，植草の母と会って，結婚式の打ち合わせが始まる。 富生は，きれいに札束をそろえる赤松に，銀行に入金するならそんなことする必要がないんじゃないかという。しかし赤松は「オレがオレの諭吉をどうしようが，お前に関係ある？」。富生は謝った。そして，桜田を誘って飲みに行く。桜田「本気で家で働く気ですか」。いずれ独り立ちをしたいと言う富生。そこへ植草がやってきた。女の子たちに囲まれ，いい気分の植草。結婚は母親のためだけ。結婚して跡取りさえ作れば，母親は浮気してもいいといっていると。「相手も金目当てだから」と植草。話を聞いているうちに，富生は未央の結婚相手だと気づく。植草は，結婚相手に決めた理由が，従順で母親に相手にはぴったりだと思ったからだと。ふと気づくと，富生が植草の前に立っていた。植草がいぶかり声をかけると，富生はしばらく黙って見つめたままだったが，「別に？トイレどっち？」と店員に聞いてその場を去る。 梢のやっているブライダルサロンに，未央が植草の母とともにやってきた。担当が心配するほど，未央は自分の意見を言うことができなかった。すべてが植草の母の一存で決まっていく。紺野は富生を呼び出した。誰に相談していいかわからないからと。紺野は，未央の子供のころのビデオを見ていた。未央は，子供のころ母親の病気がわかるとわがままを一切言わなくなった。そんな思い出話から始まった。紺野は，職場に内緒で警備の仕事を見つけてきていた。紺野「金は作る。結婚をやめるよう言ってくれないから。幸せになれるわけがない。君だってそう思うだろ」。しかし富生は「そうですかね。いい話だと思いますけど。彼女だって，いろいろ考えて決めたことでしょ」と止めるつもりはないと。紺野「そこまでして返済をさせたいのか」。富生「愛情なんて後から湧いてくるかもしれない。でも，金は湧いてこないんですよ」。 結婚式が近づく。赤松は，結婚させて借金を返済させるという方法をよく思いついたとほめていた。結婚式当日。未央は，鏡に映るウェディングドレス姿の自分に「大丈夫。間違ってない」と言い聞かせる。式場には富生もいた。ここまで何の問題もなく，スムーズに進んできたが，いざ結婚式が始まるときに，紺野は未央と腕を組んでバージンロードを歩こうとしない。仕方なく，１人で歩き出した未央。ずっと考え込んでいた富生。誓いの言葉の時に，富生「ウソだ！花嫁はうそをついている。花嫁にも花婿にも，愛情なんて１つもない！この結婚に異議を申し立てる！」。黙って植草をにらみつける。黙って未央を見つめる。そして，未央の手を取ると，まるで映画のワンシーンのように走り出した。ほっとする紺野。呆然と見ている梢。富生と未央は走り続ける・・・。 |
| 第４話 結婚式場から逃げてきた富生と未央。未央が「なんで？」とたずねると，富生は「自分でもわからない」。未央「いっしょに逃げたからと言って好きとか・・・」。富生「オレも全然。そういうんじゃないから」と１人で行ってしまう。結婚が破談となり，結婚式の費用や慰謝料の請求を植草がしてきた。植草に「お嬢さん売って，借金精算するチャンスだったのに」と嫌味を言われるが，じっと我慢して頭を下げ続ける紺野。紺野家で話し合う紺野・未央・富生。請求額は総額７００万円。式の費用等の残金２００万円は１か月以内に支払わなくてはいけない。紺野は元々借金をした自分が悪いが，逃げ出すのは良くなかったと未央に。そして富生には，もう少し早く止めてほしかったと言いながらも，「それでも感謝している」と。ウソにまみれた結婚をしなくて済んだことに。未央には，２人で頑張れば何とかなるだろうと励ます。その日は，紺野家に泊めてもらった富生。１人ずっと考えていた。赤松にも，借金回収ができなかったことを謝罪。富生「たかが５００万のために結婚なんて気の毒だなと思って」。赤松「たかが５００万あなたが用意して」。富生「もっと大きい金を用意します」。資料を見て，回収できてない金額を把握した富生「オレが回収します」。しかし，その高額借金を返済していないのは，たちの悪いヤクザ。赤松も手を出せていなかった。赤松「命の保証しないよ」。富生「歩合として５割ください。どうせあきらめている金でしょ？」。赤松は５割は認めてくれない。交渉の結果３割ということに。 富生は早速，そのヤクザ・大黒のもとへ１人乗り込んでいく。大黒は全く相手にしない。それどころか，近くにあった瓶を割り，その破片を使って「殺すぞ」と富生を脅す。富生「いいですよ。一度は死んだようなもんだから」とひるまない。「８７５０万円，全額返してもらいます」と。大黒「知らねぇって言ってんだろ」と富生の首に一筋の傷をつける。富生「本日は意思を確認させていただけたので・・・お忘れなく。オレは必ずきっちり回収しますから」。 未央は新しい職場で働き始めた。電話のオペレーターだった。時給は安いが，仕方がない。桃子には，結婚式で連れだしてもらったことはうれしかったと話していた。紺野は昼は教師として働き，夜は工事現場の警備員として働き始めた。ところが，警備の仕事中，腰を痛めてしまい入院。椎間板ヘルニアだった。手術が必要になるかもしれない。 富生は，裏社会のギャンブル場に来ていた。数字の記憶力を使って，とある男に耳打ちし，アドバイスする。ギャンブルの結果がその通りになり，気に入られる。 梢は，職場で未央を見かける。未納分の２００万円を一括支払いは無理なので分割にしてほしいとお願いしているところだった。しかし，一括払いが原則で分割は認められていない。梢は，自分も婚約がダメになったばかりだったし，自分が考えたプランだったので，未央には幸せになってほしかったと伝える。他に好きな人がいたなら仕方がないというが，未央はその相手は好きではないという。梢「好きではない男と教会から逃げ出す？私ならできない。絶対に」と冷たく言い放つ。未央があきらめて帰ろうとすると，梢「考えさせてくれません？」。 桜田は，大黒の後をついて写真を撮っている。大黒の情報を入手していく。富生に尾行を頼まれた。借金回収ができたら，謝礼として１００万円もらえる予定だった。富生自身も，また大黒のもとへ乗り込んでいく。人気のないところへ連れていかれ，ボコボコにされてしまう。大黒「二度と顔出すなといったろ」。それでも，富生「仕事ですんで。返済してください」。大黒「次は殺すって言ったろ。普通ビビんねぇか？」。そういわれても気にせず，返済を要求する。大黒「気味悪いんだよ」と蹴りを入れ，去っていく。すると尾行していた桜田が駆け寄り，富生は殴られたあとを写真に収めてもらう。そして，すぐに尾行に戻るように言う。自力では動けない富生だったが，電話をかけ，未央に助けに来てもらった。病院で治療費の領収書と診断書をしっかりもらって。富生は紺野の腰のことも心配している。そんな中でも，富生は「うちの返済日，１０日後だから」。未央「少し待ってもらえる？」。富生「ムリムリ」。 梢は，仕事をしながらも，あの結婚式のことを考えていた。そして，未央を呼び出す。未央の現在勤めているところは会員制のリゾートクラブ。その顧客情報を渡してくれれば，２００万円は支払ったことにしてもいいと交換条件を出す。悩む未央。梢と早和子が仕事の話をするときに，早和子は新しい男を紹介しようとする。梢は富生のことは忘れたといっているが，それは嘘だと見抜いていた。 富生は桜田を連れてホームレスの仲間・信二のもとへ行く。大黒たちは足のつかない銀行郷座を探しているはずだと。まだホームレスになって１年程度の信二は，身分証も通帳もまだ持っていた。それを確認する富生。大黒の手下がホームレス街にやってきて，身分証を持っていないか探りを入れている。そこに信二が現れ「銀行の口座を買取してくれるってホント？」と言い出す。届出印もそろった通帳を差し出した。 未央は紺野の見舞いに来ているが，様子がおかしいことを紺野は見抜く。未央は仕事にも手がつかず，ずっと悩んでいた。 富生は，信二をネットバンキングにまだログインできるかどうか確認してもらう。もうすぐここに大金が振り込まれるが，それを別口座に振り替えると伝える。謝礼は２００万円。しかし，ヤクザ相手のことで心配する信二。富生「一生公園で寝るつもり？２００万で普通の生活取り戻せよ」。信二「オレの人生ついてない」と語る。親は頼れず，会社はつぶれた。富生「そんなちっぽけな不運で自分の人生あきらめるの？・・・大丈夫。うまくいくよ」。大黒は，ATMで信二の通帳を記入し，入金を確認しようとした。ところが，振り込んだはずのお金がすぐに引き出されていた。そこに富生から電話が。富生「ご返済ありがとうございました」。そのころ，信二はテント生活をやめ，こぎれいな格好をして上野駅に向かっていた。ジャケットの内ポケットには，札束が。信二の再出発。青空を見上げ，スタートを切る。 ビルの屋上。同じように青空を見上げる富生。そこに大黒がやってくる。もちろん殴られる。富生「他にもね未回収の客はいるんですよ。でもオレは，まずあんたから回収したかった。少し前ね，必死で手に入れた１０００万円を取られたんですよ。あんたみたいな連中に。力づくで。だから味あわせてやりたかったんだよ。力づくで人の人生奪ってるお前らみたいな連中に，奪われるみじめさを。一生忘れんな！これが奪われた側の惨めさだ！」。大黒「ふざけんな・・・」。それでも富生は，慰謝料と治療費として100万もらい，その内訳等入った封筒を差し出す。大黒は，富生をビルから突き落とそうとする。絶体絶命。そこに組長がやってきた。あの賭場で出会った男だった。富生は組長に値上がりしそうな株の情報を教えていた。ちょうど売り時。かなりのもうけになる。組長は，大黒に向かって「オレに黙って何やってんだ。この人に何かあったら，破門程度じゃあ済まねぇからな」。組長は去っていく。富生は，冷静にお釣りも入った封筒を渡す。富生「またのご利用お待ちしています」。 未央に，赤松から返済の電話がかかってきた。結婚式の２００万と赤松への返済。もうどうしようもなかった。 赤松の目の前に，８７５０万円が積み上げられていた。しかし，うかない表情の赤松。全部自分のものにならないことへの不満。約束通り，富生の手元に３割分が。その場で桜田に謝礼金１００万を渡す。紙袋に札束を入れる富生。残りは借金返済に使うと。借金は３０００万円。アカネ「なんでそんなにたまってるの？」。富生「ちょっと不運が重なって」。 未央は，パソコン画面の顧客リストを前に逡巡する。富生は，１つの金融機関に行き，500万円の借金を完済。夜。未央は，カギを落としたと嘘をつき、１人会社に残る。パソコンを立ち上げ，USBを差し込む・・・。富生は，紺野を見舞う。紺野「ちょうどいいところに来てくれた」。 赤松は，未央を見かける。未央は梢と待ち合わせをしていた。未央は，梢にUSBを差し出す。梢は，２００万円の領収書を差し出す。しかし，未央はUSBを渡さなかった。未央「お金は必要です。でもお金で良心まで売ったら・・・」。梢「お金欲しさに楽な方選んだのに，いざとなったら怖気づいて，いい子ぶってる。自分で思わない？ずるい嫌な女だって」。「ずるくても」と未央は，USBを投げ捨てながら「いやな女ですみません」。梢「伝えてくれない？彼に。今度こそ忘れてあげるって。ゆっくり記憶から消してあげるって」。未央は，初めて梢が富生の婚約者だったことを知る。梢「２００万の支払い，期日内にお願いします」と去っていく。一部始終を見ていた赤松。 未央が家に帰ると家の前で富生が待っていた。富生「お祝い付き合ってよ」。初めて借金回収が成功したお祝い。ワインをもってきており，ワインオープナーを探す。未央は「２００万円ふいにした」と今回のことを話す。富生「どこにそんなバカいるの」。未央「５００円男の知らない人」。USBを渡さなかった理由は，未央「お金より良心，と思って。ああいう親に育てられたらこうなるの」。富生「オレのカンが当たった」。 富生が紺野のお見舞いに行った時のこと。紺野は，未央の様子からなにか悪い予感がすると。しかし富生は「大丈夫ですよ。きっと・・・なんとなく。カンだけど。先生の子だから大丈夫」と言っていた。そして，紺野に，借金の返済と慰謝料に充ててほしいと紙袋に入ったお金を見せる。紺野「ダメだよ」というが，富生「オレが１番苦しかったときに，何も言わず１万円札入れてくれた人がいました。オレはそのお礼がしたいだけです。金貸しで初めて稼いだ大金です。オレはもっと稼ぐんで」。紺野は「君は幸せかい？私は，帰るところがあって，飯を食ったりけんかする相手がいて幸せだよ。君は？」。富生「大事なものは，全部なくしたから」。紺野「なくしたと思い込んでるだけじゃなくて？じゃ，約束して。君の荷物は置いたまま，可能な限り私の家に帰ってきて一緒に飯を食う。君が帰る場所を見つける日まで。約束してくれるなら君の申し出，ありがたく受けるよ」。 そんな話をしてきた。富生は未央に「赤松金融の５００万と結婚式の７００万。これで返して。無利子・無期限。担保見つけたから。金より良心って言ったよね。だから信じる。担保は君の良心だ。いつかその良心でオレを助けてほしい・・・なぁ～んてね」。先ほどの引き出しを探ると１冊のメモ帳が。最初のほうのページには，未央の子供のころの絵が描いてあった。そこにには「たいへんよくできました」のスタンプも押されていた。そして，「たいへんよくできました」のスタンプも見つける。メモ帳の新しいページに，「この間病院に運んでくれた・・・診断書ももらってくれた・・・その分」とそのスタンプを２つ押す富生。１２００個たまったら借金返済終了。富生「現金でもかまわないけど」。未央「ありがとう。白石さん」。富生「気持ち悪い。５００円男でいいよ」。 早和子のもとに赤松から連絡があった。落し物を拾ったと。早和子「どこかの顧客情報が入っているといっていたけど」。呆然とする梢。早和子は梢に「困った子ね。対処しておくわ」と。梢「私，どんどんいやな女になる。どんどん怖くて，嫌な女に」。早和子「それは良かった。仕事もできる自慢の孫よ。だけどいつも思ってた。経営を引き継いでもらうには，やさしすぎる。なれるのならもっともっと怖い女に。いっそ鬼になればいいと思ってた」。赤松は，早和子にUSBと梢と未央の密会の写真を渡す。早和子「１つ情報をあげましょう。あの見習い。クビにしてないそうね」。早和子は，絶対に人の名前と顔を忘れないが，赤松は借金回収できてしまえば相手を忘れてしまうんだと指摘。早和子「だからわからないのよ。彼が誰なのか」。富生は，赤松が追い込んだホワイト化学の息子だと明かす。赤松は，会社に戻ると，富生に「なに企んでる」と。何を言われているのかわからない富生。 |
| 第５話 赤松に「何をたくらんでいるんだ」とにらまれた富生。あくまでも，ここに来たのは紅谷の紹介で，金貸しについて学ぶためだと。赤松がなぜ怒っているのかわからない。富生のリアクションに，赤松は「もういい」と富生を追及するのをあきらめるがイラついている。富生は桜田と一緒に取り立てに出掛ける。桜田は「社長，本気で怒ると怖いから」と。しかし，まだ富生には思い当たることがない。取り立てに向かった家は，藍沢という家。豪華な一軒家。玄関には，ブランド物の靴が並んでいる。ただし古くて傷だらけでお金にはならないと富生。富生たちが妻の恵美玄関で話していると，服を汚した高校生の娘・遥が学校を休むと帰ってきた。それにもかまわず，富生はトイレを借りると家の中に入り，金目の物を探し始める。 梢は，未央が来店しているところに出くわす。軽く会釈をするだけで帰っていく未央。梢は，未央が２００万円全額支払いしたことを知る。 富生たちは，家探しをしたが，古いか偽物のブランド品ばかりで，たいして収穫がなかった。藍沢は”カリスマ”美容師。一時は何店舗か持っていたが，現在は１号店のみ。それでも１号店は繁盛していると恵美は言う。残すは家だけだが，この家は家族の夢。恵美「死んでも手放したくない」。富生「ずいぶん安い命だな」。 未央は赤松金融へ。５００万円の返済に来た。赤松は，このお金は富生からもらったものだろうと見抜く。未央は，無利子で借りただけだと言い張る。さらに赤松は未央と富生の関係を疑う。未央は「お答えする義務ありませんよね」。すると赤松は「見ちゃったんですよねぇ」と，未央が顧客情報を盗み出したことを知っていることを伝え，やんわりと脅す。そして改めて富生との関係を問いただす。未央は父の元教え子だと答えた。赤松「白石と結構会う？」。あやふやに未央だったが，赤松は富生にいつもと違う様子が見られたらすぐ教えてほしいと名刺を差し出す。未央が断ると，証拠の品を持っていると再度脅す。そして帰ろうとする未央のカバンに名刺を入れた。 三保子の病室に専務の金原がやってきた。ベッドサイドには富生の姿が。三保子は，最近は少し変化があり，もしかしたら意識が戻るかもしれないということだった。金原は，時々三保子を見舞ってくれているという。工場のほうは，ベンチャー企業が助けてくれており，従業員も全員がそのまま残っていた。金原「工場にも顔を出して」。富生は「謝る気になれないんで」。金原「あんな別れ方は・・・」。富生は，光太郎とも納骨の時以来会っていない。金原によると，光太郎もバイトの掛け持ちで大変らしい。金原は光太郎とも会うように言うが，富生は「弟の方が嫌がりますよ」。そして，一万円札を数枚差し出すと，光太郎に渡してほしいと。金原が元の会社に戻れたのかというと，富生「今，金貸しを」。驚く金原に，富生「自分には向いていると思うんですよ」。 赤松は，ゴルフクラブを磨いていた。お金にならないゴルフはやらないという。何のためのゴルフクラブかというと，護身用。そして，電話で誰かの調査依頼をした。 赤松の名刺を手に悩む未央。そこへ富生が来る。未央「ホントに住むんだ」。富生はきちんと食費は入れると。紺野家は食事作りは交代制。慣れるまでは手伝わなくていいという未央。未央が料理を作り始めると，黙って手伝う富生。実は未央より上手なくらいだった。しかも，細かいことにうるさい。未央「借金なくなったんだよね」。借金がなくなったのなら，ほかの仕事を見つけたほうがいいんじゃないかと。赤松のことも気になる。富生「まだ残ってるよ。半分返したけどね」。気にする未央。富生「オレはこの先億単位の金を稼ぐから」。未央「そんなにお金って必要？」。冨生「うん」。そして，未央に美容室に行くように勧める。その美容室は，藍沢の店。桃子と一緒に訪れる。そこに行くように言われた理由はわからないが，ただでいいといわれた。そのあと，その店について富生と桜田が聞きだす。シャンプーは下手だし，お客はほとんどいない。予約の電話もかかっていている様子はない。富生「取り立て急いだ方がいいかもな」。 富生は，遥が学校へ行かず，街中にいるところを見つける。遥は，幸せそうな親子連れをじっと見つめていた。見ず知らずの男に声をかけられ，逃げようとしたとき富生の存在に気付く。その場を去る遥。藍沢の家には，＜借金王＞等と書かれたチラシが大量にはられていた。桜田が発注していたチラシだった。藍沢本人は，借金の返済が滞っていることをしっかり把握していなかった。追いつめられているのは恵美。娘がいじめられないように，無理して付き合いしているという。夫婦ゲンカが始まってしまう。耐えられなくなった娘がキレた。「とっくにばれてるよ」。偽物のブランドばかりだということ。無理して付き合いをしていること。そこに桜田がやってきた。桜田「金作りに行きましょうか」。桜田は，赤松金融に戻ると大量の携帯を取り出した。借金返済の代わりに，とばし携帯を購入させる手口。冨生「そういうこと，うちもやるんだ」。桜田によると，この間社長自らがその手を使い，その相手は携帯を購入後，失踪したということがあったと。何か引っかかる富生。そのやり取りを社長室から見ている赤松。赤松の手には，富生の調査報告書が。 赤松は，梢のもとへ押しかける。梢が富生の元婚約者だったことを知ったと話す。オフィスに通す梢。赤松は，こっそりと盗聴器を取り付ける。赤松は，ホワイト化学について冨生がどれぐらいかかわっていたか，梢から聞き出そうとする。梢は相手にしなかったが，赤松は結婚式の出来事を話し，わざとイラつかせる。さらに，1200万円もあげたことも。梢「ホワイト化学のことは何も知らなかったと思う」とつい話してしまう。赤松「君は？オレたちとホワイト化学の関係・・・会長から聞いてない？」。梢は何も知らなかった。揺さぶるだけ揺さぶって，去っていく赤松。梢は，こっそりと調べ始める。 富生は，返済ノートに＜たいへんよくできました＞のスタンプを2つ押す。美容室に行って情報を教えてくれたことに対して。桃子の分まで。未央「見返すって言ったよね？それって何億？何十億必要なの？見返したい人には，婚約してた人も入ってるの？」。未央は，借金ができたことでフラれたと思っていたが，富生「オレ，フラれてないよ」。不思議がる未央。困った時こそ，家族や友だちが必要なんじゃないかと。そこへ，未央の携帯に赤松から電話が。冨生に今日の出来事を話す。冨生を見張れといわれたと。考え込む富生。冨生「電話無視していいよ」と，切ってしまう。 梢は，早和子のもとへ。ベンチャー企業部の資料を見たら，ホワイト化学が傘下に入っていた。早和子は，冨生を調べたときにホワイト化学のことも調べ，特殊技術を持っていることを知り事業部に伝えただけだという。早和子「あなたはあなたのやるべきことに専念してちょうだい」。 藍沢家に1本の電話が。応対した恵美の表情が変わる。 桜田は，赤松に藍沢の美容室がつぶれそうだと伝える。赤松は金庫をあけながら話を聞いていた。その様子をじっと見ていた冨生。赤松は，お金を作れるだけ作らせろと。そこへ梢がやってくる。赤松と２人きりで話す。ホワイト化学が青池ファイナンスの傘下に入っていることを，梢「知ってたんでしょ」。「なんとなくはね」ととぼける赤松。早和子はたまたまだというけれど，「祖母は時々強引な手を使うから」と梢。赤松は，それは大きな相手に対してであって，小さな企業には興味がないだろうと。梢「なぜあんなことを」。赤松「君の興味をひきたくてね。これを機に仲良くやりましょうよ」。 恵美が踏切前で佇んでいる。偶然見かけた富生と桜田。電車がやってくる。踏切のバーに手をかける恵美。必死で止める冨生。藍沢が家に帰ると，富生と桜田がリビングに。恵美が自殺をしようとしたことをはじめって知った。恵美は，毎日お金の心配ばかりで疲れたという。「こんな家，買わなきゃよかった」。藍沢は，この家は家族の夢だったろうと反論する。冨生「バカだねぇ。普通に働いていて，家を買って，家族を養える時代はとっくに終わってるのに。35年のローンでどれだけの利子払うかわかってるの？」。ローンの返済も滞っており，競売にかけられることになった。恵美が受けた電話はその知らせだった。冨生は，家を売って安いところに引越せば生活も楽になるというが，藍沢「そんなみじめなこと・・・」。冨生「家族に借金で死なれるほどみじめなことあんのかよ！・・・もしかして，あれか。奥さんに保険金かけてるのか」。藍沢「そんなわけないだろう。もうひと花咲かせたいって。そのためにははらなくちゃいけない見栄もあるんだよ！」。娘「もういいよ。貧乏だって認めちゃおうよ。死ぬとかふざけんなって」。さっそく，家を売る相談を。1億で売れるという。手数料やローンの返済をすると手元にはほとんど残らないが，マイナスにならないだけいい。藍沢は，店も売って実家に戻ると決意していた。実家は床屋だった。恵美「お金や家より，ずっと大切なものに気付けた気がします」。冨生「金より大事なものなんて，命ぐらいしかないよ」。赤松金融に戻り，今回のことを報告すると，赤松は「さすが！元エリート証券マン！」とはやし立てる。冨生「そんなこと言いましたっけ」。 富生に金原から電話がかかってきた。ずっと申請していた特許がようやくおりた。冨生が工場へ向かうと，にぎやかな声が聞こえてきた。冨生が中に入ると，一気に静かになってしまう。金原だけが笑顔で迎えてくれた。従業員は，今でも社長には腹が立っているが，これでようやく弔い合戦ができると。工場には孝夫の遺影が飾られていた。金原は「富生さんに言いたいことあるだろ」と従業員たちにいう。「ごめんな」「社長に死なれて混乱してて。ずっと謝らないといけないと思ってた」と従業員たち。金原「給料の未払い分も払ってもらったのに，つらい思いばかりさせて」と頭を下げる。ほかの従業員たちも頭を下げる。冨生も「オレのほうこそ」と頭を下げる。特許を祝って，みんなで乾杯する。その時には，孝夫に向かって乾杯した。冨生も笑顔になる。そんなホワイト化学の様子を，外から見ていたのが梢。梢は，早和子にホワイト化学を自分に任せてほしいと訴えた。今回特許を取れた技術は，世界を相手に戦える技術。町工場から，世界に通用する企業に変えてみせると，企画書を提出する。 夜の赤松金融に、富生が戻ってきた。赤松の机をあさる。未央もやってきた。未央が投げ捨てたUSBを探していたのだった。しかし，ここにはなさそうだった。ただ，赤松は大事なものは金庫にしまっている。1度あけているところを見ていた冨生は，しっかり番号を覚えていた。あっさりと金庫を開ける。そこにもUSBはなかった。冨生「証拠持っているっていうのはウソかも」。ホントに持っていたら，さっさと名簿屋に売っているだろうと。探しているうちに，ホワイト化学関連の資料を見つけてしまう。その封筒の中には，孝夫がサインをした多額の借金の借用書が大量に入っていた。全てがつながった。冨生は，その場で赤松に電話を掛ける。声を抑え，怒りを抑えながら，冷静を装って。赤松はいつもの店にいるという。冨生は，電話を切ると，そこにあったゴルフクラブを手に取り，出ていく。慌てて追いかける未央。冨生「赤松だったんだ・・・赤松が親父の背中を押した。あいつが殺したんだ」。復讐の熱い思いを爆発させ，走り出す富生。もう未央には止められなかった。冨生は父のことを思い出しながら，走る。赤松は，マッサージの最中だった。そこへ富生が飛び込んでくる。冨生「お前だったんだ。殺してやる！」。逃げる赤松を追いかけながら，ゴルフクラブを無茶苦茶に振り回す富生。ガラスが飛び散る・・・。 |
| 第６話 赤松に振り下ろしたゴルフクラブが，赤松に命中する前に，富生の肩に激痛が走る。金属バットを持った桜田が駆けつけていた。赤松「遅いよ！ちゃんと見張ってろって言ったろ」。危機一髪生き延びた赤松「親父が自殺？だから？借金する方が悪いでしょ・・・二度と顔を見せるなって言っといて。次はこんなんじゃすまないからね」と，最後は未央に向けて言った。痛みに苦しむ富生。心配そうに駆け寄る桜田「すみません。社長命令なんで」。冨生は桜田に「手かして」。未央と桜田に支えられ，紺野家まで戻る。桜田「加減はしたんだけど・・・仕事だから」。冨生の肩はかなり腫れ上がってきた。冨生「1人にしてくれ」。布団の上に座ったまま，一睡もせずに考え込んでいた。そんな風に迎えた朝，光太郎から電話がかかってきた。冨生は未央に，弟がここに来ると伝える。久しぶりに兄弟が対面。光太郎は，金原から受け取ったお金を富生に返しに来た。汚い金はもらえないと。冨生「金は力だ。ないやつは親父のように押しつぶされる」。光太郎「忘れたの？俺たちが借金取りにどれだけひどいめにあわされたか」。冨生「忘れるわけないだろう。連中のやり方，参考にさせてもらってるよ」。光太郎は，金貸しの金は使いたくないから，母の治療費も自分が出すと言い出す。諸経費でざっと50万はかかる。それこれからも続いていく。冨生「払えるのか？」。言い返せない光太郎「親父が泣くな。今の兄貴見たら」と帰っていく。 富生は出かけようとする。未央は，赤松のところに行くのではないかと必死に止めようとする。冨生「オレと君では，見てる世界が違う。余計な口はさまないでくれる？」。紅谷と会う富生。冨生「なんであいつだったんだ。知ってて引き合わせたんじゃないですよね。あいつが親父を殺した人間だって」。何を言われているのかわからない紅谷。 光太郎は，家庭教師のバイトを増やそうと相談するが，今は厳しい状況。増やすことはできないと断られてしまった。 梢は，早和子に，ホワイト化学の買収に赤松がかかわっていないことを確認する。早和子「あれは何にでもかかわりたい男」。梢「そういうチンピラを利用してきたのは会長でしょ」。早和子「関係ないありません」ときっぱり言う。梢「よかった。ホワイト化学，任せていただけますよね」。早和子「楽な仕事じゃないわよ」。梢「鬼になれって言ったのは誰？覚悟できてる」。 いつもの喫茶店で，冨生は紅谷に事情を話す。冨生「なんで赤松のところに」。紅谷「法律が変わっても，中小の町金がつぶれても，あいつだけは稼いで溜め込んだ。忘れろ。赤松を恨んでも始まらん」。冨生「わかってます。悪いのは親父だ」。紅谷「殺したのは赤松じゃない。金に殺されたんだ」。冨生「違う。赤松が親父の背中を押したんだ」。紅谷「お前の器，そんなものか。だったら金貸しなんかやめちまえ」。何も言い返さず，千円をテーブルに置いて出ていく富生。 赤松に早和子から電話が。その時，赤松金融の前では富生がにらみつけていた。中には入らず，そのまま去っていく。未央からも電話が来るが，出ることもなく切ってしまう。 光太郎は，居酒屋のバイト先の同僚に，金になるバイトを紹介するといわれた。 早和子のところに赤松が来る。早和子は，札束を入れた封筒を赤松に差し出す。早和子「謝礼よ」。謝礼＝手切れ金。早和子「二度とうちに近寄らないで。梢に近づいていいって誰が言った？」とぴしゃりという。赤松は「汚れ仕事だけさせといて・・・安く見られたもんです」と。早和子「あなたにふさわしい金額よ」。赤松「後悔しますよ」。早和子「脅しても無駄」。 赤松金融の前に未央。桜田が出てきて，慌てて移動させる。冨生が一晩帰って来なかった。未央「まだとんでもないこと考えてるんじゃないかって」。 ホワイト化学には，梢がやってきた。ホワイト化学を立て直すために青池ファイナンスから派遣されたと自己紹介する。梢「これからは私の指示に従って動いていただきます。いかにも町工場的な体質を変えたいと思ってます」。突然やってきた梢に，戸惑い不安がる金原と従業員たち。梢は帳簿を見て，ずさんな管理だと。金原「社長と奥さんが必死で守ってきた工場を，何も知らないあんたに勝手にされてたまるかよ」。梢は，従業員の解雇の権利も持っていると，やんわりと脅す。金原は光太郎に連絡を取った。冨生は何も言っていなかったと。その光太郎は，同僚から連絡先をもらい，早速バイト先に面談に行く。そのバイト先は＜F&D企画＞。 未央は光太郎を探し回っていた。そしてホワイト化学へ。未央が様子をうかがっていると，梢が出て来た。梢「何してるの」。未央「白石さんを探しに」。 そのころ，富生はあの橋の下にいた。父親の最期の場所。そこで座り込んでじっと考えていた。 青池ファイナンスで話を聞く。梢「いなくなった？」。未央「いろいろあって・・・」と細かいことは話さない。未央は別れた理由を聞いてみる。梢は，富生が借金を抱えたとき，いろんな人に電話をかけてお金貸してくれと頭を下げたのに，梢の助けはいらないと「拒絶された」と話す。梢「拒絶されたまま。どうしたらよかったの？」。未央「まだ好きなんですか」。梢「ずっと信じてた。お金なんかより愛情の方が強いって。私たちは違った。愛なんて，お金の力にはかなわない。まだ好きかって？冗談でしょ。プライドの塊みたいな男，大嫌い」。 光太郎は，バイトの面接をしていた。相手は具体的な仕事内容を教えてくれない。簡単な仕事で，トラブルにあったら何も知らないと言えばいいと。ただお金を受け取ってくればいいだけ。隣の部屋では，何人もの男たちが電話をかけている。報酬は１回５万円。怪しんだ光太郎は，断って席を立った。その時警察がやってきて，詐欺容疑で次々と逮捕されていく。光太郎も連れていかれてしまった。 富生は，まだ橋の下で考えていた。あの孝夫が首を切ったカードを手に。そして，父の連帯保証人になった日のことを思い出す。孝夫は新しい技術開発に期待をしていた。孝夫「会社が大きくなれば，社員みんなが幸せになる。倒産の夢に力を貸してくれないか」と未来を信じ切っていた。冨生「何が夢だよ。それで最後に選んだのがこんな場所か。こんな場所で，1人で，なんでそんなみじめな死に方をしてんだよ」。涙をこらえる富生。そこへ警察から電話がかかってきた。 赤松は機嫌が悪い。今度は紅谷がやってきた。冨生はまだ戻ってきていない。赤松「次はオレ，マジで殺しちゃうかもね。とんでもない男と引き合わせてくれたもんだね」。紅谷「アイツのこと，お前が1番わかってやれると思ったのにな・・・荒っぽいことしていると自分に返ってくるぞ」。赤松「あんたには感謝していますよ。けどね，あんたのころと違うから。こんなちんけな金融屋で終わらないから」。紅谷「金に取りつかれちまって，残念だなぁ」。赤松「オレが金に取りついてるの。支配するのはオレ」。 富生は，光太郎を迎えに警察に行った。今回はおとがめなし。黙って歩き出す。光太郎「なんで怒らないの。いい年して世間知らずのバカだって」。冨生「金作る大変さ，よくわかってるから。でも1つだけ。警察沙汰とか，お前に似合ってない。もうやめとけ」。光太郎「ごめん。金のこと全部兄貴に任せて，わかったようなことばかり言って，ごめん」と涙を流す。冨生は優しい笑顔を見せ，またお金を差し出す。光太郎「大丈夫。生活ぐらい何とかなるから。それより知ってるの」。ホワイト化学を青池ファイナンスが買い取ったという話をする。冨生は青池ファイナンスへ。冨生「久しぶり・・・ホワイト化学を買い取ったって」。梢「私が経営を立て直します」。富生「あの人たちが守ってきた会社だ」。梢「お父さんが生きてる間は，いままでみむきもしなかったでしょ。バカにしてた。だから借金にも気づかなかった」。梢は，ホワイト化学が開発した特殊プラスチックのすごさを説いた。孝夫はやり方を間違えただけ。そんなやり取りを，赤松は盗聴器を通して聞いていた。梢は，今働いている従業員はいずれやめてもらうつもりだと言う。もっと優れた技術者を自分が探す。梢「あなたが救えなかったもの，私が救ってあげる」。赤松「面白いじゃない」。青池ファイナンスを出て来た富生は，橋の上じっと考えていた。 赤松金融に桜田とアカネが出勤してくると，そこには何事もなかったかのように富生が出勤してきていた。驚く2人。そこへ赤松もやってきた。焦る2人をしり目に，冨生も赤松も普通に話をしている。あの修羅場などなかったかのように。階段から落ちて肩を痛め，休んでいたかのように話す赤松。それに調子を合わせる富生。紺野の家には桃子が遊びに来ていた。2人で夕飯の用意をしている。そこに富生が戻ってきた。未央「心配したじゃない。こっちはいろいろ考えて。ホントに悪い想像ばっかり・・・」。冨生「ごめん」。未央「よかった。無事で」。３人で食事をしながら、赤松金融にも戻ったことを伝える。冨生「稼ぐにはあの人のところが一番がいいから」。未央「許せるの？」。冨生「似てる・・・おふくろの味に」と話題を変える。 ある日のホワイト化学。冨生が連帯保証人になったことを孝夫が喜んでいたと，三保子が富生に嬉しそうに伝える。ホワイト化学価値を金融のプロが認めてくれたんだと。そうじゃなければ保証人になんかなれるはずがない。三保子「ありがとう」。その日は，光太郎の卒業式。ホワイト化学の前で家族4人記念写真。笑顔あふれる3人に対して，富生だけが横を向く記念写真。 未央「似てる？料理はお父さんに教わったから，私にとっては親父の味かな」。冨生「何もわかってなかった。親父の仕事の価値なんて。親父たちのすごさなんて，少しも分かってなかった・・・」。玄関先で桃子を見送りながら，未央「もう復讐みたいなこと，忘れてくれたかな。誰かを恨んでたって，苦しいだけだもんね」。桃子「あの人のこと・・・何でもない」。 赤松はいつものように，札束をきれいにまとめ匂いを嗅ぐ。その束を金庫の中へ。冨生は，赤松より先に帰り，外で待つ。そっと赤松の行動を見張る。1人になったとき，富生は会社のパソコンで経理データをチェックする。何かに気づき，ニヤリとする。仕事をしながらも，赤松の行動をチェックしている。 富生は，一緒に来てほしいと未央にお願いをする。手伝ってくれればハンコを10個押すと。とりあえず未央はついていくが，行った場所は赤松金融。冨生「ずーっとおかしいと思っていた」。赤松は，お金にアイロンをかけ，帯封までつけている。銀行に持っていくならそんな必要はない。金庫には，その日の分ぐらいしか入っていない。つまり，お金をどこかに隠している。ヤバイ仕事をしている連中は銀行にお金を預けない。経理のデータにもこの前ヤクザから回収した金額は記入されてない。隠し金庫があるか，女の家にあるか・・・。しかし，会社から持ち出している様子もない。つまり，この中のどこかに隠されている。それを探して奪い取る。冨生「命より大事なものを残らず奪い取ってやる」。未央「奪ってどうするの。お父さん，そんなこと望む？」。冨生「知るか。親父が何を望むかなんて。生きてる間もろくに話したことないんだから・・・親父が死んだ場所に行ってきた。寒くて寂しい場所だった。親父をあんなとこに行かせたのは赤松だ」。未央「だからって恨んでもしょうがないじゃない。協力できない。忘れて」。冨生「忘れろ？恨みを支えに立ってる人間もいる。ちょっとでも下見たら奈落に落っこちるから，怒りを支えに前だけ見てる。そういう人間もいるんだ」。未央「ほかにないの？支えになってくれるものは，ほかに」。冨生「あるとしたら1つだけ・・・金だ。金でできた恨みは，きっちり金で晴らす」。未央は黙って帰っていく。冨生は一人，会社の中を探し回る。床下や壁まで。未央は帰ってしまったわけではなかった。寒い中，赤松金融の前で待っていた。どこを探しても，お金が隠されている様子はない。次第に焦る富生。クローゼットをあけたとき，ふと異変に気付く。かかっていた上着のファーがかすかに揺れていた。風だ。クローゼットの奥を探すと，そこは隠し扉になっていた。外の通りに，赤松がタクシーで乗り付ける。それに気づく未央。冨生は，扉を開け，地下へ続く階段を下りていく。未央は慌てて冨生にメールをする。赤松は，支払いを済ませ，タクシーを降りる。冨生は，地下に巨大な隠し金庫を見つけた・・・。 |
| 第７話 冨生は地下へ降り扉を見つけると近づこうとするが，監視カメラを見つける。それ以上進めない。扉には暗証番号がついている。ちょうどその時，未央から赤松が来たという連絡が届く。未央は，赤松を中に入れないように話しかけた。赤松金融の中では，富生が必死に元通りにしようとしていた。未央は，赤松に富生に何か変わったことがあったら知らせてくれてといわれていたことを理由に，「彼，今とんでもないこと考えています」と話しかける。赤松と未央が中に入るのと，富生が奥の応接セットの影に隠れるのがほぼ同時。ギリギリ間に合った。未央「人のお金奪おうとしていいるんです」。「誰の」と赤松に追及されると，富生は性格が悪いと文句を言って話をごまかす。さらに追及されると，答えに困ってしまう。応接セットに近づこうとする赤松に，必死になった未央は梢の財産を狙っていると。ホワイト化学の再建は，富生に騙されているからだと。未央「梢さんは，今でも彼のこと忘れられない」。その気持ちを利用して青池ファイナンスを乗っ取ろうとしている。そう語る未央。赤松にわからないように，メールを送る富生。未央の携帯に外に連れ出してほしいというメールが届く。不審に思う赤間tに，未央は友だちに約束をすっぽかされたとごまかす。赤松も今夜約束をすっぽかされて戻ってきたというので，未央は「外に出ますか」と誘う。赤松は，冨生が隠れている辺りが気になるが，未央に促されて出ていく。 富生はパソコンで扉についたカギについて調べていた。一方，未央と赤松はバーで飲んでいた。色々と話を聞きだす。赤松には家族はいない。恋人はたくさんいるが，特別な人はいない。未央「寂しい・・・」。赤松「家族の絆とか、愛情とか聞くだけで，寒気しちゃうんだよね。白石も変わらないでしょ。あいつもオレと同じ」。そばにいてくれる人は必要ない。もしまた富生が人を殺そうとしても，未央には止められる自信はないだろうと。未央「わかってます。力になれないことは。あんなのと出会わなければよかった」と泣き出してしまった。未央が家に帰ると，富生は扉のカギについて調べ終えていた。赤松金融は，元イタリアンレストラン。地下にワインセラーがあった。そこがあの地下の隠し部屋。その部屋は，監視カメラと頑丈なカギで閉じられていた。デジタルロック式の鍵で，８桁の数字を入れる。一度間違えると３分以内に正しい番号を入力しないと，警報装置が作動する。その話の最中，眠ってしまう未央。そんな未央を２階の部屋まで抱っこして連れていく。 翌朝，二日酔いの未央が居間に降りてくると，そこには＜たいへんよくできました＞のスタンプが約束通り押されていた。赤松金融。赤松は出勤してくると，クローゼットに何か違和感を感じる。自分の席につくと，さっそく監視カメラの映像をチェック。問題がないことを確認し安心する。それをそっと見ていた富生。映像はディスクに録画されるタイプだった。梢は，シカゴでのプレゼンがうまくいったと電話で早和子に報告していた。ホワイト化学が開発した特殊プラスチックに関してのことだった。早和子「頼もしくなってきたわね」。 紺野が退院することになった。未央は，富生のことを報告する。未央「命を狙うよりましかもしれないけど」。紺野「ましなものか。人はね，人のものを力ずくで奪い取ったときから，荒んでしまうんだよ。魂がね」。未央「お父さんから言ってあげて。私じゃ言っても無駄だから」と。３人での食事。紺野が話そうとすると，宅配便が来てしまう。冨生は自分の荷物だと席を立つ。戻ってくると，富生は「宝探しのための道具をね。先生，オレの心配より，リハビリがんばってください。何を言われてもやめるつもりないんで」と食事を終え行ってしまう。冨生が購入したものは，パウダーグリーン。自分の指につけ，光を当てると緑に輝く。チェックをしながら，不敵な笑みを浮かべる。 翌朝，富生は出社するとクローゼットの取っ手にパウダーを丁寧に塗り，光を当てて確認する。それが終わったころ，桜田が出社してくる。調べ物のため早く来ているとごまかす。桜田は，まだ富生のことを見張れといわれている。桜田「だから，今度こそ，変なことしないでくださいよ」。冨生は，監視カメラの映像を改ざんした。夜，誰もいなくなった赤松金融に戻ると，クローゼットの取っ手をチェック。確実に使われていた。そしてドアの暗証番号をチェック。指の跡がついていた，つまり使われていた数字は＜０１３５８＞。チェックが終わると，監視カメラのディスクを富生が作ったディスクと入れ替える。一連の作業を終え，紺野家に戻ると，紺野が起きて待っていた。紺野「ニーチェは言ったよ。怪物と戦うものは，自らも怪物にならぬよう心せよ。おまえが底知れぬ闇をのぞくとき，闇もまたお前を見返すのだから・・・赤松社長のことは聞いたよ。彼と戦うのはやめたほうがいい」。冨生「賛成できませんね。ニーチェには。怪物と戦うなら，そいつに負けないぐらいの怪物になるしかない」。紺野「戦わないって言う選択はないのかな」。富生「ありませんね。この世は怪物だらけですから」。未央は廊下でこのやり取りを聞いていた。部屋に戻ると，富生は５つの数字を見つめる。未央がやってくる。数字の説明をする。全部の組み合わせを確かめるには１２万６千回かかる。３分以内に正しい数字を押せないと，赤松の携帯に通報が入ってしまう。金庫の番号は，携帯の番号等を使っていたので，何か自分に関する数字を使っているはずだという。 富生は，赤松に関する数字を頭に叩き込んでいく。赤松自身だけでなく，赤松金融の従業員の資料までにも目を通す。関連する数字なら何でも頭に入れていく。アカネにはさりげなく，赤松の恋人を聞き出そうとする。お詫びとしてサプライズパーティーを開きたいから，恋人の誕生日を知りたいととぼける。５つの数字の謎をずっと考え続ける。そして夜，調べた数字の中に正解があるはずだと，出かけようとする富生。未央は止めようとするが，富生「のんびりやってる場合じゃないんだ。いつばれるかわからない」。１人で出ていく富生だったが，未央は追いかけようとする。紺野に止められるが，未央「誰かがそばにいないと。ほっておいたら，何をするかわからない。私がとめる。あの人には，大きな借りがあるから」。未央は必死に追いかけ，赤松金融へ。「手伝う」という未央。富生はそれを受け入れる。未央には時間を計ってもらうことにした。制限時間３分。可能性がある数字の組み合わせを次々と入力していくが，全くあかない。次第に焦る富生。未央は「あの人には特別に大切な人はいないって」。それをヒントにひらめいた冨生は「あいつにとって大切なのはただ一つ。わかった」と，ある数字を入力する。制限時間ぎりぎり，ドアが開く。入力した数字は，赤松にとって一番大切な人・・・福沢諭吉の誕生日だった。ドアを開けると，その中には大量の札束が。ざっと見積もって２０億円。未央「どうするの。こんな大金」。富生「明日車を借りて一気に盗み出す。目的は奪うことだから。空になったこの部屋を見て赤松がどんな顔するか」と，狂ったように笑いだす。人が変わってしまったよう。 翌日。赤松は富生に「今夜予定ある？」と話しかける。冨生は「別に」と答える。連れていかれた場所は，高級ホテル。今日の日付を確認してわかった冨生は帰ろうとする。富生「オレ行ったらぶち壊しだから」。赤松「それがいいんじゃない」。富生「社長も入れないと思いますよ」。赤松は「見てやって。何かあったら助けてよ」と向かう。その間，富生は未央に電話をし待機していてもらう。電話を切った時，ちょうど赤松が叩き出されてきた。殴られ，蹴られ，ボロボロ。赤松「助けろって言ったろ・・・会長がなんでオレを排除したがっていると思う？・・・怖いんだよ，オレが。表ざたにしたら困る秘密知ってるからね。たかだか数百万の金で口止めしようなんて」。冨生が去ろうとすると，赤松「聞きたくないんだ？ホワイト化学の話なんだけど」。立ち止まる富生。２人でバーへ。ホワイト化学関連の話をする。健全経営で取引先もしっかりしていた。それがいつの間にか借金が膨大になり，追加融資もストップされた。赤松「親父さんが失敗したと思ってんだろ？違うよ。はめられたんだよ。青池早和子に」。その時，未央から電話が。赤松が出る。富生と話をしているから来るかと。未央が駆けつけると，冨生はもういなかった。梢の誕生日のお祝いに行ったんだろうと。赤松「かわいそうにねぇ。修羅場かな」。会社関係者との誕生日パーティーが開かれている。途中，梢が急用で席を外すと出ていく。未央も赤松から事情を聞かされる。未央「彼怒らせて楽しいですか」。赤松「楽しいねぇ。人の怒ってる顔大好き」。未央は赤松をひっぱたく。赤松「いいね。君の怒った顔も」。 梢向かった先には，富生が待っていた。冨生「知ってたのか？いつから？」。梢「何の話？」。冨生「お前のたった一人の身内が，オレのおやじをはめたってことだよ」。梢にはわからない。特許が通れば，ホワイト化学の特殊プラスチックは莫大な利益を得る。だから早和子は，孝夫に買収の話を持ち掛ける。しかし断られると，今度は乗っ取るために孝夫をはめた。青池グループの子会社が，商品を大量発注して，受け取り直前にキャンセル。そこから経営がおかしくなった。赤松は早和子の指示で孝夫にお金を貸し，追い込んだ。梢「赤松に騙されてるのよ」。富生「オレも最初はそう思った。でもな，証拠があったんだ」。音声データを聞かせる。大量発注のキャンセルの指示を出す早和子の声。ホワイト化学がつぶれても構わないと。富生「梢，お前いつから知ってたんだ？」。何も答えられない梢。未央がそこに駆けつけてくる。冨生「何も知らなかったなんて言うなよ。ホワイト化学に乗り込んでおいて」。梢「ある時期から経営が悪化してて。でも，専務はよくある話だと」。冨生「おかしいと思うだろ，普通。これで分かったよ。会長がオレに１千万渡してまで，別れさせようとしたわけ。オレは殺した相手の息子だもんな。結婚なんかされたら困るよな」。梢「知らなかった」。富生「そんなわけないだろ！・・・ずっと悪いと思ってたよ，梢。オレの都合で婚約もダメになって。ずっとすまないって思ってた。おまえは優しくて正しい。あの言葉訂正するよ。さすが会長の孫。鬼だ。いいや，怪物がここにもいたんだなぁ」。未央「梢さんの言ってること，本当かもしれないじゃない。梢さん，ホワイト化学から手を引くわけには」。梢「それはできない。もうすぐ大きな契約が成立するの。うまくいけば，何百億の売り上げになる」。未央「でもお金の問題じゃ」。冨生「もういいよ，未央。よぉーくわかった。だったら力づくで取り戻す。赤松なんて後回しだ。まずは梢，お前たちからホワイト化学を取り戻す。誕生日おめでとう。去年の今頃は，１年後に敵同士になるなんて思いもしなかったな」と去っていく。未央「大丈夫。話せばきっとわかるから。今は赤松さんのせいで混乱しているだけだから」。梢「あなたみたいな子に慰められても，腹が立つだけだから。さっさと追いかければ」。強がっていた梢だったが，トイレで一人になると泣き崩れた。富生に追いついた未央「こんなの赤松社長が喜ぶだけじゃない」。冨生「かまわない。あいつからホワイト化学を取り戻すためなら，赤松とでも，どんな怪物とでも手を組んでやるよ」。そこに赤松が現れた。赤松「話，ついた？」。冨生「全然」。赤松「じゃあ，白石ちゃん.，行こうか」。２人肩を並べて歩き出す。 |
| 第８話 冨生と赤松は，肩を並べて赤松金融へ。赤松「これ見たんだろ」と，金庫に保管されていたホワイト化学の関連資料の封筒を差し出す。赤松は，早和子が赤松を切るときが来ると思い，その時のために関係書類は全部保存しておいたと。そこには，借用書以外に別の封筒に入った書類があった。特許出願の書類。特許出願してから降りるまでの時間が4年以上とかかりすぎている。あと１か月早ければ，ホワイト化学は不渡りを出すこともなく，孝夫は死ななくても済んだはず。そこには特許庁の水越という男の名刺が一緒に保存されていた。 梢は，早和子に「どうしてあんなことができたの」と追及する。早和子は，富生がホワイト化学の息子だとは知らなかったという。わかったときには手遅れだった。梢「それをずっと隠してた。赤松だって知ってたのに，私だけが知らないまま。こんな大事なこと。もう信じられない。会長が何をしたか，自分の手で調べます。必要あればあなたを告発します」。 富生は紺野家に戻る。未央は「あの人は信用できない。利用されるだけだよ。あの人が考えているのは自分のこと，お金のことだけで・・・」。冨生は話を聞かず，部屋に入ってしまう。そして水越の名刺を見つめ，考え込む。 青池ファイナンスに富生がやってきた。早和子が出てくると，近寄っていく。早和子の部屋に通された。富生「売っていただけますか。あなたが手にしているホワイト化学の株全部。値段は２０億」。早和子「いいえ。今のホワイト化学はそれ以上の可能性がある」。冨生「やっぱり。力づくで取り戻すしかないのか」。早和子「あなたにはできるなら」。冨生「失礼します・・・謝罪の言葉はないんですね」。早和子「ビジネスは食うか食われるかの世界」。冨生「ええ。その点親父は甘かった。オレは違います。食われたままでは終わりません」。次に富生は特許庁を訪れ，早和子の代理として水越を訪ねる。富生「実はまずいことに。うちとあなたの関係に捜査の手が入るかも」と耳打ちする。水越「何にもやましいことなんて」。冨生「ホワイト化学の件です」。水越「調べられて困ることなどなんにも」。冨生「お金の流れがねぇ」。水越「証拠がないでしょ。まさか会長は残りの金，出し渋るってことじゃないよね。直接話すから」と早和子に電話を掛ける。水越が「私を脅す気ですか」と早和子と話していると，すでに富生の姿はなかった。早和子「何かしゃべった？」。富生は離れたところで写真を撮っていた。戻ってくると富生「いずれまた。会長によろしく」。早和子は梢を電話で呼びつけるが，早和子は来客中と断る。実はウソ。１人で調べ続けていた。 水越は夜の街で女と歩いている。それを写真に収める富生。冨生は，部屋で水越を撮影した写真を見つめて考えている。未央がやってきて「何を調べているの」。冨生「言ったら手伝う？赤松と組むの，反対なんだよね」。未央「でもハンコ，まだまだ足りない・・・この人は？」。富生「役人。まずはこいつを」。桜田に水越の尾行を頼む。会った人間の身元と会話の内容が知りたいと。桜田が渋っていると，赤松がやってきて手を貸すように言う。その言葉に桜田も引き受けた。その時アカネの読んでいた雑誌を手に取る富生。そこには後輩の灰谷の姿が。それを見て何やらひらめいた様子。さっそく灰谷に電話をかけた。 未央と桃子は，高級クラブの面接へ。桃子が渋ると，お店の様子を見るだけと説得。面接では，ホステスとして働きたいと。一方，富生は灰谷の会社へ。がらんとしている会社。呆然としている灰谷。灰谷「金以外の頼み事って？」。フリーライターを紹介してほしいという富生。希望通りに記事を書いて，雑誌に売り込むことができるライター。灰谷「よく会いに来れましたね。あんなことされたのに」。冨生「なんだっけ？」ととぼける。灰谷「いいですよ。紹介します」。未央と桃子は，店を見るだけのはずが，クラブで働き始めることになってしまった。そこに水越がやってくる。店の女性と親しく話している。 梢は，ずっと調べている。自分がかかわっているホテルスカイホールの資料を見て，何か引っかかる。未央は桃子と一緒に自宅で富生に潜入して得た情報を伝える。水越は女性にかなりのお金を貢いでいる。奥さんと別れたいが，上司の紹介で結婚したので別れることができない。貴重な情報を得て，富生は＜たいへんよくできました＞のスタンプを押す。富生「もう少し探ってくれる？金の出どころが知りたい」。桃子は帰り際，未央に「あの人のこと好きなの？好きなんだよね」と。未央は素直にうなづく。桃子「世界が違う人って感じがするな。ずっと未央のそばにいてくれるタイプの人に見えない」。 梢は，経理部長を呼び出し，経理のことで確認をしたいことがあるという。早和子のところには赤松がやってきた。早和子「余計なことしてくれたわね。いつまでたっても身の程をしらない。あなたはちっぽけな金融屋がお似合いなのに」。赤松「梢さん，会長のこと許してくれました？」。早和子「二度と顔を出さないで」。 水越は，ATMで多額のお金をおろしている。桜田が，水越の１日の行動を報告する。仕事が終わると，お店へ。アフターでホテル。自宅に帰るのは深夜。家計は奥さんが握っており，小遣いは２万円しかない。それでもお金を持っている。富生「問題はその金の出どころだ」。証拠を残さないように，現金を手渡す。もう少し調べてほしいと。赤松も容認。安心して出ていく桜田。未央にもさらに探ってほしいと依頼する。そのやり取りを廊下で聞いていた紺野。紺野「お父さんの会社取り戻すつもりかい」。富生「理不尽なやり方で上刃れたもの取り返すのは当然ですよね」。紺野「じゃあ聞くけど，赤松社長ののお金を狙うのは理不尽なことじゃないのかね。いくらあったか知らないけど」。富生「約２０億ありました」。紺野「そんな大金」。富生「いいえ。全然足りない。ホワイト化学も買い戻せない。取り戻しますけどね。親父が築き上げたもので，どんどん稼いで，20億に負けない札束積み上げますよ」。紺野「お父さんの夢はお金だったのかい？」。富生はそれには答えず，席を立つ。紺野「君が誰と争うと君の勝手だよ。だけど未央を巻き込まないでくれないか。君に出してもらった金は，こつこつ返していく」。富生「もうこの件は忘れて・・・」と未央に言って出ていく。未央は「私の意志で借りを返したいと思ってるだけ」。紺野「２０億かぁ。そんな大金死ぬまでみることないんだろうな。どうして人はそんな途方もない金を欲しがるんだろう。あの世まで持っていけないのに」。赤松は，あの２０億に頬ずりしている。紺野「もっともっとって。何十億手にしたら人は満足するんだろうか。怖いよ。そういう人たちが。金に取りつかれてしまった人たちが」。未央「５００円もそうだと思ってる？」。紺野「不幸だよね。足ることを知らない，満足することを知らない人生なんて。お金を増やすしかない人生なんて。そんなものが白石君が取り戻したかった人生なんだろうか」。富生も２０億のところへ。赤松と同じような表情をしている。 梢はずっと調べ続けている。そこに早和子がやってきた。ちゃんと話をしたいと。梢も早和子に話があった。テーブルには大量のファイル。梢は，本業だけではグループ維持できなくなって，事業の多角化を図ってきた。ホワイト化学の乗っ取りもその一環。事業多角化のために，かなりの現金が動いている。しかし，出資はそれに比べて集まっていない。貸付業務の記録をごまかして，裏金を作った。梢がかかわったホテルも黒字のはずなのに赤字として計上されている。経理部長も納得いく説明をしてくれない。梢「裏帳簿，存在しますねね。会長の行為は脱税です。起訴されれば，実刑になるかも」。早和子「それで？どうしたいの。私を告発する？」。この会話も，盗聴器を通して赤松が聞いている。 赤松はなぜかご機嫌。富生に電話が。桜田からで，お金の受け渡しが今日行われるという。時間も場所も把握している。富生は，灰谷に電話をし，フリーライターを頼む。いつもの店に入った水越は尾行に気付いた。電話をして受け渡し場所の変更を依頼する。それを未央が聞いていた。水越は裏口から出て行った。桜田は気づかない。未央が慌てて追いかける。富生のところに桜田から電話が。尾行を巻かれたと。慌てて出て行こうとする富生のもとに，未央から電話が。水越をタクシーで追いかけていると。品川方面に向かっている。富生「降りたところだけ知らせてくれればいいから。水越に近づくな！」。水越は倉庫の中へ。未央も結局追いかけてしまう。そこではお金の受け渡しが行われていた。まだ富生の姿はない。受け渡しが終了し，水越１人になる。未央は隠れようとして，足元のカンをけってしまい，気づかれてしまった。逃げるが水越が追いかけてきて捕まってしまう。そこに富生が駆けつけた。富生「近づくなって言ったろ。心配させんなよ」。未央のことを桜田に任せ，その場から帰させる。 富生は水越と対峙。富生「これが青池グループからの金か。写真撮らせたから，さっきの彼女に」と封筒を取り上げる。水越「はったりだろ」。水越の行動をすらすらと発表する。それを聞いて慌てる水越。水越「そんなことで脅せると思うのか」。富生「さあね。今言ったのと同じことを奥さんと，上司にいったら・・・それから，マスコミにもね。離婚か，左遷か，それとも」。水越「何が狙いだ。この金が欲しいのか。５００万ある」。富生「それだけ？その程度の金のために，親父の特許遅らせたのか」。そのお金を床にばらまいていく。呆然と見ている水越。富生「拾えよ。大事な金だろ」。水越「持ちこたえられなかったのは，ホワイト化学に会社としての体力がなかったからだ。自業自得なんだよ。もっと早く会社を売るなり，自己破産するなりすればよかったんだ。自殺なんて君の父親が弱すぎただけだろ」。富生「自業自得？」。近くにあったポリタンクの灯油をお金にまいていく。富生「会社がつぶれるのは自業自得。負けるのも自業自得。失敗するのも，貧乏も，借金も，全部自業自得。だったらあんたもそうだよな。役人の特権で甘い汁を吸って。貢金欲しくて，青池会長とつるんで好き勝手やったんだ。全部失ったって自業自得だよな・・・オレ、タバコ吸わないんだった。マッチ持ってない？」。ライターを持って出て来たのは灰谷。富生「５００万の炎か。きれいに燃えるんだろうねぇ」と，ライターの火を近づけていく。水越は床に這いつくばって，必死に拾い始める。その姿を見ている富生。そして，その姿を写真に収める男が。紹介されたフリーライターだった。富生はライターの火を消す。富生「いい写真撮れた？」。見出しを考える富生「特許庁役人，自ら金のなる木を発明・・・とか」。フリーライター「どこの写真週刊誌でも売れますよ」。水越は「頼む。頼みます。知ってることは何でもしゃべるから，マスコミだけには」と富生の足に縋り付く。富生「全部拾わないと。金は命の次に大事なもんだよ」。3人は出ていく。必死にお金を拾う水越１人残された。 富生「記事ができたらメールして」。マスコミに送るのは待ってほしいという。早速記事を書くために去っていくフリーライター。灰谷「すごいっすね。先輩，完全に終わったと思ってました。絶対這い上がれないだろうなって」。富生は，封筒を差し出し「とりあえず１００万。貸してあげるよ。金利は低くしておく」。灰谷「なんで」。富生「見ればわかるよ。あれは引っ越しじゃない。家賃払えなくなって，慌てて引き払ったあとだろ」。灰谷「１億持ち逃げされたんです。オレはもう終わりです」。富生「オレもそう思った。でも意外に終わらないもんだよ」。灰谷「返せる保証ないっすよ」。富生「いいよ。あれ食えれば」と残飯に視線を向けるす。富生「なあんてね。冗談だって。たかが１億程度の金，さっさと取り戻せ」。 去っていく富生に電話が。梢からの呼び出し。梢「謝っておきたくて。祖母のしたこと，ホントにごめんなさい」と頭を下げる。梢「お父さんにも，お母さんにも，富生にも，申し訳なかったと思ってる」。富生「頭上げなよ」。梢「でもね。祖母は本当に私を大事に育ててくれた。だから，私も守りたいの。祖母の作った会社を。そのためには，ホワイト化学は手放せない。ごめんなさい」。富生「わかった・・・でももうじき手放すことになると思うよ」と出ていく。 紺野家に戻った富生。手帳に次々とスタンプを押していく。不安になった未央は，富生の手をつかんで止める。富生「もうすぐかたが付く。これももう必要ない。ホワイト化学を取り戻して，やりなおす。ここも出ていくよ」。フリーライターから記事が届いた。それをプリントアウトし，早和子のもとへ。早和子のその記事を見せる。今ならストップできる。それと引き換えに，ホワイト化学の株を売ってほしいというが，早和子は「何も知らないのね。遅いのよ。私にはその権利がない」。早和子が保有する青池ファイナンスの51％の株が，赤松に買われていた。その金額は２０億・・・。早和子「すべての決定権は赤松にわたったの」。富生「どうして」。早和子「赤松にやられたの。あなたも利用されたのよ」。 |
| 第９話 桜田とアカネに，赤松金融がなくなると告げる赤松。２人は新しい会社に来るかと。そこへ怖い表情の富生がやってくる。富生を見ると，赤松は「話があるんだろ」と別室へ。梢は，早和子と話をしている。赤松に株を売ったことが納得できないと。早和子「やられたわ。この部屋は気を付けていたけれど，梢のところまでは気が回らなかった」。盗聴器が仕掛けられていて，会話を全部録音されていた。梢が早和子に対して脱税をしていると追及している会話も。一方，富生と赤松。２人の間には，緊張が走っている。富生「どうやって会長を脅したんですか」。赤松「脅したんじゃなくて，買うの」。富生「２０億ぐらいで青池グループの株半分を買えるわけがない。何をつかんだんですか」。赤松は，富生がフリーライターに書かせた記事よりもインパクトがあるといい，その記事もすでに押さえていた。赤松「青池グループの名前を守る立場だからね」。梢と早和子。早和子は，梢の立場は全く変わらないという。今は赤松の言うとおりにするしかない。会社の経営状況も厳しい。正式な契約成立は，金曜日。早和子「私のまけよ」。赤松「どんな気分だろうねぇ。格下のチンピラだと思ってたやつに，会社乗っ取られるっていうのは」。富生「ずっと狙ってたんですか」。赤松「品格って何だと思う？昔から，あそこの汚れ仕事を引き受けて来たのにさ，会長はいっつもいうわけ。”あんたには品格がない”って。何が品だよ。そんなもん，ただの金持ちの理屈だろ。正式に契約を交わして，あいつらの品格もまとめて買い取る」。富生「ホワイト化学はどうなるんですか」。赤松「オレが代表になったら，ホワイト化学は白石ちゃんに・・・なぁんてね。これから金を生むって分てる会社，手放すわけないでしょ」。富生「ですよね・・・２０億って大金ですよね。そんな金，どこに。銀行じゃないですよね。銀行に預けられない金かぁ。どこにあるんだろう。隠し金庫とか。もしかして，わりと近くに置いてあったりして」。意味深な視線を送る富生。２人の話し合いが終わると，赤松は桜田を呼びつける。 桜田の尾行はバレバレ。隙を見て逃げる富生。梢に電話をかけ，会いに行く。富生「大変みたいだね。社内の人たち知ってるの？」。梢「笑いに来たの？乗っ取られて，ざまぁみろってもしかして，盗聴器はあなたが」。富生「盗聴か。なるほどね。なに聞かれたの。不用心すぎだよ」。梢「笑いたいなら，出て行って」と，富生を無理やり追い出そうとする。富生「まだ手がある。青池を守る方法が１つだけ。気が向いたら連絡して」と去っていく。 紺野の家に梢がやってきた。富生は自分の部屋へ通す。梢「わからない。祖母を許したわけじゃないでしょ。なんで手を貸すの」。富生「オレは，赤松にホワイト化学を渡したくない。梢たちは，青池グループを赤松に渡したくない。利害一致しない？」。梢「だからと言って，あなたにホワイト化学は渡せない」。富生「正当な値段で買い戻すよ。金なら必要なだけ作る。それより今は，赤松の方が先だろ。教えてよ。どんなネタで脅された」。紺野は未央に誰なのか尋ねる。元婚約者と答える未央は複雑。富生「脱税か・・・脱税の件は後で対応するとして。まずは契約成立させないことだ。それも赤松の都合で。２０億払えないようにする」。そのころ赤松は，あの２０億を愛でている。梢は，富生との話が終わり帰る前に，未央と話をする。梢「ごめんね。きついこと言っちゃったから。でもわかったの。富生にとっては，あなたとあの家が，なくした家族の代わりなんだって。あなた，光太郎君に何となく似てる。まっすぐな感じが。今までごめんなさい」。 富生と桜田はいつものように一緒に外回りの仕事をしている。富生「１億円欲しくない？社長が２０億を隠しているの知ってる？盗むの手伝ってくれたら，１億渡す」。桜田「白石さんにはがっかりですよ。そんな大金貯められるわけないでしょ」と信じてない様子。１人戻った桜田は，そのことを赤松に報告するが，桜田自身は全く信じていない。赤松は「ぴったり白石ちゃんマークして」と。尾行がバレバレでも金曜日までは，自由に行動できないようにしていればいいと言い，もしまかれたらクビにするとまで言いだす。慌てて出ていく桜田。アカネはある程度知っているようで「大丈夫なんですか。盗まれたりしたら」というが，赤松は「盗まれるようなとこにおいてないからね」と。富生は，桜田が見張っていることは十分承知している。なぜか紺野の家で，夕飯まで一緒に食べることなった。富生の会話から，紺野の家の壁の落書きの件がばれてしまう。食事が終わると，とりあえず家を出る桜田。 未央「どうなってるの？」。富生「事情が変わった。共通の敵は赤松。青池とオレは休戦状態って感じかな」未央「２０億は？盗むの？」。富生「知らない方がいいよ。危ないから。これ以上巻き込めない」。未央「好きな人が何してるのかわからないより，ずっといいよ」と思わず言ってしまう。そのタイミングで，富生に梢から電話が。電話を終えると，未央「今言ったのは，変な意味じゃ・・・」。富生「今なんか言った？」。未央「言ったよ。ハンコ欲しいから，仕事させてって」とごまかして逃げる。 赤松は，夜になるとクローゼットの中の扉を確認。さらに，会社のソファに横になる。金曜日まで泊まり込むつもりだった。紺野が散歩から帰ってくると，昼間なのに未央が家にいた。１人でノートに＜たいへんよくできました＞のスタンプを押している。未央「いやな人のままでいてくれたらよかったのに・・・」。紺野は黙って見守っていた。夜，会社を出る富生。梢に電話を掛け，赤松が事務所から一歩も出ようとしないことを伝える。富生「明日は計画通りよろしく」。梢「気を付けてね」。富生「大丈夫。うまくいくって」。 朝。ソファで寝入ってしまい，慌てて飛び起きる赤松。地下に行き，２０億が無事であることを確認し安心する。赤松「いよいよ明日お別れだね。お友達たくさん連れて帰ってくるんだよ」と，２０億に話しかける。みんなが出勤してくる。富生は，アカネのスマホを借りゲームを楽しんでいる。なかなかクリアできないと，夢中になっている。自分のでやれと言われても，返さないる。アカネが電話に出ている間，ゲームに夢中になっているようで，何やらやっている様子。赤松は，桜田に一歩も離れるなと命令する。富生と桜田が出て行ったあと，梢から赤松に電話が入る。大事な出資者に紹介しておきたいから，１時には会社に来るようにと伝える。仕方なく会社を出る赤松だったが，アカネには自分が出てからは内側から鍵をかけ，誰も入れないようにと。もちろん桜田も入れない。ところが，赤松が出て行ってから，その赤松からアカネにメールが届く。会社の実印を青池本社に大至急届けてほしいと。アカネは，桜田に連絡を入れ，富生と一緒にいることを確認すると，会社に鍵をかけ出かけていく。アカネのことを梢が待ち受けていた。そのまま実印を受け取り，しばらく待たせ，引き止める。戻ってくると，実印を返し，アカネは会社に戻る。赤松も挨拶が終わり，青池ファイナンスを出ていく。富生は，ずっと桜田と行動を共にする。赤松は，桜田に富生と一緒だったことを確認すると，そのまま帰るように指示し，アカネにも帰っていいと伝え帰宅させる。事務所に１人になった赤松は，部屋の中にたくさんのジュラルミンケースを広げ，２０億を運び出す準備を始める。そして地下へと向かう。暗証番号を入力し，扉が開く。そこには・・・何もなかった。２０億が跡形もなくなくなっている。思わず倒れこんでしまう赤松。 富生の前に，１台の車が止まる。運転しているのは未央。助手席には桃子の姿が。未央の運転する車の荷台には，大量の段ボールが。その中にはあの２０億が入っていた。赤松金融にアカネが戻ると，呆然とする赤松の姿が。赤松「いつ外に出た！」。アカネが事情を話すと，赤松はメールなんて送ってないと。アカネのスマホを確認すると，赤松の名前で別のアドレスが登録されていた。赤松「こんなことするのは，白石」。車の中で札束をを手にすると，赤松のように匂いを嗅ぐ富生。不安そうに見つめる未央。 早和子は，会社の幹部に今回のことを責められていた。それでも，本当のことを明かすわけにはいかなかった。富生と梢が早和子とのもとにやってきた。梢は，赤松が２０億を持ってくることができなくなり，契約は破棄できると伝える。早和子「あなたたちわかってないわね。契約が成立しなかったところで，赤松はあきらめないわ」。富生「シンプルに脅迫してくるでしょうね」。早和子「赤松はそんな男よ。下品で，身の程知らずで」。富生「そんな男に，あなたは負けた。今どんな気分です？赤松を対等な仕事相手として認めていれば，ここまでひどいしっぺ返しは喰らわなかったかもしれない」。早和子「対等？バカなこと言わないで。金を稼ぐだけで，無知で，愚かで・・・」。富生「そうやってね，バカにされると，いつか見返してやろうって思うんですよ。オレもそうだからよぉーくわかる。人を見下すやつは，見下される側に落ちるのも早いんですよ。今回の負けは，あなた自身が招いたことだ」。早和子「あなたに何がわかる。ここまで来るのに，私がどんな大変な思いをしたのか・・・苦しいことも，悔しい思いも。あなたに何がわかる」と涙をこらえる。富生「わかるのは，今回勝ったのは赤松ってことだけ。負けたら次の手を打てばいい。赤松の脅迫を逃れる方法が１つだけ。会長，あなた自身が脱税を告白するんです。そうすれば，赤松が手にしているカードが，なんの意味がなくなる」。早和子「自首しろってこと」。梢「そんなこと・・・」。富生「他に方法ないだろう」。早和子「これがあなたの復讐？」。富生「どうかな。オレの目的は，ホワイト化学を取り戻すことだから。でも正直，あなたにもみじめな気持味わってほしい，その気持ちは否定しませんね」。今の経営状況では，会長がいなくなるということはできない。早和子「私の代わりはいないのよ」。梢も同意見。富生「わかってないなぁ。２人とも。いるじゃないですか。代わりなら。子供のころから会長の仕事ぶりを，ずっとそばで見ていた。あなたがしたことをわかったうえでそれでもあなたの味方でいることを選んだ，梢さんが」。梢「ムリよ」。富生「そんなことないよ。梢の優秀ぶりは，会長，あなたがご存知のはずでしょ。腹をくくりましょう」。 赤松の様子を見て，桜田は何かあったのかとアカネに尋ねる。赤松は，何も持たずに青池ファイナンスへ向かう。梢に，赤松は「今金はないよ。やられたね。白石とグルだったんだ・・・いいの。それならそれで脱税の件を」。梢「どうぞお好きに。今，祖母が出頭している所だと思いますので」。早和子は，東京国税局の前にいた。梢「残念でしたね。いい線まで言ったのに。でも青池グループは絶対に渡さない。お帰りください」。 富生は車の中で生活していた。そこに未央がご飯を届ける。富生「赤松からなんか言ってきてない？何言われても知らないで通せばいいから」。未央「どうするの，このお金」。富生「増やすよ」。そして以前の上司・黒田部長に電話をする。富生「でかい金動かしたいんですけど，相談に乗っていただけますか」。１時間後に会う約束をする。ホワイト化学を正々堂々と買い戻すため，このお金を倍にすると。 赤松「このままで済むと思うなよ」。 富生はおにぎりを食べながら「稼げ，稼げ，どんどん稼げ。汚い金でどんどん稼げ。この世は稼いだもん勝ちだろ」とつぶやいている。そんな富生を不安そうに見つめる未央。 |
| 第１０話 富生は，段ボールを１つだけ載せたカートを引きながら，以前の勤め先の証券会社を訪れる。かつての上司・黒田部長に，お金をできるだけ早く増やしたいと相談する。富生「３か月以内に確実に上がるところを教えていただけます？」。つまりインサイダー取引の相談。富生「前にも同じことしてたことあるじゃないですか」。黒田「もうやめたんだ」。富生は黙って，黒田の前に段ボールから取り出した札束を積み上げていく。富生「１箱しか持ってこれませんでした。これがあと１９個。合計２０億。少なくても倍に増やしたい」。利益の１割を情報量として黒谷渡すという。驚く黒田に，富生「言ったでしょ？いつか目の前に札束を積み上げるって」。そのころ，紺野家には桜田とアカネがやってきて，家探しを始めていた。探しているのは２０億。一方，１億の報酬に心が揺れた黒田は「１ついい情報がないわけじゃない。もう少し探ってみないと。時間をくれ」。２０億ものお金を扱うために，安全な口座もいくつか必要になる。それも黒田に用意を依頼する。富生「良い情報よろしく。確実なやつをお願いしますよ」。家探しをしていた桜田とアカネ。探し物は見つからなかった。桜田「白石さんから連絡あったら，次はただじゃすまないって伝えておいて」と未央に言って出ていく。黒田との話が終わり，富生は車に段ボールを積むが，車の荷台にはその箱１つしか載っていない。 青池本社に東京国税庁の強制調査が入る。桜田とアカネは，紺野家に続いてホワイト化学でも家探しを始める。桜田はアカネに，赤松が２０億を隠していたことを知っていたのかと訪ねる。アカネは「経理だから。表に出せないお金のことも把握してないと」。専務の金原は「うちは白石家とは全く関係なくなったんだって」と必死に止めようとする。結局，２０億は見つからなかった。それを電話で赤松に報告すると，赤松は２人を帰宅させる。赤松「アイツなら次にどうする？あいつならどう金を使う？」と考える。そして，向かったのは黒田のところ。赤松は，黒田に，富生は自分の会社で働いていたが問題を起こしたと。「あなたの身にもかかわる大事な話」と黒田に。富生が持っていたお金は，ヤバイ筋からだまし取った金だといい，言葉巧みに富生が何を頼んだのか聞きだす。黒田は，今回の取引を断ると言い出すが，赤松は「じゃんじゃん増やしてやって」という。何かをたくらんでいる。 梢は，弁護士と話をしている。早和子は，脱税だけではなく，贈賄や詐欺も視野に入れて捜査が入ることになり，身柄を拘束されている。追徴課税として５０億は必要だということだった。そこに富生がやってくる。まだマスコミには嗅ぎつけられていないので，このまま落ち着いてほしいという梢。富生は「大丈夫？」と言葉をかける。梢「久しぶり。富生からその言葉が聞けるなんて」。富生は，ホワイト化学を４０億で売ってほしいという。海外との交渉がまとまれば，もっと価値があるのかもしれないが，青池グループも今はお金が必要だろうと。梢は追徴課税分の５０億を払うためにも，この提案を受け入れることにした。 夜。未央は家の外に出て，周りの様子をうかがう。そして富生に電話をかけた。見張りがいないと伝えると，富生は段ボール箱をもって家の中へ。台所では，紺野が食事を作っていた。それを手伝う未央。２人は，どこの店が安いかなど，日常の会話をしている。富生が電話のためちょっとその場を離れたとき，紺野が段ボール箱を開け，大金を見つけてしまう。紺野「このお金，盗んだの？未央も知っていたんだね。まさか手を貸したの？これ今すぐ返しなさい」。富生「できません」。紺野「だったら，できるだけ早く，出て行ってもらうしかないね。どんな理由や理屈をつけようが，人のもの盗んでいいってことにはならない。君が今やってること，亡くなったお父さんや病院のお母さんに，堂々と言えるかい？」。富生「ええ言いますよ。これ以外に奪い返す方法なかったってね。あと少しでホントに全部終わります。そしたら家も出ていきますから」と，部屋に入る。未央は「ダメだよ。今１人にしちゃ。あの人には味方が必要なの」。紺野「お前，白石君が好きなのか？それなら余計に，間違っていることは間違ってるって言ってあげなきゃ。ホントの味方ってそういうことなんじゃないのか」。 赤松は，あのフリーライターを呼びつけた。一度止められたあの特許庁絡み記事。赤松「事情が変わってね」。検察庁では，早和子が弁護士と面会していた。早和子は赤松がなにか言ってきてないかと心配するが，今のところは何も言ってきていなかった。早和子「梢に伝えてい。私の心配いらない。万が一どちらか選ばなければならなくなったら，迷わず私より会社を選ぶようにと」。 富生は，ホワイト化学へ。２０億はそこに隠してあった。金原も知らなかったが，富生がお金を入れ替えているところ見て知ってしまう。心配する金原に富生「ホワイト化学は，近いうちに取り戻します。オレが必ず」。ホワイト化学を出ていく富生を，偶然桜田が見つけてしまう。すぐ赤松に報告するが，赤松は「今いいや。金は白石ちゃんに預けておく」と。電話を切ると，赤松「稼げ，稼げ，どんどん稼げ」。 富生に黒田から連絡が来た。すぐに会いに行く。黒田は，録音などがされていないか注意深くチェックする。黒田からの情報は，来週，がんに有効といわれている新薬を発表する三崎製薬の株の購入。確実に倍以上になると。安全な口座も用意してあった。情報をもらうと，帰っていく富生。すぐ近くで聞いていた赤松が黒田のところへ。２０億が入金されたら，すぐにお金だけ引き抜き，罪は富生に押し付けるというたくらみだった。金は山分け。さらに，黒田の自尊心を揺さぶり，自分の側に取り込む。家に戻った富生は，三崎製薬の株の動向を調べていた。そこに未央がやってくる。インサイダー取引をすることを伝える。未央「おかしいよ」。富生「４０億増やすには，これぐらいやらないと」。すると未央が富生のほほをひっぱたく。未央「目を覚ましてよ。この１万円でどれだけのことができるかわかる？駅前の食堂なら３人でおいしいもの食べてもお釣りがくる。美味しいお米が３０㎏買える。映画の日なら映画が９回見れちゃうよ。２０億でも足りないなんておかしいよ。５００円隠した時の方が，よっぽど今よりましだよ。今，赤松社長と同じ。ホワイト化学は口実。お金増やしたいだけ。お金で力を手に入れたいだけじゃない。きっと４０億になっても満足できなくなる。増やしても，増やしても満足できない。同じじゃない，２人とも。とってもかわいそう」。富生は何も言えずその場を立ち去り，自室に閉じこもる。赤松も，三崎製薬の株の動向を調べていた。アカネに今回のことを話し，富生は犯罪者になると。 富生が商店街を歩いていると，いつものスーパーより安い八百屋で，少しでも安く買おうとしている紺野の姿を見つける。しばらく見つめている富生。そして，母の病室へ。未央は，梢を訪ね，富生がインサイダー取引でお金を増やそうとしていることを伝える。逮捕覚悟でお金を増やすつもりだと。未央「止めてもらえませんか」。梢「どうして私に言うの？」。未央「私は何も持ってないから。白石さんを助けられるお金も，力も，何も。でも梢さんにはこんな大きな会社があって，仕事ができて，力もあって。だからお願いします。白石さんがこれ以上間違えないように，あの人を止めてください」。梢「やさしいのね。でも，私には今，どうしても守らなきゃいけないものがあるの。ごめんなさい。力にはなれない。４０億どうしても必要なのよ，私も。どんな方法で作られたお金でもね。何も持ってないあなたがちょっとうらやましい」。富生は，黙って母を見つめていた。そして，子供のころ「人のせいにしないの！悪いことしたらまず謝りなさい。ごまかしたって，ちゃんとお天道様が見ているんだから」と母に叱られたことを思い出していた。しばらく見せてなかった柔らかな表情の富生は「また来るよ，母さん。オレさ・・・」。その時，母が目を開けた。医師の診察では，まだ意思の疎通は難しいが良い兆候だという。富生「母さん。ホワイト化学は，必ずオレが取り戻す」。母は富生に視線を向ける。病院を出た富生は，光太郎に電話で母のことを伝える。携帯をしまうと，ポケットに５００円玉を見つける・・・。 赤松に黒田からメールが。富生から連らが来たという内容。ホワイト化学からお金を運び出す富生。証券会社に向かい，黒田と会う。まだ，用意してもらった口座には入金していないという富生。黒田は急がせる。黒田「もっとデカい札束の山積み上げよう」。そんな黒田の姿を見つめていた富生「母の意識が戻ったんです」。黒田「それじゃ余計に稼がないと」。富生は，母の顔を思い出すと，「すみません。やめます。取引，やめます」。黒田「どうしてここで怖気づく？」。富生「オレらの感覚ってくるってますよね。億単位の金を平気で動かして。毎日コツコツ，１個何十円という製品を作っている人がいる。百万の札束１つ手にしたら，どれだけの人が喜ぶか。でも今のオレにはたった百万としか思えない。キャベツ３０円安かったって喜んでいる人もいるのに。どっちが不幸なんだろう。ホントに貧しいのは，豊かなのは，どっちなんですかね」。黒田「かみさんと同じこと言うな。”億単位の金を動かしているかもしれないけど，あなたはお金の価値なんてわかってない”って。ホントにやめるの？取引。バカだな君は」。富生「はい」。黒田「でもよかった。君をはめずに済んだ」。正直に赤松から手を組むように言われたことを話す。黒田「気をつけろよ。ああいう男には・・・白石君，いろいろすまなかったな」。富生「部長。早く帰らないと。今日，奥さんの誕生日ですよね。待っててくれる人がいるだけいいじゃないですか」。黒田「君にもいるんじゃないか。わざわざ会いに来たぞ」。未央は，黒谷も富生を止めてくれるようお願いしていた。富生「奥さんによろしく」と出ていく。赤富生松に黒田からメールが届く。取引中止の連絡に悔しがる赤松。待ち伏せしていた赤松は，富生に「公開させてやる。おまえら全員。オレの金に手を付けたこと。一生後悔させてやる」。 未央が家を出ると，富生がいた。未央は仕事の面接に出かけるところだった。富生「変な連中うろついてないかなって。取り引きやめたよ。ありがとう。約束守ってくれた。あの取り引きしていたら，確実に逮捕されてた。君の良心がオレを救ってくれたんだ」。未央「よかった。じゃあ，赤松社長にお金返そう。ホワイト化学のことはゆっくり考えて」。富生「それだけのことじゃ，たぶん済まないよ。悪かった。いろいろ巻き込んで。紺野先生と未央に甘えてた。これ以上迷惑かけられない。居候，卒業するよ。金も少したまったし」。未央「行かないで」と富生に抱き付く。未央「ずっといなよ。お金返して，新しい仕事見つけて，普通に，３人でご飯食べて，笑って・・・」。富生「遅れるよ，面接。今夜，オレうまいもんつくっから」と去っていく。赤松が未央を見張っていた。そして，あの大黒に連絡を取り，会いに行く。富生の話を持ち出し，赤松「あいつにも弱点がありましてね」。 フリーライターが書いたあの記事が，雑誌に載っていた。弁護士によると，そのため，取り調べが長引きそうだという。保釈には３～５億は必要だろうと。会長は，自分のことよりもグループを守るために使ってほしいと。幹部には責められる梢。その記事を八百屋で偶然見つけた富生。青池本社に慌てて向かう。すでにたくさんのマスコミが押しかけていた。その騒ぎの中，梢を見つけ，２人で話すことができた。あの記事をリークしたのは赤松だろうということに。富生「オレと青池そろってつぶすつもりか・・・こんな時悪いんだけどさ，４０億，用意できなくなった」。大きなため息をつく梢「人前だと，ため息もはけなくて・・・どんどん人が離れて行く。出資者，取引先，いろんな人がね」。富生「オレも同じ思い味わったよ。あのとき，たかだか金で，人ってこんな変わるんだなと思った。でも１番変わってたのは，オレだった。オレは，世界を見る目が変わった。すぐ隣にいる梢が，急に遠い人に見えて。助けようとしてくれるたびに，雲の上から見下ろされてる気分で，みじめで卑屈になって，きついことばかり言った。梢は何一つ変わってなかったのに。でも，その変わらなさがつらかった。ごめんな」。梢「守り切れない。ここを守るなんて，私にはとても・・・」。富生は梢をやさしく抱き寄せ，「できるよ。梢。お前はな，自分が思っているよりもずっと強いんだ。赤松はオレがなんとかする。だから，梢は変わらないでいてくれ。これからどんなにみじめでも，罵倒されても，今のまま堂々と胸を張って戦ってくれ。今日が最悪の日だと思えばいい。あとは這い上がるだけだから」。 紺野家。富生が約束通り料理を作っている。職場復帰した紺野が帰ってきて，富生を手伝う。富生が作っているのは，母が作ってくれたシチュー。富生「親父の会社，取り戻すのムリになりました」。紺野「あきらめを十分に用意しておくことも，人生という旅には必要だ・・・ショーペンハウエルのことば。ホワイト化学を取り戻すことだけが，人生をやり直す方法じゃない」。そのころ，未央は夜道を１人歩いていた。その前に大黒たちが立ちはだかる。料理中の富生「今夜，飯食ったら，出ていきます。赤松とかたつけないと」。紺野「早く２０億返さないと」。富生「たぶんそれだけじゃ，あいつの気が済まない。金は取り戻す。そのうえで，オレや青池にもっと大きなダメージを与えたい」。紺野「警察に相談とか」。富生「赤松の金盗んでいるんで。オレも犯罪者だから」。紺野「それだって表に出せない金だろ」。富生「だから赤松も警察は頼れない」。話しているうちに何かひらめいた。富生「そうか・・・ショーペンハウエル。あきらめを十分用意して。先生ありがとうございます。赤松とのかたのつけ方，見つけました。２０億あきらめますよ。派手にね」。その時，未央から電話が。すぐに大黒に変わる。大黒「親父にちくったら，どうなるかわかってるよな」。場所を伝え，５分で来いという。富生「その子に手を出すな。指１本でも触れるな。もし未央に何かあったら，俺がお前を殺す！わかったな！」。走り出す富生。紺野も追いかけるが，追いつけない。赤松は，地下の金庫で横になっている。留置所の早和子。青池本社の梢。廃屋に囚われた未央。赤松「お前ら全員つぶしてやるよ」。富生は，未央のもとへ全力で走る。 |
| 第１１話 富生は，約束通り，５分で未央のもとに。いきなり大黒に殴られる富生。未央は２０億と引き換えだという。富生「金は返す。だからその子に手を出すなよ！」。そこに，モップを片手に駆けつけた紺野。めちゃくちゃにモップを振り回す。その隙を狙って，富生が未央を逃がした。しかし外には赤松が待っており，捕まってしまった。富生「金は返す。この子に何かあったら，２０億はばらまく。高層ビルから。２０億の紙ふぶき，ちょっと見たくない？１日待ってくれ。準備できたら連絡する」。赤松「それまで預かっておく」。未央「わかった。信じる」。富生「この子に傷１つでもつけたら」。赤松「そっちこそ，大事な諭吉が，枚でも減ってたら・・・」。富生「約束する。元通りに返す」。未央を車に乗せ，赤松は去っていった。富生「先生。すみません。でもオレに任せてください。絶対，守ります。先生のくれたヒントの通り。赤松に思わせてやりますよ。二度とオレたちにかかわりたくないって」。 富生は家に戻ると，すぐに灰谷に連絡を取る。その様子を見ていた紺野「ただ普通に返すだけじゃダメなのかい」。富生「赤松の怒りは収まりません」。紺野「その怒りは誰のせい？君の怒りが生んだもんだよね？」。富生「しっかりかたをつけます」。紺野「怒りは新たな怒りを生み，憎しみは憎しみを生む。誰かがどこかで，終わりにしないと」。富生「すみません。先生。オレはオレのやり方でしか前には進めません」。 梢は出資者と話し合いをしていた。その出資者は，出資してる全額を引き上げるという。青池グループにお金を預けているのではなく，早和子を信頼してお金を預けていた。梢には早和子の代わりは無理だと。何も言い返せない。しかし，その出資者は，赤松とつながっていた。これは梢にプレッシャーをかけることが目的だった。入れ替わりに，光太郎がやってきた。珍しくスーツを着ている。 赤松に軟禁されている未央。未央は「逃げない。約束したから」。そんな言葉は信じない赤松。富生の部屋では，灰谷がなにかのプログラムを作っている。スイッチはどうするかと相談している。スマホでできると聞き，それで頼むという富生。早和子は，弁護士に雑誌の記事を見せられる。保釈には５億が必要。早和子「青池を守るように伝えて」と梢への伝言を頼む。青池本社にはマスコミが押しかけていた。役員たちは，梢を責め続ける。富生は，桃子を呼び出した。桃子「今度は何を？」と不安そうに。桜田は未央に食事を届ける。桜田「怖くないの？」。未央「全然。白石さん，必ず来るから」。赤松金融に，桃子がやってきた。お客として。ソファに通されると，そっと盗聴器を仕掛ける。富生はその会話を車の中で聞いている。そこに戻ってきた桃子「次は何を？」と乗り気で。 梢が会長室に戻ると，赤松が待っていた。赤松は，追徴金も保釈金も金額まで知っていた。あの都市で留置所生活はきついだろうから，早く返してあげたいと，揺さぶる赤松。赤松「出そうか？オレが５億。金ならあるよ。白石ちゃんから，今日取り返すんだぁ。見返りなしってことにもならないけど・・・オレを青池の役員に加えて。今まで通りのワンマン経営は通らない。梢さんにも無理でしょ。１人でこの青池グループを背負っていくなんてね。一緒にさ，新しい青池作って，がんがん稼ぎましょうよ」。それだけ言うと去っていった。赤松は，事務所に電話を掛ける。１時に弁護士事務所に言ってくれと。自分は今日は戻らない。それを聞いていた富生は，すぐにどこかに電話をかけ「決行は１時」と伝える。今度は梢から電話があり，富生は青池本社に駆けつける。梢「５億貸してくれない？」。富生「ごめん。できない。全額赤松に返す」。梢「どうかしてるよね。ごめん，忘れて」と明るさを装って答える。そして，ホワイト化学の件で光太郎がやってきたことを話す。光太郎が従業員のリストを持ってきた。１人ずつの優秀な点をそえて。優秀な従業員だから，このまま全員残してほしいと。自分もホワイト化学に見習いとして入って，今まで研究したことをいずれ活かしていきたいと。梢「急に大人になってた」。今回の騒動で，航空会社との契約は保留。それでも，大きな可能性がある。ほかの子会社を手放しても，ホワイト化学はて残しておきたい。梢「光太郎君や専務たちにと一緒に。長い目で見て，育てていきたいと思う」。富生「そうか。頼む」と頭を下げる。梢「いっしょに青池グループの再建手伝ってくれない？」。富生「青池では働けない」。梢「だよね。わかってたけど，一度言ってみたかったの」。富生「大丈夫か」。梢「たぶんね」。 １時過ぎ。赤松は未央を軟禁しているアジトへ。未央はおとなしく待っている。シャンパンを開ける赤松。未央「２０億戻ってくるのがうれしいの？」。赤松「それだけじゃないんだよねぇ。このまま青池を乗っ取っちゃおうかなぁと思ってる」。未央「うれしいんだ。そんなことが。他人が作り上げた会社奪い取るのが」。赤松「青池は，うまくやればもっと稼げる。金の卵のホワイト化学もついてくる」。未央「いくらあれば安心できるの？怖いんですよね。お金がないと。私は，借金さえなくて，普通に生活できれば，それで満足だけど」。赤松「とっても恵まれてるよね。そういう子には，わからないだなぁ。金がないホントの怖さが。白石ちゃんやオレみたいな，ホントに金のない地獄を味わったやつしか，金の怖さと力がわからないもんなんだよねぇ」。赤松は，子供のころ，父親が借金まみれで，一家心中させられそうになった経験があった。赤松「まっとうな親をもって，普通の生活ができる君は，それだけでとっても幸福だってこと」。そのころ，富生は国税庁の前に。どこからか電話を受け，話が終わると，次に赤松に電話。４時に赤松金融で２０億を返すと。富生「あそこに戻すのが筋だと思って」。アジトを出る赤松・未央・桜田。赤松は，梢に電話をする。今からお金を受け取るから，「5億ぐらいいつでも出してあげられますけど？どうします？」。赤松を役員にするという誓約書を書いてくれれば，今夜のうちにでも５億出してあげるという。迷いながらも，用紙を手にする梢。 赤松金融に待機する面々。約束の4時ジャスト。扉が開く。入ってきたのは・・・東京国税庁の面々。脱税の疑いで調べにやってきたのだった。一瞬，身構えながらも，とぼける赤松。絶対に証拠は出ない。無駄な調べだと思っている。あちこち調べている間，誰かがどこかでスマホでスイッチを入れる。すると，あのクローゼットから煙が。クローゼットの中の扉が開いている。国税庁の人に地下の隠し部屋が見つかってしまう。そこには，あの20億がきっちり返されていた。その２０億が国税庁の人間に見つかり，連れていかれる赤松。そこに富生がやってくる。富生「約束したでしょ。全額元通りに返すって。あんたには感謝してますよ。あと少しであんたになるところだった。金のとりこになった人間は，いつか金に食いつぶされる。紅谷さんの言ったとおりだった」。赤松「信用できるのは金だけだ。それのどこが悪い？逮捕されても，また稼ぐ。金となら喜んで心中してやるよ」。富生「それでこそ社長だ。でもオレはあんたとは違うんだ」。赤松「違わないよ。お前も一緒。金を稼ぐ以外にしたいことないだろ」。未央「そんなことないよ。あなたと違う」。赤松「親の仇だの，ホワイト化学を取り戻すなんて，ただの口実。こいつはね，オレと一緒。金の力にとっくに取りつかれてる。それに，お前には金を稼ぐ力がある。やめられるわけがないだろう」。富生「違う」。赤松「違わない」。富生「あんたとは違うよ！」。赤松につかみかかり，必死に否定する富生。そんな富生に抱き付く赤松「一度取りつかれた人間はね，金の力からは，逃げられないんだよ」。反論できない富生。赤松は連れていかれる。桜田「何やったんですか」。富生「金返しただけだよ」。留守の間に，桃子と灰谷が，20億を地下の隠し部屋に運び入れる手伝いをしていた。桜田「むちゃくちゃっすね」。富生「約束守っただけだって」。次に来たのは警察。出資法違反の疑いでの操作。今回は，富生の内部告発という形だった。不正経理のデータも渡す。桜田とアカネには「社長がやっていた違法行為，何も知らないで通して」と耳打ち。桜田「容赦ないなぁ。ホント似た者同士だな。白石さんと赤松社長」。空になった赤松の席をじっと見つめる富生。赤松を役員にするという誓約書を書き上げた梢。そこへ，早和子の件で弁護士から連絡が入る。 紺野家に，未央と富生が帰ってきた。紺野「ちゃんと話がついたんだよね」。富生「はい」と答えただけで部屋に入ってしまう。紺野「どうしたの」。未央「わかんない」。3人で囲む食卓。富生が作っていたシチューだった。しかし手を付けない富生。紺野が心配すると，富生「わからなくて，この先何をしたらいいのか」。紺野「覚えてる？君のお父さんの葬式で，君が言ったこと」。参列者の前で，札束の山積んで見返してやる・・・と叫んでいた。紺野「今でもそう思ってる相手いるかな？見返してやりたい，腹の立つ相手は？」。ホワイト化学の従業員，灰谷，黒田，梢，早和子，赤松・・・。富生「いいえ。誰も」。紺野「なら終わったってことだよ。君の怒りでどうしようもない時間は終わったんだよ。君の復讐はね」。富生「恨みとか，怒りとかで突き進んでいた方が楽だった。今のおれにはやりたいことが何も」。紺野「探せばいいじゃない。これからゆっくりと。だって君は，君の人生を取り戻したんだから」。安心したのか，食べ始める富生。 早和子は保釈されることに。5億円を何とかしたらしい。それを新聞記事で知る富生。保釈前，早和子は紅谷と面会していた。早和子「どうして5億円も，あなたが」。紅谷「忘れたのかい？ホームレスだったオレに，あんた1万円貸してくれた。その1万円で人生やり直せた。借りを返しただけだよ。金はうまく使えば，巡り巡って返ってくる。あんたはいい金貸しだってことだよ」。 富生は青池本社へ。青池には多数のマスコミが押しかけていた。早和子に向けられるマイク。早和子は，今回のことは自分一人の行いで，罪を償うために自首をしたと。会長も辞職し，梢が社長になると。記者たちは，同族企業の体質を変えず，早和子が裏で操るんだろうと勘繰る。すると，突然富生が「納得できませんね」と言い出す。富生「親父の会社乗っ取られたんですよ。けっこうあくどい手口で。どうせ裏ではワンマン経営つづけるんでしょ？罪を償う？あんたは，何も変わらない。このまま金の力で貧乏人からいろんなものを奪うだけだ。奪って奪って稼ぐだけ。オレの言ってること間違ってます？」と周りをあおるように。アイコンタクトを取る富生と梢。今度は梢が「違います」と。会長の自主は，きっかけは内部告発。富生「そんな根性のある社員，青池グループにいるんですかねぇ」。梢「ええ。会長を告発しようとしたのは，私です。健全な会社経営を続けていくためには，会長にはすべての職から退いてもらうしかないと判断しました」。早和子「この人の言う通り，孫に代表を譲るのではなく，この人に会社を奪われたんです」。梢「青池グループのためですから。みなさんに納得いただけますよう，健全経営を目指します」と。このやり取りで，マスコミの中の梢の評価が上がったようだった。富生と梢・早和子だけになる。梢「いきなりなんて芝居させるの」。富生「マスコミの論調が少しは変わるんじゃない」。早和子「ありがとう。お父さんのこと，ごめんなさいね」と去っていく。2人きりになる。梢から手をさっと差し出す。梢「今度こそ，さよならね」。富生はその手を握り「ああ」と握手。去っていく梢の背中を見送る富生。 富生は，母の病室へ。富生「ホワイト化学，オレには取り戻せなかったよ。ごめんな」。母は声を振り絞って「ありがと。もういいから」。うなずく富生。富生はそのあと，ホワイト化学に向かう。そっと外から覗くと，見習いとしてホワイト化学に入った光太郎があいさつしてた。みんなに温かく迎えられている。それを確認すると黙って去っていった。 次には，新しい仕事を始めた未央と会う。富生「いろいろありがとうね。桃子ちゃんにもお礼言っといて」。未央「これからどうするの？」。富生「金貸しは続けるかも。赤松とは違うやり方で。世の中には，たかだか借金で死ぬバカがまだまだ大勢いるから」。未央「500円がいいなら，それもありかもね」。休憩時癌が終わりに近づく。未央「またあとでね」と去っていこうとする。富生は「未央」と呼びかけ，突然抱きしめた。そして，「じゃあね・・・ほら仕事」と未央を行かせる。その態度に不安を感じた未央「今夜は，美味しいもの私が作るから，3人でお祝いしよう」。それには答えない富生。そして「行かないと遅れるよ」と見送る。歩き出した未央。ふと振り返ると，富生の姿が消えていた。夜になり，急いで家に帰る。台所に立っているのは紺野。富生の部屋をのぞくと，もう荷物がなかった。未央「ひどいよ，こんなの。いきなりいなくなるなんて」。紺野「ようやくいろんなことから自由になれたんだ。喜んであげよう」。テーブルの上には，あのメモ帳が。「たいへんよくできました」のハンコが，最後のページまで押されている。そして最後には＜ありがとう！（500）＞。泣き崩れる未央。そっと見守る紺野。 父の最後の場所に，花を手向ける富生。あのカードの破片はその場で投げ捨てた。 紅谷がいつもの喫茶店に行くと，白石から頼まれたと，封筒が渡される。その中には１９万円が。あの時貸した１０万円。倍にして返す約束。＜残りの１万はまだ借りときます＞。 赤松は留置所に。全く反省の色はない。 梢は，着々と仕事をこなしていた。 未央は，５００円玉貯金をしている。 鞄１つで再スタートする富生。１万円札を透かして見て，歩き出す。 ・・・あの地下の隠し部屋。暗証番号を入力し，入っていったのは富生。そこには札束の山が。札束の匂いを嗅いで，ニヤリ・・・。 |