猟奇的な彼女

1回戦「史上最凶の純愛」

　　調査のために水族館にやってきた江戸橋大学海洋生物学科の面々。調査を終えようという頃には，数島はナンパをしているし，三朗はイルカと遊んでいる。数島は，三朗をお見合いパーティーに誘うが，三朗は彼女の誕生日だからと断る。三朗に彼女ができたことにショックを受ける数島。その夜，三朗は花束を抱え彼女の家に行く。カギはかかっていない。部屋の中には服が脱ぎ散らかされており，テレビではサッカーの日韓戦が映っているが，彼女の姿が見えない。仕方なくテレビを見ていると・・・横のベッドに人の気配が。彼女は見知らぬ男性とベッドの中で"日韓戦"。平静を装って部屋を出て行く三朗。
　傷心の三朗は，ホームの柱に頭をぶつけ続ける。ふと目に入ったのは，酔っぱらっているのかホームをふらふらする女性。今にも落ちそう。放っておけない三朗は，電車が入ってくる寸前，彼女を抱き留め助ける。何もなかったような女性。完全に酔っぱらっている。彼女のことが気になりながらも，電車に乗り込む。同じ車両の2人。相変わらず彼女は，電車の中をふらふら。そんな状態でも，優先席に座っている若者に，おばあちゃんに席を譲るように注意する女性。酔っている女性は，今にも吐きそう。ふらふらしながら，目の前に座っている男性の口の中に吐きそうで，三朗が心配していると・・・突然電車が揺れ，女性が三朗の元へ！そのまま三朗の胸に・・・。電車を降り，ホームの水道でシャツを洗う三朗。「最悪だよ」と半泣き。女性はホームのベンチに寝ている。そのまま行ってしまおうかと思いながら，放っておけない三朗は，おぶって街へ出て行く。でも，彼女の家どころか，名前すらわからない。女性は突然「助けて！クララがヤギを！」と叫び出す。完全に意識はなく，寝言だった。仕方なく三朗は，ラブホテルへ。エレベーターの扉が閉まる寸前，また女性は「助けて！・・・」と叫び出す。それを見ていたフロントの従業員。部屋に入った三朗は，女性をベッドにおろし，自分はシャワーを浴びる。シャワーから出てくると・・・フロントの従業員と女性警官が飛び込んでくる。そしてタイミングよく，女性が「助けて！」とまた寝言を。無理矢理連れ込んだと勘違いされた三朗は，一晩留置所へ。
　翌朝。江戸橋大学。遅刻しそうで，ダッシュをする三朗。途中で学生らしい女性とぶつかってしまう。慌てる三朗だったが，彼女のカバンのチェーンが絡んでしまいとれない。彼女は「一緒に走りましょう」と。2人で走り出す。三朗が話しかけると，その女性が「お久しぶりです。16年ぶりだね，サブちゃん」と。驚いて女性の顔をしみじみ見つめると・・・「南!?」。幼なじみの南だった。職場の研修で，この大学の夏目研究室，つまり三朗のいる研究室に来ることになっていた。研究室の前に来て，財布がないことに気づく三朗。財布の中のカードがないと中に入れない。タイミングよくドアが開き，中へ。みんなに南のことを紹介する。一目で気に入った数島は，名前を聞くと「たっちゃんって呼んでください」と。三朗を勝手に「かっちゃん」と呼んでいる。実は，お見合いパーティーでも1人あぶれていた数島だった。必死の数島は「だれかさんみたいにお一人様になりたくない」と。その誰かさん・・・祐天寺が顔を出す。祐天寺は，南に「生まれてきたことを恨んだことある？・・・私だってないわよ！」。みんながでていき，南も講義に向かうが，途中マグロを引きずった不思議な男性に出会う。その男のことを研究室のみんなが「教授」と呼んだ。その男の背中には"夏目"と書いてある。有名な夏目教授だった。
　三朗が講義をしている。南もそれを受講している。すると突然どこからかハデなクシャミが。クシャミをした女性が，高々と三朗の財布を掲げる。そう，昨夜であったあの最悪の女性・・・凜子だった。周りも気にせず前に出てくる凜子。三朗の横まで来ると，耳元でささやく・・・「ぶっ殺す」。屋上に呼び出された三朗。凜子は，三朗に詰め寄る。「何した？私に何した!?」。何もしてないという三朗だったが信じてもらえない。財布の中身を次々と放り投げながら証拠を探そうとする凜子が見つけたのは，ラブホテルの次回割引券。もう一度連れ込む気だろうと迫る。さらに，三朗がため口をきくと，今度はそれを責めてくる。そして・・・急所蹴り！
　その夜。三朗と凜子は，とある店で飲んでいた。必死に説明する三朗。凜子は，三日前から寝ていなくて何も覚えていなかった。唯一覚えているのは怖い夢。クララがヤギの足を持ってまわしていた。それしか覚えていない。話の途中，凜子はカバンを落としてしまうが，拾おうとしない。放っておけない三朗がカバンを拾うと，その中から書きかけの小説が出てきた。取り戻そうとする凜子。三朗は財布と交換を条件にした。渋々財布を渡す凜子。三朗だって小説を読むし，「世界の中心で愛を叫ぶ」に感動したと話す。すると，凜子は自分だったらこうすると語り出す。
　（テレビの映像で再現ドラマ）
　彼女（凜子）のベッドサイドに彼（三朗）。彼女の最後の言葉は，「私が死んだら，私の灰と私の大好きな人を，オーストラリアの空にまいて」。彼が「まいて？どういうこと？」と悩んでいるうちに，彼女はなくなってしまう。そして・・・オーストラリアの上空，パラシュートも付けず"まかれる"彼・・・。
　「泣けないよ！」と三朗。すると突然酔いつぶれる凜子。どうしようもない三朗は，またあのラブホテルへ。今度はそのまま帰ろうとするが・・・「どうして」と凜子の目から一筋の涙が。「大丈夫か」と三朗。そのころ，南の歓迎会を終えた一行が街を歩いていた。南は，イルカを好きになったのは三朗の影響だと話している。三朗は，やさしくて頼りがいがあると。その時，ラブホテルから放り出される三朗の姿が目の前に！また勘違いした凜子が，三朗を責め立てていた。急所蹴りをされた三朗が，一行に気づく。呆然と見ていた面々。他人の振りして立ち去ってしまう。南だけは残っていた。三朗が声をかける。カバンのホイッスルに気づき，話をしようとするが，南は去っていってしまう。ホイッスルは，三朗が引っ越していくとき，泣いている南に「絶対にまた会えるから」と渡した物だった。振り向くと凜子の姿もない。必死で凜子を捜す三朗。やっと凜子を見つけ，南にきちんと説明してほしいと頼む。凜子とは何の関係もない他人だと。三朗「南は僕の運命の女性かも知れないんだ」。彼女に振られ，一生気をしないと思ったとき，南と再会できたのは，運命かも知れない。そう思っていた三朗。いったんは去りかけた凜子だったが「いいわよ。ただし条件がある」。
　三朗が連れて行かれたのは質屋の前。そこに飾られているテディベアを取り戻してほしいと。三朗は，自分が買ってやると言うが，凜子はこれでなくてはダメだと。三朗は彼からもらった物なんだと解釈した。質屋の店主に頼み込むが，孫にあげる約束をしたと言って，買い戻しに応じてくれない。凜子は，三朗に土下座させ，お腹を蹴り，頼み込ませる。すると店主は「条件がある」。別れた女房の所にあるゴルフバッグを取り戻してほしいと。必死で自転車をこいでその家へ。すると，やっぱりなかなか応じてくれない。また必死に頼み込むと・・・「条件がある」。有名和菓子屋のようかんを手に入れるため並んだが，寸前で売り切れ。すると，ようかんを手に入れたヘビメタ男を発見。次に2人が向かったのは，ライブハウス。サインを手に入れるため，観客の上を泳いでいく三朗。花嫁を略奪したり，幼稚園でオズの魔法使いを演じ，ボクシングのスパーリングの相手，アクションシーンの撮影・・・と次々と"条件"をクリアしていく2人。やくざの親分の元へ行き，ここでも条件を突きつけられる。
　クタクタになりながらも，その条件をクリアするため，土手を移動中の2人。すでに夕暮れ時。凜子は，三朗に彼女と別れた理由を尋ねる。三朗は「いつものパターン」と。三朗とつきあう女の子達は，みんな「何か足りない」と言う。頼りがいがないとか，おもしろみがないとか。凜子「違うんじゃない？その子達って，運命の人じゃなかったんだって。どんな人にも必ず1人はいる」。それは，何気ない日常の中で，"この人のために生まれてきた"と思える人。三朗「キミの彼氏は，運命の人なの？」。凜子「まあね」。二人乗りをしながら，凜子は後ろから話しかける。「だけど人って失ってから気づくこともある・・・・ありがとうって言いそびれたことある？さよならって言いそびれたことある？好きって言いそびれたことある？」。
　２人がたどり着いたのは，夜の埠頭。暗い海の中に落とした物を見つけ出すのが条件。でも，とても海に入れる状態じゃない。それでも凜子は三朗を突き落とそうとする。必死で逃げる三朗。「無理！がんばったら死ぬ！」。しばらく格闘するが，突然凜子が「帰っていいよ。あきらめた」と言い出す。不審に思いながらも，１人自転車で帰る三朗。帰り道，あの質屋の前を通りかかる。ウインドーに飾られたテディベア。凜子の言葉を思い出す。
　埠頭では，凜子が１人で１本の棒で海をさらっていた。すると「あきらめたんじゃなかったの」という三朗の声が。凜子が振り向くと，ダイビング姿の三朗が。三朗「あの日あの夜，あの駅のホームには二人いた。恋が終わったばかりの２人がいた。キミと僕と。まだ忘れられないんでしょ。だから彼からのプレゼント取り戻したいんでしょ。恥ずかしいことじゃないよ・・・じゃ，いってくる」とゴミだらけの海に入る。慌てたのは凜子。必死に巨大ライトを引っ張ってきて，暗い海を照らした。上からでは何がどうなっているのかまったくわからない。どんなに叫んでも，三朗の返事がない。いてもたってもいられない凜子は，自分も海に飛び込もうとするが，なかなか決心が付かない。いざ！・・・と言うとき，三朗が海面に顔を出す。落とし物のジュラルミンケースを手に，楽しそうに泳いでいる。
　全ての条件をクリアし，無事テディベアが凜子の元へ戻った。このテディベアは，彼からの誕生日プレゼント。「こんなんでごまかしてさ・・・」と凜子。「こんなもの！」と道路に放り投げてしまう。車の合間を縫って，慌てて拾う三朗。テディベアをキレイにしていると，そのチョーカーの中から指輪が。「これが本当のプレゼントだったんだ」と三朗。泣き出す凜子。「もう会うこともないの」という凜子に，三朗は「そんなのわからないじゃん。運命の人だって思ったんだろう」。凜子「運命だって変わることもある」。三朗「運命って再会することだよ。必ずもう一度会えるよ。ちゃんといった方がいいよ。好きだったんだろう。今から行こう」。歩き出した三朗が，突然倒れる。「ちょっと限界みたい」とその場で寝てしまった。
　朝になり，三朗が目を覚ますと，そこにいたのは南。女の人から電話をもらって駆けつけたと。凜子はすでにどこにもいなかった。南は，ホイッスルを三朗に見せる。このホイッスルは「魔法のホイッスル」。幼い頃，三朗がこのホイッスルを吹いて，イルカを呼び寄せたことがあった。「だから，初恋の人にも会えた」と南。その頃，凜子は１人土手を歩いていたが，彼との写真を見つめていた。
　研究室に行くと，みんなに疑われている三朗。必死に言葉を探し，出てきた言葉が「あれはサメに噛まれたんだ。通りすがりのサメ女」。その時，夏目教授が勝手にマグロ解体ショーをはじめているという情報が入る。慌てて教室に向かう面々。仕方ないと手伝いをはじめる。
　ある朝。三朗の住むアパートの隣に新しい住人が引っ越してくることになった。管理人でおばさんの林田に尋ねると，キレイな女性が来ると。喜ぶ三朗だったが，荷物を運んできたのは引っ越し屋のユニフォーム姿の凜子。三朗は，凜子に荷物を渡され，手伝いをさせられる。三朗は，凜子がバイトだと思い込み，トラックが帰っても居座る凜子に注意をする。凜子は表札を見せ・・・＜高見凜子＞，これが自分の名前だと。大笑いした三朗だが，すぐに「おもしろくないよ！」と怒鳴る。一向にかまわない凜子は，ベランダの柵を乗り越え，三朗の部屋へ。三朗は必死に追い出そうとするが，凜子の勢いにまけてしまう。凜子に追い込まれた三朗。「ぶっ殺されたい？」と凜子。そこへ南がやってきた。必死に凜子を連れ出し，２人でベランダに隠れるが・・・。
　

２回戦「恋は，タイミング」

　　南がやってきて，ベランダに隠れた三朗と凜子。「せっかく誤解が解けたのに」という三朗を無視し，構わず出ていく凜子。まるで彼女のように振る舞う凜子だったが，三朗はピザ屋だとごまかす。それでもすぐに南に説明をしてわかってもらう。南は，祐天寺から頼まれた物を届けるために来た。その届け物は魚。水槽に入れた三朗は，家に帰ってからも面倒を見るのはイヤだと言う。南が好きな仕事だろうというと，「好きなことでも仕事にしちゃうと好きじゃなくなっちゃうんだよ」と三朗。その言葉にちょっと引っかかりを感じる南。南はカップ麺が積まれたキッチンを見て「朝ご飯作ろうか」。喜ぶ三朗だったが，その時ピザ屋の格好をした凜子が飛び込んでくる。凜子が「彼女？」と訪ねると，南は「いえ・・・まだ」。「まだぁ？」と三朗と凜子。南がいるにもかかわらず，凜子はキッチンを物色しはじめる。冷蔵庫の中の物の置き方まで注意。なんとか凜子を追い出すと，今度は南が帰るという。ただし「今度はちゃんと買い物してくるから。晩ご飯とか」と三朗が喜ぶ言葉を残して。三朗が南を見送っていると，凜子も顔を出す。三朗が「引っ越しして！このサメ女！」と言ったのをきっかけに，子供の様な口げんかが始まる。
　三朗が出勤しようとすると，五月が声をかける。「あの子に手を出したら許さないわよ」。三朗は「おばさんは彼女の何なの？」。「えっ」と答えられない五月。
　研究室へ行くと，健作が「オレ結婚する！」と叫んでいる。結婚をしなかったのは，周りにろくな女性がいなかったからだと。その結婚相手は南だという。春夏は「浅倉さんが好きなの眞崎先生でしょ」。みんなが納得しているのに，健作だけは認めようとしない。そこで実験を提案。健作と三朗，同じ状況で同時に南に手伝いをお願いする。どちらを選ぶか・・・ところが，祐天寺が南に三朗を手伝うように言ってしまう。しかも健作は，春夏に「結婚できないの，ウザイからです」と言われてしまう。さらに，南が三朗に今夜買い物をしていくと言っているのを聞いてしまう。健作「オレってウザイ？」。三朗「うん」。廊下を走り去る健作・・・。
　凜子は駅からだれかにつけられてしまう。その頃，南がやってくるからとワインを用意してウキウキしながら待っている三朗。ドアが開き，南が来た・・・と思ったら，凜子だった。凜子が「いいこと思いついた」というと，何も聞かずに「イヤです」と拒否。凜子の"いいこと"は，三朗がボディーガードになること。「ノー！」と完全拒否する三朗。でも，凜子は三朗の言葉なんて聞いていない。勝手に居座り，そばの出前なんか頼んでいる。三朗は困り果て，なんとか追い出そうとするが，逆にやられてしまう。その時，南から「今から行く」と連絡が。凜子は勝手にワインを飲んでしまい，もう酔っぱらっている。三朗は「急用入っちゃって」と南に断る。翌日。南に平謝りの三朗。南は怒るどころか，「買い物していくね」と。その夜。また三朗がワインを用意して待っていると，南から「今から行く」と電話。その時，ふと気づくと，お風呂場から音が。凜子が入浴中。またもや断る三朗。翌日。また平謝りの三朗。「今夜は絶対大丈夫」と，また約束をする。夜。三朗は家に帰ると，部屋中をチェック。今度こそ凜子の姿はない。電話がかかってくる・・・凜子から。変な男につけられ，タクシーで逃げているうちにどこにいるのかわからなくなったと。迎えに来いと言うが，もちろん三朗は拒否。凜子は叫び声を上げ，電話を切る。放っておけない三朗は，南に断りの電話を。駅の改札を走ってと下りすぎる三朗のすぐそばで，南は買い物した材料を手にしていた。「私の方こそごめん。いつまでも幼なじみ気分じゃ・・・」と南。凜子がいるという田舎の駅に着いた三朗。駅舎を出て，どちらに向かったらいいのか悩んでいると，聞き慣れた声が電車に飛び乗っていった。三朗が電車の方へ行くと，すでに電車の中で眠っている凜子の姿が。しかもその電車が最終・・・。その頃，南は研究室に戻っていた。誰もいないと思った研究室には，夏目がいた。「ため息付くと，幸せ逃げるぞ」と夏目。
　翌日。ボロボロの三朗が南に謝るが，南は「もらったの」と遊園地の券を見せる。夏目に，デートして仲直りをしてこいと渡された券。三朗は「行こうよ」と。そして振り向くと，研究室の面々。なぜか「借りた金は返せ」と冷たい視線を送ってくる。なんだかわからない三朗が研究室へ行くと，凜子の姿が。誤解されないように，借金取りだと名乗ったという。凜子はなぜ来てくれなかったのかと抗議。「行ったのに！」と反論する三朗。ケンカしていると，健作が入ってくる。凜子を見て一目惚れ。三朗「やめとけ。最悪だから」。でもそんな言葉は耳に入らない。三朗が持っていた遊園地券を見つけ，ダブルデートを提案。三朗は断るが，「オレはしつこいぞ」と健作。三朗は，健作と凜子を結びつければ・・・「つまり」と三朗。ふと思いつき，ガリレオのようにテーブルに数式を書き出す。＜友情＝自由＝手料理＞。１人悦に入る三朗。それにつっこむ凜子。三朗はダブルデートを頼み込むが，なかなか納得してくれない。三朗があきらめかけると，「チャンスは１回だけよ」と凜子。その代わりに，ボディーガードを約束させられる。
　遊園地でのダブルデート。しつこい健作を振り回す凜子。三朗と２人になると健作は，夜までに２:２に別れると意気込んでいる。一方凜子と南が二人きりで話している。凜子のことは疑いが晴れていた。凜子は，南のバッグに付いているホイッスルを見つける。南は「私の笑顔の素。想い出には２種類あると思うんです。ギュッと握りしめると思わず涙が出ちゃう想い出と，なんだか笑顔になる想い出と。泣きそうになったら，これを見てサブちゃんの顔を思い出していたんです」。凜子は「いいね。幼なじみって。でも，逆につきあいづらいか」と。南は「"好きなことでも仕事にしちゃうと好きじゃなくなっちゃう"って，私の知ってるサブちゃんと違うのかなって。迷惑なのかなって」と不安を口にする。凜子は「大丈夫だって！」と励ます。
　凜子が小説を書いていると知った健作と南。今どんな物をかいているのかと尋ねると「拷問系」。
（再現ドラマ）
　時代劇。罪人（三朗）とそれを取り調べる女（凜子）。罪人が「しゃべる」と言っても，女は「拷問！」。罪人が全てをしゃべっても，次々と足の上に石を載せさせる女・・・。
　話の内容を聞いた３人は引いてしまう・・・。
　なんとか凜子と二人きりになりたい健作は「なんとかしてくれ」と。すると三朗はあれに乗ろう」と観覧車を指さす。あれに乗ったカップルは必ず結ばれるという伝説があると。２:２で乗ろうと提案するが，凜子は「パス！」。それでも強引な健作に，顔面パンチ！４人がごたごたもめている間，南のカバンからホイッスルがとれてしまった。それに気づいたのは凜子だけ。凜子「あんたがあのウザイ人と乗ればいいでしょ！」。三朗「イヤだよ！」。そのやりとりを聞いた健作は，走り去ってしまう・・・。凜子は「だれかに見られている」と気にしている。南は「帰ろう。鍋でもしよう」と提ごたごたの中で，ホイッスルのことは忘れ去れれてしまった。
　結局３人で三朗の家に戻る。凜子は，三朗が引っ越しの日に五月から預かった植木鉢を見つける。「あんたが育ててるんだ」とつぶやく。三朗は凜子に「家に帰れ」と言うが，鍋の材料は３人分だからと居座る。そして，南のカバンを見てホイッスルのことを思い出すが，三朗に「キミのせいなんだぞ」と怒鳴られ，ホイッスルの話ができない。三朗「大体，キミは勝手すぎるんだよ。わがままばっか言って。最低だよ。ふられて当然だよ。キミと別れた男の気持ちよーくわかるよ！」。怒鳴った後で，言い過ぎたことに気づく三朗。逆襲もせず，黙って出ていく凜子。追いかけた三朗だが，部屋に戻り「ごめん。ややこしくなって。後で謝っておくから」と，南と残ろうとする。そこへ，五月たちが完全防備で乗り込んできた。ストーカーを見つけ，凜子に注意するように言いに来たのだった。心配する三朗だったが，南とのことも気になる。すると南は，凜子があの観覧車に乗ったことがあるんじゃないかという。しかも大事な人と。だから乗りたくなかったんじゃないかと。それを聞いた三朗は「ごめん！」と凜子を追いかけていってしまう。
　三朗が遊園地へ向かうと，ちょうど凜子が出てきた。ホイッスルを見つけて。「だめじゃん。気をつけなきゃ」。三朗が「そんな物のためにわざわざ?」というと，凜子は「これは南ちゃんの笑顔の素」と。「ありがとう」と三朗。ストーカーを気にすると，凜子は芸能プロダクションに声をかけられたとあっけらかんとしている。三朗は「ふざけんな！どれだけ心配したのかわかってるのか！」。２人がもめていると，ちょうど入園した形になり，突然人が集まってくる。なんと"来場１億人目"になってしまい，王子様・お姫様になってパレードすることに。凜子は三朗に「伝説間違ってるよ」という。凜子は，あの観覧車の一番上で別れ話をされたのだった。三朗は「ごめん・・・」と。でも凜子は「乗ってみない？」と提案。その頃南は，鍋の材料を持って研究室へ。ちょうど夏目が１人で鍋をしていた。２人で鍋を食べ始める。南は「今でもイルカが好きですか？」と聞く。三朗の言葉を出し，「一番好きなことって一番近くにあっちゃいけないのかな」。夏目は「好きなことをするのが生きることだ。幸福な人生とは，一番好きなことを見つけることだ」と語る。
　三朗と凜子は，観覧車に乗った。想い出を語る凜子。「商店街のおせんべい屋さんみたいなものだって。見慣れた通りのいつものおせんべいやさん。だけどある時そこを通りかかって気づく。そこにあったはずの店がなく，工事している。あそこって何お店だっけ？当たり前にあったはずの店なのに，思い出せない。きっとキミも僕をそんな風に忘れる。思い出さなくなる。だから大丈夫だよ。そう言っていなくなったの。全然大丈夫じゃないよ。別れ話と気づいたのは次の日，本当に彼がいなくなってから。ちゃんと言ってくれれば言いたいことあったのに」。今は，家も引っ越し，仕事も辞めていて，どこにいるのかもわからない彼。三朗「もう一度ちゃんと探して・・・」。凜子「ちゃんといった方がいいよ。南ちゃんに。彼女のことどう思っているの？言ってみ」。三朗「今言えないよ」。凜子「恋はタイミングなの。エースを持っているからと言って，必ずカードに勝てるとは限らないよ。最高のタイミングで，最高のカードを出した人が恋を手に入れるの」。その頃，熱く語る夏目の話を，楽しそうに聞いている南。三朗「好きだよ。南のこと好きだと思う」。凜子「あんたがつくればいいじゃん。未来永劫の伝説」。三朗「キミももう一度乗りに来なよ」。凜子「どっちが先か競争しよう」。
　三朗「ストーカーが勘違いでよかったよ」と言っているが，２人の様子を覗いている男の影・・・。三朗の部屋に戻ると，凜子が鍋を作ると。それを食べた三朗「材料がないのによくできたね。この魚なんてかなりうまいよ」。「あり合わせ」と凜子。その魚は，三朗の部屋の水槽で浮かんでいた魚。全滅だったと。「病気だったんだけど」と三朗は，ぶるぶる震えだし倒れる。救急車で運ばれる中，凜子は南と夏目が楽しそうに歩いているのを見つけてしまう。何も知らない三朗は「南～くるしぃ～」とうなされていた。
　

３回戦「帰る場所はどこ？」

　　カフェの三朗と健作。健作は，まだ凜子のことをあきらめてないという。三朗は「あの女が来てからろくなことがない」と嘆いている。出ていってもらおうと，部屋の前で何度も「出ていけ」の練習を。すると，凜子の部屋のドアが開き，ぼーっとしたり子が顔を出す。「お腹すいた。何か作って」。結局いいなりの三朗。食事を作って，凜子の部屋に行くと，凜子は小説の執筆中。部屋中原稿用紙が散らかっている。それを集めながら，三朗は，明日の南の誕生日に告白するつもりだと話している。まったく話を聞いていないような凜子は，あっという間に料理を平らげ，黙ってカップを置く。「コーヒーね」と三朗。キッチンに行くと，フェリーのチケットが貼ってあった。その時，五月と若葉が三朗を呼んでいた。慌ててベランダから自分の部屋に戻り，二人と話す。五月は，凜子のジャマをしないように忠告に来たのだった。凜子は，今度の小説がうまくいかなかったら，実家に帰るという約束を両親としていた。余計なことを話してしまう五月を止める若葉。五月は「例の話も内緒？」と。慌てて連れ出す若葉。気になることが残るだけの三朗。その脇では，あの植木鉢の花につぼみが。
　三朗が凜子の部屋に戻ると，凜子はテーブルに突っ伏して眠っていた。小説が完成したらしい。それを確認した三朗に，天の声が聞こえる。まるでナレーションが流れてくるように。その声に合わせコーヒーを入れようとするが・・・凜子が起きて，命令しているだけだった。三朗は，原稿を手にすると，内容を読み始める。三朗「恋愛小説！?似合わねぇ～！！」。原稿を取り戻そうとする凜子と逃げようとする三朗。そのどたばたの中で，コーヒーが原稿の上にこぼれてしまう。タイトルと著者名がにじんでしまった。三朗は「書き直します」と言うが，タイトルは＜憂鬱な薔薇＞。困った三朗は＜ゆううつなばら＞と平仮名で書いて怒られてしまう。それなら著者名を・・・と書こうとするが，「凜子」が書けない。三朗を追い詰める凜子「ぶっ殺されたい？」と一発殴る。
　三朗は，南へのプレゼントを買って，ウキウキ気分で街を歩く。凜子は，完成した原稿を手にワクワクしながら街を歩く。ある街角で・・・ぶつかる2人。凜子の原稿がバラバラになってしまう。三朗は，そっと逃げようとするが，もちろんそんなことはできなかった。凜子は，原稿を出版社へ持って行くところだった。「靴擦れした！」と，三朗の靴と交換してしまう。仕方なく凜子の靴を履きながら付いていく三朗。出版社の近くまで来ると，靴を戻す。そのまま行こうとする凜子に，三朗は「ありがとうぐらい言ったらどうなんだよ」と。すると凜子は，満面の笑みで・・・「あ！」と叫んで行ってしまう。「"りがとう"は？」と三朗。それでも笑顔で見送る。
　その後，三朗が研究室へ行くと大騒ぎになっている。夏目が勝手に機械を動かし，今にも爆発しそうな状態に。火が噴き出し，三朗が「大きな布を濡らして！」と。健作がが「あった！」と三朗に手渡す。手渡されたのは，三朗が南のために買ってきたストール。でももう迷っている時間がない。そのままストールをかぶせ，無事消火する。みんなが拍手で喜ぶ中，1人悲壮な表情の三朗。騒ぎの原因を作った夏目を，研究室総出で探し始める。必死で逃げ回る夏目。逃げ込んだ倉庫にいたのは，三朗と南。とうとう捕まってしまった夏目。研究室に戻り，掃除をする羽目に。夏目は，南に「相談がある。プレゼントは何がいい？」と。自分の誕生日プレゼントと思った南だったが，夏目は「何が喜ぶかな，娘は」。離婚した妻との約束で，半年に1度だけ娘に会えることになっていた。それが今日。南は「ストールがいいんじゃないですか」。南が教えたストールは，三朗が買ってきたストールだった。実は南が欲しがっていた物。高くて買えなかったという。三朗が「そうだったの？」と南に話しかけていると，こっそり夏目が逃げ出してしまっていた。
　凜子が部屋に戻ると，三朗から電話。凜子はまたストーカーが出たと不安がる。三朗は凜子にストールを買ってきてほしいと頼む。なんやかんや言いながらも，三朗のためにストールを買いに行く凜子。凜子が店に行くと，別のドアから夏目が出ていくところだった。研究室では，掃除を終えた三朗がパソコンを付けると，先日の"来場1億人目パレード"のニュースが流れはじめた。だれかに見られたら大変と思っていると，南に見られてしまった。慌てる三朗だったが，気にしていないという南。他の研究室の面々は，パーティーに出かけてしまった。でも，南は断った。南「サブちゃんは？・・・忙しいよね」と思わせぶり。三朗は「今日だよな・・・オレにお祝いさせてくれないかな」。
　家に戻ると，凜子からストールが売り切れだったと伝えられる。困った三朗だったが，凜子の格好が気になる。何と凜子はペンギン姿。研究室の面々が，三朗の部屋で仮装をして集まっていた。どうやら凜子の小説がうまくいったという想定で仮装パーティーをするらしい。6時に南と待ち合わせをしている三朗は不機嫌に。でも誰もそんなこと気にせず，勝手に盛り上がっている。ベランダに出された服を着るため，ベランダに行く三朗。凜子はお酒を取りにベランダに出てきた。文句を言う三朗にくってかかる凜子。二人が争っている間，手違いでカギを閉められてしまう。三朗が，どんなにガラスをたたいても，盛り上がっていて気づいてくれない。凜子の部屋にも行ってみるが，凜子はしっかりカギを閉めていた。携帯も部屋に置きっぱなし。一人焦る三朗。その頃，一人待ちぼうけの南は，偶然，夏目と出会う。夏目は娘にすっぽかされてしまっていた。
　どうしようもない三朗と凜子は，その場でお酒を飲んでしのいでいた。凜子が「憂鬱も薔薇も書けないくせに」というと，三朗は「書ける人なんていない」と。でも凜子は「いるよ・・・いた」とちょっとしんみりする。三朗は「元彼？」と。凜子は，彼との想い出を懐かしそうに語る。彼と知り合ったばかりの頃，2人で食事をしていると，そのテーブルに青い薔薇が。凜子が「薔薇という漢字は難しいよね」と言うと，彼はコースターに「薔薇」と書いた。凜子が「憂鬱は？」とさらに聞くと，それもコースターに書いてくれた。その後はコースターを埋め尽くすほど難しい漢字を次々と書いてもらった。三朗「それでか『憂鬱な薔薇』。2人のこと書いたんだろう」。「それ以来，彼の部屋には青い薔薇が飾ってあった」と凜子。彼がいなくなった後，彼の部屋を訪れると，空っぽ。三朗が，もっと探した方がいいというと，凜子は「人のこと心配している場合？」と。三朗「あっ！・・・開けろ！」。何の反応もない。
　その頃，南と夏目は，語り合っていた。南は，彼とは巡り合わせが悪い。「運命なのかな」と。夏目は「運命って言うのはアンラッキーをラッキーに変える力」と，南を励ます。その言葉を聞いた南は「彼の家に行ってきます」と飛び出していく。その南に，夏目はストールを渡す。三朗が買ったものと同じストールを。ベランダにいる三朗は「もうダメだ」とあきらめかけている。そんな三朗に凜子は「あきらめちゃダメ！」とロープを手渡す。ロープで下に下りればいいんだと。凜子に手伝ってもらい三朗が下りようとすると，凜子が三朗の首にロープをかける。そんな騒ぎの中，五月と若葉が三朗の部屋を訪れ，やっと三朗はベランダから解放された。
　三朗が部屋を飛び出そうとすると，凜子の部屋の電話が鳴る。凜子は「南ちゃんかも」と三朗を部屋に引きずり込む。その瞬間，南が三朗の部屋を訪れる。南は，健作に三朗は南の所へ向かったと聞き，また外へ飛び出す。一方凜子は電話を受けるが，表情が曇る。南からかと落ち着かない三朗。何も言わない凜子。焦る三朗。凜子「ほっといてって言ったの」。いらだつ三朗は今夜の騒ぎの原因は「どうせダメな小説の話を健作にしたからだろ・・・」と。そして凜子に「でていけ！」と言い放つ。すると凜子は，涙ぐみながらも「私だって好きでここにいるわけじゃないわよ！あんたになんか一生わからない。そんなに出ていってほしいの・・・出ていく」と荷造りをはじめる。今度は三朗が慌てる。凜子は「両親と約束したし」。さっきの電話は，出版社からだった。「あんたの言うとおり，ここに住んでる意味なんてないんだ・・・」と出ていく。すると，ちょうど健作が出てきて，三朗の部屋へ凜子を引き込む。そこで，凜子は鉢植えがないことに気づく。パーティーの騒ぎでどこにあるかわからなくなってしまった。すると凜子は「行こう」と健作を連れ出す。三朗が部屋に戻ると，鉢植えが見つかった。蕾だった花が咲き，青い薔薇がそこにあった。今までのことを思い出す三朗。
　その鉢植えを持って，五月の所へ行く。三朗「誰？この持ち主は。教えてよ」。五月「内緒にしてって言われて・・・」と困っている。三朗は「彼女出てったんだ。オレが彼女を傷つけたんだ」。すると五月は「先月は3件の引っ越しがあったの」と話し始める。一番最近は凜子。その前は，三朗。そしてその前は・・・野々村俊介。「凜子ちゃんを置いていなくなった人。凜子ちゃんの大好きだった人」。野々村は，理由も言わず突然引っ越していった。仕事も住むところも彼女も捨てて。凜子は，何度も部屋を訪れ，最後には「ここに住まわせて」とお願いした。三朗が隣に住んでいたということは，全くの偶然だった。三朗は「なんでだろう。彼が帰ってくるかもしれないから？」と。すると，若葉が「どこに帰ればいいのかわからないの。どこにいればいいのかわからないのって」。凜子がそう言っていたそうだ。
　飛び出していった三朗は，健作に連絡を取る。凜子と一緒だったが，タクシーが着いた途端，どこかへ行ってしまった。たぶん，船に乗るつもりだろうと。健作は追いかけたかったが，ポールに縛り付けられてしまっていた。フェリー乗り場に駆けつける三朗。乗船していく凜子。三朗が健作を見つける。健作からチケットを受け取ると「後で助ける」と言い残し，自分もフェリーへ。ギリギリ間に合い，船の中を探し回る。やっと見つけた凜子に，三朗は「こっちじゃないだろう。君の帰る場所は。まだ帰る場所見つからないんだろう。あきらめちゃダメだよ」と。凜子は「これ，ただの遊覧船だよ。1時間もすれば元の場所に戻るの」と言う。拍子抜けする三朗「なんで乗っているんだよ」。凜子「風に当たりたいって。気晴らし」。三朗がホントは帰るつもりだったんだろうというと，「落ち込んでないし」と強がる凜子。小説は，編集者に主人公が凶暴すぎてリアリティーがないと言われたらしい。強がってあっけらかんとしている凜子に，怒鳴りつける三朗「ふざけんな！振り回される方の身になってみろよ」。凜子は「私が来てって言った？迎えに来いって言った？ほっといてよ！関係ないじゃん。私が何をあきらめようと勝手でしょ」と涙ぐんでいる。三朗「あるじゃん。あるよ。帰る場所。ほっとけないよ」。凜子「薔薇って書けないくせに。憂鬱って書けないくせに。私のこと何も知らないくせに」と言うと，「書けるよ。書ける」と三朗。三朗は，自分の手のひらに文字を書き始める。そこに書かれた文字は＜凜子＞。三朗「凜子・・・凜子の凜は凛々しいの凜。これでいいんだよな」。凜子「三朗・・・三朗・・・」。三朗「帰っておいでよ。帰ろう」。凜子はちょっと茶化すように「あんた，まさか，私のこと好きになったの？」。三朗「ふざけんなっ！サメ女！」。
　三朗を捜していた南は，健作の元へ。健作からフェリーに乗ったことを教えられる。フェリーでは，凜子が「大丈夫。会えるよ。運命の人なら」と三朗を励ます。三朗は「キミもな。探してみなよ。野々村さん。オレも手伝うから。一緒に探そう」と。凜子は珍しく素直に「ありがとう」と。「なんて言った？」と三朗。凜子は「別に何も」とごまかす。その時凜子が倒れそうになる。睡眠不足の上，風邪をひいてしまったよう。三朗は「しばらく眠りなよ」と言うが，「寝れないよ」と凜子。それでも三朗の胸に寄りかかるように眠ってしまった。そんな凜子をしっかり支える三朗。その姿を，偶然南が目にしてしまう。南から見ると，2人が親しげに寄り添っているように見える。その場を離れようとした南のカバンから，あのホイッスルがとれ，海の中に落ちてしまう。泣きながらしばらく見つめていた南だったが，その場を走り去る。健作も，三朗と凜子の姿を見つけ，走り去る。南が向かった場所は，いつもの研究室。夏目が出てくるのを待っていた。
　三朗は，凜子をベッドに寝かせると，あの青い薔薇の鉢をテーブルに置く。その時，偶然，凜子と元彼の写真を見つける。外ではストーカーが，まったく同じ写真を見つめていた。

　

４回戦「さよなら運命の人」

　三朗の講義の後，突然健作が乱入し，つかみかかる。凜子を抱きしめていたことを「裏切り者！」と。南も見ていたと知らされる三朗。凜子に，また誤解されて取り返しが付かないと話をするが，なぜか凜子は三朗の部屋の前にいた。勝手にシャワーを使っていたのだった。しかも様子がおかしい。よく見るとドアから大量の水が。風呂場に行くと，水道管から水が噴き出していた。部屋は水浸し。それを片付けながら，野々村のことを話す二人。凜子が話す野々村の情報は，捜索にはあまり役に立ちそうもないことばかり。大事なことをなかなか思い出せない。すると凜子は，みかんの皮を剥くと忘れていたことを思い出す・・・ということを思い出した。次々と皮をむく凜子。次々とみかんを食べる三朗。かなりの量を食べているが追いつかない。やっと思い出したのは，バスの中で野々村の友だちにあったこと。偶然であった友だちをどうやって捜すのかとあきれる三朗だったが，その友だちはバスの運転手だった。早速，同じ時刻同じ路線のバスに乗ることにした二人。ところが，凜子は名前も顔も覚えていない。唯一の手がかりは，ブレーキを踏むのが下手くそだったこと。２人で何回もバスを乗り換える。やっとそれらしい人物が運転席に。ブレーキも下手くそ。その顔を見て凜子は確信を持つ。
　その男・森中進にレストランで話を聞く。最近会っていないと冷たくあしらう森中。三朗は「彼女はただホントのことが知りたいだけなんです。何も言わずにいなくなった野々村さんの気持ちを知りたいんです。さよならさえ言えなかった・・・このままじゃ前に進めないじゃないですか」と森中に伝える。すると森中は「最近野々村と話したと言うやついたな」。その人物に会いにいく２人。人力車を引くその男は，仕事中だからダメだと。凜子「こっちで引きますから」。三朗が人力車を引き，その男と凜子が乗り込んで話を聞いている。その男が言うには，"ほしのあき抱き枕"を買っているところを見たと。その店に行くと，なかなか教えてくれない。仕方なくその"ほしのあき抱き枕"を購入。そうやって教えてもらって行った先は，ゲイバー。そこで聞いた話は，女王様紹介したと。野々村は"ドM"だという。三朗は「この辺でやめた方がいいんじゃない」と。三朗は次の日から研究のための出張に出かけることになっていた。その資料を見た凜子は「ここよ！」。野々村の実家のある場所が伊豆長岡だと思い出した。野々村の実家は，いちご園をやっているという。
　翌日。車の周りをチェックする三朗。凜子の姿がなくほっとする。茂市が車に荷物を載せようとすると，そこには"ほしのあき抱き枕"が。そんなものがあるとは知らない三朗は，自分の荷物で必需品だと言ってしまう。実は，その中に凜子が隠れていた。みんながいなくなってから，そっと出てくる凜子。すると，夏目と南が仲良さそうに来るのが見えた。夏目は，この間のことを「事故みたいなもの。見なかったことにする」と言うが，南は「教授に会えるって知っていたから・・・教授に会えたから涙が出てきた」と。それに答えず去っていく夏目。夏目は他の仕事のため一緒に行けなかった。他のみんなが戻ってくる。三朗と南は，なんとなくギクシャクしている。１人混浴を楽しみはしゃいでいたのは健作だった。そして，やっと"ほしのあき抱き枕"の存在に気づいた三朗。そこから凜子が出てきてビックリ。動揺する三朗に対して，さっさと野々村の実家を探しに行く凜子。
　その夜。三朗が１人旅館の部屋でくつろいでいると，ノックをする音が。扉を開けても誰もいない。窓から音が聞こえる。凜子が乱入。どこも満室だったと。２人が言い争っていると，健作がやってきた。大あわてで凜子を隠す。三朗だけが，急遽夏目が来れなくなったため１人部屋だった。健作は，凜子がいない混浴は意味がないと嘆いている。そのテーブルの下に隠れている凜子。健作が，イスにかけられた女物のカーディガンを見つける。三朗は「オレの」と必死に着て言い訳。今度は，布団が盛り上がっているのを見つける健作。そっと布団をめくると・・・"ほしのあき抱き枕"。それを見つけた健作は「ごめん」と部屋を出て行った。そんな騒ぎの後，お風呂に行くという凜子を必死で止める三朗。止めきれず，女湯の前で呆然としていると，南にあってしまう。南と凜子は２人でお風呂に入り，凜子が船でのことを説明する。すると南は「サブちゃんに怒っているわけじゃない。自分に。ひどいことしている自分」。「好きな人できた？」と凜子が言うと，頷く南。部屋に戻ると，三朗は凜子にどんな話をしていたのか追求するが，凜子は何も答えない。凜子は１日野々村の実家を探していたが，結局手がかりはなし。ふと石川啄木の短歌を口ずさむ凜子。これは野々村の受け売り。凜子「眠るのが怖いの。夢見るのが怖いの。幸せな夢。夢の中には彼がいる」。野々村と初めてあったとき。彼は凜子がずっと読みたかった本を読んでいた。２度目。彼は凜子の髪を切りながら，知らない国の話をしてくれた。自分で夢と気づき目を覚ます。目を覚ますとひとりぼっち。だから眠れなくなる。三朗「ノックしろよ。そう言うときは声かけろよ。話し相手ぐらいにはなれるからな」。石川啄木は，２７歳で病気で亡くなった・・・それを言うとぐっすり寝てしまう凜子。そっと部屋を出た三朗は，南の姿をテラスに見つける。遠くから見守るだけの三朗。三朗「明日はきっといいことがあるよ」。
　翌日。２台の車で来た三朗達だったが，三朗は他の人たちと別れ，１人車で帰ると。１人になると，凜子が"ほしのあき抱き枕"から出てくる。「行こうか，イチゴ狩り」と三朗。あちこち探し回る三朗と凜子。でも，野々村の実家が見つからない。三朗「大丈夫だって，見つかるよ」。でも凜子は「東京へ帰ろう。あの運転手さん言ってたじゃない。ふられたのにしつこく追い回すなんてって。ふられたんだよ。認めたくなかっただけ。無駄なことして・・・一つだけ無駄じゃなかったことがあったよ。眞崎三朗に会えた。あんたにあえて救われた気がする。野々村さんのこと，少しだけ忘れられた気がする。その分だけ誰かを好きになれるかも知れない。だから感謝しているの。眞崎三朗に会えたこと」。三朗「なれるよ。またきっと誰かを好きになれるよ」。
　凜子をアパートまで送り，車を大学に戻す三朗。その頃，研究室には夏目と南がいた。車を置いた三朗も向かっている。南は夏目に向かって「好きの反対って，嫌いじゃないんです」と。夏目は「無関心か」。南「どうして気づかないふりするんですか。私には無関心だからですか」。三朗が研究室に近づいてくる。南「私は・・・教授には無関心じゃありません。私は・・・」。三朗が研究室に入ってくる。南「教授のことが好きです」。それに対して夏目は「そう言う精神的なことは専門外だ」と答える。「申し訳ありませんでした」と去っていく南は，部屋の隅で話を聞いていた三朗に気づかない。南が廊下に出ると，そっと姿を見せる三朗。南は「ごめん」と言うが，三朗は「お疲れ様」と。南「お疲れ様です」。三朗「レポートができたら，オレか数島先生に見せて」。泣くだけの南。三朗「また明日」。
　三朗がアパートに帰ろうとすると，あのストーカーがいた。声を変えると・・・あの森中だった。２人で喫茶店で話し合う。三朗「彼女が野々村さんを嫌いになるような話ばかり。あなたが仕組んだんじゃないですか。何か知っているんでしょ」。森中は「会わない方がいいんだよ。今でも好きなんだろ・だから・・・」。三朗「野々村さんは好きじゃなくなったんですか」。森中「そんなわけないじゃん。ずっと心配しているよ。だからオレが代わりに様子を見てた」。三朗「どうしていなくなったりするんですか」。森中「覚悟あんの？覚悟あるなら会いにいきなよ。会って，それでも知らせるべきだと思うなら」と，判断を三朗に任せた。そして，居場所をメモする。そのメモを見て驚く三朗。森中が「野々村の本だ。読んでみたら」と手渡したのは，石川啄木の本。
　その本を片手に，教えてもらった居場所へ行く三朗。凜子は，野々村の薔薇に水をあげてくれていたからと，三朗に新しい花をプレゼントしようとしてた。そして，ベランダの植木鉢に水をあげていたが，野々村の薔薇の花がしぼんでいるのを見つける。三朗が向かった先は，病院だった。凜子は，野々村の薔薇にそっと触るが・・・はらりと落ちてしまう。付き添っている妹に案内され，病室に入った三朗が見たのは，酸素マスクを付けベッドに横たわる野々村の姿だった。その帰り道，呆然と歩く三朗の携帯が鳴る。何も知らない凜子は，三朗をスカッシュに誘い，はしゃいでいる。三朗は，野々村のことは何も言わず，いつも通りにつきあっていた・・・。

　

５回戦「命をかけた恋」

　森中と話す三朗。森中に野々村が電話をかけてきたのが3ヶ月前。もうすぐ死ぬという宣告を受けた野々村は，一番に考えたのは彼女・凜子のことだった。公園でたこ焼きを買って，どうすれば，どんな風に話せば凜子を悲しませずにすむか，それを考えていたと言う。そして出した結論が，何も言わずにいなくなること。そう結論を出すとすぐに行動に移した。その翌日には引っ越しの手配をし，2日目には会社を辞め，3日目には彼女と会って何も言わずに消える。その次の日には入院をした。後は彼女が忘れるのを待つだけ・・・。三朗は「忘れられるんでしょうか」と。何も知らされずにいる凜子が忘れることができるのか。「死ぬと聞くよりいいでしょ」と森中。どっちの悲しみが大きいか，どっちの方が傷つかないか・・・・「言えるの？野々村俊介はもうすぐ死ぬって」。何も答えられない三朗。森中は，隠し通して，今まで通り彼女と会うようにと言う。三朗も「わかりました。いいません」と約束する。その頃，凜子は枯れてしまった薔薇の鉢をゴミ捨て場に置いた・・・。
　部屋に帰ると，凜子は福引きで当たったとウソをついて，三朗にお礼の鉢を渡す。三朗の様子がおかしいことに気づいた凜子は「南ちゃんだ」。実は南に好きな人ができたことを知っていたとあかす。適当にごまかす三朗。そして「元の青い薔薇の鉢植えは？」と凜子に尋ねる。凜子は枯れてたから捨てたと。「彼のことは忘れたの」と無理に忘れようとしていた。
　凜子が走って研究室へ飛び込んできた。三朗を探し回る。しかし研究室にいたのは夏目だけ。用があるなら呼んで来るという夏目の耳元でささやく凜子。三朗は講義中。南がスライド操作の助手をしていたが，ぼんやりしていて間違ってしまう。その時，夏目が拍手をしながら入ってきた。「奥さんがお待ちだ」という夏目。そして学生達に「眞崎先生にお子さんができたそうだ」と報告してしまう。もちろん凜子のウソ。凜子の用事は，ただ単にカギをなくしたから貸してくれというだけのことだった。2人がいつものように口論していると，今度は健作が怒鳴り込んでくる。凜子を彼女にしたい健作は，勝負を挑んできた。勝った方が凜子を嫁にすると言い出す。その対戦の内容は・・・「ハンデをやろう。オレが苦手なスカッシュ！」。ところが，健作は"ハイテンションスカッシュ選手権第1位"。そんな健作をみんながあきれ顔で見ている。朝，凜子が寝ている三朗を襲う。スカッシュの特訓をするという。飛びかかれて，仕方なく特訓を受け入れる三朗。なぜかウニを使った特訓も。凜子はそのウニでウニ丼を作り，三朗にごちそうする。凜子は，三朗の携帯に森中から連絡が来ていたという。焦る三朗だったが，凜子は「サンキュ。まだ探してくれていたんだ」と素直に感謝する。そして「いいのよ，もう」とあきらめたと主張する。しかし，凜子の書いた新しい小説のタイトルは＜一生の恋＞だった。
　スカッシュ勝負前日。研究室では，春夏が三朗を応援しているが，なんだかイライラしている。そして健作は，みんなに自分の応援用旗を配っている。そんな1日も終わり，みんなが帰ってしまい，三朗と南だけが残される。ギクシャクしている2人。そこへ夏目がやってくる。慌てて姿を隠す南。それを知らない夏目は「どうなんだよ」と南との仲を聞いてくる。独身ならいいんじゃないかと。すると南が姿を現し，帰って行った。三朗は「僕，彼女に振られたんです。僕知ってるんです。南が教授に告白したこと。答えてあげないんですか」。夏目は答えず，ごまかしている。
　スカッシュ勝負当日。力はいりまくりの健作。なかなか来ない三朗にいらだつ。三朗は家を出ようとしていたが，凜子がなかなか出てこない。結局，凜子の荷造りを手伝うことに。洗面所に歯ブラシセットを取りに行くと，そこには捨てたはずの薔薇の鉢植えが。「うそばっか。忘れてなんかないじゃん」。三朗は黙って出ていく。スカッシュの会場に現れたのは凜子だけ。凜子が健作と勝負すると言い出す。それを受ける健作。そのやりとりを不安そうに見ている春夏。健作に勝って欲しくない様子。見ていられず，休憩所へいってしまう。それでも気になって，コートの方に戻ると，すでに勝負が付いていた。勝ったのは・・・凜子。落ち込む健作に，笑顔で手をさしのべたのは・・・祐天寺。両親に会いにいこうと。
　三朗は，野々村が入院している病院へ向かっていた。野々村の妹に「怖いんです。彼女がホントのこと知ったとき，僕は何もできないから」と真実を伝えない理由を話す。病室へ会いにいった三朗。枕元に滝の写真が飾ってあるのを見つける。野々村の申し出で，屋上で2人で話し合う。野々村は「もう終わったこと」という。「滝のように押し流していくんだ」。今日の想い出が，昨日の想い出を押し流していく。そうやって2人の古い想い出が押し流されて，新しい想い出だけになる。そうすれば凜子はやり直せると。三朗は「彼女にとって，あなたは明日の人なんです。明日になれば会えるかも知れない，そう思う人です。明日の想い出は一生消えません。今彼女は一生の恋をしているんです。あなたが今すべきことは，彼女が今すべきことは，忘れることなんかじゃなくて・・・もう一度笑顔で会うことだと思います」。それでも野々村は，写真は全部捨てたし，彼女を思い出すものは何も持っていないという。「彼女を思うことはなくなったんだよ」。野々村の話を聞いて泣き出してしまう三朗・・・。
　凜子の部屋を尋ねるが，留守。次の日も留守。すると，凜子から電話がかかってきた。今，アルゼンチンにいるという。陽気な凜子の声に，三朗は「今すぐ帰ってきて！」と言うが，すぐには帰れないと。凜子には行きたいところがあった。思い悩む三朗だったが，いつも通りの日常生活は続いていく。街のウインドーに，美容師の野々村と客の凜子の姿を重ねる。
　また凜子から電話がかかってくる。「ボンジュール」という凜子に，まだ旅行中かと疑う三朗だったが，窓をノックする音が。凜子が帰ってきた。たくさんのお土産を三朗に渡す凜子。はしゃいでいる凜子に対して，思い悩んでいる三朗。三朗は，凜子の荷物の中から，野々村の病室にあった写真の滝と同じ滝のパンフレットを見つけた。それはイグアスの滝。凜子はこの滝を見るために旅行していた。実は，野々村と一緒に見に行く約束をしていたのだった。凜子は「これでスッキリした気がする。今度こそ忘れられる気がする」と。でも三朗は「ウソだったんだ。君のこと思い出さないなんてウソだったんだ」と凜子と野々村の気持ちに気づく。「野々村さんの部屋で見たんだ」と，滝の写真を見たという話から，野々村にあった話をする。どうしていいか困惑しながらも，うれしさを隠しきれない凜子。しかし，三朗は全てを語ってしまう。最後まで聞きたがらない凜子。三朗は「今会わないと後悔するから。もう会えなくなるから」。「何言ってんのよ。運命だったらまた会えるって言ったじゃない！運命の人が死ぬわけないでしょ！」と部屋を飛び出していく。一瞬呆然としながらも，必死で追いかける三朗。公園で凜子に追いつき，抱き留める。凜子は泣きながら「500円貸して。買ってかなきゃ，たこ焼き」。「わかった」と抱きしめてあげる三朗。
　2人は何も話さずに病院へ向かう。途中，野々村が凜子のことを考えた公園へ行き，たこ焼きを買って。ロビーで三朗は「ここで待ってる。2人で会ってきな」と。1人で病室へ向かう凜子。野々村に渡すたこ焼きと，定期入れに入れた写真を胸に。ロビーで待っている三朗は，野々村の妹を見つけ声をかける。今凜子が向かっていると。すると野々村の妹は，首を横に振り，泣き崩れる。何が起こったのか察した三朗。呆然とするものの，次の瞬間，凜子の元へ走っていく。病室に行くと，そこには空っぽのベッドと，そのそばに落ちているたこ焼きと定期入れだけがあった。凜子は，1人呆然と街の中をさまよう。必死で追いかけ，探し回る三朗・・・。

　

６回戦「未来への贈り物」

　三朗と凜子の結婚式。なぜか牧師は健作。まるでやる気なしの牧師。指輪の交換になるが，三朗は忘れてしまい，凜子につかみかかられる。次の誓いのキスでは・・・凜子「どうして黙っててくれなかったの」と。見回すと教会の中はがらんとしている。凜子が「どうして」と泣き出したところで・・・うなされて起きる三朗。全部三朗の夢だった。その時ノックの音がする。三朗の部屋ではなく，凜子の部屋のドアをノックする音。五月と若葉がご飯を持ってきていた。１週間も部屋から出てこない凜子。若葉は「胸にしまっておいてあげれば・・・凜子ちゃんかわいそう」。五月は「凜子ちゃんのためを思って話したんでしょ。後悔しているの？」。何も答えられない三朗。部屋に戻り，ベランダへ出ると，そこには凜子の姿が。何もなかったかのように，凜子は「ここにテーブルとイス欲しくない？手作りの白いペンキで塗ったテーブルとイスここにおいて。お茶飲んだりしてさ・・・おはよう」。いつもの調子に見える。凜子「今，暇？デートしようか」。楽しそうに振る舞う凜子。手をつないだり，２ショット写真を撮ったり，映画を見たり，ホントにデートをしているよう。食事中も，ついつい言い合いをはじめてしまうが，そんな凜子の姿を見てほっとしている三朗。アパートに戻ると，凜子は「ありがとね。彼のこと教えてくれて。教えてくれてよかった。お休み」と部屋の中に入っていく。その背中を見送る三朗「お休み。また明日」。翌朝。ノックの音で起こされる三朗。五月が凜子がいないと騒いでいる。「お世話になりました」という手紙と部屋のカギを置いて出て行ってしまった。実家にも戻っていない。五月「まったく同じね，野々村さんの時と・・・」。三朗は凜子の部屋の中を探し回る。五月「気がついた？凜子ちゃん一度も涙を流していなかった。まるで心をどこかに落としてしまったようだった」。
　１ヶ月後。生きる屍状態の健作に対して，普通に見える三朗。三朗は，南とも普通に接している。南は，今月いっぱいで会社に戻ることになっていた。本当は残って勉強を続けたいという南。でも，例の件があって，教授には頼みづらい。南「ごめんね，サブちゃん」。三朗「好きだと思ってた？そんなことないよ。初恋は初恋。運命の恋とは別のものだよ。南には南の相手がいて，オレにも・・・」。南「凜子ちゃん？この１ヶ月無理していた」。三朗は「あんな女・・・」と言うが，南「凜子ちゃんだって，サブちゃんのこと好きだと思ってた」。三朗「たぶん，好きな人と一緒にいるよ」。三朗がアパートに戻ると，凜子の部屋の前に健作。凜子の部屋はそのままにしてある。健作が「探す努力してみたら」というと「探してるよ！」と大きな声を出す三朗。「心当たりの所には連絡した」。２人とも，凜子のことについて何も知らないことを痛感する。そこへ，若葉が凜子のカード明細書を届けに来た。カードの利用状況を見れば，足取りがわかるんじゃないかと。カードを利用していた場所は・・・釣り堀，旭山動物園，美ら海水族館・・・と全国に渡っている。ちなみに最後に使った場所は，ラブホテル・・・。それを元に，都内を探し回る三朗と健作。何も手がかりはない。最後にラブホテルにいっているときに，健作に電話が。それで，三朗は自分の携帯がないことに気づく。携帯に電話をかけてみると，釣り堀で着信音が鳴っている。凜子がデート中に勝手に変えたメロディーが。そのそばに見慣れた靴が・・・。三朗も釣り堀で落としたのかもと，戻って行く途中，風船を飛ばした女の子を助ける。その姿を凜子は離れたところで見ていた。偶然の再会。でも三朗は気づかずに行ってしまった。釣り堀に行くが，携帯はなくなってた。ただし，釣り堀の店員が凜子がさっきまで来ていたと伝える。そして写真を確認したときに，野々村が以前よく来ていたと言うこともわかる。走り回って探す三朗。一方凜子は，男のアパートに入っていく・・・。
　大学で，三朗は夏目に南が研究室に残りたいと思っていることを相談する。「人の心配ばっかりしているな」と夏目。三朗「友人の大切な人が亡くなりました。でも，僕は何もしてあげられませんでした。友人も僕の手を借りようとしませんでした。彼女を助けることはできないんです」。夏目は三朗に水をかけながら「彼女に惚れてんだろ。何もしなくていいんだ。何にもできなくていいんだよ。ただ信じてやれ。ただ待っててやれ。帰る場所を作っておく。それが人が人にしてやれる精一杯のことだ」。その言葉を聞いた三朗は，凜子が望んでいた手作りの白いテーブルとイスを作り始めた。一生懸命作り続ける三朗。やっと完成し，テーブルの上に凜子からもらった鉢植えを置く。
　研究室に野々村の妹・雪乃から電話がかかる。野々村のアドレス帳を整理してて，凜子の居場所がわかるかもと連絡をしてきた。そして三朗が尋ねていったのは，凜子が入っていたアパート。そこの住人は・・・高見良祐。凜子の弟だった。顔を見ただけで「お姉さん，ここにいました？」と三朗。良祐の顔にはイタズラ書きが。今朝出ていったという。アパートを訪れた雪乃は「預かったものがあります」と三朗に告げる。預かったというより，ゴミ箱に捨てられていたものを勝手に拾っておいただけだった。それは，野々村が入院した日に捨てたというバラバラの紙。凜子への手紙だった。野々村の本当の気持ちが書いてある。もし凜子が見つかったら伝えて欲しいと。三朗は，なぜ自分の連絡先がわかったのか雪乃に尋ねると，携帯に電話をしたら研究室を教えてもらったと。携帯に出たのは女性だったと。
　三朗は受け取った紙を，１枚１枚丁寧に再現していく。ジグソーパズルを完成させるように。それは便せん３枚にも及ぶ手紙だった。手紙をつなぎ合わせると，自分の携帯に電話をかける。無言の電話。三朗「あのさ，ちゃんと泣いたか？ちゃんと泣いた？泣いていいんだよ」とやさしく語りかける三朗。「奇跡ってあるとおもうよ。奇跡・・・野々村さんは奇跡を信じていたんだ。その証拠を読みます」と手紙を読み始める。三朗は涙をこらえながら，やさしく語りかけるように読み進める。凜子は，ただただ黙って泣きながら聞いている。
　＜凜子へ　今午前２時。６時間前，あの遊園地で君に別れを告げてきたところです。凜子，僕のしたことは間違っていたんだろうか。僕を恨んでもいい。憎んでも構わない。ただ，１日も早く僕のことを忘れて欲しい。今の今でそう思っていました。だけど，どうしてだろう。君に言い残したことがあるような気がするんだ。それはたぶん，大げさに言うと，希望のようなものなのかも知れない。と言っても，それは，僕の病気が治るとか，また君に会えるとか，そんな大それたことではなく，ほんの些細なもので。２月の終わりに咲く新芽や，自販機の下に落ちた１０円玉のように，小さく，小さくあって，人がそれと気づかずに導かれ，胸に宿す，そんな希望。わかるかな？凜子。僕が思うのはたった一つ。君が笑うとき，僕はいつもその笑顔に未来を見ていたってこと。僕の願いはたった一つ。明日も明後日も君の笑顔が絶え間なく続くってこと。僕は，この手紙を書き終えたら，きっと破り捨てることだろう。それでも僕のこの思いは届く。君に届く。それが今の僕にとっての，小さな小さな希望であり，僕にとっての，大きな大きな奇跡なんだ。凜子，今目を閉じると君の後ろ姿が目に浮かぶ。おろしたての靴を履いた君が，落ち葉を蹴って，冷たい風を切って，ただ前へ前へと進んでいく。僕は見送っている。僕は君に手を振っている。そして思う。凜子，君の行く先にある未来を信じて。僕は信じてる。俊介　追伸　君に出会えてよかった＞
　三朗「僕も信じるよ。だってさ，だって，そうじゃなかったら，君が僕の携帯拾ってなかっただろ。君にこの手紙のこと伝えられなかっただろ。わかるだろ。野々村さんは今もいるからだよ。ちゃんと君の心に，中で生きているからだよ。どこにもいっていない。君の心に残って，見守ってくれてる。君が道にはぐれたときには，導いてくれる。君が泣いているときには，涙を拭いてくれる。野々村さんはいるよ。ちゃんとそこにいるよ！だから・・・だからさ，返事しろよ。返事しろって。返事してよ。返事。返事しろよ，サメ女！」。涙を流しながら話しかける三朗。しばらくすると「バカじゃないの」と涙をこらえながら答える凜子の声が。「写真，まだこんなの残してたんだ」。２人でデートしたときの写真が，携帯の画面に。三朗「せっかくだから」。凜子「ばっかみたい・・・来て。迎えに来て」。三朗「うん，行くよ」。凜子は，泣き笑いで「バーカ！バーカ！バァ～カァ！」。
　凜子の実家へと走る三朗。笑顔を取り戻した凜子は，生まれた街の中を歩く。途中港で漁師達に出会う。酒盛りをしながら楽しんでいる凜子。自分のカードを使ってラブホテルにいった弟に凜子なりの制裁をした，そんな話で盛り上がっている。フェリーで着いた三朗は凜子と連絡が取れず，ひたすら歩き回って探している。そんな三朗が目にしたのは，酒盛りをしながらみんなと踊っている凜子。酔っぱらった凜子を背負い，海岸を歩く三朗に，凜子は「イヤらしいこと考えてるんでしょ。あの時みたいに。おろして！」。凜子のいうとおりにおろす三朗。「あの時と同じだけど，そんなことしないよ。あの時と違うし・・・気持ちが・・・好きだから。今は凜子のことが好きだから。オレにできることは何でもしたいと思っているから。野々村さんの代わりになりたいと思っているから。そういういところがあの時と違う」。笑顔で三朗の元へ駆け寄ってくる凜子。そして・・・ジャンピングキック！倒れ込んだ三朗の上に乗り，凜子は「ぶっ殺されたいの？私に告白しようなんて，１０年早いわよ」。三朗「しょうがないだろ。好きで好きになったわけじゃないよ」。凜子「いいわよ。野々村さんの代わりね？なってもらおうじゃないの。なんでもしてくれるのよね？」と不敵な笑いを・・・。

　

７回戦「愛の旋律～君は宝もの」

　三朗から告白された凜子だったが，その後は偶然通りかかった車に乗せてもらい，１人いなくなってしまう。元気に手を振りながら。１人取り残された三朗も，アパートに戻ってくる。凜子を迎えようと，ドアには＜お帰り凜子＞のプレートを用意している。折り紙でイルカも折って。凜子が帰ってきて，三朗が出迎えようとすると，先に五月と若葉が凜子を囲み盛り上がっている。完全に無視されている三朗。なんとか五月と若葉から引き離し，自分の部屋へ凜子を入れることに成功した三朗。「どんな思いで待っていたか」。ところが今度は健作も乗り込んでくる。結局，凜子の部屋でみんなはどんちゃん騒ぎ。三朗だけが入れず。三朗がふて寝をすると，窓をノックする音が。凜子が手招きしている。大喜びで部屋に向かうが・・・洗い物を任されただけ。文句を言いながらも洗い物をする三朗。そして，告白したのに何の返事もしてくれないと凜子に文句を言う。凜子は「何でもするっていったよね」。三朗「本気だよ」。凜子「じゃあ，買ってきて。これの下巻」と本を買ってくるように命令。自転車で買いに走る三朗。下巻を買って帰ると「３巻組だった。中買ってきて」。また文句を言いながら買いに行こうとすると，招待状のようなものを読んでいた凜子が「ピアノ弾ける？」と言い出す。三朗が「全然」と答えると，「何でもするっていったよね」。三朗は「野々村さんは弾けたんだ」と納得。音楽教室に通うが，箸にも棒にもかからない。幼児クラスまでレベルを落とすが，先生が困り果てるだけ。
　研究室。凜子が帰ってきて，陽気な健作に対して，疲れ切っている三朗。その時，南の研修期間延長が正式に伝えられる。そして，夏目は，三朗と健作に論文を書くように命令する。2人のうちどちらかが代表として論文を発表。そこで認められれば，国際的に有名になれる。論文の締め切りは，再来週の月曜日。書きかけの原稿があると余裕の三朗。それを写させてと言い出す健作。一方，夏目は南にコンサートのチケットをさりげなく渡そうとする。本当は一緒にと言いたいのに，それは言い出せず，２枚渡してしまう。そのチケットを受け取った南は，三朗に「凜子ちゃんと行って」と渡してしまう。
　三朗は部屋に戻っても夢中で論文を書いている。いつの間にか凜子がすぐそばに来て見ていた。机の上の折り紙のイルカを見つける。それは三朗の勉強がはかどるお守り。夢中で論文を書いている三朗に，カレーを食べろと命令。三朗が嫌がると，パソコンの電源を切ってしまう。凜子が作ったカレーは真っ赤。２倍の辛さだという。三朗が嫌がっていると，凜子は「人を好きになることは，100円のものに200円払うこと。100本の薔薇を欲しがったら，200本の薔薇を持ってくること。2倍好きになってくれる人が好き」と言い出す。イヤイヤながらも辛いカレーを食べ続ける三朗。
　三朗が200本の薔薇の花束をニコニコしながら持って，凜子の部屋を訪れる。それを喜ぶどころか「練習してる？」と凜子。三朗は，どんなにがんばっても認めてもらえず「いろいろつきあってたオレがバカだった」。それでも凜子は「曲は『カノン』でね」と注文。三朗が「『チューリップ』だって弾けないんだから。これでよくない？」と，南からもらったチケットを渡す。でも凜子は「ふざけないで！あなたが私のために弾くの」。そして期限は再来週の月曜日と。三朗は「無理無理！」と拒否するが・・・。研究室で，南に「頼みがあるんだ」と三朗。南は論文の手伝いかと思ったが，ピアノを教えてもらいたいと言うことだった。「オレがんばるから」と言う三朗だったが，全然ダメ。南「元彼の代わり？」。三朗「きっと想い出の曲なんだろうなぁ」。南「私にはわからない。ちゃんとサブちゃんのこと好きなのかな」。三朗は「わかんない。でも決めたんだ。彼女が喜んでくれるなら，なんでもしようって。だからもう少しうまくなるまで頼むよ」。ピアノの練習と論文の両立が始まる。自分の部屋で論文を必死に書いていると，凜子が「暇でしょ」と。弟のパソコンに，書きかけの原稿を忘れてきたからとってきて欲しいと。文句を言いながらも，良祐の部屋へ行く三朗。そんな三朗に，良祐は「アネキの何？情けないと思わないの？それに野々村さんと全然違うじゃん」。三朗は「知ってる」。「知ってて利用されているの？」と良祐は，三朗が使っていたUSBを取り上げ，窓の外へ放り投げてしまう。USBは偶然止まっていたゴミ収集車の上に。ゴミ収集車は，すぐに出発してしまった。そのUSBには大事な論文の原稿も保存されいてた。慌ててゴミ収集所に行ってみるが，あまりにも大量のゴミの山に呆然とする三朗。とぼとぼと帰って行く。部屋で1人落ち込んでいると，凜子が尋ねてくる。でも，南や良祐にいわれた言葉を思い出し，凜子を部屋に入れない。電話がかかってきても，出ようとしない。
　研究室。南が一生懸命楽譜に手を加えてくれている。三朗が弾けるように，簡単に直してくれていた。でも「もういいんだ」と三朗。南は「論文忙しいもんね」。その時健作が論文が完成したと大喜びで入ってきた。その論文を見て，「こんなもんでいいんだ」と春夏。三朗が部屋に戻ると，凜子が三朗の部屋から出てきた。論文のことを三朗に聞いてみるが，何も言わない三朗。凜子なりに励まそうとはしている。しかし三朗はて「勝手なことばかりいうな！どうせ野々村さんのように何でもできる男じゃないよ！」。凜子「何でもするって言ったじゃん」。三朗「もう終わりだって言ってんだ。もてあそんで喜んでたんだろ。人の気持ち踏みにじって・・・終わりだ！」。凜子「あれも終わりなんだ・・・好きって言ったの・・・」。三朗「聞かなかったことにして。なかったことにして・・・」。凜子「わかったよ」。そのままお互い自分の部屋に入っていく。三朗が部屋にはいると，折り紙のイルカがたくさんぶら下がっていた。まるで千羽鶴のように。お守りのイルカを，凜子が一生懸命折ってくれていたのだった。しかもパソコンの上には，なくなったはずのUSBが。凜子の部屋に走る三朗。出てきたのは良祐。凜子は今原稿を書いているという。良祐の話では，USBを探し出しいたのは凜子。何があったのか良祐が話すと，ゴミの山に2人で行き，必死で探し回った。凜子は「あいつはさ，2倍にしてくれたから。2倍好きになってくれようとしたから。100倍にして返さなきゃ。あいつはさ，だれかが悲しいときには，それ以上に悲しくなる人なの。だれかがうれしいときには，それ以上にうれしくなる人なの。あんな人，初めて会った。あんな人どこにもいない。だけど自分で気づいてないんだよね」。ゴミの山で穴に落ちた凜子。やっとはい出ると，その手には三朗のUSBが握られていた。良祐「野々村さんの代わりになるって言って欲しくなかったんじゃないの？」。三朗「ピアノ弾いてって・・・」。良祐「野々村さん，ピアノ弾けなかった。理由は本人に聞きなよ」。またピアノの練習を再開した三朗。もちろん論文にも力を注ぐ。三朗が論文を書き上げたとき，凜子の部屋に1通の招待状が届く。
　夏目が論文の検討を始める。祈る2人。その時眠そうな春夏がやってくる。徹夜続きで寝不足だと。みんながそろったところで，夏目から発表が。健介の論文は・・・「笑えるぞ」。三朗のは，1本は平凡だけれど，もう1本は素晴らしいと。でも「僕そんなこと書きましたっけ？」と三朗。よく見ると，夏目が絶賛している論文は，春夏のもの。暇だったから論文を書いてみたと。素晴らしい論文だったので，代表は春夏に決定。
　大講堂。ステージの上にはピアノが用意されている。そこに三朗と南。「大丈夫。練習したんだから」と南。大講堂は6時まで使うことができる。それ以降は，講演会が入っていた。夏目が研究室を出ようとすると，凜子が走ってきた。夏目「あいつは君に惚れているようだな」。凜子は「はい」と笑顔で答える。夏目「うらやましいねぇ。ただ素直に人を好きになれる。その季節にいるんだなぁ，君たちは」。凜子は，あのコンサートのチケットを夏目に渡し「そう言う季節に有効期限ありませんよ」と。大講堂に凜子が入ってきた。客席に座る凜子。凜子が来たことを確認すると，南が照明をセットする。なかなかステージに上がれない三朗の背中を，南が押してくれる。緊張しながら，おじぎをし，ピアノの前に座る。ボロボロの楽譜と折り紙のイルカを置いて，いよいよ演奏が始まる。上手とは言えないが，気持ちのこもった演奏を，凜子は涙を流しながら聴いていた。その頃，夏目は南を探し回り，やっと見つけると，必死に勇気を振り絞ってコンサートに誘った。
　三朗と南。凜子「この曲が流れる部屋で生まれたの。いつもこの曲が流れていた」。人生の節目節目に流れていた曲。「この曲はね，私の人生の主題歌なんだ」。三朗「なのに，あまりうまく弾けなかった」。凜子「最低だよ。台無しだよ。絶対許さない。あんたなんて，ぶっ殺す！絶対ぶっ殺す！」と笑顔で飛びついてくる。しっかりと抱き合う2人。三朗「ヤバイ・・・ぶっ殺された・・・」。見つめ合う2人。唇を重ねようとすると・・・なぜか拍手の音が聞こえ，緞帳が上がっていく。すでに6時をまわり，講演会が始まってしまった。客席にはたくさんの人。適当にポーズをとり，その場をごまかして逃げる2人。
　凜子「あり得ないよ！」。三朗「君が来るのが遅かったからだろ」。そしてあの疑問を尋ねる。「なんで，ピアノなの？」。凜子は結婚式の招待状を見せる。自分と凜子のだと勘違いした三朗は「随分気が早いんだね」と笑顔。でも凜子は「私とフィアンセの」と言い出す。「婚約させられちゃったのよ」。実家に帰ったとき，やけになって適当に返事をしてしまったらしい。「ま，なんとかなるよ。だから『カノン』・・・父，ピアニストなの。あんたもピアニストってことにしとけば許してもらえるかも」。「だから，ピアノ・・・ありえねぇ！」と叫ぶ三朗。
　

８回戦「予想外のライバル」

　三朗が浮かれながら部屋に戻ると，なぜか猛犬が。凜子の部屋に行き「やっぱり君か」。その猛犬の名前は"ポチ"。凜子が頼まれて預かったという。凜子が「彼女のお願いきけないの？」と言うと，「彼氏彼女の実感ない」という三朗。告白後も，今まで通りの関係が続いている。その一方で，本人の意思を無視した結婚式の準備が着々と進んでいっていた。「あんたが断って」という凜子。実は，父親がもうすぐ来る。三朗が説得できないと，結婚することになってしまうと言う凜子。すでにハワイで挙式をすると言うことも決まっていた。凜子の父はピアニストと聞いていた三朗だったが，元ピアニストで，現在は牧場主。とりあえずは，目の前のポチと向き合わなければならない三朗。でも逃げるだけ。ポチから逃げていると，凜子の父親とぶつかってしまう。「家のポチに何しやがる？」。そして，凜子との仲を問いただす。答えによっては・・・「ぶっ殺す」と手にした傘を二つ折り。恐ろしさに答えられない三朗。三朗の様子を見ていた父親は「凜子の舎弟か？」と勝手に納得した。三朗が「そういう感じです」とごまかすと，「面倒見てやる」。でも，父親に言われた言葉は「結婚するよう説得するのを協力しろ」。結局，食事の用意をさせられ，自分の分はポチにとられてしまった三朗。凜子と父の間で，困惑顔。凜子の"フィアンセ"である祖父江の写真を三朗に持たせ「どっちがかっこいい」と凜子に聞く父親。凜子は写真の方を指さす。三朗の月収は２３万。祖父江は，年収３億。顔も年収も・・・「千倍いい男」だと。言い争う父親と凜子の間で振り回されているだけの三朗。凜子は会ったこともないと言い張るが，父親は，祖父江と凜子は「運命なんだよ」と。小さい頃，父親のコンサート会場で出会い，凜子が東京に出てきたとき父親と食事をしているときに挨拶をしていて，反対側のホームで他の乗客に助けられた凜子を見ていた。「運命の結婚だと思わないか？」と言う父。言い争うだけで，譲り合わない２人。その２人の間で三朗困っていると・・・突然酔いつぶれる２人。結局，三朗の部屋で，三朗と父とポチが並んで寝ることになってしまった。
　翌日。父親と凜子はウエディングドレスを選びに行ってしまった。研究室では，春夏がセミナー出席を断り，健作を推薦しようと夏目に話をしていると，突然夏目が倒れてしまう。駆け寄った南。夏目の部屋で南が介抱している。部屋の中はがらんとしており，壁には2006年10月からめくられていないカレンダーがあるだけ。別れた妻が全部持って出て行ってしまった。それがカレンダーが止まっている2006年10月。三朗が様子を見に来る。三朗は「南はお母さんの看病をしていたから」と。凜子の父親は，離婚をして家を出て行ってしまっていた。「家と同じだな」と夏目。南は，ふとカレンダーが気になり，1枚ずつめくってみると，最後には親子3人笑顔の写真が。
　凜子は，ウエディングドレスを試着していく。父親が気に入ったウエディングドレスを着てみるが，素直に気持ちを言えない父。そして「死んだ母さんそっくりだ・・・母さんが幸せそうに見えたのはそれが最後」という。結婚後，島に連れて行き，その後は最後まで苦労をかけ通し。母親はピアノを弾いていた父親のことが好きだったんだと。「好きとかキライとかじゃ，人は生きられん。父さんみたいなヤツと結婚したらダメだ」。
　健作と春夏は，居酒屋で二人きり。春夏は健作にセミナーを辞退したこと告げる。すると健作が考えはじめたのは，三朗を行かせない手段。その頃，三朗は父親に自分が凜子の恋人であることを伝えようと言う決心をしていた。意気込んで部屋に行くが，結局言えない。逆に引き出物の相談をされてしまう。それだけではなく，友人代表スピーチまで。やっと三朗が言おうとしたとき，健作が乗り込んできた。酔っぱらっている健作は，凜子の姿を見つけると「オレの嫁さんもいたぁ～！」と叫ぶ。それを聞いた父親が，健作を凜子の彼氏だと思いこんでしまった。ボコボコにされる健作。誤解だったとわかると「ポチのエサにするところだった」と父親。そして，明日祖父江と会う場に凜子が好きな男も呼んで，ふさわしければ認めるという。
　夜。ベランダで話す三朗と凜子。父親は，現在は再婚をしているが，凜子と良祐が成人するまで再婚をせず，男手一つで育ててくれた。まだ凜子が小さい頃母親が死んでしまったが，父親が全て母親の代わりをしてくれていたので，寂しい思いをすることはなかった。その話を聞いた三朗は「オレ絶対お父さんに認めてもらうから」と。その時，眠っていた父親の上に，三朗の携帯電話が落下。目を覚ました父は，携帯に2人の写真を見つける。ふと外を見ると，ベランダにいる2人の姿も見えた。その頃。健作が目を覚ますと，そこはラブホテル。隣には春夏が寝ている。困惑する健作。「どうしてここに？」。すると春夏が「覚えてないんですか?」と。
　朝食の時，三朗は意を決して「実はお話があります」と言い出す。父親は「凜子のこと好きか？」と。三朗「はい，好きです。お願いします」。父親は，本音では一番好きな人と結婚して欲しいと思っている。「しかし，オレの命はもって1年。凜子が幸せになると確証してから死にたい。頼む！この通りだ。凜子の幸せな花嫁姿を見てから死なせてくれ」と土下座をしてたのみはじめた。部屋を出てきた三朗に，凜子は「どうだった？まだ話してないの？結婚させられちゃうよ」と。それでも何も答えないでいるとき，凜子の継母と良祐がやってきた。その騒ぎの中黙っていなくなる三朗。何か考え込んでいたが，ふと思いついたように歩き出す。父親は，良祐に三朗に余命1年だとウソをついたと話す。本気で好きだったら，それぐらいのことではへこたれるはずがないと。継母は，凜子に「結婚してもらわないと家はもうダメ」と。父親は，純粋に結婚して欲しいと思っているだけだが。そして「パパがピアノ弾けなくなったの，凜子ちゃんを助けるためでしょ」と。
　三朗が研究室に行くと，健作が何者かにおびえながら隠れていた。健作を探していたのは春夏。春夏が行ってしまうと，健作は「男の責任ってなんだろうか・・・結婚したくないんだよぉ」と半泣き状態。その様子を見ていた三朗に，祐天寺が「暇でしょ」と大量の書類を渡す。南は，夏目の部屋に向かうが，そこから出てきたのは夏目の娘。夏目の妻はやり直したいと思っているから，近づかないで欲しいと。夏目は，南を部屋に入れるが，やり直したいと言っていることについては「今更なんだよ・・・」と一言。すると「カレンダー」と南。「教授の時間を止めていっただけです。いつでも戻ってこれるように栞はさんで」。夏目はカレンダーに隠されていた写真をやっと見つけた。それを見届けると部屋を出て行く南。
　1人残って仕事をしている三朗。そこへ電話がかかる。「すぐにうかがいます」。すでに凜子達の食事会は始まっていたが，祖父江は仕事でまだ来ていなかった。三朗の姿もない。祖父江は遅れてやってきたが，三朗じゃなかったことに，がっかりした様子を見せる凜子。結局，三朗は最後まで現れなかった。「それだけの男だったんだ」と父親。祖父江は，凜子に「誰かを待っているようですね」と。「別に」と答える凜子は，祖父江にエスコートされていってしまう。雨の中三朗が向かってくるが，タクシーに乗った二人と気がつかずすれ違ってしまう。それでも，三朗は父親とは会うことができた。父親は「情けない男だ」と。その頃，凜子と祖父江は2人で飲んでいた。凜子「3回の偶然があったからって・・・」。祖父江「小説読んだことがあります」と。知り合いの編集者が持っていた原稿を見つけたときに「運命なのかな」と思ったと。それをコピーして読んでいるうちに，会っている気持ちになっていったという。そして，三朗と父親。父親は「祖父江君は立派な男だった。彼に嫁げば，幸せだ」。そんな言葉は気にせず，三朗は「明日，お時間ありますか？」と1通の封筒を差し出す。「病院の紹介状です。もう一度検査を受けてください」。驚いた父親は「どうしてこんなことをする」。三朗「幸せになったかは，1日でわかりません。幸せはほんのちょっと先にあって，追いかけるものだと思うんです。凜子さんの幸せを見ててあげてください。これからも，先も，ずっと凜子さんが幸せを追いかけるところを。僕も凜子さんと一緒に追いかけたいと思っています。僕が凜子さんを幸せにします。絶対に幸せにしますから」。真剣に話す三朗を見て，父親は「オレは最低だ・・・ウソなんだ。すまん。すまんかった。軽蔑してくれ。殴ってくれ」と。そして三朗は・・・「よかったぁ。よかった，ウソで」と何度も繰り返し，本当に喜んでいる様子だった。
　父親は，凜子に小さい頃使ってたピアノのおもちゃを持ってきた。"SomethingOld"，結婚するときに持っているといい物の一つ。凜子にとっての"SomethingOld"はこのピアノ。小さい頃，父親がよくこのピアノを弾いてくれた。凜子「お父さん，ごめんね。ケガして弾けなくなったの，私のせいなんでしょ。自転車で・・・」。父親「お父さんもうっかりしてたんだよ」。凜子「お父さん，ごめんね」。父親は凜子の母親が死ぬ前に言ったことを凜子に伝える。「あなたを置いていくの寂しい。凜子と良祐置いていくの寂しい。だけど後悔していない。あなたと一緒になったこと，何も後悔していない」。「オレも後悔していない」と父親。「ピアノ弾けなくなったわけじゃない。このピアノで十分だ。オレのピアノはお前のためにあればいい。それだけでいい」と「カノン」を弾きはじめる。幼い頃から，いつも凜子のために弾いてくれていた。父親「凜子，お前の思うとおりにしろ。何も言わない。お前の好きな人と一緒に慣れ。俺はもう十分だ」。そう言って外に出ると，そこには三朗がいた。凜子は，その時素ぼえに電話をかけていた。父親に内緒で相談があると。そして，凜子の継母は良祐に，借金返済のため凜子には祖父江に結婚してもらうんだという。
　三朗が凜子の部屋へ。すると凜子は「私，ハワイに行ってくる。結婚することにした，祖父江さんと」と言い出した。何も言えない三朗。
　

９回戦「言えない気持ち」

　三朗がアパートに戻ってくると，凜子を待つ祖父江と出会った。凜子達が戻ってくるまでと，部屋に入れる三朗。祖父江は「凜子さんってどんな方ですか？」と聞いてくる。三朗は「何も知りませんから」と答えない。そして「お金持ちだそうですね」と。祖父江は「僕の力じゃありません」。三朗「もてるんでしょうね」。祖父江「僕に興味のない人からはもてます」と，財産目当てでよってくる人たちはいると。「すみません。いじわるな質問して」と謝る三朗。凜子と両親が帰ってきた。みんなの前で祖父江は「大事なこと言い忘れていたから」とプロポーズをする。凜子は「よろしくお願いします」と返事をし，三朗の方を見る。目をそらす三朗。もう一度凜子が三朗を見るが，三朗は黙って部屋のドアを閉めてしまった。
　両親が帰った後，１人になった凜子。凜子は，継母の「借金の肩代わりしてくれる」という言葉から，結婚を決意した。三朗が「話がある」と凜子の部屋を訪れた。凜子は，無理にいつも通り振る舞おうとする。三朗は「もういいんじゃないかな。種明かししろよ。冗談だって」と言うが，凜子は「本気だよ。一目惚れって言うの？」と強がって，祖父江のことを好きになったと話す。三朗「おかしいじゃん。ついこの間まで，僕と君は」。凜子「あんたが勝手に思ってただけじゃない。私が一度でも好きって言ったことあった？」と三朗の顔を見ようとせずに言い続ける。「最低だ。最低だよ」と三朗。「オレは，今まで君にひどい目に遭っていたし，なんだこの女って思っていた。だけどオレには君が一番だと思ってた。君にもオレが一番だと思ってた。でもオレの勘違いだったよ」。すると凜子はわからないように涙をぬぐい，「何か貸して」と言い出す。父親に教わった"Something４"の一つ"何か借りてきた物"を三朗から借りたいと。でも黙って出て行ってしまう三朗。
　研究室では，凜子の結婚お祝いパーティーの準備が進んでいた。健作だけが反対運動をしている。南が１人，夏目の娘の言葉を思い出しながら廊下を歩いていると，夏目に会った。復縁の話は，何の返事もしていないという。南は，自分自身，父親の女性問題で両親が離婚しているので，こういうことは苦手だと伝える。パーティーの方は，三朗・健作・祐天寺のテンションが低い中進んでいく。寄せ書きを書くことになったが，健作は断固拒否。三朗に色紙が回ってくる。しばらく考え込む三朗。じっと凜子を見つめ，一言書いて「トイレ」と出て行ってしまう。三朗が書いた言葉は＜ご結婚めでとうございます＞の一言。その言葉を見つめる凜子。三朗は廊下で南と会うが，南は突然結婚すると言い出した凜子に会いづらいという。「サブちゃんは？」。三朗は「しょうがないよ。好きだから。好きな子が自分で選んだ結婚しようとしているときに，ケチ付けるなんて男らしくないと思って」と。「エライね。私なんて」と南。「サブちゃんの顔見るとほっとする」。そのまま三朗は研究室に戻らず，教室で１人思い悩む。そこに突然大きな声が聞こえてきた。「三朗！随分，広いトイレですね！」。凜子だった。研究室では，祐天寺が，春夏が健作に譲るために辞退したんじゃないかと話す。突然張り切り出す健作。春夏にウインク。
　広い教室にいる三朗と凜子。凜子は「実は，結婚するのは・・・」と打ち明けようとしたが，健作と春夏が教室に入ってきてしまった。健作は，春夏に突然のプロポーズ。でも，春夏は健作のことが好きなことは認めるが，結婚する気はないという。この間の夜も，何もなかったと。またバタバタと出ていく２人。凜子が改めて話そうとすると，三朗が「結婚おめでとう」と言い出す。結局凜子は真実を告げることができず「ありがとう」と。三朗は「何か借りた物だよね。貸すよ，何か」と。倉庫を探し回る三朗。冷蔵庫の冷凍室から氷を取り出す。調査に行ったときアラスカから持ち帰ってきた１万年前の氷。「幸せな花嫁になれよ」。涙をこらえる凜子は「そろそろ帰るね」と。凜子が外から建物の方を見ると，三朗が歩いている姿が見えた。三朗も凜子の姿に気づき，一生懸命窓を開けようとするが，なかなか開かない。それを見た凜子「三朗！好きだよ！好きだよ！三朗！離れたくないよぉ！ずっと一緒にいたいよぉ！」と泣き叫ぶ。窓の向こうの三朗には聞こえない。やっと窓が開くが，凜子は「別に何も」と手を振って帰って行く。三朗に背中を向けたまま，涙を流しながら。その後ろ姿をずっと見送る三朗。
　結婚とハワイへの出発の準備を進める凜子。今まで通りの日常生活を送る三朗。
　出発の日。高級マンションの前にたたずむ三朗。三朗からもらったアラスカの氷をじっと見つめる凜子。良祐は「本当にいいのかよ。借金返すために結婚するんだろう。オヤジがなんて言ったかしらねぇけど，そんなのアネキらしくねぇ」。「お父さんは何も知らないよ。もういいの」という凜子だったが，この話を聞いてしまった父親。うろたえながら「隠れてろ。結婚は中止だ！すまん」と騒ぎ出す。凜子は「違うよ！あいつはあきらめたの。仕方ないよ。その程度だったんだから。これでいいの。私が決めたことよ。お父さんは口出ししないで」。なんとか止めようとする父親だったが，ちょうどその時祖父江が迎えに来る。凜子は，大事そうにクーラーボックスを抱えている。祖父江にも持たせようとしないで自分で持って。祖父江は「僕のことどう思われてますか？好きですか」と尋ねる。答えられない凜子に，「好きになってもらえるよう努力しますから」と祖父江。凜子は，三朗の部屋をじっと見つめる。その頃，海辺にいる三朗は，携帯の「カノン」を消去する。写真もみつめて・・・。
　空港へ向かう車の中，祖父江は凜子に婚姻届を手渡す。後は凜子が署名をして出すだけの状態。その祖父江のカバンの中に，三朗の文字で書かれた物が・・・。空港で，祖父江の携帯が鳴る。着信音は「カノン」。「あなたが一番好きな曲ですよね」という祖父江。凜子は「どうして知っているんですか？」と不思議がる。祖父江は「今朝，眞崎さんから教わりました。他にも」と手書きの紙の束を手渡す。
　祖父江のマンションの前に立つ三朗。祖父江が出てくると，紙の束を手渡す。それは＜高見凜子さんとのつきあい方＞。一つ一つ，笑顔で説明する三朗。すごく細かいところまで，よく知っている。凜子のことが好きでたまらないと言うことが伝わってくる。祖父江がそれを一つずつ説明すると，泣きながら聞いている凜子。祖父江「あなたのこと何でも知っているんですね。今日まであなたに一番ふさわしいのは僕だと思ってました。でも・・・」。凜子「でも・・・それでも・・・そうだとしても・・・」。祖父江「僕は・・・」。凜子は吹っ切るように「行きましょう」と。その時，場内アナウンスが聞こえてきた。凜子を呼び出すアナウンスだったが，途中から「凜子，聞こえるか？行っちゃダメだ！行かないでくれ！」。三朗の叫び声だった。警備員に引き離されながらも，泣きながら叫び続ける三朗。うれしそうにその声を聞く凜子。それを見守る家族と祖父江。父親は継母の手を握り，お互い顔を見合わせると頷きあう。「牧場手放しても構わんか？苦労かけてもかまわんか？」。「かまわん」と笑顔の継母。父親が行動を起こす前に，祖父江は，凜子に向かい合い，飛行機の切符を取り出すと，目の前で破った。「エスカレーターには気をつけてください」と。凜子は頭を下げると，笑顔で走り出す。エスカレーターを駆け下り，三朗の元へと走る。
　何も知らない三朗は，公園のベンチに座り，呆然と飛行機を見送る。そんな三朗に，後ろから近づいた凜子は，溶けきった１万年前の氷をぶっかける。「返す！」と凜子。三朗「へっ？」。凜子「もういらないから返す」。三朗「いらないからって・・・えっ？なんでここにいるの？」とまだ状況が把握できない。凜子「何，人の名前，空港中に叫んでんのよ。みっともない。私が有名になったら，"あの時空港で叫ばれてたんだ。行っちゃダメだって言われてたんだ"って，噂されちゃうじゃないの」と三朗に文句を言うのが楽しいように言い続ける。三朗は「ごめん」と謝り続ける。凜子「何が行くなよ。何が行っちゃダメよ」。三朗「ごめん」。凜子「ごめんじゃない」。三朗「だから，ごめん」。凜子「人の結婚ぶちこわしにして」。三朗「えっ？ぶちこわし？」。凜子「ぶち壊れたわよ」とちょっとうれしそう。三朗「やっちゃった？」とやっぱりちょっとうれしそうに。凜子「やっちゃったわよ」。三朗「やった！やったぁ！やったぁ！」とピョンピョン跳ねながら喜び，凜子を抱きしめる。
　一方，南は夜の街を１人で歩いていると，夏目と妻と娘の姿を見つける。一瞬，仲が良さそうに見えた。そのままUターンしていく南。凜子の部屋では，凜子が「ホントだったら，今頃ハワイのプールサイドにいたのになぁ」といじわるを言う。三朗が「オレがもっといいところに連れてってあげる」と言うと，「どこよ」と凜子。困った三朗は「映画見たりとか・・・釣り」。凜子「やっぱりハワイに行ってくる。レベル低すぎ」。慌てた三朗「じゃあ，マリンスノーは？海に降る雪」。三朗は，羽毛を持ってきて，それをまきながら「海中にはさ，無数のプランクトンがいて。それは，やがて白い雪のようになってさ。降るんだ。まったく音のしない，深い深い海の底に，しんしんと降り注いでいるんだよ。昔からさ，それを見に行くのが俺の夢だったんだ」と楽しげに語る。凜子「見てみたい」。三朗「見ていたい？よぉ～し，見に行こう！キレイだよ。しんしんと海に降る雪」。凜子はさっそく行こうと，荷物を持って立ち上がる。すると三朗の部屋をノックする音がした。三朗が見に行くと，そこには南の姿が。南は「なんでだろ。サブちゃんの顔思い浮かんじゃって」と。三朗が「どうかしたの？」と言うが，南は「どうしてそっちの部屋に？」と不思議がる。三朗は「結婚式中止になったんだ」とうれしそうに伝えた。ハッとする南。そして「大丈夫」と行ってしまった。逃げるようにアパートから離れると，泣き崩れて座り込んでしまう。三朗が凜子の部屋に戻ると，夏目から電話がかかってきた。南に連絡を取って欲しいと。三朗は凜子に「相談があるみたいだった」というと，「早く追いかけなよ」と凜子は三朗の背中を押す。電話をかけながら追いかける三朗だったが，南と連絡が取れない。１人夜道を歩く南に，若者の集団が目を付けた。追いかけられた南は，必死に逃げ回り，公園に逃げ込む。走って逃げる南は，足を踏み外し・・・。三朗がその公園の前を通りかかると，慌てて逃げ出す若者達の姿を見つける。気になり公園の中を探す三朗。三朗がそこに見たのは，階段の下で血を流して倒れている南の姿。何度名前を呼んでも，反応がない・・・。
　

10回戦「届かぬ想い」

　南は，重傷を負ったものの，命に別状はなかった。凜子も病院に駆けつけてきた。南に付き添っていた夏目が戻ってきて，三朗に南のそばへ行けと。「お前の名前を呼んでいる」。凜子「早く行きなよ」。２人の言葉に急いで病室に向かう三朗。「オレが引き留めていれば」と後悔しているが，南は「救急車に乗っているとき，手を握ってくれたでしょ。懐かしい手だなぁって。サブちゃんの温かい手」。三朗は南の手を握ってあげる。夏目は，凜子に「やきもち焼かないのか」と。凜子は「マリンスノー見に連れてってもらう約束したんです。南ちゃんが治ったら，その分取り返します」。三朗は，病室で南と子どもの頃の話をしている。時間を気にする三朗だったが，南の様子に「あと10分いようかな」と，子どもの頃の話を続ける。凜子は，三朗の部屋で1人でマリンスノーについて調べている。南が眠って，病室を去る三朗。
　凜子は，ダイビングの講習を受けていて，今日の夕方最終試験だという。その試験に一緒に来て欲しいと。三朗は，南のお見舞いに行く約束があった。あの日から1週間が過ぎていたが，まだ検査結果が出ていなかった。「病院で待ち合わせしよう」と凜子。試験に受かれば，明日マリンスノーを見に行くと張り切る凜子に，三朗は「講義入っていて・・・」。凜子「行けないのっ！？」。三朗「行きます」。研究室では，健作が婚姻届を手に春夏に迫っている。春夏は，婚姻届を手にすると，はさみを入れはじめた。そして，見事に顔を完成させた。落ち込む健作に，三朗は講義を代わって欲しいと頼んでみるが，耳に入らない。三朗が「まずつきあってみるとか」とアドバイスすると，健作は「結婚したいんだよぉ」。三朗が「手紙にしたためてみるのは？」とアドバイスすると，健作は「頼んだぞ」。なぜか，ラブレターの代筆が講義を代わってもらうための条件に。
　南の病室。南のおばさんが，仙台からやってきて面倒を見ていた。三朗は，約束した物・・・ホイッスルを南に渡す。うれしそうに吹いてみる南。一方，凜子は編集者と会っていた。アフリカを旅してルポを書かないかと。ただし1年は帰って来れない。考え込む凜子。南の病院へ行き，そのことを三朗に伝えると，「すごいじゃん！よかったな！」と喜んでくれた。凜子は「絶対ダメだと思っていた。一緒に行くのは無理かなって」。三朗「オレも行くの？無理」とあっさり。凜子が蹴りを入れようとしても，普通に防御している三朗。すっかり息もあっている。凜子が「1人で行こうかな」と言っていると，南の検査結果を伝えられたおばさんが声をかける。凜子は先に南の元へ。お見舞いの花を持ってくるが，花粉がすごく，ちょっと離れたところに飾る。南「ごめんね。サブちゃんにお見舞いに来てもらったりして」。凜子「大丈夫。好きなときに呼び出して，命令していいから」。南「もう放っておいてって言って」。おばさんの話では，元の生活に戻るにはリハビリに1年かかる。おばさんも南の面倒を見続けることはできない。凜子「あいつに遠慮することないよ」。すると南は「貸してくれるってこと？余計寂しくなる。少しだけやさしくされるなんて」と言い出す。凜子「あいつは来ると思う。できるだけ時間取って・・・」。南「サブちゃん返してくれるの？リハビリに1年かかるのよ！」と突然取り乱す。困惑しながら1人病室を出た凜子。三朗は凜子に「試験に行かなきゃ」と言うが，凜子は「1人で行ってくる。南ちゃんのそばにいてあげな。その代わり，絶対マリンスノー見に連れて行くこと」と。
　三朗は南の病室へ行く。南は泣いていた。三朗が「まだしばらくいるから」と言うが，南は「また10分？30分？1時間？1年間も一緒にいられないでしょ」と三朗を困らせる。そこへ祐天寺がお見舞いに来た。研究室のみんなからのお見舞いを持って。お見舞いの後，祐天寺と三朗は話をする。祐天寺「あんたやさしいね・・・中途半端な優しさが一番残酷なの。面倒見てあげるなら，本気で見てあげなきゃ」。1人考え込む三朗。凜子の取材旅行も1年。南のリハビリも1年。帰り道，ウインドーの中の結婚指輪をじっと見つめ，行動を起こす。
　部屋に帰ると，ふたのある容器を探し出す三朗。その時凜子は，試験に合格したと帰ってくる。三朗は「大島に行こう」と提案。でもそのためにはラブレターが必要という。2人で，ワイワイ言い合いながらラブレターを書き始める。楽しい時間を過ごす2人。途中で三朗は眠ってしまったが，その三朗の姿を見ながら，凜子は真剣に書き続ける。夜が明け，三朗が目を覚ますと，ラブレターが完成していた。三朗が中身を見ようとすると，「恥ずかしいから」と止める凜子。三朗「健作の手紙なのに・・・」と不思議がるが，そのまま中身を読まなかった。そして，大島ではダイビングとは別にやりたいことがあるという。それはタイムカプセル。中身は凜子に教えない。1年後開けることにする。1年後そこで待ち合わせて，一緒に開けようと。凜子「待ち合わせって？」。三朗「アフリカ行ってこいよ。思う存分旅して本書けよ。オレなら大丈夫だよ」。凜子「待てるの？」。三朗「待てるよ。凜子の夢のためなんだから」。凜子「ホントに？それだけ？」。三朗「南のためでもある。リハビリ手伝いたいんだ。1人でほっとくわけいかないから」。凜子「好きだから？」。三朗「えっ？」。凜子「冗談」とごまかす。三朗「中途半端じゃなくてきちんと向き合わなきゃって。1年間支えてあげようと思う。南は弱いところがあるから，1人でほっとくとやけになるかも知れないし。凜子みたいな子なら安心だったけど。君は強いし，オレがいなくても大丈夫だろ」。凜子が何を言っても，三朗は「凜子は大丈夫だよ」と言い張る。そして「1年後に2人でこれ開けてさ，それが一番いい方法なんだよ。1年後にはちゃんと帰ってくること。約束だよ」。自分の気持ちだけを伝え満足している三朗。凜子が1人の時，林田がやってきて，アフリカ行きのことを確認する。凜子の様子を不思議に思った林田は「夢が叶うんだからうれしいことよね」と。凜子は「夢だよね。いつの間にか変わってたのかな。これ見るのが夢になってた」とマリンスノーのポスターを見つめていた。
　三朗が，健作に手紙を渡し，ダイビングへ行くため研究室を出ようとすると，南から電話がかかってきた。ホイッスルを鳴らす南。それを鳴らしたら飛んでいく約束をしていた。時間ギリギリまでと，南の病室へ。時間を気にしつつ南と会うが，そんな三朗の姿が気になる南。時間だからと三朗が行こうとすると，「凜子さん？」と南。三朗は「うん。3日来れないけれど，週明けに来るから」と出ていこうとする。すると南はテーブルの上のお盆をわざと落とし，引き留める。「行かないで！好きなの。やっぱりサブちゃんのこと好きなの」と泣きついた。その頃，健作が春夏に手紙を渡し，春夏が読んでいた。不安な顔して待っている健作。読み終わった春夏は「わかりました。いいですよ。結婚しても。結婚してあげる」と涙を流していた。
　南はフェリー乗り場で待っていた。時間になっても三朗の姿がない。結局，フェリーは出発してしまった。三朗は，やっと落ち着いた南に「オレさ，1年後，凜子にプロポーズしようと思ってる。それまでの間，南が元気になるまでの間，リハビリつきあうことにした。これから1年，一緒にがんばろうよ。行くよ」と話す。そう言われた南は，素直に頷いて送り出した。走って南の元へ行く三朗。岸壁に凜子の荷物と靴を見つけた。焦った三朗は，海に飛び込もうとする。そこへ後ろから凜子が走ってきた。三朗は急に仕事を頼まれたと言い訳しているが，服に付いた花粉で南の所に言っていたことがわかってしまっていた。三朗が，明日出発しようと言うと，凜子は「いいよ。マリンスノー，もういい。1年後にしよう。アフリカ行ってくる。タイムカプセル埋めに行って，そこで1年後待ち合わせしよう」と明るく言う。恋人岬に向かった2人。2人でタイムカプセルを埋めた。凜子「あるのかな，変わらない気持ちって」。三朗「絶対変わらないから」。凜子「1年後に」。三朗「ここで会おう」。凜子は，離れた場所を指さし，アフリカと日本の距離に例えた。「聞こえるかな」と，三朗をそこまで行かせ，叫んでもらった。三朗は楽しそうに手を振って呼んでいるが，声は凜子に届かない。凜子の言葉も三朗に伝わらない。凜子は泣きながら「さようなら」と言っていた。
　あの手紙を健作も読んでみた。健作「もしかして・・・」。春夏「たぶん，凜子さんの・・・」。
　手紙＜ずっと内緒にしてたけど，いつも君を想っています。知らん顔していたけど，いつも君を想っています。本当は，本当はいつも君を想っています。君のその晴れ渡った空のような，抱えきれない優しさが好きです。髪を切りすぎた日は，君に会うのが恥ずかしかった。君の横顔をこっそり見たりしていた。嫌われたらどうしようなんて想ったりしてた。どんな色が好き？どんな歌が好き？どんな服が好き？どんな髪型が好き？どんな人が好き？本当は聞きたかった。君が隣にいいる。すぐ聞こえるところにいる。でも声に出しては言いません。心の中で言います。君が好き。君が好き。君が好き。百回好き。千回好き。何回言っても，君が好き。今，夜が終わる。空があけていく。カーテンの隙間からはみ出した朝の光が，この手紙の上に落ちています。ほんのちょっと指を伸ばすだけで，すぐそこにある気がして，笑ってしまいます。すぐそこにあって，触ってしまう気がして，ドキドキしてしまいます。こんな近くに愛が落ちてる。流れ星に祈ることはありません。魔法のランプに願うこともありません。夢はいらない。願い事もない。ただ君のそばにいたいんです。だから離さないでください。本当は強くないんです。本当は寂しがり屋なんです。だから離さないでください。離さないでいてください。いつか見つかってしまうかな。君に見つけられてしまうのかな。そう思っていつもドキドキしていた。大切な宝物を隠した子どもみたいな，こんな気持ち。ずっと内緒にしてたけどいつも君を想っています。知らん顔していたけど，いつも君を想っています。本当は，本当はいつも君を想っています。＞
　荷物をまとめる途中，そっと三朗の姿を見つめる凜子。1人でアパートを出発していった。研究室で三朗達から手紙を見せられ，真剣に手紙を読む三朗。急いで凜子の部屋へ。がらんとした凜子の部屋。マリンスノーのポスターだけが残されていた。その場で泣き崩れる三朗。
　1年後。恋人岬。三朗は1人待っていた。ずっと待っていた。日か落ちかけると，1人でタイムカプセルを掘り出した。そこへ1人の紳士が声をかけてきた。「どなたかお待ちかね」。朝からずっと待っている姿を見ていたという。三朗「約束すっぽかされちゃって」。紳士「どうかされたんでしょうかねぇ」。三朗「たぶん・・・たぶん・・・」。タイムカプセルを開けると，その中には結婚指輪が入っていた。それをじっと見つめていたが，またそのままカプセルの中に戻し，そのカプセルを海に投げ捨てた・・・。

　

最終戦「永遠に誓う運命」

　夏目にお見合いを勧められる三朗。大学に来た際，三朗に一目惚れしたという見合いの相手。仕方なくお見合いをしてみるが・・・一目惚れした相手は，三朗ではなくて夏目だった。三朗が「期待してたわけじゃないんで」というと，夏目は「そこがダメな所なんだ。人生に期待しないヤツには，道は開けない。彼女との再会だって・・・」。三朗は「彼女とは終わりました。約束の場所に来なかったんです」とタイムカプセルの話をする。「でも来ませんでした。自業自得です。彼女の気持ちないがしろにしてしまいましたから」。三朗が本屋にいくと，凜子の本が大量に入荷されていた。思わず手に取り，パラパラと見てみる。元気そうな凜子の写真を見て，笑顔になる三朗。何冊も抱えレジへ。その奥では，凜子がサイン会をしていた。
　研究室。健作が三朗をお見合いパーティーに誘っている。三朗は「オレ，いかないよ」と。彼女ができたわけではない。健作は自分のために彼女を作らないんだろうと勘違いしている。どうしてかというと，春夏が結婚に前向きじゃないから。その一方で，いつの間にか結婚をすませていたのは，祐天寺と茂市。研究室でもラブラブ。健作が２人のラブラブぶりに怒り狂う中，ケガが回復した南が挨拶に来る。来週には本社に戻る予定。南の荷物を倉庫へ取りに行く三朗と南。南は，本社に戻ると，新しくできた海洋テーマパークでイルカのショーのプロデュースを任される。南がずっと昔からやりたかったこと。南は「この１年サブちゃんがフォローしてくれたおかげ。ホントにありがとう」とお礼を言う。「みんなどんどん夢かなえているな」と三朗。「凜子さんも」と南は凜子の本を取り出す。南は，三朗のことが書いてあるかもと読んでみたという。三朗「ああいう人だから，向こうに着いた瞬間，オレのこと忘れてるよ」。南は「罪滅ぼしさせて」と，凜子を捜す手伝いをしたいと言うが，三朗は「その話はしないって約束したろう」。約束の場所に来なかったのが凜子の答え，そう三朗は思っていた。
　駅のホームで，三朗は凜子の姿を見かけた。もう一度見直すと，凜子の姿はない。幻だった？その時，通りがかった人が三朗にぶつかり，そのまま三朗は，電車が走り込む線路に落ちそうになる。それを助けたのは・・・凜子。あの日の逆。でも凜子は三朗のことはまったく知らない様子だった。そのまま電車に乗り込む二人。凜子に会えたうれしさに，いろいろ話しかける三朗だったが，凜子は「サインですか？名前ご存知でしたので読者の方かと」。三朗の名前も知らない。三朗が必死に２人のことを説明するが，まったく相手にしない凜子。三朗は，凜子が記憶喪失になったのかと思った。凜子の行動を説明しても「ありえません」と言うだけ。どうしても信じてもらえない三朗は「サメ女！動かぬ証拠だ！思い出しただろ！」と携帯の写真を見せる。
　アパートまで連れてくることに成功した三朗。でもアパートにも見覚えがないという。アフリカにいく前のことはあまり覚えてないと言う。それでも凜子「あなたのような人に好意を抱くわけない」。三朗は「君は僕のためにいろんなことをしてくれたんだ」と，イルカの折り紙を見せる。さらに思い出してもらおうと，キーボードで「カノン」を演奏してみる。股間を蹴っていたことや，「ぶっ殺す」と言っていたことを話すと「人違いです」とまで。三朗は「夢だったの？僕は夢を見てただけなのか」。凜子「ただの悪夢だったんでしょう」。三朗「悪夢なんかじゃなかった。あんな楽しい夢はなかったよ。できることならもう一度見てみたい」。凜子「そんなに好きだった人とどうして別れたんですか。好きな物は離しちゃダメでしょ。一度手を離れたものは，帰ってきませんよ。あなたは取り返しの付かないことしたんです」。三朗「そうだね」。そして凜子は「電話してもいいですか」と三朗を部屋から追い出す。三朗は，凜子のために手作りしたイスに座り，凜子からもらった植木鉢を手にしてじっと待っていた。ふと我に返り，部屋に戻ると凜子の姿はなかった。
　がっかりしながら部屋に戻ると，自分の携帯に留守電が入っている。何気なく聞いてみると・・・「私です。凜子です」。凜子からだった。＜久しぶりだね。最近どうしてる？・・・とか言って，うそです。すぐ近くで電話しています。相変わらずお人好しだね。小説じゃないんだからさ，記憶喪失なんかになるわけないじゃん＞。三朗「ふざけんなよ。なんのためにそんなこと・・・」。凜子＜ホントはもう会わないつもりだったんだけど。あんたに言っておきたいことあったから＞。三朗「何？」。凜子＜びっくりしたなぁ。駅であんたを見たときは＞。三朗「俺だって」。凜子＜うれしくて，抱きつきそうになっちゃったよ。三朗！って呼びそうになっちゃったよ。でもやめといた＞。三朗「なんで？」。凜子＜私達はもう終わったんだから会わない方がいいと思ったし。でも，言っておきたいことがあったし＞。三朗「だから何？」。凜子＜安売りで歯磨き粉買い過ぎちゃってさぁ。あれ腐るのかな？・・・今日のお昼何食べた？＞。三朗「そんなことが聞きたいの？」。凜子＜私はね，ハムカツ丼＞。三朗「あ，オレもハムカツ丼だった」。凜子＜同じだったりして＞。三朗「同じだったよ」。凜子＜そうだったら運命だね＞。三朗「うん」。凜子＜同じ日に同じ物食べるのも運命だし，同じ駅で再会したのも運命だね＞。三朗「ああ」。凜子＜なんで約束守ってくれなかったの？＞。三朗「えっ？」。凜子＜私，待っていたのに。１年後の約束の場所で＞。三朗「え？だってあれは君が・・・」。凜子＜一緒にタイムカプセル開ければ，きっとまたやりなおせるのかな，なんて思って＞。三朗「行ったよ！」。凜子＜まぁ，いいか。終わるのも運命だし＞。三朗「違うよ！俺は行ったのに，君が・・・」。凜子「ねぇ，ありがとうって言いそびれたことある？さよならって言いそびれたことある？好きって言いそびれたことある？＞。三朗「あるよ」。凜子＜三朗・・・＞。三朗「凜子・・・」。凜子＜ありがとう＞。三朗「ありがとう」。凜子＜好きだった＞。三朗「オレも」。凜子＜さようなら。ありがとう。好き。さようなら。それだけ言いたかったの。じゃあね＞。三朗「凜子・・・」。
　再び恋人岬を訪れた凜子。そこへ，あの紳士，三朗が待っていたとき現れた紳士がやってきた。「お気づきになられましたか？その木が最近植えられたことに」。凜子が立つ岬に木が植えられたのは，一月前。恋人岬は，二つのそっくりな岬が並んでいた。恋人同士なのに，片方にしか木がなかったので，わざわざ植えられた。そのおかげで，二つの岬はソックリになり，区別が付かなくなっていた。紳士の話に，凜子が視線を向けると，その先には同じ姿の岬が。凜子が待っていた場所は，２人の約束の場所でなかった・・・。
　夏目は，新しいお見合い話を三朗に持ってきたが，三朗は断った。すると健作が「僕が」と立候補。夏目「お前はダメ。ウザイから」。それでもお世話になった人からの話なので断れないと悩む。一方，凜子も父親の友人の紹介でお見合いをすることに。乗り気じゃない凜子が帰ろうと席を立つと，そこに現れたのは夏目。三朗とお見合いするはずの相手が凜子・・・。
　研究室。みんなの前で夏目が宣言。「見合いをしてきた。意気投合して結婚することにした。お前が断ってくれたおかげで運命の女性と巡り会うことができた」。まずみんなに写真を見せる。みんな凜子にそっくりだと言い合っている。すると夏目が「高見凜子さんだ！」。結婚式は明日。式場も押さえていた。健作は「教授に譲ります」と。夏目は三朗に「お前も来てくれるな」。結婚式当日。すでに式場に座っている三朗。落ち込んでいる三朗に，やってくる研究室のみんなや林田・若葉達は「ふられた」「ふられた」と。いい加減頭に来た三朗が，次に現れた人物を怒鳴りつけた。それは南。南は，三朗を励ましながら，DVDのセットを頼む。浮かない表情のままとりあえず準備を始める三朗を，遠くからみんな見ていた。結局，DVDの準備を途中で投げ出し，式場を出て行こうとするが，その時ウエディングドレス姿の凜子が入ってきた。
　凜子「昨日の夜何食べた？」。三朗「絶対一緒じゃないよ」。「せーの」で言ってみると「チキンライス」とそろった。凜子「チキンライスも運命だし，結婚も運命なんだ」。三朗「運命・・・か。結構似合ってんじゃん」。凜子「当たり前じゃん」。三朗「当たり前か・・・知らなかった。君のこと何も知らなかった。すぐ隣にいたのにな。隣にいるのが当たり前だったのにな。なあ，『クレヨンの歌』知ってる？どんな色がって」。凜子「知ってる」。２人とも，好きな色で歌ってみる。好きな色のクレヨンが一番最初になくなると言う歌。三朗「この歌と同じだね」。凜子は「どんな人が好き」と歌い出す。三朗は「もういいよ」と言うが，それでも凜子は「どんな人が好き」と。仕方なく三朗は「君」と答える。凜子「君のことが好き。一番先にいなくなるよ，一番好きな人」と歌う。三朗が「やめろって」と言っても「一番先にいなくなるよ，一番好きな人」と。三朗「凜子・・・凜子・・・返事しろよ」。凜子「何？三朗」。三朗「こんなの運命じゃないよ。運命ってこういうことじゃないよ。だってさ・・・だって・・・運命って自分で切り開くもんじゃん。オレがしたいのは，凜子の幸せを願うことじゃない。この手で，この手で凜子を幸せにすることなんだ。運命は，俺たちの，この手の中にあるんだ。行こう！」。やっと本当の気持ちを言えた三朗。
　その時，照明が突然落ち，スクリーンに映像が流れはじめた。そこに映り出されたのは夏目。「本日は大変お忙しい中，私どもの結婚式にお集まりいただき，誠にありがとうございます。しかしながら，私はこれからアラスカ行きの飛行機に乗らなければなりません。誠に申し訳ありませんが，本日の結婚式は欠席します」。呆然とする三朗。振り向くと凜子の姿はない。凜子のことは気になるが，夏目のことも気になる。夏目「眞崎。彼女も同じだ。約束の場所にちゃんと行ってたんだよ。ただ，気まぐれな偶然ってヤツのせいで，すれ違ってただけだったんだ。おもしろいなぁ。人ってヤツは。この偶然のせいで，出会ったり，すれ違ったり，別れたりして。でもな，俺は思うんだ。偶然ってヤツは，努力した者がだけがわたれる，運命の架け橋だ。そのど真ん中で出会うことが，巡り会い何じゃないかなってな。後は任せたぞ。じゃあな」。
　扉からこっそり覗いていた南が，みんなに「今です！」と合図。でも健作が「ヤダヤダ！絶対こんなもの押したくない！」とボタンを抱え込んでいる。みんなが何を言っても聞かない。すると，春夏が「私と結婚したいんだったら押して！」と。「はい！」と健作。みんなでボタンを押すと，教会の中がライトアップされる。外では，若葉がベルを鳴らしている。そして，扉が開き，父親と腕を組んでヴァージンロードを歩く凜子の姿が。父は，しっかりと三朗に凜子を手渡すと，その場を去っていった。「もしかして，まただまされた？」と三朗。そして突然怒鳴りはじめる。「ふざけんな！君はひどすぎる！この１年間，どんな思いして過ごしてきたのかわかってんのか」。それなのに２度もだまされたと。凜子は「もとはと言えば，自分が原因でしょ」。いつもの２人の言い合いが始まる。凜子が「やめとこうか。結婚式中止！」と言い始め，今度は慌てる三朗。必死でフォローしようとするが，裏目裏目に。「帰る！」と言う凜子を引き留めようとして，ドレスの裾を踏んづけ，破ってしまう。凜子は，いつもの股間蹴りをし「ぶっ殺されたいの？」。その時，みんなが拍手でお祝い。三朗「凜子。僕と結婚・・・」。凜子「無理！指輪ないじゃん」。すると三朗は笑顔になり，「行こう！」と凜子の手を取り，走り出す。今まで，２人が出会ってからのことを思い出しながら，ひたすら走り続ける。２人が到着した場所は，あの約束の場所，恋人岬。そのまま２人で海へ！
　海の中をダイビングしながら，三朗が投げ捨てたタイムカプセルを探す２人。海の底に，そのタイムカプセルを見つけ出したとき，２人の周りにマリンスノーが。やっと約束が果たせた。浜辺に戻った２人。タイムカプセルを開け，指輪を取り出す。２人だけの指輪の交換。その後，三朗がキスをしようとすると，「帰ろうか」と立ち上がる凜子。三朗が「指輪の交換したら，誓いのあれ！」。凜子「デコピン！」と三朗にデコピン。三朗が「誓いの！」とまた言うと，「ダブルデコピン！」とまたデコピンでごまかす凜子。三朗が「違う！違う！ちかいの・・・」。その口をふさぐように凜子がキス。そして改めて，誓いのキス・・・。

　

1回戦「史上最凶の純愛」	2回戦「恋は，タイミング」
3回戦「帰る場所はどこ？」	４回戦「さよなら運命の人」
5回戦「命をかけた恋」	６回戦「未来への贈り物」
7回戦「愛の旋律～君は宝もの」	８回戦「予想外のライバル」
９回戦「言えない気持ち」	10回戦「届かぬ想い」
最終戦「永遠に誓う運命」